<commodity>
ある商品カテゴリにおいて、競争商品間の差別化特性(機能、品質、ブランド力など)が失われ、主に価格あるいは量を判断基準に売買が行われるようになること。一般に商品価格の下落を招くことが多く、高価な商品が低価格化・普及品化することを“コモディティ化”という場合もある。
例えば製造業において、ある特別の技術を持つ1社だけが製造できる製品があったとする。やがて製造技術の普及、他社製品の機能向上、あるいは製品の規格化/標準化/モジュール化などによって、多くの会社で製造可能となると、機能や品質の面で差のない製品が市場に多数、投入されることになる。
こうなると顧客は価格(コスト)あるいは買いやすさ(店頭にあるかなど)以外に選択要因がなくなる。こうした状態のことをコモディティ化という。いい換えれば、「どの会社のものを買っても同じ」という状態のことである。
一般にコモディティ化が起こりやすいのは、機能や品質が向上してどの製品・サービスでも顧客要求を満たす(オーバーシュート)ようになり、さまざまな面で参入障壁が低く、さらに安定した売上が期待できる市場においてである。
このようなコモディティ化は絶えずいろいろな市場で見られ、ITなど各種ハイテク産業でも、技術の普遍化・汎用化が指摘されている。
コモディティ化が起こると、競争激化によって価格が下落し、企業収益が悪化する。これに対して企業はさまざまな努力を行うことが求められる。その1つが「ブランド化」である。ネーミングやパッケージングなどのマーケティング活動により差別化を図るもので、かつてコモディティであったコメに「ささにしき」「こしひかり」「秋田小町」などのブランド米が登場した例が挙げられる。
また、米ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン(Clayton M. Christensen )教授は、「大半の商品ではコモディティ化やモジュール化が起こると、これを契機としてバリューチェーンのどこかで『脱コモディティ化』のプロセスが生じる」と論じている。これは製品そのものの性能競争が終わると、「すぐに手に入る」「故障時の対応がよい」などデリバリやアフターサービスのプロセスで差別化が起こるようになるという指摘である。
本来、コモディティとは商品取引市場において売買されるような商品を指す。具体的には、小麦やトウモロコシなどの農産物、石油・石炭・金・銀などの鉱物資源、繊維・ゴムなどの原材料などをいう。
コモディティ(commodity)という単語は、com(一緒の)+mod(尺度)+ity(状態)からなり、「単一の尺度で測れる状態になったもの」と解釈できるが、一般に商品取引所では一定の標準品を対象として売買を行っている。標準品(マーカー)としては石油(原油)のWTI、北海ブレント、ドバイ原油が有名である。実際に受け渡しする現物が標準品でない場合は、標準品との差額を調整して決済する。
コンピュータ関係でも、DRAM先物がシンガポール取引所(SGX)に上場されている。また、半導体メモリをはじめ汎用電子部品は業者間取り引きでスポット市場が形成され、需給によって価格が決定している。また、ビジネスライター/エディターのニコラス・G・カー(Nicholas G. Carr)は、2003年に「IT Doesn't Matter」でITのコモディティ化を論じ、論争を巻き起こした。
<参考:IT情報マネジメント用語事典>