S&P500月例レポート(2017年7月配信)

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最新投稿日時:2017/07/11 17:22 - 「S&P500月例レポート(2017年7月配信)」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(2017年7月配信)

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

S&P 500指数:不思議の国のハーフタイム

 ショート筋以外の全ての市場参加者に「とてつもなく素晴らしい明日」が待っています。少なくともそれが現在の予想です。

 7月4日の独立記念日を祝う花火を前に、2017年の6月、第2四半期、上半期が幕を閉じました。金融株は6月に大幅上昇し(6.31%高)、一方、エネルギー株は上半期に大幅下落(13.81%安)となりました。VIX恐怖指数と金利が「著しく」上昇する中、月末近くに打ち上がった花火が目を引きました。一部で警戒感が浮上する中、VIX恐怖指数と金利はともに月中に上昇した後、過去最低ではないものの、それに迫る水準で月を終えたからです。VIX恐怖指数は15.16という「天文学的」な高水準を付けた後、低下して11.18となり、5月の10.41から7.0%上昇して月を終えました(2016年末は14.04、大統領選直前は23超で推移)。金利は「急騰」し、10年米国債利回りは2.30%を付けました。とはいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)による2回の利上げにもかかわらず、依然として2016年末に付けた2.45%を下回っています。

 株価収益率(PER)は比較的高水準にとどまっていますが、増益基調は続いています。第2四半期決算が次の大きな試金石になり(そして営業利益は過去最高を更新しそうです)、一部にAppleを2001年に不正会計で破綻したEnronになぞらえる向きもあるようですが、木を見て森を見ない(あるいは自らの立場や利益から世界を見る)一部の解説者は一歩引いて物事を見るべきでしょう。

 全てがうまく行った訳ではないものの、これまでのところ今年の市場はほぼ順調ですが、根拠のある懸念要因も広がっています(原油を除き、ヘッジ取引には表れていないとしても)。カタール航空による10%の株式取得提案を受けたアメリカン航空のダグ・パーカー最高経営責任者(CEO)の「困惑かつ不可解」という言葉を借りるなら(カタールは同国との国交断絶を表明した隣国[バーレーン、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)]と交渉を継続中)、市場が弱材料を強材料にすり替えて(あるいは解釈し直して)まで上昇を続けることに困惑しています ―― しかし、決して不可解なことではありません(40年以上相場を見てきた筆者には分ります)。

 本稿執筆時点で、先行きの楽観論の大半を占めるのは決算発表です。フランス革命記念日の7月14日に予定される銀行の決算発表で本格スタートとなり(おそらくケーキを食べてお祝いすることでしょう)、配当と自社株買いも発表されるでしょう。第2四半期決算は過去最高を記録すると予想され、ボトムアップ分析の数字を見ると(業績予測を示すことはできませんが)記録を更新すると予想され、貪欲な投資家でない限り、市場にとどまるよう説得するのに十分な材料と言えます。ファンド・マネージャーは、利益を積み上げていることを考えると、好決算の持続を喜ぶものの、年末に向けて早めの売却を検討する可能性があります ―― ただその前に7月を乗り切ることが大切です。

 そのため目先、市場の脱線を「手助け」すると思われるのはワシントンだけであり、その能力、意思、自己献身は決して過小評価できません。医療保険制度改革代替法案は良い方向にも悪い方向にも転ぶ可能性があるため(そして何が良くて何が悪いのか分らないことを少なくとも認めざるを得ません)、ヘルスケア株は今のところほとんど無傷ですが、予算の再配分はやや打撃をもたらす可能性があります(診療所に比べて病院で)。その後、メインイベントである税制改革がスタートし、リスク・リターン・テーブルの上昇とともに、プラス材料が見込まれます(多くは語りませんが、第1四半期のトップダウン分析の一部を見ると、賛成できない点も幾つかあります)。

 海外の動きに関しては、特に市場参加者の権利に悪影響が及ばない限り、市場は材料視していないようです。従ってリスクは直接かつ急速に悪影響を及ぼすこと(サイバー攻撃?)が起きた場合です。分析に基づく論理的な見解でなく、より個人的な印象としては、利益はかなり積み上がっており、強気局面は、まだ続いているようですが、開始からかなり年月を経ています。このため、年を重ねた私がドル平均法での再配分を推奨するのは本当に弱気コメントなのでしょうか?


