S&P 500月例レポート(2016年9月配信)
S&P 500®
2016年8月: 退屈でのんびりとした8月が去り波乱含みの9月へ
ブロード街やウォール街の生活はイベントに事欠かず、決して退屈なものではありませんが、8月の相場は退屈な展開となりました。8月は「1%の彼ら」への抗議行動を続けました。と言っても、相手は富裕層ではありません。我々は皆、彼らを支持しますが(特に彼らの仲間に加われるのなら)、相手は「1%変動の日」です。S&P 500が前回1%変動したのは1.53%高となった2016年7月8日です(前回1%下落したのは2016年6月27日で1.80%安でした)。ただ、7月8日以来、相場が1%変動した日はないものの、この間にS&P 500構成銘柄のうち108銘柄は10%以上値上がりし、20銘柄は10%以上値下がりしているようです。従って相場はある程度変動しているということです ― 国内のストックピッカー(選別買いをする株式投資家)のリターンを調べる良い機会かもしれません。出来高が少なく説得力に欠けるものの、8月は強気相場の様相を呈し、終値ベースで3回も最高値を更新しましたが、8月は「大幅に変動しないパーツ」を求めてウォール街を去って行きました。どこへ向かったのかは分りませんが、「今後の予定を気にせず」のんびりと責任のない日々を送れる場所を探しているのなら、ジャクソンホールに行けばよかったかもしれません。米連邦準備制度理事会(FRB)が保養地で示した方針はどっちつかずに見えます。利上げの根拠は「この数ヵ月で強まった」と指摘する一方で、「我々の判断は今後公表される経済指標が[FRBの]見通しをどの程度裏付けるかどうかに引き続きかかっている」と述べ、市場への影響はほとんどありませんでした。それより英国に行けばよかったのかもしれません。英国では賃貸セクターと持ち家セクターの差が大幅に狭まりつつあり、また米ドルがやや上昇しました(つまり英ポンドが下落)。英国に滞在していれば、イングランド銀行による2009年以来となる0.25%の利下げを見ることができたはずです。これにより政策金利は0.25%と、322年ぶりの水準に低下し、さらに引き下げられる可能性、あるいは(太平洋のこちら側ではないので、敢えていうと)マイナスとなる可能性さえあります。街に残ったトレーダー(両者とも)による8月の出来高は過去10年間の8月の平均値を18%下回りました。そして8月は市場が行動を起こす月とはされていません。
8月の経済指標には異例な動きはなく、それが相場を押し上げ、前半は最高値の更新につながりましたが、後半はほとんど影響がありませんでした。住宅関連指標は(概ね)前進かつ上昇を続け、新築住宅販売件数は大幅に予想を上回りました。雇用も力強く、新規失業保険申請件数は低水準となりました。原油価格は7月に1バレル40ドル割れ目前まで下落した後、50ドルに挑戦しました ― 終値では届かなかったものの(8月の終値は44.82ドル。7月の41.48ドルから上昇)、市場の関心はアップサイドに向かっていました(4月の産油国の協議が失敗に終わったため、当社は9月26?28日にアルジェリアで開催される会合に注目しています)。FRBは9月の利上げ(または見送り)を依然として検討中ですが、他の中央銀行は景気刺激策の拡大を継続(日銀など)あるいは(オーストラリア準備銀行のように)利下げを実施しており、そうした中、金利は上昇して月を終えました(10年金利は1.58%と、7月の1.45%から上昇しましたが、2015年末の2.27%から低下を続けています)。
その他のニュースとしては、ヘルスケア関連企業の間で医療保険制度改革法(ACA)に基づく保険販売からの撤退が続きました。またエネルギー情報局(EIA)は生産活動を「大幅に」押し上げるには原油価格は60ドルの水準が必要と述べました。自動車会社のFordは2021年までに完全自動運転車を実用化し、ライドシェア(相乗り)や配送サービス向けに提供する計画を明らかにしました。
しかし9月が近づき、レイバーデイの祝日明けには皆が職場に戻ることから、市場が行動を開始するまで2週間もかからないとみられます。そうした状況下で、9月2日金曜日の雇用統計や9月7日のアップルの製品発表イベントは市場にとって、ある程度期待が高まる材料になるでしょう(その後は、米連邦公開市場委員会(FOMC)、決算期のずれる企業の業績発表、政治関連のイベントが控えています)。
