4. セグメント別成長戦略
USEN-NEXT HOLDINGS<9418>は、キャッシュカウ事業、安定成長事業、高成長事業に分類して事業ポートフォリオマネジメントを行っており、キャッシュカウ事業から高成長事業へ成長資金を還流するという従来からの方針に変わりない。なお、キャッシュカウ事業は店舗サービス事業を構成し祖業でもある音楽配信で、安定成長事業は業務用システム事業と通信事業(うち法人向けICT)、高成長事業はコンテンツ配信事業と店舗DX(店舗サービス事業のうちPOSレジやWiFi、IPカメラなど及び通信事業のうち業務店向け自社光回線)に分類され、新中期経営計画においてもコンテンツ配信事業と店舗DXが成長を牽引する計画となっている。そして各セグメントの2025年8月期営業利益は、コンテンツ配信事業が82億円~100億円、店舗サービス事業が105億円~110億円、通信事業が68億円、業務用システム事業が40億円~43億円、エネルギー事業が5億円~15億円を目指すことになる。各事業でベースケースとアップサイドケースに分けて考えているが、全社コストも、アップサイドケースではベースケースから上振れた収益を原資に、グループの成長力と環境適応力をより強化するため、人材開発教育やリスキリング研修、コーポレートブランディング、福利厚生の充実などに追加的に投入することを想定している。
(1) コンテンツ配信事業
動画配信市場は成長市場であり競争が激しいため、映像における圧倒的コンテンツ数などの競争優位性をさらに磨くとともに、映像や書籍、音楽、ライブを1つのアプリで楽しめるオールインワン・エンタテイメントを強化する方針である。映像以外のコンテンツを幅広く扱っている事業者は多くないことから、特に音楽配信サービスでのリレーションを生かした音楽ライブや音楽コンテンツの配信を本格化することで差別化を図る。また、NETFLIXやAmazonプライムビデオ、ディズニーチャンネルのような巨大資本によるPB作品に対抗して、「U-NEXT」でしか観られない作品を提供する「ONLY ON戦略」も一層強化する。ただし、同社が制作機能というリスクを持つわけではなく、定額制動画配信における世界各国の大手配信サービス会社との独占配信契約や、韓国の大手芸能事務所CUBEエンターテインメントとの業務提携によりONLYな作品を増やしていく計画である。また、漫画や小説などのオリジナル電子書籍を起点に、IP(Intellectual Property)開発を進め、人気が出たIPを映像化などによってマネタイズしていく。このようなIP開発は、映像開発と比較してターゲット層が幅広く低コストという利点がある。
これらにより、2025年8月期の課金ユーザー数は310万人~350万人(4年平均成長率7%~10%)、ランニング売上だけで723億円~767億円(4年平均成長率6%程度)を達成し、82億円~100億円の営業利益を狙う。ただし、同事業は同社の中で最もベースケースとアップサイドケースの差が大きくなっている。これは、ニューノーマルにおいて消費動向や成長市場の拡大ピッチが予想しづらくなったことが要因と思われる。ちなみに、ベースケースでは巣ごもり需要の反動で一時的に成長鈍化を想定しているが、アップサイドケースでは、デジタルエンターテイメントコンテンツの持続的な需要拡大、書籍や音楽などサービスの充実による顧客満足度の向上、それによる課金ユーザー数の一段の増加などが想定されている。足下の動向を考慮すると、アップサイドケースとなる可能性が高いだろうと弊社は見ている。
(2) 店舗サービス事業
高成長を見込む店舗DXを中心とした戦略となっている。まずWiFiなど通信環境構築やPOSレジといったスマートデバイスなどによって、店舗のフロントからバックオフィスまでの業務をトータルで支援していく方針である。また、販売~納品~保守をグループで一貫して対応することでアップセルも推進していく。店舗の開業・準備段階が最大の商材販売タイミングと見て、成約率も高い新規開業店への直販営業を強化する。1万社のパートナーネットワークを構築することで年間10万件に及ぶ新規開業情報を取得し、新規開業店に対する敏速な営業活動につなげる。開業済み店舗は、既存顧客も未開拓顧客も営業効率が相対的に低くなるため、代理店やテレマーケティングなど非直販チャネルを活用する。こうした施策により、契約件数を2021年8月期末の91.2万件から2025年8月期末には105.2万件に拡大する方針である。また、代表的なスマートデバイスであるPOSレジの課金件数を2.1万件から4.1万件に増やす計画である。
(3) 通信事業
2025年8月期の業績は、法人向けICT/SaaSが売上高259億円(4年平均成長率9%)、営業利益42億円(同7%)、業務店向け自社光回線が売上高117億円(同18%)、営業利益6億円(黒字安定化)を目指していく。法人向けICT/SaaSでは、複雑化するセキュリティ対策の支援や、BCP対策としてのクラウド/データセンターの保守運用受託などのクロスセルに注力する。拡大するSaaS/IaaS需要に対してはサービスラインナップの拡充、BGMなどによるオフィス環境改善には新サービスの開発で対応する。
営業面では、Web上での認知度を向上、デジタルマーケティングへの費用投下により新たな見込み顧客を創出する一方、オンライン商談やインサイドセールスなど時代に即した新たな営業手法を確立する。業務店向け自社光回線は、契約取次から好採算の自社回線獲得へのスイッチングを一層強化するとともに、増加している業務店向け自社回線の顧客に対してIoT/DX商材のアップセルを加速する。また、業務店にとどまらず、オフィス環境を改善したい企業のニーズにも応えていく。
(4) 業務用システム事業
2025年8月期の売上高はホテルで131億円(4年平均成長率3%)、総合病院で75億円(同10%)、ゴルフ場や小売、外食、ペットクリニック、観光施設などの隣接市場で44億円(同19%)を目指す。既存主要顧客であるホテルや総合病院に対して、非対面・非接触や省人化・効率化といったニーズを踏まえてDX支援を強化する。特にホテルについてはヘルスケア立国や観光立国という日本の成長戦略の再来も、同社は想定している。精算機でトップシェアというレベルから、施設DXのソリューションをテコに、顧客にとってビジョナリーパートナーという一段上の存在を目指していく。
隣接市場に対しては、市場の深掘りとプロダクツ開発という2軸で開拓を進める。例えば、小規模クリニックや歯科、調剤薬局など中小医療機関に対しては、マイナタッチを起点にクロスセルする製品やサービスを拡充する。プロダクツ面では、AIや生体認証(顔認証)、キャッシュレス・後払い決済など最新技術を盛り込んだ製品・サービスを開発していく。
(5) エネルギー事業
取次モデルの「USENエネルギー」では、業務店に対するコスト削減提案を継続するとともに、コスト削減後の同社サービスの追加導入などを提案する。オフィス向けでは、環境BGMやクラウドカメラなどとのセットサービスを切り口に、総合的な提案ができる体制を構築する。2022年3月にスタートした自社電源調達モデルの「U-POWER」は、取次モデルより収益性を高めることができるため一層強化していく意向である。また、「非化石証書付グリーン電気」などSDGs対応のメニュー展開をしているため、他社サービスより競争力の強い商品となっている。この結果、2025年8月期の顧客件数は、「USENエネルギー」の低圧が5万口(4年平均成長率22%)に増加する一方、高圧が0.7万口〜0.8万口(同横ばい)とあまり増えない見込みになっている。「U-POWER」の顧客件数は4.1万口~6.2万口(2021年8月期はゼロ)と大きく拡大することを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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