●ハーフタイム

 上半期は株価が徐々に上昇して非常に心地良い展開となりました。株価を主に左右したのは政治や世界の動向で、S&P500指数は上半期に8.24%上昇しました(配当込みのトータル・リターンは9.34%)。騰落率は11セクターのうち9セクターがプラスとなったものの、エネルギーと電気通信サービスの2つのセクターはマイナスとなり、上半期にそれぞれ13.81%と12.79%という2桁台の下げとなりました。

 エネルギーセクターは、需要の改善にもかかわらず(ただし依然として低水準)供給過剰がもたらした原油安が圧迫材料となりました。しかし、消費者によるガソリン価格の節約分は過剰貯蓄に表れておらず、これは、価格が下落していなければ消費支出が減少していた可能性があることを意味します。電気通信サービスセクターは、競争激化に加えて消費者が簡単に乗り換えられることで利益率が圧迫されたことが響きました(そして、この事業分野にはAmazonが進出していません ―― 今のところですが)。

 上昇した9セクターでは、情報技術セクターが16.38%上昇し、その牽引役はiPhoneを主力とするApple(AAPL、年初来では24.3%高ながら、6月は5.7%安)、Alphabet(GOOGL、年初来は17.3%高、ただし6月は5.8%安)、Microsoft(MSFT、10.98%高)、ソーシャルメディア銘柄のFacebook(FB、31.2%高)でした。

 続いて好調だったのはヘルスケアセクターで、上半期は15.06%上昇しました。医療保険制度改革法(オバマケア)の「改廃」法案は下院を通過し、上院で審議中です。「撤廃」または「置き換え」というよりも「修正」される可能性が高いものの、ヘルスケアセクターは、ワシントンの動向と関係なく、推移するとみられます。ただし、ワシントンは予算配分に大きな発言権を行使するとみられ、病院とメディケイド(低所得者医療扶助制度)関連の企業はより影響を受けやすいでしょう。

 金融セクターは上半期に平均を下回る5.97%の上昇となり、そのうち6.31%は6月に記録しました(5月は年初来で0.33%の下落でした)。その背景には、FRBによる銀行の年次ストレステストの結果が良好だったことで配当と自社株買いに対するストレスが緩和されるとの見方が背景にありました(重要な決算発表シーズンは7月14日の銀行から本格化します)。

 6月は幅広い銘柄が活発に買われ、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数の2倍以上となりました。値上がりは349銘柄で、そのうち71銘柄が25%以上上昇し、値下がりは155銘柄で、そのうち24銘柄が25%以上下落しました(うち10銘柄はエネルギー関連銘柄)。

 その他の市場に目を向けると、原油価格は46.23ドルと、2016年末の53.89ドルから下落して上半期を終えました(供給が需要を上回ったこと、米国の生産増加が要因)。米国10年国債の6月末の利回りは2.30%で、2016年末の2.45%から低下しました(その間にFRBは2回利上げを実施)。VIX恐怖指数は11.18と、2016年末の14.04から低下しました(心配ご無用!)。

 上半期を振り返ると、日々の出来事や取引に関しては苛立つこともありましたが、全般的には緩やかながら総じて安定的に上昇しました。しかし注目すべき重要な点は、米政権で相次ぐドタバタ劇や世界から次々と入るニュースにもかかわらず、市場がファンダメンタルズを注視し続けたことです。

