―本決算発表シーズン迫る、22年3月期に長い雌伏期間を経て最高益を塗り替える有望株に照準―
2021年度の株式市場がスタートし、今月下旬から本格化する3月期決算企業の本決算発表への注目が高まっている。21年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞を受けて、経常利益ベースで2割近い減益となる見通しだ。一方、足もとの業績は製造業を中心に持ち直し、直近3ヵ月の10-12月期は9四半期ぶりに増益転換を果たしたほか、新型コロナウイルスのワクチン接種も始まっており、22年3月期はV字回復するとの期待は大きい。こうしたなか、今回は22年3月期に過去最高益の更新が期待される企業に注目。なかでも、サプライズ度の高い「最高益復活企業」に照準を合わせ、22年3月期に長い雌伏期間を経て最高益を塗り替える可能性のある銘柄を探った。
●21年12月期は3割増益予想、これに追随するか
3月期決算の先行指標として注目される12月期決算企業の今期業績は大きく改善する見通しだ。21年12月期の業績予想を開示した409社を集計したところ、経常利益の合計額は前期に比べて35%増加する見込みとなった。経常利益の増加額が最も大きいのはナブテスコ <6268> で、ハーモニック・ドライブ・システムズ <6324> [JQ]の持ち分法適用除外に伴う評価益を計上することが利益を大きく押し上げる。このほか、キヤノン <7751> 、THK <6481> 、ヤマハ発動機 <7272> といった製造業をはじめ、ビール大手のアサヒグループホールディングス <2502> 、キリンホールディングス <2503> など、コロナ禍からの需要回復やコスト構造の改革効果で業績が好転する企業が目立つ。
こうした12月期決算の傾向や新型コロナワクチンの普及などを踏まえ、22年3月期は幅広い業種で業績が改善するとみる向きは多い。以下では、足もとの業績が増益基調で21年3月期の経常利益見通しが過去最高益に接近し、22年3月期に10年以上のブランクを経て最高益更新が期待できる6社をリストアップした。久しぶりに最高益を更新する企業については業績復活がマーケットに十分に織り込まれていないケースが多く、株価に大きなプラスインパクトをもたらす材料になり得る。これから本格化する決算シーズンを前に押さえておきたいところだ。
【東京エレクトロン デバイス <2760> 】
東京エレクトロン デバイスは東京エレクトロン <8035> から独立したエレクトロニクス商社。米テキサス・インスツルメンツをはじめとする海外半導体メーカーを主な仕入れ先としている。21年3月期の経常利益は前の期比14.7%増の41億円に伸びる見通しだ。主力の半導体は自動車や産業機器市場の需要回復が追い風になるほか、コンピュータシステム関連事業では テレワークの普及を受けてネットワーク機器やセキュリティー製品の引き合いが強い。22年3月期は世界的な半導体不足を背景に、過去最高益48億5200万円(01年3月期)を更新する公算が大きい。直近では米政府による半導体業界への支援などを手がかり材料に、株価は2日に04年6月以来16年10ヵ月ぶりとなる上場来高値を更新した。今期は業績、株価ともに青空圏を突き進む展開に期待したい。
【エノモト <6928> 】
エノモトは半導体用リードフレームやコネクター用部品などを手掛ける電子部品メーカー。水素燃料電池の基幹部品である固体高分子形燃料電池用新型セパレータを山梨大学と共同開発するなど、“脱炭素”関連としての側面も持つ。21年3月期の経常利益は昨年8月時点で9億円と3割超の大幅減益を予想していたが、2月の第3四半期決算発表時に、一転して増益見通しとなる15億円へ上方修正している。自動車用部品の需要が想定を上回るペースで回復しているほか、スマートフォンやウェアラブル機器向け部品も高水準を維持していることが上振れの背景だ。上期までの停滞から脱し、国内外で急拡大を遂げており、この勢いに乗って22年3月期は2ケタ成長が見込まれる。
【日本電子材料 <6855> 】
