S&P 500月例レポート(2017年9月配信)

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最新投稿日時:2017/09/11 13:35 - 「S&P 500月例レポート(2017年9月配信)」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート(2017年9月配信)

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

S&P 500指数:例年薄商いの8月も相場は崩れず。9月は一転、ワシントンから強い向かい風が吹く可能性

 トランプ大統領が8月は休暇を取るか、多少はおとなしくしているだろうと考えていたとしたら、それは全くの見当違いに終わりました。大統領は相変わらず遠慮のない行動や発言を繰り返し、もちろんツイートし続けています。

 Twitter(TWTR)は8月に5.1%上昇しましたが、トランプ氏が勝利した昨年の大統領選時点と比較すると株価は8.0%も低い水準にとどまっています。また、SNSに載せる写真をSnap(撮影)する前に(SNAP、2017年4月のIPO価格は17ドル。現在の株価は14.65ドル)、ソーシャルメディア企業(Twitter)の株価はすでにIPO価格を29.3%下回る水準まで値下がりしました(現在の株価は16.91ドル)。2013年11月7日の上場時のTwitterのIPO価格は26ドル、その日に50ドルまで上昇するほどの人気だったのですが。

 おそらくTwitterでも夕食のために食材宅配サービスBlue Apron(APRN、2017年6月のIPO価格は10ドル、現在の株価は5.23ドル)を頼み、Uber(以前、同社は企業価値を620億ドルと試算しており、18-36カ月以内のIPOを目指しています)を利用して配達してもらうぐらいのことはできるでしょう。まあ、これも仕方のないことです。IPOが20年前とは様変わりしたのですから。意外なことですが、20年前は赤字決算でも問題はありませんでした。現在は、業績は黒字化していますが、プレミアム分を正当化するには利益があまりにも少ないのです。

 トランプ大統領を評価していたかどうかは、政治に対する考え方次第でした。アルコールを手にした時の私にとっては、支持しようが異を唱えようが、問題には何ら影響しない、白紙委任型の政治のように思えました。単なる政治に過ぎないのですから。とはいえ、私が株の取引を行う場合には(少なくともコンプライアンス上で認められている限りにおいてですが)、政治が重要とは思えません。重要なのはファンダメンタルズです。

 ウォール街では政治を気にかけ、意見も交わし、呆れてはいるものの、株式の売買は続いています。ウォール街がワシントンの動きに無関心となり、事実だけに注目しているのは、激しい言葉の応酬に慣れたからだということが広く受け入れられるようになっています。実際問題として、いくつかの政策変更が行われましたが、その大半は議会で立法化されたものではなく、大統領令によるものです。ワシントンでは混迷が続いていますが、株式市場は独自の道を進み、緩やかな一進一退を繰り返しながら新高値を更新しています。

 経済、低水準の在庫に後押しされた住宅市場、雇用(賃金はそれほどでもない)、そしてGDPの改善基調は続いており、インフレと金利は低水準にあります。実際のところインフレと金利は低下しており、ジャクソンホール会議で欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁、日銀の黒田総裁、そして連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は実際に何を語ったのか、そして彼らの本音は何だったのかを知りたいものです。株価収益率(PER)は引き続き高水準を維持しています。現に2017年第2四半期の利益は事前の予想を上回り、これまでの最高だった2014年第3四半期をしのぐ過去最高を更新し、第3四半期も(第2四半期を7.6%上回る)過去最高に達するとの予想が大勢を占めています。売上高の改善(前年比同期比5.7%増)も記録更新をうかがう勢いです(ただし、小売セクターは不調)。

 例年薄商いとなる8月相場にとって特筆すべきことは、海外関係では数多くの悪材料が続いたにもかかわらず、米国株式市場は0.05%とわずかながら上昇したことです。考えてもみてください。「核弾頭」、「戦争」、「デフォルト」といった文言が頻繁に飛び交い、テロ攻撃が「容認可能な」もののようになってしまった中で、株式市場は最高値にあと0.37%という水準を維持したのです。こうした相場上昇の背景には、好調なファンダメンタルズと政治に対する無関心さがありました。