 下半期に関しては、どうしてもファンダメンタルズが気になりますが、年後半に入って最初に注目をさらうのは、ワシントン(医療保険制度改革)かもしれません。ただ、ファンダメンタルズの最初の試金石になるのは決算発表であり、2017年第2四半期の営業利益は過去最高を記録すると見込まれています。本稿執筆時点で、ボトムアップ分析を見ると(業績予測を示すことはできませんが)、記録を更新し、高水準のPERの持続が正当化される可能性は十分にあります。

●6月の重要ポイントは以下の通りです:

◇S&P500指数は2,423.41で6月を終え、月間上昇率は0.48%(配当込みのトータル・リターンは0.62%)でした。5月の終値は2,411.80、月間上昇率は1.16%でした。年初来の上昇率は8.24%(同9.34%)、また2016年11月8日の米大統領選挙日の終値2,139.56からの上昇率は13.27%(同14.79%)となりました。月内に終値ベースで最高値を4回更新しました(直近の高値更新は2017年6月19日で2453.46)。ダウ工業株30種平均(NYダウ)は21,349.63ドルで6月を終え、5月末の21,008.65ドルから1.62%上昇しました。年初来の上昇率は8.03%となり、月中に終値ベースで最高値を7回更新しました(直近の高値更新は2017年6月19日で21,528.99)。

◇原油価格は42ドルの水準を守ったものの、5月末の48.63ドルから4.9%下落して46.23ドルで6月を終えました。その結果、2016年末の53.89ドルからの下落率は14.2%となりました。

◇米国10年国債の6月末の利回りは2.30%となり、5月末の2.22%から上昇しました(2016年12月末は2.45%)。

◇金価格は1トロイオンス1,241.50ドルで6月の取引を終え、5月末の1,271.40ドルから2.4%の下落となりましたが、2016年12月末の1,152.00ドルからは7.8%上昇しました。

◇英ポンドは5月末の1ポンド=1.2877ドルから1.3026ドルに上昇(2016年12月末は1.2345ドル)し、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1242ドルから1.1423ドルに上昇(同1.0520ドル)、円は5月末の1ドル=110.81円から112.46円に下落しました(同117.00円)。

◇VIX恐怖指数は5月末の10.41から11.18、前回2006年12月に付けた低水準)に上昇しました(2016年12月末は14.04)。

◇ボトムアップ分析によるS&P500指数の1年後の目標株価は2,630(現行水準から8.5%の上昇余地)、NYダウは23,072ドル(同8.1%の上昇余地)。


●トランプ大統領と政府高官

 トランプ大統領は米国の航空管制システムの民営化を提案しましたが、実現には議会の承認が必要となります。

 米連邦捜査局(FBI)のコミー前長官はトランプ大統領と1対1で話した際の内容について議会証言を行い、トランプ大統領の言葉をフリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するようにとの「指示」と受けとめたことや、大統領がロシア疑惑に関する捜査を妨害する目的で自分を解任したと発言しました。トランプ大統領は以前ツイッター上で示唆したようにコミー前長官との会談の内容を録音しておらず、問題は言った/言わないの水掛け論化しています。トランプ氏はコミー前長官の後任に法律家のクリストファー・レイ氏を指名しました。特別検察官に任命されたロバート・ミュラー氏(元FBI長官)はトランプ大統領が司法を妨害したかどうかを含めて、捜査対象をコニー氏の解任問題まで拡大すると報じられています。

 議会上院はヘルスケア法案の修正案を公表しました。同修正案について議会予算局(CBO)が行った試算では、2026年までに2,200万人が無保険になる見通しです。この数は下院案に対する試算の2,300万人を若干下回っています。また上院案では財政赤字が2026年までに3,210億ドル減少すると試算されており、下院案の1,190億ドル超と大幅に上回っています。上下両院ではヘルスケア法案を1つにとりまとめる必要があります(あるいは立法化をあきらめる)。

 米国最高裁は入国制限に関する大統領令の一部を執行することを容認する判断を下し、これまでの連邦高裁の判断を覆しました。なお、大統領令に対する最終判断は、2017年10月に始まる次期会期まで持ち越されることになりました。


