2月の雇用統計から:雇用は改善が続き、賃金は上昇の見通しか
非農業部門雇用者数(NFP)は前月比+23.5万人と市場予想(+20.0万人)を上回り、
過去2ヶ月分は0.9万人分が上方修正されました。
結果、3ヶ月平均は+20.9万人、6ヶ月平均は+19.4万人となりました。
失業率は0.08%pt低下の4.70%と市場予想と一致。好景気時である2007年の水準まで改善しています。
さらによく見ると労働参加率が 62.86%から62.95%に上昇したことで、雇用が改善したことがわかります。
★そして最も注目される平均時給については前年比では市場予想と一致する+2.8%、前月比では+0.2%と市場予想の+0.3%を0.1pt下回りました。1月の雇用統計では前年比で0.4ptの伸び率鈍化だったことを思うと回復したと捉えてよいかと思います。
ちなみに、1月の鈍化は低所得者そうである黒人やU-6層の労働参加率が上昇していましたので、全体が押し下げられたと考えられます。
<1月の雇用統計では、白人の労働参加率が62.8%と前月比0.2pt低下した一方で、黒人の労働参加率は前月比0.6pt上昇し、62.4%に。失業率も7.8%から7.7%に低下。白人の労働人口は1億2467万5千人で前年比0.05%増と殆ど変化がありませんでしたが、その一方で黒人は1999万3千人と前月から0.8%増加するなど、黒人の雇用が拡大しています。
また長期で見ても、黒人の失業率は2009/9月15.7%、11/11月14.9%、12/11月12.7%、15/9月9.5%、そして17/1月には7.7%と半分程度にまで改善しています。
さらに、U-6と呼ばれる経済を理由に本意ではないがパートに就いている人数が前月比4.3%増加したことも反映されたと考えられます。>
★また、ここでイエレン議長が重視している指標の一つに「自発的離職率」があります。
一般的に人は「より高い給与を求めて」転職すると想定されるので、自発的離職が増えれば将来の賃金が上がると考えられます。これは平均時給に先行する指標として見ることができます。
JOLT統計による9月の自発的離職率は2.0%、12月は2.04%とリーマンショック前の高水準にV字回復しています。
過去を振り返ると、2008年11月から2010年の間には自発的離職者約300万から約150万人まで減り、解雇・退職は200万弱から250万強まで増加しました。ところが2010年10月を境に自発的離職者は増加に転じ、解雇・退職者数は150万超えでの推移が続いています。
この間何が起こったかと言いますと、2008年のリーマンショック、そしてその後の金融政策による経済の持ち直しです。サブプライムローンに起因する2008年のリーマンショックを受けたアメリカはいち早く手を打ちました。
当時のベン・バーナンキFRB議長はドルを刷りまくって、国債を買いまくり市中にドルを溢れさせました。つまり流動性が供給されたのです(量的金融緩和)。しかもバーナンキは国債の他にCP(コマーシャルペーパー)やMBS(住宅ローンを証券化したもの)といったリスク資産まで買うという質的な金融緩和も同時に行いました。
日本とは違ったこうした素早い流動性、つまりお金、の供給が功を奏して米国経済は回復に向かったのです。
市中にお金を溢れさせてからは、解雇が減って、自発的離職が増えています。自発的離職がより高い賃金を求めているという地合いとなっているのです。
15日に発表予定のコアCPIを確認する必要がありますが、1月の2.3%を参考にすると、実質賃金伸び率はプラス圏にあります。つまり物価の上昇以上に賃金が増えているということです!
★名目上ではなくて実質的に給料が増えているわけですから、人々はその分消費に回すことになるでしょう。アメリカは個人消費がGDPの7割を占める世界最大の消費大国ですから、賃金が増えると貯金よりも投資や消費に使いますから。15日には消費者物価指数のほか製造業景気指数や小売売上高が発表されます。ここでよい数字が発表されればより金利の上昇は確定的となります。
ちなみに1月の米小売売上高は前月比+0.4%、前年同月比では+5.6%、12月米小売売上高も前月比+0.6%から1.0%に上方修正されており、消費行動の強さが示されました。平均時給が伸び続けていることから企業の経済活動も活発です。
このようなことから分かるように、米国は景気拡大を迎えています。
このような中で減税やインフラ投資など、景気が悪いときに講じられそうなことが行われようとしているわけですから、景気後退を心配する必要はないかと思います。