米長期金利の考察
【相場材料】米長期金利の見方
【影響】
「良い金利上昇」であれば、米ドルのサポート要因
【ポイント1】
景気堅調、利上げ観測なら「良い金利上昇」
【ポイント2】
財政赤字拡大、中国の米国債売却観測なら「悪い金利上昇」
【ポイント3】
米国債先物のショート(売り)が増えている点は要注意
米長期金利(10年物国債利回り)が3%を超えて、今年5月下旬以来の水準に上昇しています(20日終値3.06%)。
米長期金利を以下の3つの観点から考察します。
「良い金利上昇」(上図、薄緑の部分)
米景気は堅調に推移しており、労働市場のひっ迫から賃金上昇圧力が高まるなど、利上げ観測が強まっています。インフレの高まりも、長期的には購買力平価の観点から米ドル安要因ですが、短中期的には利上げ観測の強まりに寄与しています。
FFレート(政策金利)先物によれば、市場は9月26日FOMCの利上げを100%、さらに12月の利上げを76%織り込んでいます。また、2019年についても2回(3月と12月)の利上げを50%以上の確率で織り込んでいます。
利上げ観測が一段と強まることで長期金利の上昇が続けば、米ドル高要因となりそうです。
「悪い金利上昇」(上図、薄黄の部分)
昨年終盤から今年3月までの長期金利上昇は、米ドル安を伴っており、事後的に「悪い金利上昇」と判断できます。昨年末のトランプ減税成立による財政赤字拡大懸念や、年初の中国による米国債売却懸念が米国債の需給悪化につながったからです。
足もとで財政赤字拡大が現実のものとなっており、かつ米中貿易摩擦が激化するなかで中国が米国債を売却するとの懸念も再燃しています。そうした状況下で長期金利が上昇すれば、米ドルには下落圧力が加わるかもしれません。
先物ポジション
CFTC(米商品先物取引委員会)の統計によれば、米10年物国債のポジションが大幅なネットショート(売り越し)になっています。ヘッジファンドなど投資家の間で、米国債先安(金利先高)の観測が根強いことを示しています。何らかのきっかけでポジションが巻き戻れば、長期金利は低下しそうです。もちろん、利上げ観測の後退など、上に挙げた要因が変化して長期金利が再び3%を下回ることもありえるでしょう。そうした場合は、米ドル安要因となりそうです。
基本的には「良い金利上昇」が続くと考えていますが、「悪い金利上昇」あるいは金利の反落によって米ドルに下落圧力が加わるシナリオにも留意しておく必要がありそうです。