 しかし両者とも必ず変化するものです。今現在は何の問題もありませんが、米議会が5日から再開される9月は警戒が必要です。債務上限問題(現行上限は20兆ドル、現時点での債務残高は19.98兆ドル)への対応、10月から始まる2018会計年度予算の審議(ここ数年はつなぎ予算の成立が常態化)、そしてウォール街が切望する税制改革、これら全ての政治課題がまさに現実問題となり、極めて早急に対処すべき事態となる可能性があります。にもかかわらず、誰も手仕舞う動きを見せてはいません(とはいえ、相場下落に備える保険的手段には買いが集まっています)。

 バージニア州シャーロッツビルで発生した白人至上主義団体の集会は、反対派の一人が死亡する暴動事件に発展し、混乱は全米に広がって、メディアで大きく取り上げられました。この事件に対するトランプ大統領の声明も、多くの国民にとって不満が募る内容でした。大統領の発言を受け、Merck(MRK)の最高経営責任者(CEO)であるフレイジャー氏は「不寛容に抗議する」として大統領助言組織である製造業評議会のメンバーを辞任しました。Intel(INTC)のCEOやその他の企業幹部もこうした動きに追随しました。これに対してトランプ大統領は、製造業評議会と戦略・政策フォーラムを解散しました。メンバーが大統領に対し辞任の意向を表明したからだとメディアは伝えています。トランプ大統領はまた、国家インフラ諮問委員会の設置計画も断念しました。

 さらに8月18日に大統領の主席戦略官であったスティーブ・バノン氏も政権を去りましたが(トランプ政権下では5週間でバノン氏を含め4人が重要ポストから去ったことになります)、この件に関しては解任であることが強調されました。この解任劇についての報道が大々的になされた結果、インフラ整備計画の準備作業は脇に押しやられ、所得税改革に向けた超党派での協力の動きが足踏みすることになり、政権内でのコミュニケーションとモラルを深刻に懸念する声が高まりました。発効から23年となる北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しに向けた再交渉も始まりましたが、ほとんど進展はありませんでした(9月に本格化する可能性も)。

 テキサス州湾岸部を襲ったハリケーン「ハービー」による被害は拡大しています。保険会社は当初、保険対象損害額を100-200億ドルと見積もっていましたが、被害総額は750億ドルと推定されています。またテキサス州は復興には1,250億ドルが必要だとしています。地上の調査員と上空からのドローンによる調査を通じて、より正確な被害額の算定が9月上旬から行われるでしょう。短期的な供給不足が生じたため、精製エネルギー価格が上昇しました。また、ガソリン価格も短期的に全米規模の値上がりが予想されます。

 今後に目を向けると、米国政府の債務が目下19兆9,800億ドルと、間もなく20兆ドルの上限に達するため、議会は上限引き上げの審議を開始しました。トランプ大統領はメキシコとの国境の壁建設予算が来年度の歳出法案に盛り込まれない場合、債務上限の引き上げを拒否すると述べています。この交渉が決裂すれば、政府機関が閉鎖される可能性があります。9月の債務問題のすぐ後には、10月に始まる2018年度予算の問題が待っていますが、当座しのぎの対応は最近では珍しくありません。さらに、市場にとって重要な所得税改革の問題がその後に控えており、政治的な発言が活発化すると見られています(議会の状況を考えれば、実際に税制改革法案をまとめるのは難しいでしょう)。結論として、今後は市場が注意を払うべき(および材料視すべき)政治的な問題が多くなるかもしれません。


