今週の新興市場は続落。ただ、急落した後に反発するなど、相場は一本調子の下げとはならず、週間の下げ幅は前週から圧縮された。世界的に新興企業の株価には高水準で推移する金利が大きな影響を与えているが、長期金利は上昇一服の兆しも見せている。米10年債利回りは23日、16年ぶりに一時5%を突破したが、27日終値ベースでは利回り4.83%まで低下しており、前週末20日の4.93%を下回った。また、欧州では欧州中央銀行(ECB)が26日の金融政策決定会合で主要政策金利を4.5%で据え置くことを決めた。ECBの金利据え置きは11会合ぶりであり、世界的な利上げムードが終わりに近づいている可能性も否定できない。なお、今週の対前週末騰落率は、日経平均が-0.86%だったのに対し、東証グロース市場指数は-1.84%、マザーズ指数は-2.33%だった。
個別では、国内SB623の製造販売承認が11月6日の厚労省審議会の議題に挙がらなかったサンバイオ<4592>、上場廃止を発表したアマナ<2402>、23年12月期業績予想の下方修正を発表したmonoAI<5240>などが週間騰落率値下がり上位に入った。その一方、第三者割り当てによる新株と新株予約権発行による研究開発費調達が好感されたDELTA-P<4598>、水のトラブルサービスを展開するイースマイルとの資本業務提携などが材料視されたアクアライン<6173>が週間騰落率値上がり上位となった。週間売買代金上位にはカバー<5253>やジーエヌアイグループ<2160>が引き続き入った。
■日米金融イベントは無風通過か、IPOは空白期間入り
来週の新興市場は引き続き弱含みの展開が予想されるが、徐々に底値を固める動きとなろう。来週は米国と日本の金融政策決定会合が焦点の一つとなる。10月31日-11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が据え置かれ、今後発表される米経済指標を確認して12月の次回FOMCで利上げの是非が判断されるとみられる。一方、国内では長期金利が上限の1.0%に接近しつつあり、長短金利操作の再修正が市場で意識されやすい微妙な情勢下だ。しかし、全国消費者物価指数が低下傾向とみられる中、日本銀行は国内長期金利に大きな影響を及ぼす米長期金利の今後の方向性を見極める必要性を考慮し、10月30日-31日の金融政策決定会合では再修正を見送るとみる。
また、来週発表される米経済指標では消費者信頼感指数、ISM製造業および非製造業景況指数、雇用統計に注目が集まる。米国では約3年半にわたって猶予されてきた学生ローンの返済が10月より再開されており、この影響が注目される。そのほか、新興市場では年初来安値更新が続き、値ごろ感が増している。各経済指標から金利先高観に変化が生じれば、相場は徐々に底堅さを取り戻すことも期待される。
来週の新興市場では業績が順調な拡大基調にあり、かつ株価が年初来安値圏にある銘柄に値ごろ感からの押し目買いが入りやすくなると思われる。個別ではクラウド活用の会員制転職サービス「ビズリーチ」を展開するビジョナル<4194>、パーキンソン病専門の老人ホームが成長しているサンウェルズ<9229>、建設業界向け技術者派遣が主柱のナレルグループ<9163>などに注目しておきたい。なお、DAIWA CYCLE<5888>が上場する11月8日までIPOは空白期間入りとなる。来週はJapan Eyewear Holdings<5889>、バリュークリエーション<9238>の仮条件が決定する予定。
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