1. 会社概要
Jトラスト<8508>は、東証2部に上場しており、傘下に国内外の金融事業などを有するホールディングカンパニーである。藤澤信義(ふじさわのぶよし)社長のもと、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に2019年12月期の資産合計は7,000億円超の規模に拡大している。現在は、事業ポートフォリオの再編を進めている。2020年8月以降、不動産事業のキーノート(株)(現(株)グローベルス)、Jトラストカード(株)、韓国の貯蓄銀行2行の売却などを発表しており、大きな変革期にあると言える。
2. 2020年12月期第3四半期の業績概要
同社では、海外子会社の増加に伴い、前連結会計年度(2019年12月期)より決算期を3月から12月に変更したことで、2019年12月期は4月から12月までの9ヶ月決算となった。よって、当第3四半期累計期間と比較対象となるのは2019年12月期通期となる。当2020年12月期第3四半期の営業収益は38,845百万円(前期は37,698百万円)、営業損失は1,224百万円(前期は3,926百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,226百万円(前期は3,260百万円の損失)となった。世界的な新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴い経済活動が停滞するなか、日本及び韓国での金融事業が堅調な業績を維持し、親会社の所有者に帰属する四半期利益は黒字転換した。セグメント別営業利益では、日本金融事業は3,427百万円(前期は3,082百万円)となり、保証・債権回収ともに引き続き堅調に推移してグループの業績をけん引した。一方、韓国及びモンゴル金融事業は、2,341百万円(前期は3,929百万円)となった。大規模な買取債権の売却を行い18億円の債権売却益を計上した前期と比較すれば減益となったが、堅調に推移した。なお、JT親愛貯蓄銀行の業績は非継続事業として分類され、今期、前期ともに含まれていない。しかし、JT貯蓄銀行の業績は、2020年12月期第4四半期に非継続事業として分類されるため、当第3四半期の業績には含まれている。再建に向けて改革を継続している東南アジア金融事業は、コロナ禍の影響を見極めるため慎重姿勢を維持したため、4,322百万円の損失(前期は4,624百万円の損失)となった。
3. 2020年12月期の業績見通し
同社は、コロナ禍により世界各国で経済環境が急変し、産業構造が大きく変動しているなかにあって、事業の収益性の今後の見通しについて、抜本的な見直しが求められているとの認識のもと、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直し、株主価値の最大化を目指すべき好機を迎えていると考えている。この方針の一環として、2020年12月期第3四半期には、日本金融事業ではカード会社を、韓国及びモンゴル金融事業では貯蓄銀行2行を戦略的に売却することを決定した。なお、売却が決定した貯蓄銀行2行のうち、JT親愛貯蓄銀行の売却においては、JT親愛貯蓄銀行の親会社であるJトラストカードの株式と譲渡先であるNexus Bank<4764>との株式交換方式を行っている。同社はNexus Bankの優先株式の転換価額を127円で引受している一方、Nexus Bankの現在株価は転換価額を大きく上回って推移しており、キャピタルゲインが追求しやすい環境にあるとともに、保有株式の評価益も業績に寄与するものと考えている。また、今後についても事業ポートフォリオの価値の見直しを更に加速させ、株主価値の最大化に努める方針を進めていくなかにあって、業績予想の合理的な算定は極めて困難と判断し、2020年12月期業績予想については未定としている。なお、配当については前期並みの年間1円を予定する。
4. 中長期の成長戦略
これまで同社グループでは、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的に利益を確保する一方で、中期的には成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、持続的な成長を目指す方針であった。ただ、コロナ禍の影響により世界各国で経済環境が急変し、先行き不透明感が増しているなか、現在は「ウィズコロナ」状況下での経済に最適化した事業ポートフォリオの再編を模索している。藤澤社長の強力なリーダーシップのもと、各国の政治や経済の情勢、事業の収益性などを総合的に判断し、グループ全体の事業の選択と集中を進めると弊社では見ている。
■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ
・2020年12月期第3四半期は、コロナ禍に対応した事業ポートフォリオの抜本的な見直しに着手し、親会社の所有者に帰属する四半期利益は黒字転換
・株式交換で得たNexus Bankの株価が転換価額を大きく上回っており、業績貢献が期待できる
・事業ポートフォリオの価値を見直し、株主価値の最大化に努める
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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