 8月のS&P500指数は月の大半で下落しましたが、最終的には好転し、薄商いの中で小幅に上昇しました。上昇率は0.05%(配当込みのトータル・リターンは0.31%)で、7月の1.93%からは低下し、年初来の上昇率は10.40%(同11.93%)となりました。昨年11月8日の大統領選以降では15.52%(同17.51%)の上昇率となっており、投資家にとっては、懸念があったとしても、またもや満足できる結果となりました。9月には3つの大問題(債務上限、来年度予算、所得税改革)が待ち受けていることから、投資家が懸念を抱いても不思議ではありません。

 騰落率は11セクターのうち6セクターでプラスとなり、11セクター全てがプラスとなった7月からは減少しました(6月は5セクター)。情報技術セクターの騰落率が最も高く、3.24%上昇しました。iPhone(アイフォーン)メーカーのApple(AAPL)は10.3%上昇し、過去最高値で8月を終えました。Appleを除いた場合、同セクターの上昇率は1.89%となり、S&P500指数の騰落率は0.05%の上昇から0.33%の下落に変わります。年初来では、同セクターは25.27%上昇しており、全セクターの中で最高のパフォーマンスとなっています。Appleの(目覚ましい)41.6%の上昇率を除けば、同セクターの上昇率は22.31%となります。公益事業セクターは好調で、リスクオフの流れがしばらくみられたことから、8月は2.68%の上昇、年初来では12.34%の上昇となっています。ヘルスケアセクターは、ヘルスケア法案が棚上げされた模様であることから、8月は1.64%、年初来では17.74%上昇しました。この結果、同セクターはS&P500指数において、金融セクターを抜いて2番目に大きなセクター(最大は情報技術セクター)となりました。金融セクターは金利低下を背景に1.85%下落して、年初来の上昇率は5.67%となっています(ただし、昨年11月8日の大統領選以降では23.12%の上昇)。

 月間騰落率が最低だったのはエネルギーセクターで、8月に5.71%下落、年初来では16.75%下落して、最低のパフォーマンスとなりました。主な障害となっているのは依然として原油の供給過剰と見られ、原油価格は下落が続いています。ハリケーン「ハービー」の影響により一部の製油所とパイプラインが閉鎖されたことから、ガソリン価格は短期的に上昇する見通しですが、供給量が高止まりしている限り、原油価格への下押し圧力は残るでしょう(石油輸出国機構・OPECの加盟国と非加盟の主要産油国は2017年9月22日にウィーンで会合を開催する予定)。電気通信サービスセクターは競争激化で利益率への圧力が続いていることを背景に、8月に3.09%下落、年初来では11.19%下落しました。

 銘柄の変動をみると、8月は市場全体では小幅上昇したものの、7月とは反対に値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。値上がりは232銘柄(平均上昇率3.80%)と7月の326銘柄から減少しており(6月は349銘柄)、そのうち12銘柄が10%以上上昇(7月は10銘柄)しました。値下がりは273銘柄(平均下落率は5.65%下落)と7月の178銘柄から増加し、そのうち44銘柄が10%以上下落(7月は14銘柄)しました。年初来で見ると、値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を引き続き大きく上回っており、値上がりは331銘柄で、そのうち101銘柄が25%以上の上昇、値下がりは171銘柄で、30銘柄が25%以上の下落となりました。

●8月の重要ポイント

*S&P500指数は2,471.65で8月を終え、月間上昇率は0.05%(配当込みのトータル・リターンは0.31%)となりました。7月の終値は2,470.30、月間上昇率は1.93%でした。年初来の上昇率は10.40%(同11.93%)、また2016年11月8日の米大統領選当日の終値2,139.56からの上昇率は15.52%(同17.51%)となりました。月内に終値ベースで最高値を1回更新しました(直近の高値更新は2017年8月7日で2,480.91)。ダウ工業株価30種平均(NYダウ)は21,948.10ドルで8月を終え、7月末の21,891.12ドルから0.26%上昇しました。年初来の上昇率は11.06%となり、月中に終値ベースで最高値を2回更新しました(直近の高値更新は2017年8月7日で22,118,42ドル)。

