2022年3月期から第5次中期経営計画が始まった。数値目標として、2024年3月期の売上高を1,150億円、経常利益を115億円、ROSを10%と過去最高の業績を目指す。3ヶ年で、売上高は15%、経常利益が40%増加することになる。前提条件として、国内粗鋼生産が少子高齢化により内需が漸減して年9,000万トンにとどまり、為替レートを1米ドル当たり105円とした。今後3年間の設備投資額は140億円と前中期経営計画の110億円を上回る。これまで生産基盤を強化することで競争力を高めてきたが、今後も積極的な設備投資により国内市場でのシェア拡大を図る。グループ各社が新製品を開発するだけでなく、グループ企業の強みを組み合わせて、環境配慮型経営に取り組む顧客のニーズに適した提案をすることで事業機会を創出する。株主還元策としては、配当性向の基準を従来の20%から30%に引き上げた。利益の増加と相まって、株主が恩恵を受ける配当政策となる。
1. 第5次中期経営計画の基本方針
2009年10月の合併後に打ち出した第1次と第2次中期経営計画の基本方針は、最適生産体制の構築と統合効果の実現であった。第3次中期経営計画で基盤整備と品種競争力の徹底強化を行い、第4次では“飛躍”を狙った。しかし、最終年度の2021年3月期に米中貿易摩擦の激化に加え、コロナ禍に見舞われた。
第5次では、『国内鉄鋼需要の漸減下においても、お客様の様々なニーズに即した新商品の提供と、これまでの生産基盤強化で得られた競争力をさらに伸長させ、過去最高業績を目指す』を掲げている。日本の鉄鋼メーカーは、人口減少等を背景に国内市場規模が縮小傾向をたどることから、量より質に経営方針を移行させており、高炉の休止、製鉄所の閉鎖など事業規模縮小の方向にある。しかし、海外では、アジアを中心に鉄鋼需要の増加を見込んでいる。同社は、国内市場では材工一式販売、施工機械・技術の提供、省エネなどの材料・設計の提案、グループ企業連携強化により、競争力を高め、事業機会の創出を図る。既存の主要な顧客である高炉、電炉、セメント業界における市場占有率を高めると同時に、非鉄、工業炉、機械メーカー向けの拡販を図る。海外では、販売力の強化や有力提携先の選定、現地生産化を進め、JFEスチールの海外事業との連携により、海外売上高比率の一層の上昇を狙う。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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