日銀の階層構造方式マイナス金利政策では、銀行が現在、日銀に預けている当座預金からは年率0.1%の金利が得られるが、今後、増える分については0.1%の金利を支払わねばならない。銀行が預金などで得た現金は、日銀に当座預金として預けようが、現金として保有しようが、0.1%の金利が要求される。
これに対応して一部の地方銀行は個人向け預金金利の利息を引き下げ、メガバンクでは法人向け預金に手数料を取るところが出てきた。銀行にとっては、今後の預金増加分のコストは、日銀関連だけで0.1%かかるので、-0.1%を下回るマイナス金利や手数料で預からなければ損失となる。
階層構造方式マイナス金利政策を採るデンマーク(-0.65%)では、銀行の2015年のマイナス金利のよる損失は10億クローネ(約180億円)を超えるとされている。デンマークでは、一部の変動金利の住宅ローンが、銀行側の支払いとなり、借り手は元本から金利を差し引いた金額を返済している。
このことは今後、銀行は住宅ローンを出さないか、少々のマイナス金利では銀行側の支払いにならないような、広いスプレッドでしか貸し出さないことを意味する。これでは、住宅ローン利用者のメリットは一時的で、長い目では住宅ローン市場が機能しなくなる恐れがある。
日本では、年間80兆円の量的緩和に応じて国債を売却した銀行が、2015年の場合、手にした現金を日銀の当座預金に75兆円預けるので、実質5兆円の効果しか見えていない。それでマイナス金利を導入することで、銀行にポートフォリオリバランスを促し、リスクを取るように仕向けた状態だ。
銀行預金は貸出以上に伸びており、銀行の現金は増える一方だ。今後の増加分に0.1%のチャージがかかるならば、銀行は現金の流入を抑えるようにするか、当局の考えるようにリスクを取りに行くしかない。
現金の流入を抑えるには、まず量的緩和には応じずに国債保有を継続すること。預金金利を引き下げ、手数料を取ることで、銀行預金の魅力をなくすることが考えられる。
リスクテイクでは、信用リスクを承知で貸出しを増やすこと。値上がり期待だけでマイナス利回りの国債を買うこと。株式や外貨のリスクを取ることだが、円が余っているので、一般的な外貨調達・外貨運用ではなく、為替リスクを取らねばならない。つまり、政府・日銀は銀行のヘッジファンド化を促しているのだろうか?
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