各国中央銀行の動きを見ると、オーストラリア準備銀行が0.25%の利下げを行い、政策金利は過去最低の1.50%となりました。日銀は予想された通り、安倍内閣の約2,740億ドル(28兆1,000億円)の経済対策と足並みをそろえる姿勢を示し、ドル円レートは1ドル100円に近付きました。イングランド銀行は0.25%の利下げに踏み切り、政策金利は0.25%となりました。利下げを行うのは2009年以来で、0.25%という金利水準は322年に及ぶ同行の歴史の中でも最低です。2016年7月26~27日開催のFOMCの議事録には、経済リスクが均衡し、利上げができる状況になったとの見方が示されていましたが、インフレや企業の設備投資の不足などに関する懸念は残っているようでした。メンバーの多くが利上げを行っても問題はないとの感触を持つ一方で、より多くのデータと幅広い合意が必要であるとの考えを示していました。利上げ時期については、市場は依然として、9月には実施されず、12月の確率も50%未満とみています。議事録の公表を受け、相場は上昇しました。ジャクソンホールでのイエレン議長の講演は、発表される経済データ次第というFOMCの結論を踏まえ、状況には改善がみられるが、そうでない部分もある、という両方の観点から語られました。それに対し、ニュースがないのはやや良いニュース(特に、たとえゆっくりでも、状況の改善が続いている限り)というのが市場の結論でしょう。
経済関連では、Markitが発表する英国の建設業の購買担当者景況指数(PMI)は、6月に46.0に落ち込んだ後、7月にはさらに45.9まで低下しました。これは、2009年以来最も低い水準です。英国の2016年第2四半期のインフレ率は、第1四半期の0.5%を上回る0.6%の上昇となりました。また、4-6月期の失業率は、予想通り前回(EU離脱を決めた国民投票前の3-5月期)と同じ4.9%でした。英国の7月の小売売上高は1.4%増でした。英ポンドの下落が一役買い、売上高の増加が英国株と英ポンドの上昇に寄与しました。ドイツの6月の製造業受注指数は前年同月比で3.1%の低下となり、マイナス1.4%だった予想をさらに下回る結果となりました。ドイツの第2四半期国内総生産(GDP)は貿易の伸びが寄与して前期比0.4%増となりました。また、8月のIFO企業景況感指数は106.2と予想の108.5に届かず、7月の108.3を下回る結果となりました。中国の7月の貿易統計は、輸出が前年同月比4.4%減、輸入は12.5%減、貿易収支は523億ドルの黒字でした。中国の7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.8%の上昇(政府目標は3.0%)となりました。中国の7月の住宅価格指数は、刺激策の効果で前年同月比7.9%上昇しました。日本の第2四半期GDP成長率は前期比年率0.2%となり、2.0%だった第1四半期から大幅に減速しました。日本の7月の輸出は前年同月比で14%減となり、10カ月連続の減少を記録しました。また、輸入は24.7%の落ち込みを示しています。
米国経済関連では、6月の貿易統計で貿易収支が445億ドルの赤字となり、赤字額が430億ドルの予想を上回りました。また、輸入は前月比1.9%増、輸出は0.3%増となりました。7月の輸入物価は、前月比0.1%上昇(予想は0.4%低下)、前年同月比では3.7%低下しました。輸出物価は前月比0.2%上昇、前年同月比では3.0%低下でした。7月の製造業PMIは52.9で、6月の51.3から上昇しました。7月のサプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は、前月横ばいの53.2が予想されていましたが、52.6に低下しました。第2四半期のGDP速報値が予想に届かなかったことによる懸念から、同指数への注目度が高まっていました。7月のISM非製造業景況指数は55.5となり、6月の56.5と予想の56.0をともに下回る結果となりました。7月のサービス業PMIは前月横ばいの51.4でした。6月の建設支出は、前月比0.6%増の予想に対し、0.6%減となりました。また、前月比0.8%減だった5月の数値が0.1%減に上方修正されました。6月の製造業受注は前月比1.5%減少し(予想は1.8%の減少)し、前月比1.0%減だった5月の数値が1.2%減に下方修正されました。第2四半期の非農業部門の労働生産性は、前期比0.5%の上昇が予想されていましたが、0.5%の低下となりました。単位労働コストは、予想(1.8%上昇)を上回る2.0%の上昇となりましたが、当初4.5%の大幅な上昇とされた第1四半期の数値は0.2%の低下に下方修正されました。6月の卸売売上高は、前月比横ばいの予想に対し0.3%増でした。前月比で横ばいだった5月の数値は0.2%増に上方修正されました。6月のJOLTS(求人労働移動調査)求人件数は予想を上回り、550万件だった5月と同水準との予想に対し、662万4,000件でした。7月の生産者物価指数(PPI)は、前月比0.1%上昇の予想に対し0.4%の低下、前年同月比では0.2%の低下となりました。