「米中協議進展、国内は長期安定政権期待で海外資金流入の思惑」
●意識されやすいバリュエーション面での割安感
日経平均株価は9月5日にこれまでの保ち合いレンジ(2万100~2万700円)を上放れると、日中は小幅なレンジながらもリバウンド基調を強め、週末にはザラ場で2万2000円大台を回復した。これにより、8月の急落前のレンジであった2万1000~2万1800円のレンジを上抜く格好となった。リバウンドが強まるきっかけとなったのが、米中通商摩擦、英国EU離脱問題、香港デモに対する警戒感が和らいだことにある。これにより、弱気なセンチメントに伴うポジションの巻き戻しが強まった。さらに、先物オプション特別清算指数(メジャーSQ)算出を控えていたため、2万500円処で落ち着いていた権利行使価格の中心レンジが大きく切り上がることによって、ヘッジに伴う需給なども影響したとみられる。
また、この巻き戻しの流れで、相対的に出遅れていたセクターや銘柄などバリュー株への修正リバウンドが強まり、とりわけ 金融株への買い戻しが強まっていた。急ピッチの戻りによってバリュー株物色は一旦落ち着いた格好であるが、日経平均が2万1700円のレンジ上限を意外とあっさりクリアし、2万2000円台での活躍を視野に入れたことで見直し余地はありそうだ。バリュー株については、9月末接近に伴い配当志向の物色も意識されやすいだろう。
トランプ米大統領は11日、10月1日に予定されていた対中関税率の引き上げを、10月15日に延期すると発表した。米中の動向を巡っては急速に楽観論が広がる中で、今回のアナウンスはそれを裏付けた格好である。10月前半の米中閣僚級会議までの間は市場は「待ち」の姿勢となろうが、言い換えれば、それまでは比較的底堅い相場展開が見込まれることになる。9月以降の上昇により過熱感が警戒されやすく、ここからは戻り待ちの売り圧力も強まりやすいところではあるが、2万2000円処をクリアしてくるようだと、改めてショートカバーの流れが強まるだろう。
また、大日本印刷 <7912> など、リクルートホールディングス <6098> 株の売却を行った企業が、直ぐさま自社株買いを実施する動きをみても、現在の割安な水準の修正が意識されやすく、センチメントを明るくさせる。そのほか、第4次安倍再改造内閣の発足と自民党役員人事を受けた世論調査(日本経済新聞社・テレビ東京)では、内閣や党執行部の新たな顔ぶれを「評価する」は45%で「評価しない」の30%を上回っている。長期安定政権を評価する流れから、海外勢による資金流入も意識されやすい。東証1部の売買代金は足元で膨れてきているが、海外投資家(現物+先物)は2週連続で買い越しとなっており、米中協議など楽観はできないとはいえ、それを考慮してもバリュエーション面での割安感が意識されやすい需給状況のようだ。
来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)のほか、日銀金融政策決定会合、イングランド銀行(BOE)やブラジル中央銀行、南アフリカ準備銀行(中央銀行)の政策金利が発表されるなど、各国の金融政策に関心が集まる。今週は欧州中央銀行(ECB)が量的緩和政策を再開した。FOMCでは25ベーシスポイントの利下げが織り込まれており、想定内であればアク抜け的な動きにもつながりそうだ。
●いま注目したい活躍期待5銘柄
◆アンリツ <6754>
次世代通信規格「5G」関連の中心的な銘柄であるが、株価は5月安値をボトムに緩やかなリバウンド基調が継続。このところは1900~2100円処での保ち合いが続いているが、これまでのリバウンドにより信用需給状況は改善。直近での信用倍率は1.11倍と取組に厚みが増している。買い残高は5月の段階から半減しており、資金回転も進んでいる。
◆村田製作所 <6981>
ファーウェイ問題をめぐる不透明感が根強い中ではあるが、株価は8月26日安値4304円をボトムにリバウンド基調を続けており、直近戻り高値を捉えている。信用の需給悪化も戻りの鈍さにつながっていたが、足もとでやや改善傾向にある。 信用倍率は9倍台と、8月の20倍台から改善しており、今後見直しの流れが強まることが期待される。
◆ソフトバンク <9434>
携帯電話料金を巡っては10月1日に改正電気通信事業法が施行され、新ルールが適用されることで各社対応策が発表されている。こうした動きから競争激化などに伴う過度な警戒感が和らいできていることもあり、月末に向けては改めて配当志向の物色なども強まりやすいだろう。
◆オリックス <8591>
金融株への物色が波及する格好でリバウンド基調が強まっており、年初来高値を更新している。一旦は達成感が意識されやすいところではあるが、チャート形状ではこれまで上値を跳ね返されていた52週線を突破している。一部予想による配当利回りは5%を超えており、同線を支持線とした押し目狙いのスタンス。
◆三井住友トラスト・ホールディングス <8309>
金融セクターへの見直しが強まる中でリバウンド基調が強まっており、75日線からの上放れをみせてきている。急ピッチの上昇に対する過熱感は警戒されるが、バリュエーション面での割安感のほか、各国の金融政策発表後のアク抜けの流れも意識しておきたい。
2019年9月13日 記
株探ニュース
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