●各国中央銀行の政策行動

 欧州中央銀行(ECB)は政策理事会で現行の政策運営方針を維持し、成長見通しに対するリスクは均衡しているとして、年末には量的緩和を縮小する可能性があることを示唆しました。特筆すべき点としては、将来の追加利下げに関する文言を削除したことが挙げられます。ECBのドラギ総裁はその後の講演でこれまでの景気刺激策を擁護し、景気の下支え政策を早過ぎるタイミングで打ち切ることに否定的な見解を示しました。

 連邦公開市場委員会(FOMC)は予想通り0.25%の利上げを決定しましたが、FRBが現在4兆5,000億ドル規模に膨らんだバランスシートの縮小方法について説明を行ったことは予想外でした。こうした発言は最近の行動(や発言)から予想されたり、それらから示唆されたものよりも、タカ派寄りの印象を与えました。FRBは保有資産について(最終的に)月額100億ドルのペースで縮小を開始し、月額500億ドルに達するまで3カ月ごとにその額を増額していく計画であるとしています。四半期毎に公表されるFOMCメンバーの金利見通しによれば、大半の委員が年内にあと1回の利上げを想定しており(今年最初の利上げは3月に実施。市場参加者は9月に3度目の利上げが行われると予想)、2018年も3回の利上げが想定されていますが、市場はほとんど反応を示しませんでした。

 予想通り、イングランド銀行は政策金利を現行の0.25%に据え置きましたが、8人の政策委員のうち3人が利上げを支持したことを受け、イングランド銀行もタカ派に傾きつつある中央銀行のリストにその名を連ねることになりました。資産購入プログラムの規模も現状維持としています。中国人民銀行も予想されていた通りに、政策金利を据え置きました。

●世界の動き

 バーレーン、エジプト、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦(UAE)は、カタールがテロリストを支援していることを理由に、同国との国交を断絶し、他の国々も同様に外交関係の一部を断絶しました(カタールの株式市場は7.3%下落)。原油価格は42ドルまで下落し、定義上の弱気相場入りとなりました ―― 直近高値から20%下落(2014年6月の105ドルから60%下落)―― が、月末にかけて僅かながら回復を見せ、46.23ドルで6月の取引を終えました。なお、5月の終値は48.63ドルでした。

 5月の「ランサムウェア」と類似のサイバー攻撃が6月にも世界規模で発生し、標的とされた政府機関や企業で業務に支障が生じました。テロ事件も続き、英国では6月3日の夜にロンドン橋上でトラックが通行人をはね、その後運転していた男3人がナイフで市民を刺す事件が起きました。7人が死亡し、少なくとも50人が負傷しました。実行犯の3人は警官によって射殺されました。ロンドンではさらに、モスク近くにいた群衆にバンが突っ込み、1人が死亡し、10人が負傷しました。テロ事件と断定され、バンの運転手が逮捕されました(英国では過去4カ月で4件のテロ事件が発生)。ブリュッセルでは中央駅構内で爆発がありましたが被害は広がらず、警備中の兵士によって容疑者が射殺されました。

 米国の戦闘機がシリア戦闘機を撃墜したことで米国と(シリアを支援する)ロシアの間の緊張が高まっています。それとは別に、米国はシリアが新たな化学兵器使用の準備を進めていると指摘し、実行した場合の代償について警告を発しました。

●企業の雇用とレイオフ関連

 5月の失業率が4.4%から4.3%に低下して(690万人の新規雇用に相当)、16年振りの低水準を記録しましたが、同時に発表された労働参加率が4月の62.9%から62.7%に低下したことで、この最初の明るい材料は打ち消されました。週平均労働時間は横ばいの34.4時間と、予想通りの結果になりました。時間当たり平均賃金も予想通りに前月比0.2%上昇して26.22ドルとなり、前年同月比では(25.59ドルから)2.5%上昇しました。また、4月の平均賃金は速報値の前月比0.3%上昇から同0.2%上昇に下方修正されました。