7月のCPIは前月比横ばいで、予想と一致しました。前年同月比では0.8%の上昇となりましたが、予想には届かず、FRBの期待に沿う水準ではありませんでした。食品とエネルギーを除くコア指数は0.2%上昇の予想に対し0.1%の上昇で、前年同月比では2.2%の上昇となりました。前月比0.4%増が予想された小売売上高は横ばいにとどまり、自動車とガソリンを除く小売売上高は前月比0.1%減となりました。鉱工業生産指数は予想を上回り、前月比0.3%上昇の予想に対し、0.7%の上昇でした。一方、0.6%上昇だった6月の数値は0.4%低下に下方修正されました。設備稼働率は、6月の75.4%から75.9%に予想以上の上昇を示しました。7月の景気先行指数は、6月(0.3%の上昇)を下回る0.2%の上昇が見込まれていましたが、前月比0.4%上昇しました。7月の耐久財受注は前月比4.4%増となりました。予想は3.7%増でした。また、前年同月比では依然マイナスで、3.3%減となっています。米国の第2四半期GDP成長率の改定値は、先月発表された速報値の1.2%から1.1%へ下方修正となり、予想と一致しました。確報値は9月29日に発表される予定です。7月の貿易統計は、輸出が2.4%増、輸入は1.3%減となり、貿易収支は593億ドルの赤字となりました(貿易赤字の事前予想は632億ドル)。7月の卸売売上高は横ばいで、第2四半期の企業利益は前年同期比で2.2%減少しました。7月の個人所得は事前予想通りの前月比0.4%増となり、当初0.2%増と発表された6月の数値が0.3%増に上方修正されました。個人消費は前月比0.3%増で、予想と一致しました。7月の個人消費支出(PCE)価格指数は事前予想通りの前月比横ばいで、前年同期比では0.8%上昇となりました。また、食品とエネルギーを除くコアのPCE価格指数は前月比で0.1%上昇し、前年同期比では1.6%の上昇となりました。8月の消費者信頼感指数は、97.3の予想を大きく上回る101.1でした。
住宅関連では、米連邦住宅金融局(FHFA)発表の6月の住宅価格指数は、前月比0.3%上昇の予想に対し、0.2%の上昇となりました。これは、5月と同じ水準です。また、前年同月比では5.6%の上昇となりました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で5.1%上昇しました。予想をやや下回ったものの、依然として堅調な上昇を示しています。7月の住宅着工件数は年率換算で121万戸と、前月比2.1%の増加となりました。市場予想は118万戸、6月は119万戸でした。一方で、住宅着工許可件数は年率換算115万戸と、前月比0.1%の減少となりました。7月の新築住宅販売件数は12.4%増と予想を上回る伸びを見せ、年率換算65万4,000戸となりました。これは、58万戸が見込まれた2007年10月以来、最も高い水準です。6月は58万2,000戸でした。7月の中古住宅販売件数は、年率換算552万戸の予想に対し539万戸で、前年同月比1.6%の減少となりました。6月は557万戸でした。7月の中古住宅販売仮契約指数は、市場予想の0.6%を上回る1.3%の上昇となりましたが、前月比0.2%上昇だった6月の数値が0.8%低下に下方修正されました。
雇用面では、7月の雇用統計では、非農業部門就業者数がは事前予想の18万5,000人を上回る前月比25万5,000人増と先月に続いて力強い増加となりました。6月は事前予想を大幅に上回る28万7,000人増(後に29万2,000人増に改定)、5月は予想を大きく下回る3万8,000人増でした。失業率は4.8%に低下すると予想されていましたが、前月比変わらずの4.9%となりました。平均週間労働時間は市場予想が前月比横ばいの34.4時間であったのに対し、34.5時間に増加しました。時間当たり平均賃金は事前予想通り0.3%増加して25.69ドル(25.61ドルから上昇)となりました。労働参加率は前月の62.7%から62.8%に上昇しました。6月のJOLTSの求人数は、事前予想が5月の550万人から横ばいであったのに対し、562万4,000人となりました。ADP社の雇用統計によると、8月の民間部門の雇用者数は17万7,000人増と事前予想の17万5,000人を若干上回りました。また、7月分も速報値の17万9,000人増から19万4,000人増に上方修正されました。別の角度から雇用を見ると、太陽光パネルメーカーのSunPower(SPWR、8月は28.2%安)が、「厳しい」競争環境に対応するために全従業員の15%(1,200人)を削減することを明らかにしました。百貨店大手のMacy’s(M、同16.7%高)は、100店舗を閉鎖(全店舗の約15%に相当)し、従業員のレイオフも実施するとしています。ネットワーク機器メーカーのCisco Systems(CSCO、同1.1%安)は、全従業員の7%に相当する5,500人をレイオフすると公表しました。太陽光発電サービスのSolarCity(SCTY、同22.6%安)は、コスト削減計画の一環としてレイオフを計画していることを明らかにしました。
