[フランクフルト 4日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)はここ数週間にわたって、欧州債務危機を抑制するためにユーロ圏首脳と銀行監督当局が取るべき措置について提案してきた。ECBが提案した対策とその実現の妨げとなるさまざまなハードルは以下のとおり。
<ユーロの明確なビジョン>
ECBのドラギ総裁は前週、欧州首脳に対し、ユーロ圏の将来をめぐる懐疑的な見方を払しょくするため、ユーロの長期的なビジョンを早急に明確にする必要があるとの考えを示した。事実上、欧州首脳に米国型の財政同盟への移行の意思を明示するよう求めた格好だ。
ドラギ総裁はすでに、欧州委員会のバローゾ委員長、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセンブルク首相)、ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領とともに計画策定に取り組んでおり、6月28─29日の次回首脳会議前に各国首脳に提示する予定。
<救済基金の拡充>
スペインやイタリアなど経済規模の大きな国への支援が必要となった場合に欧州安定メカニズム(ESM)が対応できないのではないかとの金融市場の懐疑的な見方を踏まえ、ECBはユーロ圏に対し、基金の拡充を促している。さまざまな財源を組み合わせESMの規模を1兆ユーロ(12億5000万ドル)程度にすることを要請。
また、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の失敗から学んで、市場での債券発行でESMの信頼を確保し、必要に応じて資金調達できるようにすることも求めている。当初の想定どおり、ESMを国際通貨基金(IMF)のような機関にすることが狙い。
ESMの大幅な拡充には、ドイツなど比較的健全な国の信用格付けを脅かすほどこれらの国の債務水準を引き上げることなく、どのように追加資金を集めるかという問題が伴う。また、一部の国では基金拡充には議会の承認が必要となる。
<銀行同盟>
銀行救済を集権的に行う、システム上重要な銀行のユーロ圏全体での監督、ユーロ圏内の銀行に対し最大10万ユーロの預金保証を実施――の3本柱。
預金保険や銀行救済は政治的な対応も必要。ドイツはこれらの案に反対している。フランスや欧州委員会からの支持は得られたが、放漫経営で問題を抱える他国の銀行救済に税金を投入するのは国民の理解を得にくい。
銀行監督は欧州銀行監督機構(EBA)の拡充で対応できるが、他の2項目が実際どのように機能するかは未知数。ECBはESMに銀行救済資金を担う意向で、新たな機関が問題銀行の対応と欧州銀行預金保険を担うことが必要になる可能性。
<反対事項>
ECBは汚れ役となる意向はなく、財務も健全に維持する方針。
ESMがECBから資金調達を行うことには、中銀が政府のファイナンスを行うことに近いとして反対している。域内の問題を抱える国に低金利の恩恵を享受させるため、一定の国債買い入れは可能だが、ドイツ並みの低い調達金利を得るために多額のスペイン国債を買い入れはインフレにつながるだけ、としている。
ユーロ圏共同債に反対する姿勢はもはやとっていないが、財政同盟のような形をとらない限り、導入できないとしている。
インフレ抑制以上の責務を負うことには強固に反対している。