日本電子材料は半導体製造の前工程に使用されるウエハー検査用プローブカードで世界トップクラスのシェアを誇る。アジアを中心とする海外販売の強化に向けて、工場を新設するなど成長投資にも余念がない。足もとでは新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの普及加速などが収益環境にフォローの風となっている。データセンターやパソコン向けに需要が拡大したメモリーIC向けプローブカードの販売が進み、4-12月期業績は売上高132億4700万円(前年同期比17.8%増)、経常利益17億5300万円(同2.2倍)と業績高変化を遂げた。利益の源泉であるトップラインは21年3月期に14期ぶり過去最高を達成する見通しにあり、22年3月期は経常利益のピーク益更新が期待される。
【メルコホールディングス <6676> 】
パソコン周辺機器のバッファローを傘下に持つメルコホールディングスもテレワークの拡大が追い風となり、収益を大きく伸ばしている。主力のIT関連事業はWi-Fiルーターを中心に販売が好調なうえ、空気清浄機などの代理店ビジネスも拡大している。また、製麺大手のシマダヤが展開する食品事業では広告販促費の削減効果で採算が大きく改善し、21年3月期の経常利益は前の期比66.9%増の82億円と、過去最高を打ち出した11年3月期(109億5400万円)以来の利益水準を見込む。同社は配当と自社株買いを合算した総還元性向目標80%を掲げており、株主還元に積極的であることも注目ポイントだ。
【アイロムグループ <2372> 】
アイロムグループはSMO(医療機関向け治験支援)を主軸に、海外を中心としたCRO(医薬品開発受託)、医療モールの運営なども展開する。子会社IDファーマで新型コロナウイルスワクチンの開発を進めるほか、直近では世界初のiPS細胞由来化粧品原料の開発に成功するなど、高度な技術と開発力には定評がある。足もとの業績は、SMO事業が新型コロナウイルス感染拡大の影響で臨床試験に延期や中断が発生したものの、オーストラリアでCRO案件の新規受託が引き続き増加したうえ、先端医療事業やメディカルサポート事業の増収効果も寄与し、4-12月期業績は2ケタ増収増益を達成した。SMO事業が本格回復すれば、22年3月期は経常利益ベースで17期ぶりの最高益更新が見えてきそうだ。
【プロトコーポレーション <4298> 】
中古車情報サイト「グーネット」を運営するプロトコーポレーションは、広告収入中心のビジネスモデルからSaaS型モデル(システム利用による月額定額課金)へと安定的な収益構造に転換している。中古車領域に次ぐ柱として、新車ディーラー向け営業支援ツールや整備工場の検索サイトに注力しており、自動車業界全体のDX化ニーズを取り込む構えにある。業績面に目を向けると、直近3ヵ月の10-12月期は降雪に伴うタイヤ販売の好調に加え、生産性向上なども寄与し、経常利益は20億4500万円と四半期ベースの過去最高を更新した。これを踏まえ、通期の同利益予想を56億6000万円へ上方修正している。新車販売の回復につれて中古車流通の増加が見込まれるなか、今期は11年3月期に記録した最高益63億7500万円の更新に期待がかかる。
◇22年3月期に“10年超ぶり”最高益が期待される6銘柄
最高益 ┌── 経常利益 ──┐
コード 銘柄名 間隔期数 21年3月期 過去最高/決算期
<2760> 東エレデバ 21 4100 4852(2001年3月期)
<6928> エノモト 21 1500 1651(2001年3月期)
<6855> 電子材料 15 2200 2843(2007年3月期)
<6676> メルコ 11 8200 10954(2011年3月期)
<2372> アイロムG 17 1300 1653(2005年3月期)
<4298> プロト 11 5660 6375(2011年3月期)
※「最高益間隔期数」は22年3月期の経常利益予想が過去最高益となった場合、何年ぶりの最高益となるかを表したもの。
※経常利益の単位は百万円。
株探ニュース
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