M&A関連では、中国のライドシェアリング・サービス会社Didi Chuxingが、2年間に及ぶ激しい競争を経て、ウーバー社の中国事業を買収すると発表しました。ソフトウェア大手のMicrosoft(MSFT、同1.4%高)は、ビジネス向け交流サイトLinkedInの買収資金調達のために、期間10年(利率2.4%)の200億ドルの起債を実施しましたが、旺盛な需要に迎えられました。先月Yahoo(YHOO、同11.2%高)のネット事業を買収すると発表した通信サービス大手のVerizon(VZ、同5.6%安)は、GPSを利用した車両トラッキングサービスを手掛けるFleetmatics(FLTX、同39.6%高)を24億ドルで買収することを明らかにしました。電気自動車メーカーのTesla Motors(TSLA、同9.7%安)は予想通りSolarCity(SCTY、同22.6%安)の買収計画を発表しましたが、買収額は事前予想を下回っています。Tesla社のElon Musk最高経営責任者は両社の筆頭株主です。マットレス製造販売を手掛けるMattress Firm Holdings(MFRM)の株価は8月に114%上昇しました。南アフリカの小売業者Steinhold International NVが24億ドルで同社を買収することを明らかにしたからです。噂されていた通り、ディスカウントストア大手のWal-Mart(WMT、同2.1%安)は、Amazon(AMZN、同1.4%高)への対抗手段としてオンライン小売サイトJet.comを33億ドルで買収すると発表しました。金融サービス大手のTIAAは、EverBank(EVER、同6.8%高)を25億ドルで買収することを明らかにしました。エンターテイメント大手のWalt Disney(DIS、同1.6%高)は野球中継をストリーミング配信するBAMTechの株式を取得するために10億ドルを投じたことを明らかにしました。不動産投資信託のMid-America Apartment(MAA、同11.3%安)は、同業のPost Properties(PPS、同4.2%高)を40億ドルの株式交換で買収することを公表しました。ドイツの産業ガス大手のLinde AG(LNEGY、同19.2%高)と米国のPraxair(PX、同4.7%高)が事業統合に向けて協議しているとの報道がありました。両社を合わせた時価総額は600億ドルになります。ヘルスケア製品と特殊化学製品を手掛けるPfizer(PFE、同5.7%安)は前立腺がん治療薬を製造するMedivation(MDVN、同25.9%高)を現金140億ドルで買収すると発表しました。Pfizerも、AstraZeneca’s(AZN、同3.9%安)の小分子抗生物質事業を推定15.7億ドルで買収することになっています。一方、合意しなかったM&A案件としては、スナック菓子の製造を手掛ける食品大手Mondelez International(MDLZ、同2.4%高)は、チョコレート製造のHershey(HSY、同9.8%安)が買収提案を拒否したため、その計画を断念しました(Hershey社はHershey Trustが支配株主となっています)。
個別銘柄のニュースとしては、銀行のHSBC(HSBC、同13.6%高)は40%の減益となりましたが、予想に反して25億ドル規模の自社株買い戻しプログラムを発表しました。鉱業大手のRio Tinto(RIO、同8.1%安)は上半期利益が過去12年で最低となりましたが、予想を上回りました。配当も予想を上回りましたが、58%の減配となっています。ヘルスケアのAetna(AET、同1.7%高)は、新たに導入された医療保険制度改革法(オバマケア)に基づく同社の保険事業が赤字になるとの見方を明らかにしました。EUの独占禁止当局はiPhoneを販売するApple(AAPL、同1.8%高)に対し、145億ドルの追徴税をアイルランドに支払うよう命じましたが、アイルランドとAppleはいずれも控訴する意向を示しています。同社は9月7日にイベントを予定しており、そこで新型iPhoneが発表されるとみられています。
