(2) ココナラ<4176>の強み
「ココナラ」の強みはサービスの品揃えが豊富であること、サービスに対するレビューが付くことから購入者は客観的なレビューを参考にして購入できるため安心感があること、トラブル対策や不適切出品の監視などプラットフォームの安全性・信頼性を維持向上するための体制を強化していること、システムはすべて社内開発しているため迅速な機能の改良・改修が可能であること、などが挙げられる。
「ココナラ」のサービスには制作・ビジネス系と相談・プライベート系があり、流通高に占める構成比率は2022年8月期で制作・ビジネス系が61%、相談・プライベート系が39%と制作・ビジネス系が年々上昇傾向にある。制作・ビジネス系のうち約半分は「デザイン」「イラスト・漫画」「Webサイト制作・Webデザイン」のカテゴリとなる。一方、相談・プライベート系のうち約26%は「占い」で、「占い」の約半分は電話相談サービスとなっている。「占い」の構成比率は2019年8月期の44%から低下しているが、流通高そのものは2019年8月期の約17億円から2022年8月期は約33億円と2倍弱伸びている。
「ココナラ」に出品できるサービスは個人の知識・スキル・経験を生かしたもので、同社が定めたルールの範囲内であればすべて可能なため、時代のニーズに合わせて自然発生的に新たなサービスができることも特長の1つとなっている。例えば、「仮歌・歌入れ」や、Vtuberの「キャラクターモデリング」など一般的に認知度の低いカテゴリや、新しいトレンドを掴んだカテゴリで需要が生まれている。2022年8月末時点でカテゴリ数は450を超え、出品数では70万件を超えるなど、2番手以下を大きく引き離して業界トップを走っている。
なお出品が禁止されているのは、知的財産権や著作権等の侵害または侵害を助長するサービス、法律・法令に違反しているサービス、公序良俗に反するサービス、「ココナラ」外での取引を促しているサービスなどとなる。こうした禁止サービスの出品を防止するため、CS(カスタマーサポート)部門でAIによる画像認識技術も用いながら全件チェックを行っている。また出品者と購入者の間でトラブルが発生した際には、CS部門で仲裁に入る。両者のやり取りはすべて「ココナラ」を通して行われるため、その履歴を確認してトラブルの解決にあたる。トラブルとなるケースは月に数十件程度で全体の取引件数(13~14万件)の0.1%未満と極めて少ない。CS部門は2022年8月末時点で41人体制となっており、流通高の増加とともに人員も増強している。こうした運営サイトの安全性や品質を維持する取り組みを強化することが、「ココナラ」のブランド力向上につながり、強みともなっている。
リスク要因として、売り手と買い手が直接取引を行う(中抜き)リスクが挙げられる。同社は中抜き防止策として、出品者と購入者のやりとりをすべて「ココナラ」内のテキストチャットやビデオチャット、電話などで行うように設計しているほか、個人情報(メールアドレス、電話番号等)をやり取りすることを禁止している。機械学習を使いながら中抜きの意図のあるコミュニケーションを検知する体制を整備しており、検知した場合は違反者に対して警告し、繰り返す場合にはアカウントの停止や売上がなくなるリスクのあることを明示している。「ココナラ」出品者は個人事業者で「ココナラ」で生計を立てている人も多く、アカウントが停止されるような違反者はほとんどいないと言う。
また、同様のマッチングサービスを行う競合に対する優位性の1つとして、出品数の豊富さに加えてレビュー数が圧倒的に多いことも挙げられる。形が見えないサービスを購入するため、最初の取引を行う際には購入者側は特に慎重に出品者を選定することになるが、その際に客観的なレビューが多ければ判断基準として活用でき、購入に対しても安心感が醸成されるためだ。ここ数年ビジネスユースで購入が増加しているのも、こうした客観的レビューの積み重ねが一因と考えられる。
こうした強みを既に確立していることで参入障壁も高く、新規事業者が参入するリスクも低いと弊社では考えている。海外事業者が日本市場に参入してくる可能性もあるが、サービス品質の違いや言葉の壁などもあり、現時点でそのリスクは極めて小さいと考えられる。なおサービス分野におけるマッチングサービスとして、クラウドワークス<3900>やランサーズ<4484>などが展開しているクラウドソーシングがあるが、異なるビジネスモデルとなっているため同社の脅威にはならないと見ている。クラウドソーシングは発注者(購入者)が案件を公募し、カテゴリも制作系かつビジネス利用のみとなっている。このため発注者は法人となるが、クラウドソーシングの場合は発注者を開拓するための営業人員が必要で、案件数の増加は営業力(人的リソース)に依存する格好となる。
一方、「ココナラ」ではサービス提供者が出品するため、出品数を増やすための営業人員は不要であり、購入目的の会員数を増やしていくためのマーケティング施策が重要となる。同社のマーケティング施策はユニットエコノミクスを考慮したマーケティング手法を用いている。具体的には、実績LTV(顧客生涯価値)を踏まえ、会員獲得時のCPA(顧客獲得コスト)からROI(投下資本利益率)を勘案することで回収期間を厳密にコントロールしている。会員獲得の大半はSEO対策によるオーガニックで獲得しており、新規会員獲得の費用回収期間※1は1ヶ月となっている。また、Web広告はマーケティングチームを社内で組織し、1年程度で投資費用を回収※2している。一方、認知度向上やブランディング強化を目的としたTVCMも一定期間ごとに実施してきた。投資金額が大きくなるが、過去実績では3年程度で投資費用を回収※3している。そのほか、友達紹介キャンペーン※4やタクシー広告など新たなマーケティング施策についても取り組み始めている。
※1 「1-(一定期間におけるWeb広告(有料)による獲得ユーザー数÷当該期間における新規獲得ユーザー総数)」で計算(TVCM及び関連アドホック施策含まず)。
※2 ROIがプラスになるまでに要する期間。
※3 TVCM期間直前の新規会員獲得水準を上回ってTVCM期間中に獲得したユーザーによる収益を「直接効果」、TVCM期間前の成長トレンドを考慮した獲得水準を上回ってTVCM期間終了後に獲得したユーザーによる収益を「間接効果」(2019年度、2020年度のTVCM効果及びWeb広告を含むTVCM以外の広告効果その他の要因を捨象した試算値)。
※4 「招待コード」を使ってココナラへ会員登録すると、「紹介者」「紹介されたお友達」の双方に特典(期間限定ポイント等)を進呈するキャンペーン。
「ココナラ」では出品者・出品サービスの増加とともに購入者数及びレビュー数が増加するなど、連鎖的な成長サイクルによってプラットフォームの価値が向上し、さらに会員数、流通高が伸びるといった好循環が続いている状況にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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