16日の米株式市場はキング牧師誕生記念日で休場。欧州株式市場ではドイツDAXが+0.31%、フランスCAC40が+0.28%、英国FTSE100が+0.20%と全般堅調だった。欧州株高を引き継いだ日経平均は93.19円高からスタート。前日の下落の反動も意識される中、為替の円高進行が一服していたことも安心感を誘い、早い段階で26000円を回復。
その後も断続的な買い戻しが入り、前場中ごろには26198.69円(376.37円高)まで上値を伸ばした。なお、午前11時頃に発表された中国12月の鉱工業生産は前年比+1.3%
と前月(+2.2%)を下回った一方、市場予想(+0.1%)を上回った。12月小売売上高は前年比−1.8%と市場予想(−9.0%)を大幅に上回ったほか、前月(−5.9%)からも大きく改善した。
個別では、為替の円高進行の一服を受け、トヨタ自<7203>、デンソー<6902>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>の輸送用機器が大きく上昇。レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、TDK<6762>、村田製<6981>などの値がさ株、ハイテク株が全般高い。好決算を材料に前日急伸したベイカレント<6532>は大幅続伸となり、決算を受けて前日に急落した北の達人<2930>、イオンファンタジー<4343>も本日は急反発。決算関連ではホギメディカル<3593>、マネーフォワード<3994>、メディアドゥ<3678>などが買われている。
一方、前日に利益確定売りが膨らんだ金融関連は本日も売りが優勢で、千葉銀行<8331>、七十七銀行<8341>、滋賀銀行<8366>、八十二銀行<8359>など地銀関連が軒並み大幅続落。エーザイ<4523>、塩野義<4507>、日本郵政<6178>、KDDI<9433>、ニトリHD<9843>などのディフェンシブ系の一角のほか、JAL<9201>、ANA<9202>、JR東海<9022>、JR東<9020>などのリオープン関連の一角も軟調。決算発表を延期したサムティ<3244>や9−11月期の減益が嫌気されたテラスカイ<3915>は急落している。
セクターでは、輸送用機器、電気機器、海運が上昇率上位となった一方、空運、銀行、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の70%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
前日の米国市場が休場だったことに加えて、日本銀行の金融政策決定会合や黒田日銀総裁の記者会見を明日に控える中、本日は手掛かり材料難と見られたが、東京市場では買いが優勢で、日経平均は1%を超える上昇率となっている。
為替の円高進行が一服していることで、短期筋の買い戻しが進んでいると推察されるほか、中国の経済指標が予想よりも遥かに良好だったことが安心感を誘っているようだ。中国ではゼロコロナ政策の緩和後の感染爆発の影響から、12月の指標に対しては警戒感が高かったため、今回の結果はポジティブサプライズであり、今後の同国の経済再開に伴う景気回復への期待が高まったといえよう。
先週の読売新聞の報道をきっかけに、日銀による2会合連続での政策修正への警戒感がにわかに高まった株式市場ではあるが、明日に結果を控える今会合に限っては現状維持を予想する市場関係者が多いもよう。今回、市場は急速に政策修正を織り込みはじめ、一時はマイナス金利の解除までを織り込む形となった。こうした中、中身はどうであれ、2会合連続での政策修正で応えてしまえば、市場に誤ったメッセージを発することになり、催促相場の様相を強めてしまう恐れがある可能性などが指摘されている。
また、日銀の金融市場局市場企画課が3月1日に公表する債券市場サーベイが2月に実施される。日銀は昨年12月会合での政策修正の要因として、債券市場の健全な機能の回復を挙げていた。12月の政策対応を受けて市場参加者の考えにどのような変化があったのか、こうした点を2月のサーベイ調査で確認するまでは直ちに追加の政策修正を決定することは考えにくい、ということも理由として挙げられている。
以上の観点から、明日の日銀金融政策決定会合は現状維持で終わる公算が大きそうだ。しかし、4月に日銀新体制を控える中、思惑は当面くすぶり続けることになるだろう。世界経済の景気後退入りや為替の円高進行が懸念要素となる自動車関連株などはしばらく上値の重い展開が続くと考えておいた方がよいだろう。金利上昇による債務負担増が意識されやすい不動産セクターもしかりだ。
一方、日銀の追加政策修正を本当に株式市場が嫌がっているのかについては、やや見方を変えるべき点もあると考える。それはグロース株の動向だ。前回の12月会合の政策修正の際には、為替との連動性が小さい中小型の内需系グロース株も大きく売られ、マザーズ指数が特に大きな下落を強いられた。サプライズ的な出来事だったため、流動性リスクの大きい中小型株が売られやすかったという背景もあるだろうが、国内の金利上昇への警戒感も要因として大きかったと思われる。
しかし、先週の読売新聞の報道を契機に追加政策修正への警戒感が高まった今局面はやや様相が異なる。真っ先に自動車関連株や不動産株が売られ、銀行株が買われた初動反応は似たようなものだったが、内需系グロース株はさほど売られていない。Sansan<4443>やマネーフォワードのように決算に対する反応が良好なものも多い印象だ。
これらグロース株に関しては、日銀金融政策決定会合に対する懸念よりも、米国での雇用統計や消費者物価指数を受けたインフレピークアウト期待を好感する動きの方が勝っているのかもしれない。
株式市場では、日銀リスクが台頭してきたことで、製造業関連株が買えず、また唯一買い安心感のあった銀行・保険株も早々に利益確定売りに押されはじめたことで、買うものが何もないといった声も聞かれる。しかし、目を凝らすと、上述の内需系グロース株のように、意外と下値を固めてリバウンド基調を強めているものも多い。今後、決算シーズンが本格化していくため、あえて今のタイミングから積極的に買い攻勢で臨む必要もないだろうが、買えるものは存在していると前向きに捉えていきたい。
なお、今晩の米国市場では1月ニューヨーク連銀製造業景気指数のほか、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの金融大手や航空大手ユナイテッド・エアラインズの決算が予定されている。金融決算では先行きの景気後退懸念を強めるものとなるかが注目される。一方、ユナイテッドの決算では旅行需要の回復が改めて確認されれば、東京市場の航空関連株にもポジティブな波及が期待される。
(仲村幸浩)
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