 エコノミストはこの雇用統計の「望ましくない」結果は労働市場が引き締まっているためで許容できると考えましたが、タイトな労働市場で期待されている賃金の上昇はまだ実現していません。雇用統計に対する市場の最初の反応として、先物市場が下落しましたが、わずかにプラスにとどまりました(雇用統計は午前8:30に発表されます。市場の取引開始時刻は午前9:30です)。また、金利は2016年11月(選挙の時期)以来の低水準に低下しました。

 4月の求人労働異動調査(JOLTS)は力強い結果を示し、求人件数は予想の572万人に対して604万4,000人と過去最高を記録しました(3月は579万人でした)。この求人件数は雇用者が欠員の補充ができないことも浮き彫りにしました。JOLTSによれば、VerizonはYahoo!との合併後、Yahoo!とベライゾン傘下のAOL部門の従業員2,100人を解雇する予定となっています。


●経済指標関連

 世界銀行が世界経済の成長見通しを発表し、2017年が2.7%、2018年が2.9%という予想を維持しました(2016年は2.4%でした)。国際通貨基金(IMF)は4月に中国の2017年成長率見通しを6.5%から6.6%に修正しましたが、今月またもや上方修正して6.7%としました。

 5月のマークイット製造業購買担当者指数(PMI)は52.7となり、5月のサプライ管理協会(ISM)製造業景況指数はほぼ予想通りの54.9となり、4月の54.6を上回りました。5月のサービス業PMIは4月の53.1から53.6に上昇しましたが、ISM非製造業景況指数は56.9となり、4月(57.5)から低下して予想の57.0にも届きませんでした。

 5月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比2.4%上昇し、コアPPIは同2.1%上昇しました。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.9%上昇、コアCPIは同1.7%の上昇となりました。4月の建設支出は前月比0.5%増の予想に対して同1.4%減となりましたが、前年同月比では6.7%増となりました。

 5月の小売売上高は予想の前月比0.1%増に対して同0.3%減となり、自動車を除いた売上高も予想の前月比0.2%増に対して同0.3%減となりました。5月の小売在庫は4月が前月比0.2%減となった後で同0.6%増に回復し、5月の卸売在庫は4月が前月比0.4%減だった後で同0.3%増となりました。5月の耐久財受注は前年同月比2.7%増、輸送機器を除く耐久財受注は同5.5%増となりました。

 FRBが公表した年次審査の第1段階の結果では、米国で事業を行っている大手銀行34行全てが仮説上のストレステスト(健全性審査)に合格し、深刻なリセッション下においても貸出を継続できることが示されました(全ての銀行がストレステストに合格するのは今年で3年連続)。第2段階でも、34行全てが株主への配当と自社株買いの計画が容認され(2011年にこのプロセスが開始されて以来、初めてのことです)、多くの銀行が直ちに配当と自社株買いを引き上げました。

 2017年第1四半期のGDP成長率確報値は年率換算で前期比1.4%となり、予想の同1.2%を上回りました。GDP価格指数は前期比1.9%上昇しました(予想は同2.2%上昇)。2017年第2四半期のGDP速報値は7月28日に発表されます。

 5月の個人所得は予想の前月比0.3%増に対して同0.4%増となり、個人消費支出は前月比0.1%増と、予想通りの結果になりました。PCE価格指数も予想通り前月比0.1%低下し、前年同月比では1.4%上昇しました。

●住宅市場

 6月に発表された指標は強弱まちまちで、予想を下回った指標もありましたが、依然として(予想された通り)プラスの伸びが続いています。6月のNAHB住宅市場指数は70の予想に対して67となり、5月の新築住宅着工件数は122万戸の予想を下回る109万2,000戸(年率換算)となりました。住宅建築許可件数も124万9,000戸の予想を下回る116万8,000戸となりました。5月の中古住宅販売仮契約指数は予想の前月比0.5%の上昇に対して同0.8%の低下となりました。

