S&P 500®月例レポート
S&P 500®
さあイエレン議長かかってこい、受けて立とう
「さあ、かかってこい」。低金利に依存する時代がもうすぐ終了するという事実を受け入れたウォール街は、「配慮はしない」というイエレン議長率いる米連邦準備制度理事会(FRB)に対して最終的にこう答えました。そして利上げがいつになるにせよ(6月に実施され、9月と更に12月に追加利上げを行うのか、あるいは7月/9月に実施されて更に12月に追加利上げがあるのか)、市場は楽観的で、株価は上昇しました。ウォール街の心理が新たに、必ずしも改善していないものの、「かかってこい」という方向に転じたことで、近いうちに市場に古き良き日々が戻ってくるとの見方が浮上しました。具体的には、S&P500が史上最高値を更新し、原油価格が1バレル50ドルを超えるという期待感です。しかしS&P500は一時的に超えた2,100を終値ベースでは超えられず、最高値を1.59%下回って月を終えました(最高値の更新がない状態が1年続きました)。原油価格も50ドルを短期的に突破したものの、最終的に48.95ドルで月の取引を終えました。新たな期待感の背景には、ブロード街とウォール街(実際のところニューヨーク全体)にもようやくさわやかな季節が訪れ、夏、つまり夏季休暇の予定を立てる時期が到来したことがあったのかもしれません(薄商いとともに ―― 誰か「5月に売って相場から離れていなさい(sell in May and go away)」と言ったのでしょうか?)。あるいは、好調な住宅関連指標が示すように、低金利への依存から徐々に脱却する時期が来たことを受け入れる(そしてその間の取引を乗り切る)だけの力強さを経済が取り戻したとの見方があったのかもしれません。現時点では、2016年6月15日午後2時(東部夏時間)の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明(および予想)発表、あるいは午後2時半の記者会見に対する市場の反応を予想するのは、結果の如何にかかわらず、難しいでしょう。利上げの場合は、経済に対する信任投票と受け止められて無条件で上昇する可能性がありますが、利上げ見送りの場合、コメントの内容によって、上下いずれの方向にも動く可能性があります。ある程度まではその時点の市場のトーンに左右され、科学的な分析だけでは読み切れません。
市場にとってイベントの多い1ヵ月となった5月は重要な節目となる出来事が幾つかありましたが、「5月に売って相場から離れていなさい」という格言は当たりませんでした。原油価格は2016年2月11日の26.21ドルから回復した後も、2014年6月30日の105ドルを大幅に下回って推移していましたが(最高値は2008年7月3日の145.29ドル)、2015年11月以来初めて50ドルを付けました(ただし48.95ドルで月の取引を終了)。株式市場が最後に最高値を更新して1年が過ぎる中(最後は2015年5月21日の2,130.82)、S&P500は一時2,100を突破したものの、終値ベースでは届きませんでした(2,096.96)。しかし年を重ねた“ブル”はまた(いったい何度目の「また」でしょう?)勢いを盛り返そうとしているようで、S&P500は史上最高値を僅か
1.59%下回る水準で取引を終えました。5月26日にはダウ工業株30種平均が120周年を迎えました(1896年に算出開始)。開始当初から指数に採用されているのは今やGeneral Electric(GE)だけとなりました(株式分割を調整すると、GE株1株は現在4,608株となり、当時100ドル投資していた場合、保有株だけで、現在38万8,000ドルになります)。金価格は一時1,300ドルを突破しましたが、金利上昇観測が高まり、1,219.30ドルで月を終えました。
