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IGS、通期は大幅増収増益で着地 今期は既存2事業のシェア拡大に加え、Web3の時流を捉えたビジネスを推進
会社概要
福原正大氏(以下、福原):Institution for a Global Societyの福原正大と申します。どうぞよろしくお願いします。本日はお忙しい中、私たちIGSの決算説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。昨年末に上場し、今回初めての決算説明会ですので、不慣れな点もあるかと思いますがよろしくお願いします。
私どものことをあまりご存じない方も多いかと思いますので、まずは簡単に会社概要をご説明します。その後、2022年3月期の通期決算の概要と2023年3月期の業績見通しについてお話しし、最後に成長戦略についてご説明したいと思います。
まず会社概要についてです。私たちは、パーパスとして「分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する。」を掲げています。
私は前職のバークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)で日本法人取締役を務めていましたが、その頃から、社会が大きく変わっていく中で、どのように持続的な社会を作っていけるか、あるいはデータや人の力をどのように大きくしていけばよいのかということを考えていました。その後2010年に当社Institution for a Global Societyを立ち上げています。
今まさにESGが言われていますが、当時から考えていることは一貫しています。早い段階からESGに至ることを考えて、事業を運営してきています。
そして「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」をVisionとして掲げています。評価から教育という順序にかなりこだわっており80万人を超える方々に使っていただいている「GROW」という評価の仕組みがあります。
評価し、評価に基づいた教育を、BtoBtoCで提供するのが当社のビジネスモデルで、例えば学校の先生や企業の人事のみなさまを通じて、よりレバレッジが効いたかたちで社会を少しでもよくしていきたいという思いで、事業を行っています。
私は前職の時からデータや統計学が専門で、現在も慶應義塾大学の統計学必修の授業で教えていますが、データを作れるところが私たちの強みです。与えられたパブリックデータではなく、自ら作ったデータを使って、評価に基づいたさまざまな教育を提供し、個人がデータを安全に使えるプラットフォームを作っているところが当社の特徴です。
沿革
後ほど詳しくお伝えしますが、当初は塾の運営で創業しています。教育的な事業として、「e-Spire」という英語の自然言語処理ツールや、2016年には「GROW」をリリースしています。今でこそAIと言われていますが、早い段階からそのようなものを使ってデータをしっかり溜めながら、AIのレベルを上げていくことで成長し、昨年末に上場しました。
3つの事業セグメント(HRTech/EdTech/新規事業(BC))
事業セグメントは大きく分けて3つです。1つ目は、既存の主要事業であるHRTech、HR事業です。後ほど詳しくお伝えしますが、大企業を中心としたお客さま向けの事業です。
2つ目はEdTechです。日本中の300を超える学校に使っていただいる教育事業、こちらも主要事業となっています。いずれもすでに収益化済みですので、この2つの事業をベースにしつつ、実証プロジェクトを新規事業として展開しています。
1つ目は、慶應義塾大学と各業界を代表する12の企業と進めている「STAR」というブロックチェーン基盤です。2つ目は、昨年度に経済産業省とともに進めた「ONGAESHI」という新しい広告の仕組みです。
このように、すでに収益化している2つの事業と新たな実証事業の3本柱ですが、このブロックチェーンの実証事業は将来の成長の大きな柱になると考えています。
事業系統図
スライドにはビジネスモデルを記載しています。先ほどもお伝えしましたが、基本的に私たちのお客さまは企業や自治体、教育委員会などです。その先に構成員としての社員や学生などの個人がいますので、BtoBtoCで動いています。
事業コンセプト
「GROW」についてです。これまでにない新しい評価の仕組みや、さまざまな特許が入っているのですが、少しわかりにくいところがありますので、動画をご覧ください。
映像音声:スマホ上での他者評価やゲーム形式の性格診断で、これまで見つけ出すことができなかった優秀な人材を抽出するツール、それが「GROW360」です。仕事で高いパフォーマンスを出せる人に共通している行動特性、25個のコンピテンシーを東京大学と共同開発。