*原油価格は引き続き不安定な展開となり、ハリケーン「ハービー」の影響でテキサス州沿岸の一部の機能が停止したにもかかわらず、7月末の50.25ドルから6.3%下落して47.07ドルで8月を終えました。2016年末の53.89ドルからの下落率は14.1%となりました。

*米国10年国債の8月末の利回りは2.12%となり、7月末の2.29%から低下しました(2016年12月末は2.45%)。

*金価格は1トロイオンス1,327.90ドルで取引を終え、7月末の1,276.30ドルから4.0%上昇し、2016年12月末の1,152.00ドルからは15.3%の上昇となりました。

*英ポンドは7月末の1ポンド=1.3194ドルから1.2929ドルに下落(2016年12月末は1.2345ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.1833ドルから1.1904ドルに上昇(同1.0520ドル)、円は7月末の1ドル=110.29円から109.95円に上昇しました(同117.00)。

*VIX恐怖指数は7月末の10.58から10.69に上昇しました。月中の最高は17.28、最低は9.52でした(2016年12月末は14.04)。

*ボトムアップ分析によるS&P500指数の1年後の目標株価は2,702(現行水準から9.3%の上昇余地)、NYダウは23,756ドル(同8.2%の上昇余地)。


●各国中央銀行の政策行動

 イングランド銀行は政策金利を据え置き(6対2)、同時に2017年の予想成長率を1.9%から1.75%に、2018年は1.8%から1.6%に引き下げました。7月開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表され、一部のメンバーがバランスシート縮小プロセスの開始を主張したのに対して、数名のメンバーが2%の目標を下回って推移しているインフレ率を主な理由に、反対したことが明らかになりました。

 なお、2017年9月19-20日に予定されている会合では、バランスシート縮小プロセスが開始されるか、そのスケジュールが示される見通しです。8月はカンザスシティー連銀が主催する、年に一度のジャクソンホール会議が開催され、FRBのイエレン議長とECBのドラギ総裁が講演しましたが、いずれも今後の政策変更を示唆することはありませんでした。

●世界の動き(もはやテロ事件も無視できない)

 ケニアの大統領選挙では現職のケニヤッタ氏が再選を果たしましたが、野党候補の支持者による抗議が暴動に発展し、不正投票の疑惑も報じられています。ベネズエラで行われた選挙ではマドゥロ政権が憲法改正の権限を握りましたが、野党のリーダーは選挙の不正を訴え、この問題に抗議する反対派のデモが続いています。米国は人権侵害や、独裁体制の強化を狙った違法選挙を理由に、マドゥロ政権に対する制裁を決めました。ベネズエラ国内では、新たに発足した制憲議会の権限が強まったことに反対するデモが続いています。ベネズエラの外貨収入の95%を占める石油生産に関与しているChevron(CVX)、Repsol(REPYY)、Statoil(STO)、Total(TOT)といった企業は、同国から従業員を引き上げています。

 対立と言えば、米朝間の緊張も一段と高まっており、米国は北朝鮮をけん制しようと、大陸間弾道ミサイルに対する迎撃実験をカリフォルニア州で再度行いました。中国は、北朝鮮の核開発計画を阻止することを狙った国連の制裁決議(中国も賛成票を投じた)に対応し、北朝鮮からの石炭、鉄・鉄鉱石、海産物の輸入を禁止しました。北朝鮮は米国領グアム近海を目標としたミサイル発射計画を撤回しましたが、8月後半にはミサイル3発を発射し、さらに1発は日本の上空を通過するなど、発射テストは続けられています。

 フランスではパリ近郊で兵士の集団に車両が突っ込み、6人の兵士が負傷しました。運転していた容疑者は逮捕され、テロ事件と断定されました。スペインのバルセロナでは、多くの観光客で賑わう目抜き通りをワゴン車が暴走し、16人が死亡、100人以上が負傷しました。これもイラク・シリア・イスラム国(ISIS)が関与したテロ事件と断定されました。バルセロナから120キロ離れたカンブリスでも自動車が歩行者に突っ込み、警察がテロの容疑者5人を射殺しましたが、バルセロナの事件と関連があるとみられています。