 4月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で5.7%上昇しました。5月の中古住宅販売件数は前年同月比で2.7%と「堅調」な増加を示し、予想を上回りました。5月の新築住宅販売件数はポジティブサプライズとなり、価格の中央値は34万5,800ドルで価格の平均は40万6,500ドルと、いずれも過去最高を記録しました。4月のFHFA住宅価格指数は前年同月比で6.8%上昇しました。

●企業業績

 2017年第1四半期は好調な四半期に分類されています。2017年第2四半期は引き続き増益が見込まれ、四半期ベースの営業利益としては過去最高を記録する見通しです。企業がこの追い風を利用して過剰な自社株買いを行い、株式数を減少させて1株当たり利益(EPS)を押し上げた兆候はありません。市場にとって重要なポイントは、企業は自社株買いに振り向けられる資金を保有している(2017年第1四半期には、企業が保有する現金残高が過去最高を記録しました)一方で、業績予想に対する自信について言及を避けたようだ、ということです。

 業績見通しは引き続き明るく、悲観的な警告は依然として限定的です。2017年第2四半期のS&P500指数全体の1株当たり営業利益は30.97ドルと予想され、3月時点の予想よりも2.6%低下しましたが、これまでの過去最高益である2014年第3四半期の29.60ドルを上回って過去最高を更新する見通しです。本稿執筆時点で、2017年第3および第4四半期も過去最高益の更新が見込まれているため、2017年通年でも過去最高益が予想されます。

 こうした予想は、緩やかな景気回復の持続に加え、FOMCによる1回または2回の利上げ(それぞれ0.25%)を織り込んでいるとみられます。

 なお、注目すべき点は、好材料となり得る法人税改革(あるいは、M&A、自社株買い、配当の順で活発化につながるとみられる海外利益の還流)の見通しが不透明なことや、大きな不確定要素である消費者の行動や政府の動きから景気後退の兆候が見られないことです。現段階での結論としては、企業利益は好調が見込まれているものの、PERをめぐる懸念を踏まえると、業績が下振れすれば、市場で直ちに失望が広がることが見込まれます。

●金利

 FOMCによる予想通りの利上げを受けて6月末に前月から上昇しました。米国10年国債の6月末の利回りは2.30%と、前月末の2.22%から上昇したものの、2016年末の2.45%は下回りました。米国30年国債の6月末の利回りは2.83%と、前月末の2.86%から低下しました(2016年末は3.07%)。

 外国為替市場をみると、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1242ドルから1.1423ドルに上昇し(同1.0520ドル)、英ポンドも1ポンド=1.2877ドルから1.3026ドルに上昇しました(同1.2345ドル)。円は5月末の1ドル=110.81円から112.46円に下落し(同117.00円)、人民元は1ドル=6.8223元から6.7805元に上昇しました(同6.9448元)。

 金価格は1トロイオンス1,241.50ドルで取引を終え、5月末の1,271.40ドルを下回りました(同1,152.00ドル)。原油価格は月の大半を通じて下落し、1バレル42ドルの水準を試した後に反発して、46.23ドルと、5月末の48.63ドルを下回って月を終えました(同53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は下落し、6月末は1ガロン2.404ドルと5月末の2.516ドルを下回りました(同2.419ドル)。

 VIX恐怖指数は小幅上昇し、5月終値の10.41から11.18に上昇して月を終えました(同14.04、2016年11月8日の米大統領選直前は23)。


●個別銘柄

 百貨店大手のMacy’s(M)が、小売業界全般が引き続き価格圧力にさらされる中、利益率が悪化するとの見通しを示しました。General Electric(GE)は、16年にわたり最高経営責任者(CEO)を勤めたジェフ・イメルト氏の2017年8月付けでの退任を発表しました。現在のヘルスケア事業のトップが同氏の後任に就任します。配車大手Uberのトラビス・カラニックCEOは、同社の職場環境のあり方に対する批判的報道への対応として、無期限の休職を発表した後、6月下旬にCEO職を辞任しました。ただし、取締役にはとどまっています。

