年末年始(12月25日‐1月5日)の新興市場は上昇。同時期の騰落率は、日経平均が+0.63%だったのに対して、東証グロース市場指数は+2.83%、東証グロース市場250指数は+2.44%と大幅高となった。クリスマス休暇入りに伴い、例年通り、売買主体は機関投資家から個人投資家に移ったことなどから、直近IPO銘柄や東証グロース市場Core指数20など主力銘柄に資金が向かい「掉尾の一振」を思わせる強い動きが見られた。ただ、大発会後、為替市場で1ドル=145円台まで円安ドル高が進行したことなどから、東証プライム市場の大型株が強含む格好に。5日は東証グロース市場Core指数20など主力株に利益確定売りが入ったことから、東証グロース市場指数、東証グロース市場250指数ともに前日比2%強の大幅安となった。
個別では、国際オリンピック委員会(IOC)が「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」の26年大会の開催を日本に打診しているとの報道が材料視されてウェルプレイドR<9565>の上げが目立ったほか、能登半島地震発生に伴う思惑から地盤調査などを手掛ける地盤ネット<6072>、ITbookHD<1447>も買われた。東証グロース市場の時価総額上位銘柄では、介護、看護、保育の人材紹介・派遣が主力のトライト<9164>、宇宙開発のispace<9348>が上昇。一方、デジタルマーケティング支援のMacbee Planet<7095>、ネット生命保険を手掛けるライフネット生命<7157>がさえなかった。なお、12月最終週に東証グロース市場へ上場した2社は明暗が分かれた。12月25日に上場したナルネットコミュニケーションズ<5870>の初値は公開価格を割り込み、初値形成後もさえない株価推移となった。一方、27日上場のyutori<5892>は、公開価格を上回った後、上昇。短期資金が流出入する荒い展開となり連日大商いとなった。
■上値の重さが意識されるところ、短期資金中心の地合い継続か
来週の新興市場はもみ合いか。東証グロース市場指数は75日移動平均線に頭を押さえられたほか、東証グロース市場250指数も700ポイントの大台を維持できなかったことで、ともに上値の重さが意識されるところ。また、1月1日に発生した能登半島地震を受けて、1月の日本銀行金融政策決定会合では、経済への影響を考慮して金融政策の正常化は先送りするとの観測が強まったほか、足元の米労働市場の堅調さが確認できたことなどから米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測も後退。米10年国債利回りが4%台を回復したことから、為替市場では円安ドル高が進みやすくなっている。為替の円安推移は内需株中心の新興市場にとっては、物色の対象外となることから逆風である。テクニカルや外部環境を考慮すると、新興市場には投資資金が向かいにくいと言えよう。
とはいえ、全体の方向性が乏しいことも影響してか、短期資金の流出入は引き続き活発となろう。1月はIPOが予定されていないこともあり、直近IPO銘柄のQPS研究所<5595>、yutori、雨風太陽<5616>あたりは、引き続き値幅取りの動きが続きそうだ。また、能登半島地震に関連した思惑的な売買も継続しそうだ。一方、新しい少額投資非課税制度(NISA)の資金は配当利回りが高いプライム市場に向かっており、成長期待のNISA資金が新興市場に入っている様子はない。新興市場で「テンバガー」を目指す長期的な投資スタイルも悪くないと思うが、新興市場全体の上値が重いことから、短期資金中心の地合いが続きそうだ。
<FA>
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