~ 小野山功が見通す「来週の株価材料」 ~
東京の今週の日照時間はわずか6分。すっきりしない空模様のせいもあるのでしょうか、株式市場を覆うどんよりとした重苦しい空気は晴れぬままです。
日銀会合、FOMCというビックイベントを無事に通過したものの、日銀が打ち出した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」への解釈が分かれ、依然として相場の方向感は定まっていません。
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が発表された21日、(8306)三菱UFJフィナンシャル・グループの株価は上げ幅を7%超に広げました。
金融機関の収益面に配慮し、日銀はマイナス金利の深掘りを見送ったほか、金利が下がり過ぎるのを防ぐために、長期金利の誘導目標を新たに設けたことが好感されました。
ただ、買いが続いたのは当日のみ。祝日明けの23日には一時2.6%ほど値を落とし、過去1ヵ月の平均コストである25日移動平均線を下回る場面もありました。
中央銀行として異例の「長期金利の誘導目標」が導入されましたが、これは果たして実現可能な政策なのでしょうか?
■長期金利をめぐり「円買い」に傾く
長期金利を操作するのは、中央銀行とて容易なことではありません。日銀のHPには、「長期金利は誘導しないのですか?」という問いに対して、以下のような回答が掲載されています。
「長期金利の形成は、資金の需要量と供給量のバランスだけでなく、将来のインフレ率に対する市場参加者の予想や将来の不確実性等によって大きく左右されるため、オーバーナイト物金利のように資金量を調節して誘導することは容易ではない。」
さらに、皮肉なことに(更新されていないだけだと思いますが…)
「長期金利の形成は市場メカニズムに任せて、そこから市場参加者の予想等に関する情報を読み取れるようにすることが、とても重要なのです。」と自らの政策を否定するかのような一文が残されたままです。
そういった事情もあって、23日現在、10年物国債金利はマイナス0.048%とゼロを下回ったままです。
また、会合後の記者会見で黒田総裁が、年80兆円ペースで行っている長期国債買い入れについて「増減することはあり得る」と述べ、事実上の金融引き締めになるのではないかとの見方も浮上しています。
事実、外国為替市場では、22日に1ドル100円台と1ヵ月ぶりの円高・ドル安水準を付けています。米国は少なくとも11月までは追加利上げはない一方、日本は長期金利の上昇を容認するとして「円買い」トレードに傾いている面があります。
■マーケットの関心は“政治”へ
週明け26日からは秋の臨時国会がスタートします。今回の国会は、12月にロシアのプーチン大統領の訪日など外交日程が立て込むこともあり、会期は11月30日までの66日間と短期決戦になります。
今年度2次補正予算の成立後、TPP関連法案の審議が始まるとみられますが、11月8日に大統領選までの成立にこぎつけることが出来るのでしょうか。
また、東京都議会も28日から始まります。築地市場の豊洲への移転を巡って問題は山積する中、マーケットの関心は次第に“政治”へと移っていくことになるとみています。
小野山 功