1. 市場動向
オプティム<3694>の成長を後押しするのは、第4次産業革命※1の進展である。近年、PCやモバイル機器にとどまらずネットワークカメラやセンサー、ウェアラブルデバイスなどのIoT(モノのインターネット)が急速に普及しており、同社によると2025年にはIoT機器が416億台インストールされると予測されている。これに伴い、生成されるデータ量も爆発的に増加し、2025年には世界のIoT機器のデータ生成量は79.4兆GB(2020年の約4倍)に達すると推計されている。ビッグデータの加速度的増加は、その中から有益な情報を導くためのAI利用を後押しする。同社は、IoT機器の管理を行う「Optimal Biz」及びIoT・AIを利用するためのプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」等により、第4次産業革命を前進させる鍵となるソリューションを提供していることが強みの1つであると言える。なお、同社が対象とする市場は、推計160兆円(450億台×300円/月※2)のポテンシャルがある巨大市場である。
※1 IoT・AI、ビッグデータなどの情報通信技術の発展により、産業構造が大きく変わり、新たな経済価値が生まれること。
※2 「450億台」はIoT機器出荷台数予想。「300円/月」は「Optimal Biz」平均月額単価。
2. 事業領域
(1) 「Optimal Biz」(Corporate DX)
「Optimal Biz」は、2009年に提供が開始された同社を代表する「Corporate DX」サービスである。MDMツールに分類され、企業向けのスマートフォン・タブレット・パソコン・IT機器といったモバイル端末の管理やセキュリティ対策を、ブラウザ上から簡単に実現することができる。KDDIやNTT東日本、富士フイルムホールディングス<4901>、パナソニックホールディングス<6752>、リコー<7752>、大塚商会<4768>などの多数の販売パートナーを通じての提供や、OEM提供による販売パートナーのサービスとして提供されており、同社は端末数に応じたライセンス料(1端末エンドユーザー標準価格は300円/月)を受領する。国内MDM市場は年率10%以上の安定成長をしており、同社はその市場で11年連続シェア1位※1を獲得、導入実績は18万社以上※2に達し、デファクトスタンダードの地位を確立している。また、平均解約率がサブスクリプションサービスの業界平均を大きく下回る約0.5%であることからも、顧客満足度の高さが窺える。2021年3月期には、コロナ禍対策によるテレワークの需要を取り込み、ライセンス売上のさらなる拡大を見込むべく、テレワーク環境下でのコミュニケーションサポート、業務サポート、生産性向上サポートを実現するサービス「Optimal Biz Telework」の提供も開始した。
※1 デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2021年度版」MDM出荷ID数(SaaS・ASP含む)、他複数の調査レポート。
※2 2019年6月25日時点での同社集計による。
(2) 「Optimal Remote」(Corporate DX)
「Optimal Remote」はカスタマーサポートなどのシーンで活躍している「Corporate DX」のソリューションである。顧客デバイスとの画面共有・遠隔操作により、これまで口頭説明に費やしていたサポート時間を大幅に削減でき、従来サポートの約60%の時間で問題を解決できる。また画面転送や遠隔操作の各種レスポンスにおいて、他社製品を圧倒する速度を実現することで、サポートプロセス全体の高速化・短縮化を果たす。同サービスは、コロナ禍に伴い遠隔からのサポートの需要が高まったことにより、ライセンス数は順調に伸びている。一例を挙げると、店舗での対応が困難となったスマートフォンのサポートなどに活用されているようだ。また2022年3月期には、Web画面共有サービス「Optimal Remote Web」及びデバイス管理者のWebブラウザから一元的にデバイスの遠隔操作が行える「Optimal Remote IoT」もリリースした。
(3) 「Optimal Second Sight」(Industrial DX)
「Optimal Second Sight」は、スマートグラス、スマートフォン、タブレットのカメラを用いて現場の映像を共有し、各種支援機能を用いて現場作業をサポートできる遠隔作業支援サービスである。同サービスもコロナ禍における需要を取り込んだことにより、ライセンス数が増加した。拠点間の移動が制限されるなか、従来は現地にて確認等を行っていた業務について、遠隔地から状況を確認し、サポートを行うことができる点で、まさにニューノーマルのニーズに合致していると言える。
(4) 「OPTiM AI Camera」(Industrial DX)
同社は、2018年に戦略商品「OPTiM AI Camera」及び派生サービスをリリースし、AIを用いた画像解析のデファクトスタンダードを目指している。まず「OPTiM AI Camera」とは、既設の監視カメラを活用し、クラウド上で画像解析を行うサービスであり、画像解析のための専用ハードウェア導入が不要なため、手軽に導入が可能なサービスだ。次に「OPTiM AI Camera Enterprise」とは、店鋪や施設など業界別・利用目的別に設置された様々な種類のカメラからデータを収集し、学習済みモデルを活用して画像解析を行うことでマーケティング、セキュリティ、業務効率などの領域を支援するサービスになる。「OPTiM AI Camera Enterprise」では「OPTiM Edge」などの専用ハードウェアを設置し、ネットワークカメラにて取得された画像を解析することで、高速かつ高度なAI画像解析が可能となる。さらに、基本機能を網羅した使い放題パックと各業界に特化したオプション機能、顧客専用の画像解析ソリューション開発を支援するプロフェッショナルプランを提供しているため、多種多様なニーズに幅広く対応ができる。3つ目のサービスとなる「OPTiM AI Camera Mobile」は、スマートフォンやタブレット端末に専用アプリをインストールして設置するだけで、設置場所の映像を解析できる。端末のカメラで撮影して解析を行うため、監視カメラや解析用端末などの外部機器を一切必要としない点が画期的だ。小売店や飲食店などの顧客属性分析(年代・性別)、人数分析などが行え、モバイル端末1台あたり月額1,950円という価格も魅力である。なお、2022年3月期には「ダムの遮水壁点検業務の高度化・効率化」や「車両検知による駐車場の混雑状況可視化」など、様々な業種での利用事例を発表している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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