Johnson & Johnson(JNJ)は5月に0.5%高で終わりましたが、私はこれに首を傾げています。同社製品「バンドエイド」は好調で活躍しているからです。米議会はプエルトリコに「バンドエイド(救済策)」を使用しました。総額700億ドルの債務を保有する投資家や金融機関の圧力を受けたものです。ユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)は返済期限を控えるギリシャに対する追加融資というバンドエイドを提供しました。G-7のバンドエイドは見掛けだけのものだったようです(実際に使っていません)。英国のEU離脱を巡って次々と議論や警告が出ています(6月23日実施。FOMCは6月14~15日開催)。米国の住宅市場は好調な模様で、最近の状況に比べると少なくとも改善しており、住宅着工件数は予想を18%上回りました(年率換算61万9,000件)。雇用関連統計は好調でしたが(雇用統計、求人労働移動調査(JOLTS)、新規失業保険申請件数)、レイオフは多くの理由によって続きました。化粧品メーカーのEstee Lauder(EL)は事業再編のため、900~1,200人の削減を発表しました。若者向け衣料品A?ropostaleは破産法の適用を申請し、米国とカナダで154店舗を閉鎖すると発表しました。サイバーセキュリティーソフト大手Symantec(SYMC)は従業員10%(1,200人)を削減することを明らかにしました。Microsoft(MSFT、スマートフォン部門)は1,850人を削減するとしており、Nokiaは労働組合の代表によると1万~1万5,000人を削減する模様です。石油大手Royal Dutch Shell Plc(RDS-A)は2,200人の追加レイオフを発表しました。これにより最近の同社の人員削減数は合計12,500人となります。
M&A関連では、数十億ドル規模の買収案件が続いていますが、頓挫したケースもありました。製紙大手のInternational Paper(IP、5月は2.6%安)は林業大手Weyerhaeuser(WY、同1.9%安)のパルプ部門を22億ドルで買収すると発表しました。Credit Suisseはディストレスト債資産をTPGに13億ドルで売却することを明らかにしました。ドイツのJAB Holdingsはドーナツチェーンを運営するKrispy Kreme(KKD、同22.8%高)を135億ドルで買収すると公表しました。JABは先ごろ、コーヒーメーカーのKeurig Green Mountainを買収したばかりで、さらにカフェ運営のPeet’s Coffee & Teaも傘下に持っています。医薬品・特殊化学品メーカーのPfizer(PFE、同6.1%高)はバイオ医薬品企業のAnacor(ANAC、同58.3%高)を52億ドルで買収すると発表しました。石油・ガスの開発を手掛けるRange Resources(RRC、同3.4%安)は同業のMemorial Resource Development(MRD、同20.8%高)を33億ドルで買収することを明らかにしました。ドイツの製薬会社Bayer AG(BAYRY、同15.6%安)は予想されていた通り、農業化学大手Monsanto(MON、同19.8%高)に対して現金620億ドルでの買収を提案しましたが、Monsantoは提示価格が低過ぎるとして提案を拒否しました。情報技術ソリューションを手掛けるHewlett Packard Enterprise(HPE、同10.5%高)は、技術サービス部門をスピンオフさせた上で同業のComputer Sciences(CSC、同48.6%高)と合併させる計画を明らかにしました。通信大手のAT&T(T、発表当日に0.7%高)は、インターネット大手Yahoo(YHOO、5月は3.7%高)のコア事業に対して買収額を提示し、同業でストライキが収束したばかりのVerizon(VZ、同0.1%安)との買収争いになるとみられています。
M&A関連のマイナス材料としては、油田サービス大手のHalliburton(HAL、同2.1%高)と同業のBaker Hughes(BHI、同4.1%安)の280億ドル規模の合併は、規制当局による反対を受けて白紙撤回となり、HalliburtonがBaker Hughesに対して違約金35億ドルを支払いました。事務用品小売り大手のStaples(SPLS、同13.7%安)とOffice Depot(ODP、同39.1%安)の60億ドル規模の合併計画は、競争上の理由から連邦裁判所によって差し止められました。窒素肥料などを手掛けるCF Industries(CF、同16.4%高)は米国政府によるタックス・インバージョンに対する規制強化を受け、オランダの同業OCI(OCINY)の一部(競合)事業の80億ドルでの買収を断念しました。