 航空機リース会社のChina Aircraft Leasing Groupは、Boeing(BA)から737 MAXジェット旅客機を50機、総額58億ドルで購入すると発表しました。これとは別に、カタールもBoeingからF15戦闘機を36機購入することを発表しています。スポーツシューズ・アパレルメーカーのNIKE(NKE)は、世界全体の従業員数7万人のうち、約1,000人の人員削減を発表しました。

 欧州連合(EU)は、インターネット検索・広告大手Alphabet(GOOG/GOOGL)に対し、検索結果で自社の商品比較サイトを優遇しているとして、反競争的慣行を理由に27億ドルの制裁金を科しました。

 貨物輸送大手のUPS(UPS)は、労働組合に加入していない従業員(全従業員43万4,000人のうち約78,000人)の年金プランを凍結すると報じられています(現時点での年金債務は推定100億ドル)。

 ケーブルテレビ会社のAltice USA(ATUS)が公開価格30ドルで新規株式公開(IPO)を行い、19億ドルを調達しました。同社株は公開価格から7.9%上昇し、32.36ドルで6月を終えています。今年市場が一貫してプラスのリターン(上昇)を上げていることを背景に、IPOが再び活発化しており、6月26-30日の週には週間ベースで過去2年間の最多となる10件のIPOが行われました(ただし、最近のSnapによるIPOのように(同社株は公開価格から概ね横ばいで推移)、ヘッドラインを飾るような10億ドル規模の大型案件はありませんでした)。

 ウォーレン・バフェット氏が率いるBerkshire Hathaway(BRK.B)は、保有するBank of America(BAC)の優先株をワラントを行使して普通株7億株に転換すると発表しました。これにより同社はBank of Americaの筆頭株主となります。

 S&Pインデックス(現在のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス)は1999年11月30日(火)の取引終了後に、Yahoo!(YHOO)をLaidlaw(当時のティッカーはLDW)に代えてS&P500指数に組み入れることを発表し、同年12月7日の取引終了後に組み入れを実施しました。そのYahoo!は6月にVerizon(VZ)による買収が完了し、同社傘下のインターネットサービス会社AOLとの統合が進められています。インターネット検索エンジンを最初に手掛けた企業の1社であるYahoo!がIPOを行ったのは1996年4月で、公開価格は13ドルでした(株式分割により当時の1株は現在の24株に相当し、公開価格は株式分割調整後では0.54ドル、対して同社株の取引最終日の終値は54ドル)。

●6月のS&P500指数の動き

 絶好調だった上半期の締めくくりとして緩やかな上昇が続き、過去最高値を更新しました。ほとんどの銘柄が幅広く上昇し、住宅、雇用、賃金といった経済指標も好調な結果となりました。トランプ政権をはじめとする世界各国の政治、経済、テロ事件といったニュースがメディアを賑わしていましたが、市場ではファンダメンタルズに基づいた取引が続けられ、世界のニュースによる影響は軽微にとどまりました。現時点において医療保険制度改革の行方は不透明ですが、市場では資産配分の若干の変更が見られ、イベントに対する備えができているようです。

 次の注目は所得税と海外からの利益還流ですが、市場は少なくとも何らかの改革(減税)が行われるとみています。

 しかし、足元で最も重要なのは企業利益であり、営業利益が予想通りに過去最高を更新すれば、市場の下支えとなるでしょう。いずれにしても、S&P500指数は6月も上昇し、終値での過去最高値を4回更新して0.48%の上昇(配当込みのトータルリターンは0.63%)で月の取引を終えました。2017年第2四半期の上昇率は2.57%(同3.09%)となり、四半期ベースでは7四半期連続の上昇となりました。年初来では8.24%上昇(同9.24%)、過去1年間では15.46%上昇(同17.90%)となっています。