●企業の雇用とレイオフ関連

 8月のADP民間雇用者数は、前月比18万5,000人増の予想に対して同23万7,000人増と大幅に上回り、7月についても当初の17万8,000人増から20万1,000人増に上方修正されました。7月の雇用統計も堅調が続き、非農業部門就業者数は20万9,000人増と、予想の17万8,000人増を上回り、6月の数値も予想を大幅に上回った22万2,000人増(予想は17万人増)から23万1,000人増に上方修正されました。失業率は前月の4.4%から4.3%に低下し(予想通り)、2001年以来の低水準となりました。労働参加率は62.9%と、前月の62.8%から上昇しました(5月は62.7%)。週平均労働時間は前月と同じ34.5時間でした(予想通り)。平均時給は前月比0.3%増の26.36ドルで予想と一致し(前月は26.25ドル)、前年同月比では前月と同じ2.5%の伸びとなりました。この雇用統計に関して市場では、全般的に緩やかで底堅い前進を再び示したとみられたことから、大きな反応は見られませんでした。6月のJOLT(求人労働移動調査)では求人件数は616万3,000件となり、5月の570万件から増加しただけでなく、予想の560万件を大幅に上回りました。

●米国経済

 7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は予想の53.2をわずかに上回る53.3となり(6月の52.0から上昇)、サプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は6月の57.8から56.3に低下しました(予想は56.2)。7月のサービス業PMIは予想の54.2に対して54.7となり、6月の確報値の54.2から上昇し(速報値は53.0)、ISM非製造業景況指数は予想の56.9や6月の57.4を下回る53.9となりました。7月の生産者物価指数(PPI)は前月比0.1%低下(予想は0.1%上昇)、前年同月比では1.9%上昇となりました。8月のPMI速報値は、製造業PMIが52.5(予想は53.2)、サービス業PMIが56.9(予想は54.8)、総合PMIは予想の54.3を上回る56.0となっています。7月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%の上昇と、予想の0.2%の上昇を下回り、前年同月比では1.7%上昇しました。コアCPIも予想の前月比0.2%の上昇に対して0.1%上昇し、前年同月比では1.7%の上昇でした。

 7月の鉱工業生産は前月比0.3%増の予想に対して0.2%増となり、設備稼働率は前月と同じ76.7%で予想と一致しました。6月の建設支出は前月比では予想の0.5%増を下回る1.3%減となり、前年同月比では1.6%増となりました。6月の製造業受注は前月比3.0%増となり、予想の2.7%増を上回りました。5月の数字は当初発表の0.8%減から0.3%減へ上方修正されました。6月の卸売売上高は予想の前月比0.6%増をわずかに上回る0.7%増となりました。

 第2四半期の労働生産性は前期比で0.9%上昇し、第1四半期の0.1%上昇(速報値の横ばいから上方修正)から大幅に改善しました。単位労働コストは予想の前期比1.3%上昇を下回る0.6%の上昇でした。第1四半期が速報値の2.2%上昇から5.4%上昇に上方修正されたことが影響しました。

 7月の輸入物価指数は予想と一致して前月比0.1%の上昇、前年同月比では1.5%の上昇となったのに対し、輸出物価指数は前月比で0.4%上昇し(予想は0.2%上昇)、前年同月比では0.8%上昇しました。6月の個人所得は前月比0.4%増の予想に対して横ばいとなり、5月は当初の0.4%増から0.3%増に下方修正されました。6月の個人消費支出は予想通りの前月比0.1%増でした。第2四半期の企業利益は前年同期比8.1%増でした。7月の個人所得は予想と一致して前月比0.4%増、個人消費支出は予想の0.4%増を下回る0.3%増となりました。7月のPCE価格指数は予想と同じ前月比0.1%の上昇、前年同月比では1.4%の上昇となりました。コアPCE価格指数も前月比で0.1%上昇し、前年同月比では1.4%の上昇でした。

