7日の米株式市場でダウ平均は423.78ドル高(+1.30%)と続伸。中間選挙を控える中、下院で共和党優勢との報道を背景に政策遅滞への連想からインフレ・金利高懸念が後退、さらにイベント通過後の不透明感払しょくによる株価上昇への期待もあり買いが優勢に。ドル高が一段落したことも支援し終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は長期金利上昇で朝方は伸び悩んだものの、引けにかけて上げ幅を拡大し、+0.85%と続伸。米国株高を引き継いで日経平均191.2円高からスタート。値がさのハイテク・グロース株を中心に買いが入る中、朝方から断続的に水準を切り上げる形となり、前場中ごろには27943.27円(415.63円高)まで上値を伸ばした。
個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>など値がさ株を中心に主力のハイテク・グロース株が大幅高。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>のほか、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社など景気敏感株も総じて高い。太陽誘電<6976>は業績予想を下方修正も、事前の同業他社の決算で警戒感が高まっていたこともあり、悪材料出尽くし感から切り返して大幅高。業績・配当予想を上方修正した住友精化<4008>、好決算に加えて自社株買いを発表したJCU<4975>、第1四半期が高進捗となったチャームケア<6062>、業績予想を上方修正したヤマハ発<7272>
などが2ケタ台の上昇率で急伸。ユニ・チャーム<8113>、日立造船<7004>、日本CMK<6958>、ゴールドウイン<8111>なども好決算が評価された。
一方、7−9月期営業減益となったレノバ<9519>が急落。カルビー<2229>、NTTデータ<
9613>なども減益決算が嫌気されて大幅安。業績・配当予想を下方修正した日東工業<6651>、好業績も通期計画を据え置いた日本ケミコン<6997>なども大きく下落した。ほか、目立った材料は見当たらないが、ソシオネクスト<6526>が半導体関連の中では大きく逆行安となっている。
セクターでは保険、海運、不動産を筆頭にほぼ全面高となり、下落したのはその他金融、陸運の2業種のみとなった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は22%となっている。
本日の日経平均は大幅続伸で、一時28000円超えが視野に入る水準にまで上昇する場面も見られた。日足チャートでは、75日移動平均線を明確に上抜けてきたほか、上向きの25日線が200日線を下から上に抜こうかと窺う形となっており、テクニカルな好転が鮮明になってきている。一目均衡表でも雲上限を大きく突破したことで三役好転を示現している。
日経平均の午前の推移を分足チャートでみると、断続的に階段状に水準を切り上げていく形となっている。テクニカルな好転と合わせて、これまで上値抵抗帯となっていた心理的な節目の27500円を明確に上放れてきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っているように見受けられる。
今週は米中間選挙に加えて、米10月消費者物価指数(CPI)と注目イベントが多いが、中間選挙では上院が接戦の一方、下院は野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。実際にこれが実現すると、民主党のバイデン大統領の掲げる政策の難航が予想されるが、財政赤字の拡大に繋がらないことがインフレ低下・金利低下を通じて株価上昇をもたらすと前向きに捉えている市場関係者が多い様子。
また、中間選挙後には不透明感が払しょくされること等を背景に、選挙実施月の11月から翌年4月にかけてS&P500指数の株価パフォーマンスが良好というアノマリーも足元の株高に勢いを与えているようだ。
日米ともに機関投資家の株式持ち高比率は低水準にとどまっているため、じり高基調が続けば、次第に持たざるリスクが意識され、買い遅れた向きによる投資が一段高を演出する可能性もありそうだ。
一方、前日にQUICKが発表した月次調査(11月)では、ファンドマネージャーの現在運用しているファンドにおいて、国内株式の組み入れ比率が通常の基準に比して「ニュートラル」と回答した割合が55%と前回(54%)からやや増加。「ややオーバーウェート」と回答した割合が21%と前回(23%)から低下した一方、「ややアンダーウェート」と回答した割合は24%と前回(17%)から大きく上昇した。また、国内株式の組み入れ比率についての当面のスタンスについては、「やや引き上げる」との回答が10%と前回(28%)から大幅に低下した一方、「現状を維持する」との回答が81%
と前回(61%)から大幅に増えて圧倒的多数となった。
ほか、先週は先物手口において、BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券が東証株価指数(TOPIX)先物で週間11800枚超にも及ぶ大量の売り越しを見せていた。前日は日経平均が27500円を回復した中ではあったが、TOPIX先物で同証券による明確な買い戻しは確認されなかった。
米国ではGAFAMに代表される米IT大手企業をはじめ決算で低調なものが多かった印象だが、日本国内でも、ハイテク企業で意外感のある下方修正が散見され、円安恩恵がある中でも決算シーズン終盤にかけては軟調な内容のものが多く見られている。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見から、今後実際に景気後退が訪れても当面高水準の金利は据え置かれる見込みで、政策による下支えは期待できない。「bad news is good news.(悪いニュースは良いニュース)」という決まり文句が通用しない環境下、景気後退はストレートに企業業績の悪化を通じて株価の下押し圧力として働きそうだ。
こうした中、上述の調査からは、機関投資家はほとんど持ち高を増やす意向がない様子。先週のBofA証券によるTOPIX先物の大量売り越しの動きも、こうした背景に基づく実需筋による売りとも考えられる。
米10月CPI次第ではあるが、イベント通過後にトレンドフォロー型ファンドを中心に短期筋が相場を大きく上方向に引っ張っていっても、その後に付いていく投資家は果たしてどれだけいるのだろうか。持たざるリスクから急いで買いに転じる長期目線の投資家は上述の調査などからは左程多くないようにも見受けられる。年末株高への期待も根強いが、まだまだ株価の行方については慎重なスタンスを維持しておきたい。
(仲村幸浩)
<AK>
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