その他の注目ニュースとしては、ブラジルのルセフ大統領は弾劾裁判の開始を受けて、職務停止となりました。パリからカイロへ向かっていたエジプト航空機が地中海に墜落しましたが、原因はいまだに分かっていません。ベトナムを訪問した米国のオバマ大統領は、同国への武器の禁輸措置を解除する意向を表明しました。それとは別に、ベトナムの航空会社VietJetは、Boeing(BA、同6.4%安)航空機100機、総額113億ドルの購入契約を締結しました。フランスでは、ガソリンスタンドと石油精製会社の労働者が労働法改正に反対するストライキを実行し、国内の一部でガソリン不足が生じました。Apple(AAPL)株は、長期バリュー投資家のウォーレン・バフェット氏が買い、短期投資家のカール・アイカーン氏が売却し、5月は6.5%高、年初来では5.1%安となりました。5月のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社は組み入れ銘柄の入れ替えが4件と忙しく、Arthur J Gallagher & Co(AJG)、LKQ(LKQ)、Digital Realty Trust(DLT)、Acuity Brands(AYI)が追加され、Coca-Cola Enterprises(CCE)Airgas(ARG)Time Warner Cable(TWC)ADT(ADT)が除外されました。
S&P500は5月に1.53%上昇(配当を含めたトータルリターンは1.80%)して3カ月連続の上昇(4月は0.27%、3月は6.60%)となり、3カ月間のリターンは8.53%(トータルリターンは9.12%)と好調を維持しました。年初来のリターンは2.59%(同3.57%)となり、年率換算すると6.34%(同8.78%)です(2015年はマイナス0.73%とプラス1.38%)。5月の終値は2,096.96(4月は2,065.30)で、最終営業日の31日には一時2,100を上回りました。トレーダーが目標とする史上最高値(2015年5月21日の2,130.82)まであと1.59%です。今年は年明けから2月11日までに10.51%下落というスタートでしたが、2月の底値からこれまでに14.65%戻しており、5月の上昇で市場の回復基調が確実になりました。
4月と同様、10セクターのうち6セクターで月間騰落率がプラスとなりましたが、全セクターがプラスとなった3月には及びませんでした。Apple (AAPL)が14%値下がりした影響から4月の騰落率が全セクター中最低の5.47%の下落となった情報技術セクターは、5月は同社株が6.5%上昇したことを受けて反発に転じ、5.27%上昇して月間騰落率トップとなりました。Apple(AAPL)の株価は年初来では5.1%のマイナスにとどまっていますが、情報技術セクターは年初来のリターンをプラス圏に戻し、1.67%の上昇となっています。ヘルスケアセクターが月間騰落率で2位となりましたが、上昇率ははるかに及ばず1.99%にとどまり、年初来では依然として1.30%の下落と、全セクター中最低となっています。他にも金融セクターの年初来騰落率が0.74%のマイナスとなっていますが、FOMCが6月か7月に利上げに動くであろうとの金利先高観から5月は1.82%上昇しました。原油価格が一時的に1バレル50ドル(終値は48.95ドル)を上回ったものの、今月はエネルギーセクターが騰落率最下位となりました。同セクターの年初来騰落率は10.73%の上昇となっていますが、原油価格が105ドルで推移していた2014年6月以来の騰落率は31.76%のマイナスです。一般消費財はかろうじて騰落率がプラスとなり、5月の騰落率は0.0017%の上昇、年初来では1.25%の上昇となっています。
5月は値上がり銘柄の裾野が一段と力強い広がりをみせ、326銘柄が値上がりしました(平均上昇率は4.61%)。前月の値上がり銘柄数は269銘柄でした(とはいえ、462銘柄が上昇した3月には及びませんでした)。値下がり銘柄は177銘柄(平均下落率は5.03%)となり、前月の236銘柄から減少しました(3月の値下がり銘柄数は僅か40銘柄でした)。5月中に10%以上値上がりした銘柄数は、前月の50銘柄に対し30銘柄(平均上昇率は14.31%)となりました。一方、10%以上値下がりした銘柄は26銘柄(平均下落率は16.50%)となり、4月の31銘柄から減少しました。25%以上値上がりした銘柄は1銘柄(前月は9銘柄)、反対に25%以上下落した銘柄は3銘柄(前月は1銘柄)でした。年初来からの値上がり銘柄数は327銘柄に一段と増加し(年初から4月までの期間では315銘柄が値上がり)、10%以上値上がりした銘柄は171銘柄となっています(4月末時点では144銘柄)。一方で、年初来で値下がりした銘柄は177銘柄に減少し(4月は188銘柄)、そのうち10%以上下落した銘柄は79銘柄でした(4月の76銘柄から増加)。年初からの相場の動きで重要な点は、5月に入って楽観論や利上げを織り込む動きが(ようやく)市場に戻ってきたことを背景に、株価がプラス圏を回復したことで、多くの市場関係者が最高値更新に期待をつないでいます(5月末のS&P500は史上最高値を1.59%下回る水準)。