「360度コンピテンシー評価」では、その中から自社が重視するものを選択し、他者評価を行います。AIが、評価にかかった時間や関係性、指の動きを検知し、その信憑性をチェックします。「360度評価」では、自己評価をはじめ、受検者自身が自分をよく知る人物3名以上に評価を依頼、4段階で評価を行うことができます。
IATの性格診断では、ゲームのような感覚で表示される項目を指でタッチしながら分類。指の動きを分析することで、その人の気質を「Big5」に沿って診断します。国際機関でも採用されている診断方法をスマホで実施できるのは「GROW360」だけです。
IATによる気質分析「360度コンピテンシー評価」の結果を、人工知能によって分析、可視化します。「GROW360」の評価結果を基に、優秀な人材の抽出が可能になります。
まず、機械学習を取り入れた分析により、組織内のハイパフォーマーや内定者を対象に、スキルやコンピテンシーとパフォーマンスの関係性を分析。ある企業の分析では、自己効力、内的価値、組織へのコミットメントなどが重要なコンピテンシーとわかりました。
ハイパフォーマー社員や内定者の能力データを基に、学生が業務に必要なスキルやコンピテンシーを習得しやすい人物かどうか予測を行います。これにより、将来性のある学生を見落とすことなく、優秀な人材の採用が可能になります。
さらに、「GROW360」の受検者には個別のURLを発行、評価を簡単に共有することも可能です。レポートには今後のアドバイスも表示してます。人事担当者はスコアリストで自社と受検者の適合度を一覧でチェックできます。
福原:今、ご覧いただいたのが、私たちの基本エンジンである「GROW」の仕組みです。これを使って人の能力を測ります。
注目いただきたいのは、これまでAIがバイアスを含有してしまうと言われていましたが、私たちは逆にAIでバイアスを探しにいきます。このようなコンセプト自体が新しいこともあり、2017年にはハーバード・ビジネススクールのケースになりました。日本のベンチャー企業がハーバード・ビジネススクールのケースになった事例は非常に少ないのですが、世界的にも新しく、特許を持った技術が「GROW」のベースとなっています。
先ほど、3つのセグメントをお話ししましたが、私たち全体を統合する全体像は何も変わっていません。事業セグメントはどちらかというと供給者サイドの視点ですが、需要者サイドの視点で人の成長を考えると、子どもの時から亡くなる直前まで人は成長し続けるという基本コンセプトに立っています。
ご本人の立場に立ってみると、教育や人材というセグメントを分ける必要性は基本的にはありません。個人の成長をずっと見ていく中で、25個のコンピテンシーと5つの気質というキーでつないでいきます。
例えば、昨年末にはキッザニアで当社の仕組みを使っていただくことができましたし、大企業の社長にも使っていただいています。このように幅広い利用者がいるため、人材データがどんどん溜まっていき、そのデータをベースに教育コンテンツを提供しています。
HR領域においてはDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連して、リスクに対するバイアスや、新しいイノベーションを起こせるかどうかなどを探ります。
また、学校や教育機関向けでは、10年に一度変わる学習指導要領の中で、ちょうど非認知能力をより重視する方針が打ち出されました。非認知能力は世界でも注目されていますが、「GROW」はまさに非認知能力にフォーカスしている仕組みです。
このように評価・教育をしたデータを、最終的には個人がコントロールするWeb3のような世界を目指しています。Web3という世界には、プラットフォーマーがいてはいけません。個人が自らデータをコントロールし、それをどのように活用するのかを決めることこそがWeb3のコアであり、第三次プライバシー権とも関わってくる領域です。
ここに関する実証は今年度を最終年度としています。慶應義塾大学やMUFGをはじめ、多くの企業と協力してブロックチェーンプラットフォームの実証を行ってきて、ここでもしっかり売上を上げています。
慶應義塾大学から取り組みをスタートし、現在では200を超える大学の学生たちが使ってくれています。これからのWeb3の時代において、私たちのプラットフォームがさらに拡大できるようがんばっていきたいと考えています。
HR事業:事業モデル
HR事業について、収益化に関して3つのコンポーネントがあります。
1つ目は「GROW360」です。HRの場合、後ろに「360」を付けています。受検者数が1万人や2万人を超えるような大企業に使っていただく際はディスカウントしますが、受検料は1人4,000円となっています。
2つ目は、現時点では私たちがビッグデータを持っており、そのデータをベースに、企業ごとにさまざまな分析を行います。
