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最新投稿日時:2014/06/16 10:47 - 「欲と恐怖」(みんかぶ株式コラム)

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欲と恐怖

著者:矢口 新
投稿:2014/06/16 10:47

相場の大敵は「欲と恐怖」だ。どちらも投資家から冷静な判断力を奪い、あり得ないほどの高値で買ったり、とんでもない安値で売ってしまったりするものだ。

実は「欲と恐怖」は、投資運用だけでなく、日常生活でもしばしば冷静な判断力を奪っている。

STAP細胞

「STAP細胞論文の研究不正を受け、外部有識者による理化学研究所の改革委員会は、STAP研究の舞台になった理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)を遅くとも年内までに解体するよう求めた。竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長、西川伸一顧問、相沢慎一顧問の4人の辞任も促した。

不正が起きた主因に『iPS細胞研究をしのぐ画期的な成果を獲得したいとの強い動機があった』をあげた。京都大学の山中伸弥教授が世界で初めてiPS細胞を作製して以降、再生医療を巡る予算の獲得競争は激しい。日本の再生医療を引っ張ってきたCDBは『組織ぐるみ』で未熟な研究者の成果に疑いの目を向けず、論文として世に送り出したとみている。」との報道があった。

小保方晴子氏の採用にあたっては、推薦人もなく、面接も大幅に略式な上、小保方氏の「機密保持」の主張を受け入れ、資料提供も肝心な部分はほとんどなされなかったようだ。つまり、小保方氏の「STAP細胞はあります。でも証拠は見せません」との発言を、科学的な裏付けもなく信じたということだ。

小保方氏の採用にあたっての特例は、理化学研究所が自らつくったルールを自ら破るものだ。理化学研究所ともあろうものがとは思うが、実は冷静時に十分な時間をかけて綿密につくりあげたルールを、魔が差したように突然自ら破る行為は、金融市場や我々の日常生活でも思いのほか頻繁に起きている。そういったことは、我々の一番弱いところ「欲と恐怖」を突かれた時に起きるのだ。

「STAP細胞はあります」という言葉を信じれば、もしかすればノーベル賞が取れるという「欲」。信じないでノーベル賞が他に行かれたなら、悔いても悔いきれないという「恐怖」とが、冷静な判断力を奪ったのかと思う。

テスラモーターズ、全ての特許を開放すると発表

米電気自動車メーカーのテスラモーターズは、同社が保有する全ての特許を開放すると発表した。目先の収益にこだわらず、幅広い外部の技術者、部品メーカーなどの協力を呼び込むことで、電気自動車の技術革新を促すことが狙いだ。科学者、技術者はこうありたいと思う。

科学者、技術者でなく、損益を常に重視すべき資金運用者である私ですら、同じ考えだ。私は自分が30年余りにわたって積み上げてきた知識や経験をすべて公開している。かって一緒にやっていた人の中には、ノウハウは隠して、自分たちの利益を最大にしたいという人もいたが、私にその考えはなかった。私が提唱しているタペストリー・プライスアクション理論やエスチャート、あるいは運用やリスク管理のノウハウは、私のオリジナルだと言えるが、自分一人でここまで成長できたわけではない。私を育てる時期に、勤めていた会社はどれだけの多くの資金を私に投資してくれただろうか。

それだけではない。売買を重ねるなかで私が感じた疑問に丁寧に答えてくれたのは、上司、先輩、同僚、自社のエコノミストたちはもとより、他社の調査部の方々や、機関投資家のファンドマネージャーやディーラーの方々だった。私は疑問点をそのままにできない性質だったので、それこそ誰にでも聞きまくった。自社を担当してくれていた日銀の方にすら聞いた。そんな縁で仲良くなり、その人の結婚披露宴にも招待され、上司の方も紹介された。私が知る限りの相場関係者で、知識やノウハウの出し惜しみをした人は数える人しかいない。そんな私がノウハウを独り占めにできるわけもない。

ノウハウを自分の中に囲い込んでいては、科学の進歩は達成できたとしても、大幅に遅くなる。STAP細胞の研究は並の科学研究ではない。再生医療だ。早く完成すれば、救える命が増える。その点を鑑みると、もっと謙虚でいて欲しかった。小保方氏もまた、科学の進歩に尽くすよりも、自分の成果という「欲」と、あるいは自分よりも優秀な人たちに成果を奪われるという「恐怖」とが、澄んだ目を曇らせたことと思う。

STAP細胞があるのなら、まだ遅くはない。小さな成果を自分の中に囲い込まないで、自分の知識、ノウハウを多くの人と共有し、世界の再生医療を一歩でも前に進めて欲しい。それが科学者、技術者のあり方かと思う。

以外に身近な「欲と恐怖」のワナ

投資詐欺、振り込め詐欺、結婚詐欺など、詐欺の多くはあなたの「欲と恐怖」を突いてくる。欲だけでは動かない、恐怖だけでは動かない人も、両方揃えば、動いてしまうものなのだ。詐欺師はあなたの欲を煽り、いいがかりも含めた恐怖心であなたを追い詰める。

投資運用は、常に「欲と恐怖」に直面している。見方が外れて損を出すのは恐いし、当たればもっとと欲がでる。小さな利益で後悔し、大きく張って大損する。そんなことの繰り返しだ。

相場で最も難しいのはタイミングを捉えることだが、タイミングが合っていても、儲けられないことがあるのは、「欲と恐怖」に負けるからだ。

私などは、「欲と恐怖」に30年以上も直面しているので、さすがに馴れてくる。対処の仕方は、欲張らない、恐がらないだが、そのためには知識や経験は大きな助けとなる。初心者の方へのアドバイスは、投資資金を分散して、1つの銘柄には小さく張ることだ。これだけで、「欲と恐怖」は大幅に軽減する。

みんなの外為:矢口新氏FXコラム
http://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/author/dealersweb/

配信元: みんかぶ株式コラム

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