 7月の自動車販売台数は減少し、Ford(F、発表週に2.8%安)は7.4%減、General Motors(GM、同1.2%安)は15.4%減でした。7月の小売売上高は予想の前月比0.3%増を上回る0.6%増となり、6月の数値は当初の0.2%減から0.3%増に上方修正されました。7月の耐久財受注は前月比5.8%減の予想を下回る6.8%減となり、前年同月比では4.2%増でした。7月の財の貿易収支は輸出が1.3%減、輸入が0.3%減となり、貿易収支は651億ドルの赤字となりました。7月の小売在庫は前月の前月比0.6%増から0.2%減に落ち込み、卸売在庫も6月の0.6%増に対して7月は0.4%増となりました。8月の消費者信頼感指数は122.9と予想の120.6を上回り、7月の数値は当初の121.1から120.0に下方修正されました。2017年第2四半期GDP成長率は前期比年率換算で予想の2.8%を上回る3.0%となり、実質個人消費は3.3%増でした。


●住宅市場

 6月の中古住宅販売仮契約指数は予想の前月比0.9%上昇を上回る同1.5%上昇となりました。7月の住宅着工件数は115万5,000戸(年率換算)と、予想の122万5,000戸に届かなかった一方、住宅建築許可件数は122万3,000戸(年率換算)となり、ほぼ予想に一致しました。7月の新築住宅販売件数は57万1,000戸(年率換算)と、予想の61万戸を下回りました。7月の中古住宅販売件数は544万戸(年率換算)と予想の565万戸を下回り、前月比では1.3%減、前年同月比では2.1%増となりました。7月の中古住宅販売仮契約指数は予想の前月比0.4%上昇に対し同0.8%低下しました。米連邦住宅金融局(FHFA)発表の6月の住宅価格指数は前月比では予想の0.5%上昇を下回る同0.1%上昇、前年同月比では6.5%上昇となりました。8月のNAHB住宅市場指数は68と予想の65を上回りました。6月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前月比では0.7%上昇と予想の同0.9%上昇に届かず、前年同月比でも5.7%上昇と伸びは5月と変わらずとなりました。

●企業業績

 企業の決算発表は利益、売上高ともに予想を上回る好調な内容となり、市場を下支えしました。2017年第2四半期の決算発表がほぼ終了した段階で、これまでに業績発表を行ったS&P500指数の500銘柄のうち(S&P500指数は500社から構成されますが、実際の銘柄数は505銘柄)、営業利益が予想を上回ったのは352銘柄(全体の70.4%、過去平均は67%)、下回ったのは101銘柄(同20.2%)、予想通りだったのは47銘柄(同9.4%)でした。営業利益が予想を上回った企業の割合が最も高かったのは、67銘柄中57銘柄が予想を上回った情報技術セクターで(85.1%)、60銘柄中49銘柄が予想を上回ったヘルスケアセクターがそれに続いています(81.7%)。一方、最低だったのは31銘柄中15銘柄にとどまった不動産セクターで(48.4%)、エネルギーセクターは34銘柄20銘柄が予想を上回りました(58.8%)。現時点で、第2四半期は2014年第3四半期以来の過去最高益の更新が見込まれます。

 売上高に目を向けると、第2四半期も好調な業績が続きました。ただし、小売セクターは失望的だったものの、全体では498銘柄中344銘柄で売り上げが予想を上回り(69.1%)、第2四半期も好調が続きました。

 9月に入り、企業業績に関するニュースは、第3四半期に目が向きつつあります。第3四半期の利益予想はこれまでに1.6%下方修正され、現時点では前期比7.7%、前年同期比では14.6%の増益が予想されており、(現在終了間際の2017年第2四半期決算に続き)過去最高益を再度更新すると見込まれます。例によって、企業の業績ガイダンスとアナリストの業績予想の修正がニュースで大きく取り上げられ、サブセクター・レベルでの取引に影響を与えると思われます。