FRBは9月と12月の利上げの可能性に含みを持たせつつ、6月に追加利上げに踏み切る可能性があることも示唆し、市場関係者に注意を促しました。しかしながら、5月の金利の変化からは利上げを織り込むような動きを読み取ることは難しいようです。米国10国債利回りは4月末の1.83%から上昇して1.84%で取引を終えました(2015年末は2.27%、2014年末は2.17%)。30年債の利回りは4月末の2.68%から下落して2.65%で取引を終えました(同3.02%、同2.75%)。ドルは対ユーロで上昇し、1ユーロに対して4月末の1.1450ドルから5月末は1.1125ドルとなりました(2015年末は1.0861ドル)。ドルは対英ポンドでも上昇し、1英ポンドに対して4月末の1.4611ドルから1.4462ドルとなりました(同1.4776ドル)。円はドルに対して下落して、1ドルに対して4月末の106.51円から110.63円となりました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して4月末の6.4741元から6.5790元となりました(同6.4931元)。金価格は一時1,300ドル台を付けましたが、その後下落して1,219.60ドルで取引を終えました。4月末の終値は1,294.90ドルでした(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は乱高下し、一時1バレル50ドルを突破しましたが、最終的に4月末の同45.99ドルから上昇して同48.95ドル(同37.04ドル、同53.27ドル)、またガソリン価格は引き続き上昇して4月末の1ガロン2.162ドルに対して2.300ドルとなりそれぞれ取引を終えました(同2.034ドル、同2.299ドル)。5月のVIX恐怖指数は4月末の15.70に対して14.91となりました(2015年末は18.21)。
6月は重要日程が目白押しとなっています。まず6月14-15日にFOMC会合が開催され、15日の午後2時にFOMC声明と最新の四半期経済見通しが公表され、同日午後2時半からイエレン議長の記者会見が予定されています。その次のFOMC会合は7月26-27日に開催予定です。6月23日には英国でEU離脱(Brexit)の是非を問う国民投票が実施されます。政治関連では、米国でも6月7日にカリフォルニア州(とニュージャージー州)で開かれる予備選で民主党のクリントン/サンダース両氏の候補指名争いに決着がつく見通しです。クリントン氏が指名獲得に向けて必要な代議員数を確保できると思われるものの、サンダース氏は選挙戦継続を掲げています。共和党では、トランプ氏が指名獲得に必要な代議員数を獲得し勝利宣言を行いました。しかしながら、16名の大統領候補が乱立し激しい予備選を繰り広げた党内を一枚岩にするために、今後も努力を続けていくことになるでしょう。これまでの強硬な発言も党内での指名獲得には効果を発揮したものの、本選で通用するかどうかは難しいと思われます。共和党大会は7月18日からオハイオ州クリーブランドで、民主党大会は7月25日からフィラデルフィアで開かれる予定です。
投資家が押さえておくべきポイント
●「さあ、かかってこい」。低金利に依存する時代がもうすぐ終了するという事実を受け入れたウォール街は、「配慮はしない」というイエレン議長率いるFRBに対して最終的にこう答えました。そして利上げがいつになるにせよ(6月に実施され、9月と更に12月に追加利上げを行うのか、あるいは7月/9月に実施されて更に12月に追加利上げがあるのか)、市場は楽観的で、株価は上昇しました。-現実の幕開けがいつなのかは、いずれはっきりします。
●S&P500は5月に1.53%上昇し(配当を含めたトータルリターンはプラス1.80%)、3カ月間では8.53%の上昇(同プラス9.12%)、年初来では2.59%の上昇(同3.57%)、1年間では0.49%の下落(同プラス1.72%)となっています。
