「量子コンピューター」が4位、究極の次世代テクノロジーに世界が覇権競う<注目テーマ>
1 デジタルトランスフォーメーション
2 脱ハンコ
3 サイバーセキュリティ
4 量子コンピューター
5 電子政府
6 2020年のIPO
7 マイナンバー
8 電子認証
9 5G
10 遠隔医療
みんなの株式と株探が集計する「人気テーマランキング」で、「量子コンピューター」が4位となっている。
人工知能(AI)の進化に加え、あらゆるものがネット接続されるIoTとの融合が加速し、企業のビジネス環境やわれわれの日常も数年前とは大きく変わっている。こうした環境下で日本は世界的に見てデジタルシフトの動きが遅れているとされるが、菅新政権が打ち出す行政のデジタル化推進により今後急速なキャッチアップが期待される。いわば、官民を挙げてのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進である。
一方、マーケットはコンピューティング分野でデジタル時代の一歩先を読み込み始めた。従来の「01」の世界から離れ、量子力学的な性質である“重ね合わせ”や“もつれ”といった極微の世界で起こり得る物理現象によってこれまでの常識を打ち破る演算能力を発揮する「量子コンピューター」に注目が集まっている。この量子コンピューターを筆頭に量子技術を巡る研究開発がグローバルに進められており、特にIT先進国の米国と中国での覇権争いが激化している。米国では昨年の秋、グーグルがスーパーコンピューターでおよそ1万年かかる計算問題を量子コンピューターによって3分あまりで解答を導く実証実験に成功、「量子超越」を実現したと発表した。これに負けじと対抗馬となっているIBMなど大手IT企業も開発への注力姿勢を強めている状況にあるが、対中国という構図で考えればこれは民間企業の競争ではなく国を挙げての戦いである。
国家として基礎研究力を表すのが論文数だが、これについては直近、中国が米国を上回りトップとなったと伝わっている。特に、安全保障面で重視される量子暗号分野では中国の優勢が鮮明という。米国も中国の存在を警戒しており、ハイテク摩擦が激化していることの一つの背景ともなっている。そして、日本でも量子分野の研究開発に積極的に取り組む動きが加速している。昨年12月中旬に米IBMと東京大学が量子コンピューターの研究開発で協力することを発表、IBMは現在開発中の機種を日本に設置して、ハードとソフト両面から実用的機能を高めていく方針を示した。これを伏線に今年7月末には東京大学を主体とする産官学の「量子イノベーションイニシアティブ協議会」が発足、トヨタ自動車<7203.T>など国内のそうそうたる企業も数多く参画し、合計10団体が協力して世界に先駆けて量子コンピューターの社会実装を目指す。量子イノベーションで日本が世界の主導的ポジションを獲得する可能性も十分に考えられる。
株式市場でも関連銘柄は中期的に株価を大きく変貌させる可能性を内包している。富士通<6702.T>、NEC<6701.T>、日立製作所<6501.T>など日本を代表するIT企業のほか、NTT<9432.T>も同分野の深耕に積極的だ。株価面で変身妙味を内包している銘柄としては電子計測器やカスタム応用機器の開発を手掛けるエヌエフ回路設計ブロック<6864.T>、量子アニーリング分野でカナダのDウエーブ社と早くから提携関係にあるフィックスターズ<3687.T>、AIを活用したデータ分析で高い実績を持つブレインパッド<3655.T>、独立系システムインテグレーターで、産業用コンピューター分野で世界首位級の台湾のアドバンテック社と連携する日本ラッド<4736.T>、量子コンピューター関連ビジネスを手掛ける子会社キューミックスを設立し、IBMと協業するテラスカイ<3915.T>、量子コンピューターのアプリケーション開発ベンチャーと業務提携し、量子化学計算領域に傾注するHPCシステムズ<6597.T>、東北大学の大関真之准教授らと共同で量子アニーリングマシンを活用した研究開発子会社シグマアイを設立しているスパークス・グループ<8739.T>、量子アニーリングの得意分野である組み合わせ最適化問題として扱えるよう配電網の電力消費量を表すモデル式を構築している長大<9624.T>、量子コンピューター向けビームスリッターなどで高い実績を持つシグマ光機<7713.T>などに注目したい。
出所:MINKABU PRESS
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