●金利

 FOMCが(予想通り)政策据え置きを決定する中、7月の金利は上下し、イールドカーブは若干変動しました。米国10年国債の7月末の利回りは2.29%と、前月末の2.30%および2016年末の2.45%を下回りました。米国30年国債の7月末の利回りは2.90%と、前月末の2.83%から上昇しました(2016年末は3.07%)。

 外国為替市場では、ユーロは6月末の1ユーロ=1.1423ドルから1.1833ドルに上昇し(同1.0520ドル)、英ポンドも6月末の1ポンド=1.3026ドルから1.3194ドルに上昇しました(同1.2345ドル)。円は6月末の1ドル=112.46円から110.29円に上昇し(同117.00円)、人民元は6月末の1ドル= 6.7805元から6.7266元に上昇しました(同6.9448元)。

 金価格は1トロイオンス1,276.30ドルで取引を終え、6月末の1,241.40ドルから上昇しました(同1,152.00ドル)。原油価格は6月末の1バレル46.23ドルから50.25ドルに反発して月を終えました(同53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は7月末に1ガロン2.426ドルと、6月末の2.404ドルから上昇しました(同2.419ドル)。

 VIX恐怖指数は月中8.84まで下落して1993年に付けた過去最低の8.89を下回り、最終的に10.58と、6月末の11.18から低下して月を終えました(同14.04、2016年11月8日の米大統領選直前は23)。

●個別銘柄

 アイフォーン(iPhone)メーカーのApple(AAPL)の決算は予想を上回り、同社の業績見通しでは、2017年9月12日に発表が予定される次期アイフォーンに関して、同社が好調な売れ行きを予想していることが示されました。

 ジェネリック医薬品メーカーのTeva Pharmaceutical(TEVA)の株価は、これまでに行った買収のコストと新CEO探しが難航していることが懸念され、8月に36.5%下落しました。宅配便大手のFedEx(FDX)は今年のホリデーシーズンの配送に追加料金を課さない方針を明らかにしました。競合のUPS(UPS)は現在のところ追加料金を課す方針です。

 電気自動車メーカーのTesla(TSLA、1週間で0.3%高)は生産設備のための資金として、15億ドルの社債発行計画を明らかにしました。現在、同社の社債発行残高は71億ドルとなっています。ファストフード大手のMcDonald’s(MCD)は、中国で2022年までに新たに2,000店舗をオープンし、同国の店舗数を4,500店に拡大する計画を明らかにしました。給与計算代行サービスのADP(ADP)の株式を取得したアクティビスト投資家のビル・アックマン氏は、同社に取締役を送り込むことを目指しています。

 エンターテイメント大手のWalt Disney(DIS)が発表した決算は売上高が予想を下回りました。同社は、独自のストリーミング動画配信サービスを立ち上げ、Netflix(NFLX)とのコンテンツ提供契約を打ち切ることを発表しています。

 インターネット小売り大手のAmazon(AMZN)はWhole Foods Market(WFM)の買収資金調達のため、160億ドルの社債発行を行いました。買収完了後、AmazonはWhole Foodsの商品100品目の値下げを実施し、Whole Foodsでのアマゾン・プライム会員向けの特典制度の導入を発表しています。

 米空軍は計画していたミニットマン大陸間弾道ミサイル(ICBM)システムの費用5,000億ドルでの更新を発表し、Boeing(BA)とNorthrop Grumman(NOC)を当初の契約企業に選定しました。

 配車サービス大手のUberは9週間に及ぶ後任探しの後、Expedia(EXPE)のCEOであるダラ・コスロシャヒ氏をCEOに指名しました。同氏は18~36カ月後のIPOを目指す意向を表明しており、同社の企業価値は現在625億ドルと評価されています。

 
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[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム

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