その他のニュースとしては、自動車メーカーのFord(F、同0.5%安)は、ライドシェアリングや宅配サービスといった商業用途に対応した完全自動運転車を2021年までに実現するとの計画を発表しました。中国は上海市場と香港市場に上場する銘柄の相互株式取引を年内に開始する計画を明らかにしました。14カ国が加盟する石油輸出国機構(OPEC)は、9月26~28日にアルジェリアで開催される国際エネルギーフォーラムに合わせて、非公式会合を開くことを明らかにしました。これを受け、会合で生産量の引き下げが決定されるとの憶測が広がり、石油関連銘柄の株価が上昇しました。4月の前回会合では、生産上限の設定に至りませんでした。EIAは、2017年の石油需要の増加見通しを従来の日量130万バレルから同120万バレルに引き下げ、国内の石油企業の生産活動が「大幅に」活発化するためには原油価格が60ドルとなる必要があるとの見方を明らかにしました。
利回り、金利、コモディティは引き続き活発な動きを見せました。米国10年国債の利回りは7月末の1.46%から上昇(価格は下落)して1.58%で8月の取引を終えました(2015年末は2.27%、2014年末は2.17%)。30年国債の利回りは2.23%と、7月末の2.18%から上昇しました(同3.02%、同2.75%)。通貨は活発な動きを見せ、ユーロは7月末の1ユーロ=1.1176ドルから1.1159ドルに下落して8月を終えました(2015年末は1.0861ドル)。英ポンドは7月末の1ポンド=1.3229ドルから8月末は1.3143ドルに下落しました(同1.4776ドル)。円はドルに対して7月末の102.07円から下落して103.31円で月を終えました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して7月末の6.6550元から8月末は6.6791元に下落しました(同6.4931元)。金価格は7月末の1,358.20ドルから1,312.00ドルに下落して月を終えました(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は大きく変動して一時は50ドルに迫りましたが、その後は値を下げ、最終的には7月末の1バレル41.48ドルから44.82ドルに上昇して8月を終えました(同37.04ドル、同53.27ドル)。ガソリン価格は引き続き下落し、7月末の1ガロン2.329ドルから8月末は2.2.37ドルに下落しました(同2.034ドル、同2.299ドル)。8月のVIX恐怖指数は7月末の11.97から13.42に上昇して月を終えました(2015年末は18.21)。
S&P500指数は、今年は通常の8月よりも薄商いとなり、過去10年間の8月の平均値と比べて出来高は18%減となりました。それでも、同指数は月内に終値ベースでの過去最高値を3回(日中ベースではそれ以上)更新しました。ボラティリティは低く、月間を通じて1%以上変動(上昇と下落のいずれも)した日は1度もありませんでした。個別銘柄でのイベントやニュースはありましたが、市場全体としては参加するよりも様子見の姿勢を取っていたようです。
S&P500指数は8月に0.12%下落し、5カ月続いた上昇(累計で12.49%上昇)がついに途切れました(配当込みのトータルリターンはプラス0.14%)。下落と言ってもわずかな調整にすぎず、2月11日の安値(1,829.08)からは18.79%高の水準にあります。年初来では6.21%(配当込みのトータルリターンは7.82%)、年換算では9.443%(同11.92%)上昇となっています。最終的に、7月末の2173.30ポイントから下落し、8月15日に付けた終値での最高値2,190.15ポイントを0.88%下回る2,170.95で8月を終えました。
8月は、10セクター中4セクターで月間騰落率がプラスとなり、7月の7セクターを下回りました。セクター、銘柄間でパフォーマンスには大きなばらつきがみられました。出来高が少なかったことも一因ですが、それ以上に、ニュースイベントに対する短期的反応に帰するところが大きかったように見受けられます。月間騰落率が最も高かったのは金融セクターの3.57%でした。足元のコンセンサス予想ではFOMCが12月に利上げを行うとみられており、金融セクターの上昇は利上げ(利益率に追い風となる)見通しに対する反応と思われます。これにより、同セクターの年初来リターンは2.66%の上昇とプラスに回復しました。7月に月間騰落率が7.81%でトップだった情報技術セクターは、決算発表が引き続き好調だったことを受けて8月も1.84%上昇し、年初来リターンは8.51%となりました。9月7日に予定されているAppleのイベントではiPhone7が発表される見通しで、情報技術セクターのカタリストになると予想されます。配当利回り株は月間騰落率が最下位となりました。公益事業セクターは8月に6.14%下落しましたが、年初来では12.95%のリターンを維持しています。同セクターにとっては利上げも悪材料です。電気通信サービスセクターは8月に5.73%下落しましたが、年初来リターンは14.88%と最も好調なパフォーマンスとなっています。エネルギーセクターは0.64%上昇しました。原油価格は40ドル台のボックス圏から上昇して50ドルの大台も期待されましたが、月後半に再び値を崩しました。セクターの年初来リターンは6.21%ですが、2年前と比べると依然として29.38%安の水準にあります。消費者関連セクターは全般的に下落し、一般消費財セクターは1.42%、生活必需品セクターは0.67%下落しました。ただし、年初来ではそれぞれ2.84%と7.80%とプラスのリターンを維持しています。
