英国のEU離脱が世界の金融市場に及ぼす影響は中長期的に続くと思われ
株式市場では今後2番底や3番底に注意が必要だと感じています。
そこで、参考までにリーマンショック時の2番底・3番底について検証してみます。
○リーマンショック当時の日経平均月足
リーマンが破綻したのは2008年9/15で、当月の日経平均はおよそ15%の下落に見舞われました。
しかし翌10月の月足を見ると、何とmax40%下落しており
これはリーマンが破綻する前に比べ、僅か4ヶ月で50%下げたことになります。
そこで当時の「投資家心理」を振り返ってみると
まず9月(-15%)の暴落で多くの投資家が「落ちて来るナイフ」を掴んでしまいました。
勿論「不安」はあったと思いますが、実質的に半月余りで15%も下落した訳ですから
幾ら何でも自律反発すると予想した投資家が多かったのでしょう。
ところが意に反して10月の大暴落。本震より余震の方が数倍大きかったということです。
ここで多くの個人投資家が退場を余儀なくされたと思います。 ➡ 1番底
次に当時の主な出来事とVIX指数の推移を振り返ってみます。
2008年9月15日 リーマン破綻 ➡ 31.7
同9月16日 AIG国有化 ➡ 30.3
同9月29日 米下院が金融安定化法案を否決 ➡ 46.72
この辺りで「投資家の恐怖」はピークに近いと誰もが感じたと思います。
ところが10月16日、前日ダウが733ドル下落したことで再び恐怖心が投資家を襲うことに。
10月16日 ダウ暴落ショック ➡ 81.17(当日の場中最高値)
10月24日 ダウ前週比886ドル下落、VIX指数は史上最高値を記録 89.53
11月20日 ダウ945ドル下落、VIX指数は終値ベースで史上最高値 80.86
その後株価は緩やかに上昇を始めましたが、翌2009年1月に再びダウが10%下落し
その影響を受け、日経平均も単月で1000円以上急落しました。 ➡ 2番底
ところが翌2月にさらなる下落が投資家を襲います。 ➡ 3番底
収束に向かうのではないかと考えられていた時期だけに暴落はやや意外でしたが
冷静に考えると、ここは買いのサインが点灯した時でもありました。
ヘッジファンドが最後の仕掛けに出たと感じたからです。
ところで「2番底は買い」という格言もありますが、株価の暴落原因が金融不安の場合
3番底の方がさらに深くなることがあります。
現に、リーマンショック後の株価(終値ベース)は3番底が最も深くなりました。
一方、英国のEU離脱が世界の金融市場にリーマンショック級の影響を与えることは無いにしても
今回の離脱を機に、EU崩壊の懸念が新たな地雷となり
ヘッジファンドに都合の良い材料が増えることは間違いないと思います。
またキャメロン首相は投票前に、離脱となれば直ぐに「離脱通告」を行うとしていますが
離脱派は「離脱通告は急がない」意向の様で、英国内はこれから政治的な混乱が始まりそうです。
こうした状況から、世界の金融市場にとって最大の懸念は
離脱決定後のスケジュールが纏まらず、世界的な金融市場の混乱が長期化することでしょう。
さて、昨日の日経平均株価の下落率(前日比−1286.33円:-7.92%)は
一日の下落率としては歴代9位という情けない記録になりましたが
これだけ市場が動揺すると、極めて高い確率で2番底や3番底が待ち受けていますので
短期リバ狙いも充分気を付けるべきだと思います。
しかし、逆に逃げ遅れた人は、ファンダが良好で成長性も期待出来る銘柄であれば
いっそ塩漬けを選択する方法もありだと考えています。
但し、新興銘柄に多い需給(思惑)先行で買われていた銘柄(特にPER3桁銘柄)や赤字銘柄は
真っ先に2番底・3番底の餌食になる可能性が高く
「今日の安値が明日の高値」になりかねないので注意が必要です。
何れにしても為替が安定し、株価のボラティリティが小さくなるまでは様子見に徹するか
もしくは買いにはヘッジを組み合わせることをお勧めします。
最後に、目先の日経平均予想ですが、上値はボリンジャーバンド-2σ(15310円付近)
下値はボリンジャーバンド-3σ(14770円付近)での動きが想定されます。
ただ、ヘッジファンドの介入が疑われることから
投資家心理の動揺に付け込んで、故意にボラティリティを高めることもあり
その場合はテクニカルだけで株価予想を行うのは困難でしょう。
その場合、下は心理的節目の14500円が意識されますが
金融不安による株価暴落時の一般的な下値水準は
日経平均の場合、経験的にPER12.0倍程度だと言われており
6/24(金)時点のEPS(1174.81円)で計算すると「1174.81×12.0=14098.57円」
つまり2番底は14100円まで突っ込む可能性があると考えられそうです。
何れにしても来週の金融市場がどの様に反応するかを見極めた上で
今後の予想と投資戦略を考えようと思います。