同社グループでは「『人が集まり、心を通わせ、社会の発展と人々の幸せを創出していく場』 を提供する」を基本方針とした、中期経営計画を策定した。経営数値目標は、2025年3月期に売上高1,000億円、経常利益200億円を掲げている。経営指標は、経常利益率20%、自己資本比率50%水準、ROE10%以上を掲げている。各事業において成長戦略を打ち出し、ESG、デジタル、キャッシュ・フロー、マーケティングを重点ポイントに挙げている。同社グループの中期経営計画では、オフィス需要の増減などのリスクにも対応しつつ収益基盤の多角化やESG投資を推進するなど将来的な成長戦略に積極的に取り組んでおり、安定的な収益の確保と将来的な成長性の期待を高めるものと弊社では見ている。
1. 各事業の成長戦略
(1) オフィス事業
オフィス事業では、既存事業の深化・伸長を進める。都心・中小型・オフィス・再生・事業期間1年のリプランニング事業を主軸としつつ、不動産の高付加価値活用にこだわり、中長期保有、低層店舗開発、新築ビルにも取り組む。ワンストップサービスによる課題解決力や、顧客視点による企画・提案力、建築技術・デザイン力・スペース活用技術を生かし、テナント誘致力を強みにオフィスビルの付加価値を高めていく。足元では物件仕入に注力しており、短期・中長期・新築開発にバランスよく投資している。仕入・開発を計画的に行い、一定の回転率で投資を回収しながら事業の成長を図る。
(2) ホテル事業
ホテル事業では、引き続きコンセプトにこだわり、満足と感動を超えるサービスを提供していく。心温かい楽しいホテル運営を心掛け、顧客視点のサービスにより熱狂的なファンの創出を目指す。建設中であるホテルの完成後は既存ホテルの運営で収支の黒字化を図るとともに、土地・建物の売却で投資資金を回収し効果的に運用していく。計画ホテルの竣工は完了しており、売却・回収により再投資を行っていく。
(3) 海外事業
海外事業では、ベトナムでの住宅関連事業を展開する。マンション開発・販売・管理・仲介を一貫して行うことで、地域に根差した成長を実現する。将来を見据えたマンション開発事業への計画的投資を継続するとともに、次期開発プロジェクトに向け土地取得手続きを進めていく。
(4) M&A
M&Aは、現業を拡充する周辺事業への投資や、成長分野に対するスタートアップ投資を積極的かつ計画的に行い、新たな付加価値創出を目指す。M&Aにおいては既存事業とのシナジーが期待できる案件に限定する方針である。ホテル開発では、今後1~2年で運営部屋数を3,000室程度まで回復させ(2023年5月時点で2,477室)、今後10年で10,000室までの拡大を視野に入れている。これを実現するためにM&Aによる手法も選択肢の1つであると捉えている。M&Aの費用に関しては、現預金が潤沢で、自己資本比率が高いことから、基本的には自己資金を中心に行う方針だ。
2. 重視するポイント
(1) ESG
同社グループはESG投資の重要性に着目し、中期経営計画の中で、環境・社会・ガバナンスに配慮した取り組みを積極的に進めることを表明している。ビルの再生事業を通じたCO2排出量の削減や再生可能エネルギーの活用など、環境に配慮した施策を推進している。また社会的責任を果たすために、保育園や医療施設(リハビリ施設)の入居に適うビル開発や、多様な人財が活躍できる体制・経営の推進にも力を入れている。ガバナンス面では、「再生産不可能な資源の無駄遣いをおさえ、永続的な地球上の人類や動植物の繁栄に寄与する」企業哲学に則り、社会の範たる企業となるべく企業統治を行う。これらの取り組みは、ESG投資家からの支持を集め、投資家の関心を高めることができると弊社では考える。
(2) デジタル化推進
デジタル化による変革を推進するため、2021年4月にデジタル化推進室を立ち上げた(2022年4月にはDX事業部へ組織変更)。各事業において業務フローを検証し、デジタル化することで効率化・内部統制強化を推進する。効率化を経て生産性の向上を図り、顧客の課題解決を強化できる新規事業の創出を目指す。
(3) キャッシュ・フロー
財務の安定性の維持を方針の1つとしており、経常利益の成長だけでなくキャッシュ・フローを重視し、フリーキャッシュ・フローのプラス維持を掲げている。高付加価値事業の進化による営業キャッシュ・フローを安定的に創出するとともに、効果的な事業への資金投下と計画的な資金回収により、投資キャッシュ・フローをコントロールする。安定的な株主還元と財務基盤の健全化とともに、将来の成長へ投資することで企業価値を高めるキャピタルアロケーションを実現していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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