8月は値上がり銘柄より値下がり銘柄の方が多く、S&P500指数構成企業のうち、値上がりは243銘柄(平均上昇率は4.82%)と7月の366銘柄から減少し、一方で値下がり銘柄は262銘柄(平均下落率は4.46%)と7月の138銘柄から増加しました。10%以上上昇した銘柄が31銘柄だった一方(平均上昇率は13.64%、7月は79銘柄)、19銘柄が10%以上下落しました(平均下落率は14.64%、7月は5銘柄)。また、1銘柄が25%以上の上昇を記録した一方(7月は5銘柄)、25%以上下落した銘柄はありませんでした(6月と7月もゼロ)。8月は値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が逆転しましたが、年初来では値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数の差はさらに広がり、値上りした銘柄は355銘柄に増加し(6月は311銘柄、7月は338銘柄)、242銘柄が10%以上上昇している一方(7月は245銘柄)、値下がりした銘柄は7月の165銘柄から148銘柄に減少し、うち64銘柄が10%以上下落しています(7月の76銘柄から減少)。
8月の市場は薄商いでしたが、9月に入れば夏休みも終わり、仕事復帰モードから市場にも活気が戻ると予想されます。手始めに9月2日の雇用統計と9月7日のAppleのイベントがあり、さらに第3四半期の決算シーズンを前にした業績予想や決算期のずれる企業の業績発表も予定されています。9月は20~21日のFOMCに注目が集まるとみられますが、市場では利上げの可能性は低いとみています。政局もヒートアップし、大統領選と連邦議会選挙をめぐる喧騒は市場にとって逆風となる恐れもあります。
S&Pダウ・ジョーンズは、9月2日の取引終了後に、精密医療機器を手掛けるMettler-Toledo International(MTD)をS&P500指数に組み入れ、Tyco International(TYC)に買収されたJohnson Controls(JCI)を同指数から除外することを発表しました。さらに、9月7日の取引終了後に、ケーブルテレビのCharter Communications(CHTR)を同指数に組み入れる一方で、非公開企業のDELLに買収されるEMC(EMC)を同指数から除外することも発表しています。
投資家が押さえておくべきポイント
8月の重要なポイントは以下の通りです。
==> 2016年第2四半期決算はまずまずの内容となり、高いバリュエーションを支えるとともに、売上高で一定の前進が見られ、市場の最高値更新を後押ししました。しかし・・・
o PERは引き続き高水準にあり、2016年第3四半期はさらなる増益が求められます。
* 小売会社の決算は強弱まちまちで、新学期シーズンを迎え懸念が浮上しています。
o エネルギーセクターの決算は6四半期連続で赤字となっています。中には不良資産の処分により対応し、低迷の流れに逆らう企業もありました。
* エネルギーセクターは原油価格の下落傾向にもかかわらず、2016年第3四半期は黒字への転換が予想されています(これこそ予想が予想と呼ばれる所以です)。
==> 経済指標は引き続き概ね明るい内容となりました。住宅関連指標で好調が続き、力強い内容となった新築住宅販売件数が市場に相対的に大きな影響を与えました。
o 雇用統計の非農業部門就業者数は5月の低調な数字(3万8,000人増)の後、2カ月連続で力強い内容となりました(6月が29万2,000人増、7月が25万5,000人増)。
* FRBにとって、8月の雇用統計が(2016年9月2日発表)が極めて重要です。
==> FRBは二面的な発言を続けました。
o 利上げの論拠が「ここ数カ月で強まった」が、「我々の判断は常に、今後入手されるデータが引き続き(FRBの)見通しをどの程度裏付けるかにかかっている」。
o ジャクソンホールでの経済シンポジウムは8月の出来高同様、盛り上がりに欠けました(金利は若干上昇しましたが)。
o FRBが利上げを決定するにはメンバーの圧倒的多数の支持が必要でしょうか、それとも、コンセンサスで十分なのでしょうか?
