―暇つぶしではなくオリジナル景品を求める人が増加、インバウンド需要も取り込む―
9月に入っても暑い日が続いている。気象庁は9月1日、今年の夏(6~8月)の日本の平均気温が、1898年の統計開始以降で最も高くなり、最高気温が35度以上の「猛暑日」の日数は全国38地点で最多となったと発表した。また、東京都心ではきょうまで64日連続で最高気温30度以上の真夏日を記録した。
猛暑のなか、暑さを避けるために屋内施設に遊びに行く人が増えたのも今年の夏の特徴で、屋内アミューズメント 施設(屋内AM施設)の人気が上昇している。AM施設はコロナ禍による影響を受けたものの足もとは回復基調にあり、猛暑がそれに拍車をかけた。今夏の動向は今後発表される決算に反映されるため、関連銘柄には今から注目しておきたい。
●屋内施設がお出かけ先として人気
新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが、5月に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したこともあり、人々の外出意欲が増している。一方で、猛暑日や熱中症警戒アラートが出ている時は不要不急の外出を避けるよう注意を促す動きも見られ、これが屋内施設へ向かう動きにつながっている。
国内最大級の子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営するアクトインディ(東京都港区)が8月に行った調査でも、夏休みはどこにお出かけしたか(する予定か)聞いたところ、「プール」「お祭り」「花火大会」といった夏の定番スポットのほか、「ショッピング」「室内遊び場」「博物館など」の屋内施設が人気だった。また、「猛暑のお出かけ時に工夫したこと」の質問では「屋外ではなく屋内の施設に出かけるようにした」という回答も5割を超えたという。
●屋内AM施設の変化と進化
人出が屋内AM施設に向かうようになったのは、AM施設の変化と進化が大きな要因として働いている。
屋内AM施設といえばかつての主力はテレビゲームやメダルゲームだったが、現在ではユーザーの嗜好の変化に対応し、クレーンゲームなどのプライズ(アミューズメント専用景品)ゲームが多くを占めるようになった。特に、アニメやゲームなどのキャラクターグッズの人気が拡大。プライズゲームで獲得できる景品の多くはオリジナルの「限定品」であることも人出を呼び込んでいる。
かつて屋内AM施設は「時間つぶし」や「買い物など何かのついで」で訪れる人が多かった。ただ現在では、暇つぶし的ニーズはスマートフォンの動画やゲームに吸収されるようになり、屋内AM施設には前述のようにプライズやカプセル玩具などの限定品を目当てに訪れる人が増えている。また、プライズに多く用いられるアニメキャラクターは外国人にも人気があり、急回復するインバウンド関連としても注目されている。
●AM施設大手に注目
株式市場でも7月28日にGENDA <9166> [東証G]が東証グロース市場に新規上場したことも屋内AM施設関連への関心を高めるのに一役買っている。
同社は「GiGO」などのブランドで屋内AM施設を運営している。これまで積極的なM&Aで店舗網を拡大しており、2020年12月にセガサミーホールディングス <6460> [東証P]傘下でAM施設運営のセガ エンタテインメントの株式を取得。21年にはバンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]から米イリノイ州のAM施設を取得した。更に22年10月には民事再生手続き中だったスガイディノス(札幌市中央区)からゲームセンター事業及びボウリング事業などを譲受。今年8月末時点で国内256店舗、海外5店舗を運営するほか、スタッフの常駐しないゲームコーナーを95カ所運営している。
バンナムHDは、売上高の約1割をアミューズメント事業が占めており、今年6月末時点で直営店を国内246店舗、海外21店舗展開している。直近の第1四半期(4~6月)連結決算では、アミューズメント事業は施設と業務用ゲーム機販売の両輪がバランス良く推移し、売上高は前年同期比22.7%増と伸長。セグメント利益も同49.4%増となった。これを受けて上期のセグメント売上高計画を期首予想の540億円から570億円へ、利益を30億円から50億円へ引き上げている。
イオンファンタジー <4343> [東証P]は、子どもをターゲットとした屋内AM施設を展開しており、今年8月末時点で国内678店舗、中国186店舗、ASEAN254店舗の計1118店舗を展開している。直近の第1四半期(3~5月)連結決算では、中国におけるゼロコロナ政策の影響が残り営業損益は6400万円の赤字(前年同期3億2500万円の赤字)となったが、国内は既存店売上高が前年同期比7.5%増となったことなどを牽引役に大幅増益を達成。引き続きプライズ部門が好調だったほか、メダル部門の回復も顕著だった。7月も国内既存店売上高は前年同月比11.5%増と2ケタ増の好調が続く。
●景品の企画・販売を手掛ける企業なども注目
バンナムHD、イオンファン、GENDAはAM施設の業界トップ3といわれるが、このほかにも屋内AM施設に関連する銘柄は多い。
ラウンドワン <4680> [東証P]はボウリング、カラオケ、ゲーム、時間制スポーツなどの複合型エンターテインメント施設を運営しており、今年6月末時点で国内99店舗、米国48店舗、中国4店舗を運営。国内既存店売上高は8月まで5カ月連続前年比プラスで推移している。近年では既存店舗の一部エリアを改装し、クレーンゲーム機を約300~600台設置した「ギガクレーンゲームスタジアム」の展開に注力しており、今年8月1日時点で70店舗を展開。特に、米国や中国でアミューズメントを中心とした小型店の出店を加速させる方針だ。
共和コーポレーション <6570> [東証S]はAM施設運営とアミューズメント機器販売事業を展開しており、屋内AM施設は信越・関東エリアを中心に今年6月末時点で60店舗運営している。直近の第1四半期(4~6月)連結決算でAM施設運営事業の売上高は前年同期比13.5%増、営業利益は同5.0%増と伸長しており、全体業績を牽引している。
施設運営以外でも、プライズゲーム用景品の企画・製作・販売を行うフォーサイド <2330> [東証S]、屋内AM施設で引き続き高い人気を誇るプリントシール機首位で、アニメキャラクターを中心にプライズ商品も多く手掛けているフリュー <6238> [東証P]、プライズゲームと並んで人気の高いカプセル玩具の大手であるハピネット <7552> [東証P]、プライズゲームの景品やカプセル玩具、キャラクター雑貨などの企画・販売を行うエスケイジャパン <7608> [東証S]なども屋内AM施設市場の成長の恩恵を受ける企業として注目したい。
株探ニュース
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