~M&Aも含めて事業の組み換えが本格化、収益力も向上~
【ポイント】
・1月に医薬品のCMC研究開発に特化したスペラファーマを買収すると発表した。製薬メーカーが新薬を開発した後、新薬の原料・原薬をどのように作るか。その製造方法の開発や品質管理を担う機能がCMC(Chemistry Manufacturing Control)である。もともと武田薬品工業にあった会社を武州製薬が所有していたが、今回イワキが買収した。
・取得価額は60億円、売上高63億円、営業利益6億円の会社である。のれんの償却期間を10~20年として、6~3億円の負担は想定されるが、営業利益でプラスの効果は見込めよう。CMCの需要はかなりあり、医薬品原料事業とのシナジーもあるので有望である。
・今期からセグメントを組み替えて、①ファインケミカル事業(医薬品原料)、②医薬事業、③HBC・食品事業(化粧品、食品原料、一般用医薬品)、④化学品事業(電子材料用表面処理薬品)とした。スペラファーマは、ファインケミカル事業に入る。
・10年間の中長期ビジョンの下、今2020年11月期は5年目を当たる。岩城社長をリーダーに独自の「策揃え」(差別化戦略)を実行中である。2022年11月期までの3ヵ年計画では、売上高750億円、営業利益32億円、ROIC 8.5%を公表したばかりであるが、今回のM&Aで、達成の確度は高まり、ピーク利益の更新が続こう。
・4月の薬価改定やインバウンドの減少から慎重な見方も必要である。しかし、5Gの本格化で、電子部品・半導体関連の表面処理薬品に動きが出よう。皮膚のイワキと称するように売上高の2割強が皮膚関連で、新商材によるブランド作りにも取り組んでいる。同時に、商社から製造機能へのシフトを進めており、製造比率は40%以上に高まろう。
・1)抗がん剤向けなどの高活性原薬や中間体などAPI(有効成分)分野の強化、2)CMC研究開発受託事業の拡大、3)医薬品原料の合成技術の応用も含めた高純度の電子材料や、パワー半導体分野での新しい表面処理薬品、4)シルバー世代に強みを持つ通販化粧品分野などをリード役に、今後とも事業投資が活発化しよう。収益力は継続的に向上していくので、PBRも早晩1.0倍を超えてこよう。
目 次
1.特色 医薬品、医薬品原料、化学品で製造機能を強化
2.強み ジェネリック医薬品及び原料が大きな収益源
3.中期経営計画 10年ビジョンVision“i-111”で収益力向上を目指す
4.大型M&A スペラファーマの買収でCMC(医薬品製造方法)の研究開発受託事業に参入
5.当面の業績 ピーク利益の更新が続こう
5.企業評価 収益力向上の新たな道筋が見えてきた
企業レーティング | B |
---|---|
株価 (2020年2月3日) |
512円 |
時価総額 | 177億円 (34.636百万株) |
PBR | 0.82倍 |
ROE | 8.3% |
PER | 9.8倍 |
配当利回り | 2.7% |
総資本 | 44715百万円 |
純資産 | 20431百万円 |
自己資本比率 | 45.7% |
BPS | 624.1円 |
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | 配当 |
---|---|---|---|---|---|---|
2010.11 | 50412 | 494 | 635 | 371 | 15.5 | 6.0 |
2011.11 | 53797 | 1215 | 1316 | 1619 | 53.9 | 7.0 |
2012.11 | 51953 | 1126 | 1292 | 728 | 21.6 | 6.0 |
2013.11 | 52465 | 1007 | 1144 | 744 | 22.0 | 6.0 |
2014.11 | 54145 | 890 | 962 | 496 | 14.7 | 7.5 |
2015.11 | 55422 | 559 | 694 | -143 | -4.3 | 6.0 |
2016.11 | 55121 | 977 | 1071 | 8 | 0.3 | 6.0 |
2017.11 | 57387 | 1571 | 1778 | 1241 | 37.9 | 7.5 |
2018.11 | 60083 | 1849 | 2000 | 1414 | 43.8 | 10.5 |
2019.11 | 61647 | 2121 | 2318 | 1533 | 47.0 | 13.0 |
2020.11(予) | 68000 | 2200 | 2400 | 1700 | 52.0 | 14.0 |
2021.11(予) | 73000 | 2900 | 3100 | 2000 | 61.1 | 15.0 |
(2019.11ベース)
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。2011.11期はメルテックス合併記念配1円、2014.11期は創業100周年記念配1.5円を含む。
企業レーティングの定義:当該企業の、(1)経営者の経営力、(2)事業の成長力・持続力、(3)業績下方修正の可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要する、D:極めて厳しい局面にある、という4段階で示す。
レポート全文はこちらから
http://www.belletk.com/iwaki202002.pdf
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