櫻井英明のトップ放談 第13回
「火」と「水」のライフライン事業で
社会に「安全」「安心」を実現する
株式会社トーエル
代表取締役社長
中田みち(なかた・みち)
1965年、神奈川県生まれ。86年に東京エルビー瓦斯入社。同社取締役、東京興発代表取締役などを経て、2001年7月にトーエル常務取締役に就任。2010年7月より現職。
震災以降、急激に高まっている人々の「安全」「安心」への意識。創業50年目を迎えるトーエルは、現在の社会で最も重要な、この部分をドメインとする社会インフラ構築企業なのだ。
──まず、御社の業態についてご説明下さい
当社は「火」、「水」、「空気」という生活に密着したライフライン事業に携わっています。おかげさまで、今年、創業50年目を迎えることになります。火はLPガス、水はピュアウォーターの事業を手掛けてまいりました。
トーエルの事業の基盤であるLPガス事業は、消費大国の日本においてエネルギー・ベストミックス構築に不可欠なファクターの1つであり、まだまだ発展の余地があります。
当社は、外食産業等の業務用・ツープラトンシステムの工業用・LPガスによる発電・太陽光発電とそのハイブリッド化を積極的に展開しております。今後もトーエルの最大の強みである「物流の合理化」を推進し、トーエル独自の直線配送システム・湾岸直送システムを研究・開発し、さらにコストダウンを図る方向です。
──ウォーター事業についてはいかがでしょう
トーエルの2本目の柱として拡大基調のウォーター事業は、世界的ブランドの「ハワイウォーター」をさらに浸透させるとともに、地震等のリスク管理も考慮した国産ピュアウォーター「アルピナ」を平成18年より製造販売し、顧客数も順調に伸びてきました。「アルピナ」は、自然豊かな北アルプスの天然水を原水として製造しております。また8リットルボトル・ワンウェイ方式の取扱いも開始し、全国展開しております。
東日本大震災直後の水不足の時は電話の基地局もパンクするほどの注文がコールセンターにありましたが、今はだいぶ落ちついてきました。それでも出荷数は前年比でかなり増加しています。当初は備蓄用や災害グッズなどの短期需要としてお求めいただいたのではないかという懸念もありました。ですがおかげさまで、今回がきっかけとなり、便利さと美味しさに気が付いていただいたかなりのお客様が、リピーターになっていただきました。
──食品事業にも取り組まれていますね
はい、葉物野菜を横浜で、イチゴを厚木で生産しています。ここでは、コンピュータで温度・湿度・光の照射時間等も管理しています。厚木にはプロパンガスのボンベの検査場がありますので、通常廃棄処分している残ガスを貯めて、発電や空調に再利用してイチゴをつくっています。とても大きくて美味しいものが出来ました。このイチゴは外食チェーン店食材として納入しています。
また、高級食材のすっぽん、あわび、とらふぐの養殖を研究するため専門家チームを結成し、研究・開発に注力しております。
これら養殖や野菜の事業は、定年者の継続雇用としての意味も持っています。
──御社のコールセンターの規模は凄いですね
150名体制のコールセンターは、当社事業のLPガスやピュアウォーターの受信業務だけでなく、異業種からのコールセンター業務の受託も開始しました。熟練オペレーターのスタッフが安心して働けるよう、事業所内に保育施設「ローズ保育園」を開設しています。
──今後の我が国のLPガス市場についてはどう見ていますか?