●セクター

 セクター別では、月間騰落率がプラスとなったのは11セクターのうち6セクターで、4月と5月の7セクターから減少しました。最も好調だったのは金融セクターで、6月は6.31%上昇し、年初来の騰落率も5.97%のプラスに転じました。5カ月にわたってほぼ横ばいで推移していた同セクターが6月に入って上昇した背景には、世界的な景気刺激のための金融政策が「間もなく」縮小されるとの見方が強まったことに加え、FRBによるストレステストが終了し、自社株買いと配当が承認されたことがあります(主要34行が全て合格)。既に良いニュースが聞かれ始めており、この流れは7月も続くと予想されます。

 ヘルスケアセクターは6月に4.49%上昇し、年初来の上昇率は15.06%となっています。医療保険制度改革法案は議会で審議されることになりましたが、結果は不透明です。情報技術セクターは利益確定の動きと決算対策の売りから6月は2.75%下落しましたが、年初来の上昇率は16.38%と、依然として最高のパフォーマンスを維持しています。

 一方で、最低のパフォーマンスとなったのは競争の激化が重石となっている電気通信サービスセクターで、6月は2.98%下落、年初来でも12.79%下落しています。エネルギーセクターは6月こそ0.27%の下落にとどまりましたが、年初来では13.81%の下落と、最低のパフォーマンスが続いています。原油価格は一時42ドルまで落ち込んだ後、月の後半にやや持ち直しましたが、原油は定義上の弱気相場入り(直近の高値から20%下落)が確定しました。

 消費関連セクターも乱高下の末に低水準のパフォーマンスとなりました。一般消費財セクターは6月に1.34%下落しましたが、年初来では10.22%上昇しています。生活必需品セクターは6月は2.53%下落し、年初来では6.59%の上昇となっています。

●銘柄変動

 銘柄の変動を見ると、引き続き値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回り、その差はわずかに拡大しました。6月の値上がり銘柄は294銘柄(平均上昇率4.86%)となり、5月の283銘柄(4月は280銘柄)から増加した一方、値下がりは211銘柄(平均下落率は4.07%)で、5月の221銘柄(4月の225銘柄)から減少しました。6月は5月の26銘柄を上回る29銘柄が10%以上上昇した一方(平均上昇率は13.96%)、10%以上下落した銘柄は15銘柄(平均下落率は13.59%)と、5月の32銘柄から減少しました。1銘柄(5月も1銘柄)が25%以上上昇し、25%以上下落した銘柄はありませんでした(5月は1銘柄)。

 年初来では引き続き、値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大幅に上回っており、その差も拡大しています。年初来での値上がりは349銘柄と5月の330銘柄(4月は345銘柄)から増加し、そのうち231銘柄(5月は211銘柄)が10%以上上昇、71銘柄(5月は64銘柄)が25%以上上昇しました。一方で、年初来での値下がりは155銘柄となって5月の173銘柄から減少し(4月は159銘柄)、そのうち70銘柄(5月は84銘柄)が10%以上の下落、24銘柄(5月は18銘柄)が25%以上下落しました。

 市場のボラティリティは上昇しましたが、依然として落ち着いた水準にとどまり、6月最終週は一進一退の展開となりました。出来高は前月比22%増となった5月(4月は20%減、3月は18%増)と比べて6月は横ばいとなり、過去1年間の平均を5%、過去5年間の平均を7%上回っています。月中の高値と安値の差で見た変動率は大幅に低下して2.00%となり(5月は2.80%、4月は2.97%)、過去1年平均の3.45%や過去5年平均の5.22%と比べると大幅に低い水準です。

 昨年11月8日の大統領選以降では、値上がり銘柄数は389銘柄(5月は390銘柄)、値下がり銘柄数は114銘柄(5月は115銘柄)で、11セクターのうち9セクターが上昇しています(金融セクターは23.46%上昇、エネルギーセクターは6.38%下落)。

 
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[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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