==> 8月は他の中央銀行も政策対応しました。
o イングランド銀行は2009年以来となる利下げを行い、政策金利を0.25%引下げ、同中銀の322年の歴史の中で最低となる0.25%としました。
==> 英国のEU離脱はあまり話題になりませんでした。
o 2016年11月8日のイベント(米大統領選挙)も、翌日には忘れてしまうというのはどうでしょうか?
==> 7月に1バレル40ドルを試す水準に下落していた原油価格は、大きく上昇して50ドルを狙う展開となり、前月よりも50ドルに近い水準(44.72ドル)で8月の取引を終えました。
==> 「昔々、はるか彼方の銀河で(実際には今年6月)」、VIX恐怖指数は26を上回る水準でした。
o 8月には7月の11.87から13.72まで上昇したものの、今後(VIX恐怖指数で見た)ボラティリティはそれほど見込まれません。
==> 強気派が前進し続けましたが、8月半ばにはほぼ全員がビーチに向かったようです。
==> 1日に1%変動した日が2016年7月8日(1.53%)以降ないものの、7月8日以降に108銘柄が10%上昇し、20銘柄が10%以上下落しています。
o 銘柄選択が見物となる局面です。
==> S&P500指数は8月に0.12%下落し(配当込みのトータルリターンは0.14%)、過去3カ月では3.53%上昇(同4.10%)、年初来では6.21%上昇(同7.82%)、過去1年間では10.08%上昇(同12.55%)となり、終値での最高値である2,195.15(2016年8月15日に記録)から0.96%低い2170.95で8月を終えました。
o 8月にS&P500指数は3度にわたり過去最高値を更新しました(8月5日の2182.87、8月11日の2185.79、8月15日の2,190.15)。また、8月15日には取引時間中の最高値となる2,193.81を付けています。
==> 2016年9月16日の取引終了後に、S&P500指数の28の不動産銘柄が金融セクターから分離され、新たに不動産セクターとなり、世界産業分類基準(GICS)の11番目のセクターがスタートします。
o 2016年9月16日はクアドルプル・ウィッチングデーにあたる上、S&Pによる四半期毎のリバランスと1年毎の浮動株数の変更も行われるため、面白い一日となりそうです。
==> 昨年と比べてM&Aは減少していますが、昨年は記録的な年でしたが、今年も好調であることに変わりはありません。
o 一方、新規株式公開(IPO)は低調な状態が続いていますが、今後の公開予定は増加しつつあります(企業が指摘しているように、市場環境に左右されます)。
==> その他の注目材料は以下の通りです。
o ヘルスケア企業の間で医療制度改革法(ACA)に基づく保険事業からの撤退が続いています。
o OPECが9月26~28日にアルジェリアで会合を開く予定ですが、トレーダーの間では4月の会合の「第二幕」とならないことが期待されています。
o EIAは2017年の石油需要の増加見通しを日量120万バレルに下方修正し(従来は130万バレル)、生産活動の「大幅な」活発化には原油価格が60ドルになる必要があるとの見方を示しました。
Fordが2021年までに完全自動運転車を実用化する計画を発表しました。配車サービスや宅配サービス向けに供給する予定です。
8月のフューチャー・ショック:
過去の実績を見ると、9月は44.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.43%、下落した月の平均下落率は4.71%で、全体の平均騰落率はマイナス1.05%となっています。
FOMCの会合:
9月20-21日※、11月1-2日、12月13-14日※(米国大統領選の投票日は11月8日)、2017年1月31日-2月1日、3月14-15日※、5月2-3日、6月13-14日※、7月25-26日、9月19-20日※、10月31日-11月1日、12月12-13日※、2018年1月30-31日。
※議長の記者会見が通常、米東部時間午後2時30分に行われます。また、四半期毎の経済見通しの改定が2時に発表されます。
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
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