●市場では5月に重要な節目となる出来事が幾つかありましたが、「5月に売って相場から離れていなさい」と言う格言は当たりませんでした。
○原油価格は2016年2月11日の26.21ドルから回復した後も、2014年6月30日の105ドルを大幅に下回って推移していましたが(最高値は2008年7月3日の145.29ドル)、2015年11月以来初めて50ドルを付けました(ただし終値は48.95ドル)。
○株式市場が史上最高値(2015年5月21日の2,130.82)を更新して1年が過ぎました。しかし、最高値を僅かに1.59%下回る水準で5月の取引を終えており(2,096.96)、間もなく最高値を更新すると多くが予想しています。
●年を重ねた“ブル”はまた(いったい何度目の「また」でしょう?)勢いを盛り返そうとしているようです。
○5月26日にはダウ工業株30種平均が120周年を迎えました(1896年に算出開始)。開始当初から指数に採用されているのは今やGeneral Electric(GE)だけとなりました。
●株式分割を調整すると、GE株1株は現在4,608株となり、当時100ドル投資していた場合、保有株だけで、現在38万8,000ドルになります。
●当時ダウ工業株30種平均に100ドル投資していた場合、現在では4万4,000ドルになります。
○金価格は一時1,300ドルを突破しましたが、金利上昇観測が高まり、1,219.30ドルで月を終えました。
●Johnson & Johnsonは5月に0.5%高で終わりましたが、私はこれに首を傾げています。同社製品「バンドエイド」は好調で活躍しているからです。
○米議会はプエルトリコに「バンドエイド(救済策)」を使用しました。700億ドルの債務を保有する投資家や金融機関の圧力を受けたものです。
○ユーロ圏諸国とIMFは返済期限を控えたギリシャに対する追加融資を提供しました。
○G7の会合が開催され、無事閉幕しました ? これで話は終わりです。
●英国のEU離脱を巡って次々と議論や警告が出ています(6月23日実施。FOMCは6月14~15日開催)。クリントン氏、トランプ氏、サンダース氏も見解を示しており、大変なことになっています。
●米国の住宅市場は好調な模様で、最近の状況に比べると少なくとも改善しており、住宅着工件数は予想を18%上回りました(年率換算61万9,000件)。
●雇用関連統計は好調でしたが(雇用統計、求人労働移動調査(JOLTS)、新規失業保険申請件数)、レイオフは多くの理由によって続きました。化粧品メーカーのEstee Lauder(EL)は事業再編のため、900~1,200人の削減を発表しました。若者向け衣料品A?ropostaleは破産法の適用を申請し、米国とカナダで154店舗を閉鎖すると発表しました。サイバーセキュリティーソフト大手Symantec(SYMC)は従業員10%(1,200人)を削減することを明らかにしました。Microsoft(MSFT、スマートフォン部門)は1,850人を削減するとしており、Nokiaは労働組合の代表によると1万~1万5,000人を削減する模様です。石油大手Royal Dutch Shell Plc(RDS-A)は2,200人の追加レイオフを発表しました。これにより最近の同社の人員削減数は合計12,500人となります。
●数十億ドル規模のM&A案件が続いていますが、頓挫したケースもありました。製紙大手のInternational Paper(IP、5月は2.6%安)は林業大手Weyerhaeuser(WY、同1.9%安)のパルプ部門を22億ドルで買収すると発表しました。
●Credit Suisseはディストレスト債資産をTPGに13億ドルで売却することを明らかにしました。
●ドイツのJAB Holdingsはドーナツチェーンを運営するKrispy Kreme(KKD、同22.8%高)を135億ドルで買収すると公表しました。JABは先ごろ、コーヒーメーカーのKeurig Green Mountainを買収したばかりで、さらにカフェ運営のPeet’s Coffee & Teaも傘下に持っています。
●医薬品・特殊化学品メーカーのPfizer(PFE、同6.1%高)はバイオ医薬品企業のAnacor(ANAC、同58.3%高)を52億ドルで買収すると発表しました。