日本はエネルギーの消費国です。電気だけ、ガスだけといった一つのエネルギーに頼ることは社会的に危険です。 したがって これからは色々なエネルギーをミックスして使っていくことが重要になってくるでしょう。
その意味でLPガスは 現在、各方面から大変注目を浴びています。当社の車もLPガスを使って環境に配慮、CO2の削減に努めています。世界的にも環境汚染の問題は注目されていますので、私どもも少しでもお役に立てる仕事をしていきたいと考えています。
──水から放射性汚染物を除去する特許を申請されたとか
産業技術総合研究所が調湿剤用途で開発した新素材のハスクレイを、戸田工業が放射性物質吸着剤用途に改良を行いました。当社は昨年、戸田工業と共同で、この改良されたハスクレイ・シリーズ「ARE」を用いて、「放射性物質を含有する汚染水の浄化方法及び浄化装置」の特許出願を行いました。
従来の放射性物質吸着剤よりも吸着力を高め、短時間で放射性物質イオンを吸収できる装置を目指しています。従来からあったゼオライトなどに比べると、即効性が高いうえに微量物質の吸着も可能です。しかも大量生産が可能ですので、これまでと比較して短時間、安全、容易、安価に汚染物の除去ができるようになると考えています。
また、放射性物質の吸着・除去後はガラス固化をして、安全に放射性物質を閉じ込めることができます。まずは汚染水をきれいにするということでマンションの飲料貯水タンクや学校のプールなどでの使用を考えています。
そして、なるべく早い時期に飲料水の浄化装置での実用化を目指しています。その先は井戸水や汚染された農地や浄水場、下水処理施設、工業用水など、多角的な活用の可能性を考えています。
当社はお客様のライフラインに携わる事業として、地域に密着し、皆様の生活のお手伝いをすることを目指しています。今後も皆様が必要なものを提供していきたいですね。
──現在の御社の業績は好調に推移しています
当社はLPガスとウォーターという内需型消費材を扱い、社会のインフラストラクチャーにかかわる事業を展開していることから、景況に大きく左右されることもなく、業績の推移は堅調です。
特に「安全」「安心」なボトルウォーターへの関心が急激に高まり、第3四半期連結累計期間では、ボトルウォーターの販売数量は前年同四半期比49.3%増となり、業績に大きく寄与しました。今4月期通期の売上高は前期比9.6%増、経常利益は32.2%増、純利益は27.7%増の見通しです。
──株主還元については
株主の皆様への日頃のご支援にお応えするため、平成24年4月期の期末配当金について、1株当たり10円の普通配当にウォーター事業10周年記念配当の2円を加えた合計12円の配当に修正いたしました。
[取材メモ]
取材中、中田社長の答えの中に必ず「安全」「安心」というキーワードがちりばめられたのが印象的でした。単にそれが顧客から求められる条件というだけではなく、中田社長自身の「安全」「安心」へのこだわりこそが、さまざまな事業部門の原動力なのではないかと感じました。
またコールセンターも見学させていただきましたが、24時間体制で地域に密着して「火」と「水」という生活関連に対応しているというプライドがその空間から感じられました。
業績は好調に推移していますが、それでも植物や魚の養殖への手を打ち、さらに「水から放射能を除去する特許」を申請するなど新たな手も打たれています。ライフラインの「安全」「安心」を重視したきめ細かな経営が、きっと同社の原動力なのでしょう。
社長室にはアジアを中心とした大きな世界地図。いずれハワイウォーターとアルピナを中心とした「水」事業は日本だけではなく中国などアジアへ進出していく方向と思われますが、同社の「安全」「安心」レベルとライフラインに対する信頼感は、きっと世界の人々からも望まれるに違いありません。
[ 会社概要 ]
社名:株式会社トーエル
証券コード:3361
公開市場:ジャスダック
上場年月日:2005年2月
設立:1963年5月
決算月:4月●連結業績予想(2012年4月期)
売上高:234億円(前年同期比9.6%増)
営業利益:16億8000万円(前年同期比41.5%増)
経常利益:15億4000万円(前年同期比32.2%増)
通期利益:7億円(前年同期比27.7%増)●トピックス
主力のLPガス、「ハワイウォーター」「アルピナウォーター」のピュアウォーター事業に加え、食品などのネット販売、農産物の生産・販売、コールセンター業務受託などを展開。特許を出願中の放射性物質汚染水浄化システムハスクレイ・シリーズ「ARE」も注目を集めている。
是非、アンケートにお答えください。アンケートにお答えいただいた方々から抽選でプレゼントが当たります。(4月号の応募期限:2012年4月30日)
※アンケートは終了しました。
◆本記事はリッチな電子ブック版でもご覧になれます。
PC版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1204/index.html
iphone版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1204/iphone.html
ipad版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1204/ipad.html
Android版はこちら→https://minkabu.jp/magazine/mmm1204/android.html
最新人気記事
新着ニュース
新着ニュース一覧-
今日 15:42
-
今日 15:41
-
今日 15:35