ソフト99コーポレーション<4464>は1954年(昭和29年)創業の自動車用、家庭用ケミカル用品の製造販売会社である。事業セグメントとしてはファインケミカル事業、ポーラスマテリアル事業、サービス事業、不動産関連事業の4つのセグメントで区分している。自動車分野を中心にM&Aも活用しながら業容を拡大しており、直近では2020年8月に病院向け衛生関連用品の企画開発・販売会社であるアズテック(株)を子会社化した。現在、グループの連結子会社数は9社となっている。
直近5期間の事業セグメント別構成比を見ると、売上高はファインケミカル事業が約5割と安定して推移しており、子会社化したアズテックをポーラスマテリアル事業にセグメント分けしたこともあり20%台前半から20%台後半に上昇している。逆にサービス事業や不動産関連事業はそれぞれ低下傾向となっている。また、セグメント利益の構成比で見ると、2021年3月期にファインケミカル事業の構成比が従来の5割強から7割まで上昇した。新型コロナウィルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による生活様式の変化によって自動車用、家庭用品等製品の販売が伸長したことによる。また、ポーラスマテリアル事業は2021年3月期を除いて30%前後で推移しており、両事業が主軸となっているが、そのほかの事業も安定して収益を得ており、バランスのとれた事業ポートフォリオになっている。市場別売上構成比で見ると、自動車分野向けが5割強(2023年3月期)を占める主力市場となっている。
1. ファインケミカル事業
ファインケミカル事業は大きく分けて、コンシューマ向けに販売されるカー用品(ボディケア、ガラスケア、リペアグッズ等)や家庭用品(メガネケア製品、クリーナー等)、自動車ディーラーや自動車美装業者、あるいはその他業界向けに販売される業務用製品(コーティング剤等)のほか、海外事業(主にカー用品)、タイヤ空気圧監視システム(以下、TPMS)、電子機器・ソフトウェア開発、その他(輸入販売・樹脂容器販売含む)の7つに区分される。2023年3月期の売上構成比を見ると、コンシューマ向けカー用品が全体の57%を占め、次いで海外事業が18%、業務用製品が14%、家庭用品等が8%、電子機器・ソフトウェアが4%、TPMSが1%となっている。
コンシューマ向けカー用品の市場シェアを見ると、カーワックスを中心としたボディケア分野で3~4割となっている。競合大手はプロスタッフやウィルソン、シュアラスターなどで、同社を含めて4~5社で競っている。また、ガラスケア分野は、撥水剤において約7割の市場シェアを持ち、雨天でも視界を確保するガラスコーティング剤「ガラコ」シリーズが高い支持を集めている。競合は錦之堂やシーシーアイなどがある。リペアグッズ(補修材)は約6割の市場シェアを持ち、市場は同社と武蔵ホルトの2社で寡占市場となっている。
海外事業では主に中国や東アジア、東南アジア向けに、現地代理店経由でコンシューマ向けカー用品や業務用製品の販売を展開している。ここ数年では欧州各国やインド、ブラジル等の新市場の開拓にも注力している。なお、海外向けでは自社製品のほか、現地のニーズに合わせてエンジンオイルやオイルフィルター、凍結材など仕入商品の販売も行っている。
業務用製品は、主にコーティング剤を自動車美装業者向けに販売しているほか、自動車メーカーやディーラー向けにOEM製品も販売している。また、ここ数年は飲料用自動販売機や船舶、鉄道車両など、自動車業界以外の市場開拓も進めており、同事業の1割弱の比率を占めている。同社の製品は、耐久性能や品質面での評価が高く、外車専門ディーラー向けでも多く採用されている。業務用コーティング剤の競合としては、自動車メーカー・ディーラー向けで中央自動車工業<8117>のシェアが高い。また、2回目以降のコーティング費用を低価格で済ませたいユーザー向けには、KeePer技研<6036>がガソリンスタンド等を通じて販売している。
家庭用製品ではメガネケア製品で業界トップシェアを確立しているほか、各種衛生用品の製造販売を行っている。TPMS事業では、国内の運送事業者向け(トラック・バス)を中心に開発販売している。2020年3月期からは乗用車向けOEM製品の販売を開始した。TPMSとは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサーで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムで、エアバルブと一体化したセンサー付き発信器をホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線で信号を送信、モニタに数値データ等の情報を表示する。トラック運送事業者などは、車体の不具合に起因する交通事故を未然に防止するため、運行前点検の厳格化が指導されている。タイヤ空気圧も点検項目となっており、TPMSを搭載すれば点検作業が省力化できるほか、走行中の「安心・安全」にもつながる。このため、ここ2~3年で主に長距離トラックの運送業者向けに普及が進んでいる。運送会社ではドライバー確保のために、より安全な環境整備に取り組んでおり、TPMSもそのツールになるものとして関心が高まっている。
2019年3月期より新たに加わった電子機器・ソフトウェア開発事業は、主に工場の受変電設備や道路・河川の状況を計測・制御するための遠隔監視システムやコインパーキングの緊急電話システム、これらシステムを制御するための組込みソフトウェアの開発・販売を行っている。
ファインケミカル事業の直近5年間の営業利益率は、10%台で安定して推移している。コンシューマ市場で高いシェアを獲得できていること、利益率の高い業務用製品の販売が着実に伸びていることが要因とみられる。海外事業の収益性に関しては仕入販売が含まれていることもあり低水準だが、現地専売品など付加価値の高い製品を投入していくことで改善に取り組んでいる。また、TPMS事業や電子機器・ソフトウェア開発事業の損益への影響は軽微となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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