まとめ
【評価】今後の状況次第で利下げ観測が再度高まれば米ドル安要因
【ポイント1】FOMCは追加利下げにコミットせず
【ポイント2】市場のシナリオは「年内あと2回」から「年内あと1回」に変化
【ポイント3】NYダウは一時500ドル近く下落
【ポイント4】シカゴPMIの急低下は懸念すべき材料か
FOMCの結果と市場の反応
7月31日の米FOMCは0.25%の利下げを決定しました。FFレート目標水準(政策金利)は2.25-2.50%から2.00-2.25%になりました。
FOMCの決定を受けて、米ドル円は上昇しました。利下げ幅が一部で期待された0.50%ではなかったことに加えて、パウエル議長が記者会見で「(利下げは)サイクル中盤の政策調整である」、「長期の連続利下げの始まりではない」と語ったことが大きかったようです。ただ、その後に議長が「利下げは1回だけか、継続するか、現時点ではコミットしない」と述べたことや米株安を受けて、やや米ドル安円高方向で推移しました。
反応が大きかったのは米株です。NYダウは議長の記者会見を受けて一時500ドル近く下落、やや戻したものの333ドル安で引けました。
長期金利(10年物国債利回り)は議長会見を受けて2.07%まで上昇しましたが、株安も手伝って前日比0.04%低下の2.01%となりました。
市場のメインシナリオは、「年内利下げはあと1回」
パウエル議長の記者会見後、FFレート先物に基づけば、市場が織り込む確率は、次回9月FOMCでの利下げが64.2%、12月FOMCでの追加利下げが47.4%です。したがって、市場のメインシナリオは「年内の利下げはあと1回」です。わずかな変化ですが、追加利下げは今年12月から来年1月に先送りされた格好です。
もっとも、先行きが不透明ななかで、中央銀行が継続的な利下げにコミットしないのは当然のことでしょう。景気は顕著に悪化しているわけでなく、今回の利下げは「予防的」「保険的」との位置付けです。
ただ、31日に発表された7月のシカゴ連銀製造業景況指数(シカゴPMI)は前月の49.7から44.4に急低下しました。7月の水準は2015年12月(42.1)を除けばリーマンショック以来の低さです。シカゴPMIは明日1日発表のISM製造業景況指数(全国PMI)の先行指標でもあり、明日のISM指数が大きく低下するようであれば、市場の景況感は一段と悪化する可能性があります。6月の対中国関税引き上げやその後の通商協議の不透明感の悪影響がこれから本格化するかもしれません。
その他の注目ポイント
声明文では「必要であれば行動する」との文言は前回同様なので、追加利下げの可能性が否定されたわけではありません。
今回の決定で、メンバーの票決は8対2でした。ジョージ総裁(カンザスシティ)とローゼングレン総裁(ボストン)が政策金利の据え置きを主張して反対票を投じました。
償還された保有国債の再投資を停止すること、いわゆるQT(量的引き締め)を予定より2カ月早く8月に終了することを決定しました。