●石油・ガスの開発を手掛けるRange Resources(RRC、同3.4%安)は同業のMemorial Resource Development(MRD、同20.8%高)を33億ドルで買収することを明らかにしました。
●ドイツの製薬会社Bayer AG(BAYRY、同15.6%安)は予想されていた通り、農業化学大手Monsanto(MON、同19.8%高)に対して現金620億ドルでの買収を提案しましたが、Monsantoは提示価格が低過ぎるとして提案を拒否しました。
●情報技術ソリューションを手掛けるHewlett Packard Enterprise(HPE、同10.5%高)は、技術サービス部門をスピンオフさせた上で同業のComputer Sciences(CSC、同48.6%高)と合併させる計画を明らかにしました。
●通信大手のAT&T(T、1営業日で0.7%高)は、インターネット大手Yahoo(YHOO、5月は3.7%高)のコア事業に対して買収額を提示し、同業でストライキが収束したばかりのVerizon(VZ、同0.1%安)との買収争いになるとみられています。
M&A関連のマイナス材料
●油田サービス大手のHalliburton(HAL、同2.1%高)と同業のBaker Hughes(BHI、同4.1%安)の280億ドル規模の合併は、規制当局による反対を受けて白紙撤回となり、HalliburtonがBaker Hughesに対して違約金35億ドルを支払いました。
●事務用品小売り大手のStaples(SPLS、同13.7%安)とOffice Depot(ODP、同39.1%安)の60億ドル規模の合併計画は、競争上の理由から連邦裁判所によって差し止められました。
●窒素肥料などを手掛けるCF Industries(CF、同16.4%高)は米国政府によるタックス・インバージョンに対する規制強化を受け、オランダの同業OCI(OCINY)の一部(競合)事業の80億ドルでの買収を断念しました。
他の注目ニュース
●ブラジルでは弾劾手続きの開始を受けて、ルセフ大統領が職務停止となりました。
●パリからカイロへ向かっていたエジプト航空機が地中海に墜落しましたが、原因はいまだに分かっていません。
●ベトナムを訪問した米国のオバマ大統領は、同国への武器の禁輸措置を解除する意向を表明しました。それとは別に、ベトナムの航空会社VietJetはBoeing(BA、同6.4%安)と、航空機100機、総額113億ドルの購入契約を締結しました。
●フランスでは、ガソリンスタンドと石油精製会社の労働者が労働法改正に反対するストライキを実行し、国内の一部でガソリン不足が生じました。
●Apple(AAPL)株は、長期バリュー投資家のウォーレン・バフェット氏が買い、短期投資家のカール・アイカーン氏が売却し、5月は6.5%高、年初来では5.1%安となりました。
●5月のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社は組み入れ銘柄の入れ替えが4件と忙しく、Arthur J Gallagher & Co(AJG)、LKQ(LKQ)、Digital Realty Trust(DLT)、Acuity Brands(AYI)が追加され、Coca-Cola Enterprises(CCE)Airgas(ARG)Time Warner Cable(TWC)ADT(ADT)が除外されました。また、S&Pは6月2日の取引終了後にTransDigm Group(TDG)を追加し、Baxalta(BXLT)を除外すると発表しています。
6月のフューチャー・ショック:
過去の実績を見ると、6月は53.4%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.08%、下落した月の平均下落率は3.17%で、全体の平均騰落率はプラス0.70%となっています。
FOMCの会合:
6月14-15日※(英国のEU離脱を問う国民投票は6月23日)、7月26-27日、9月20-21日※、11月1-2日、(米国大統領選の投票日は11月8日)、12月13-14日※
※議長の記者会見が通常、米東部時間午後2時30分に行われます。また、四半期ごとの経済見通しの改定が2時に発表されます。
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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