3つ目は、その分析結果を基にコンサルティングや研修などを行います。それぞれで約3分の1ずつの売上があるため、バランスよくデータを取り、分析し、応用することができています。
教育事業:事業モデル
教育事業については基本的にサブスクリプションモデルですので、HRの売上・利益の出方とは異なります。Ai GROWは、1人あたり2,100円で、学校から人数課金で受検料をいただいています。
みなさまの学生時代には、通信簿に定性評価があったと思いますが、昨今では教師の働き方改革によって書かない学校が出てきています。やはり子どもたちにとって非認知能力というものが重要だということを知ってもらい、「GROW」による評価によって、先生のペインを抑えながらどのようなことを書けばよいのかを支援します。短期間で一気に300校以上の学校に使っていただいています。
GIGA構想やコロナ禍によって、1人1台タブレットやPCを支給する取り組みが中学校から始まり、今は高校にまで広がっています。このような背景も非常に後押しになっており、こちらのビジネスも好調という状況です。
導入事例:HR
教育事業は、クラスや学年、学校全体などで学生が使うサブスクリプションですので、わかりやすいと思います。企業ではどのように使っているかについて、すでに全社員に2回使っていただいているライオン株式会社の事例をビデオでご紹介します。
導入事例:教育
福原:以上がHRの状況についてのご説明です。このスライドでは、ご参考までに教育現場での応用事例を載せています。ここまでが私たちの会社概要です。
今ご覧いただいたとおり、私たちは人の能力のデータを可視化し、そのデータを使った教育、そしてWeb3時代にあわせ、個人がデータをコントロールする未来に対して現在進めているブロックチェーン実証という、この3つを行うところが私たちのコアになっています。
損益計算書
会社概要に引き続き、2022年3月期の決算概要についてご説明し、その次に見通しについてお話しします。ハイライトですが、おかげさまで売上および各利益段階で過去最高の決算となり、非常に手応えを感じています。
売上高は前期比40.1パーセント増の7億2,000万円で、2億円強増加しています。営業利益は2021年3月期に営業黒字を達成していますが、2022年3月期はさらに改善し着地が3,980万円と、約4,000万円に近い数字となり、前期から継続して増収増益となっています。
12月の上場時に開示した計画との比較ですが、売上はほぼ予想どおりの着地で、営業利益は経費のコントロールによって計画比28.8パーセントの上振れとなっています。また当期純利益は、繰延税金資産の約4,100万円の計上により、計画比で大幅に上振れています。
KPIハイライト
こちらは、HR事業、教育事業のKPIについてです。HR事業は先ほどお話ししたとおり、主に大企業向けのニーズにあわせたサービスを提供し、顧客数が前期から7社増えて65社となっています。
またアップセルやクロスセルを進めたことで、顧客あたりの収益も前期の470万円から540万円に上昇し、顧客数および顧客単価の双方が成長に寄与しているかたちになっています。
売上高年平均成長率も過去に引き続き50パーセント程度を維持し、マクロ環境でかなりの追い風がある中、確実に伸びている状況です。
教育事業について、学校数は165校から324校と、前期比で一気に2倍近く増え、HR事業と同様に売上CAGRが40パーセントを超えるという高い成長率を維持しています。また「GROW」の累計の登録ユーザー数も、昨年10月から半年間で全社で約5万人以上増加し、利用するお客さまが非常に増えてきています。
売上原価および販売管理費
費用面について、少しだけ補足したいと思います。前期比で、売上原価については対売上比率が6.9ポイント減少し、販売管理費については、対売上比率が3.0ポイント増加しています。
事業別売上高
こちらが全体をまとめているものです。繰り返しになりますが、全事業において高成長を果たしており、私たちも非常に手応えを感じている決算内容です。
HR事業ハイライト
事業別で、より細かく見ていきたいと思います。HR事業では、重点顧客との関係を深掘りしています。
まさに今、岸田政権が打ち出している「新しい資本主義」に向けて、人的投資や人的資本などが非常に注目されてきており、私たちにとって、マクロ環境は追い風になっています。特に、組織全体のデータ化というところに大きな需要があります。
最初にお話ししましたが、DXの需要が高まる中、ちょうどそれについての書籍(『日本企業のポテンシャルを解き放つ――DX×3P経営』 )も、今年の頭に出版しています。
このDXを行っていくにあたって、DXができるかどうかは結局は人の問題であり、人をどのように経営が押さえることができるのか、ということにかかってくると私は考えており、まさにそのような分野において当社のサービスが利用されています。このような流れで、この領域が非常に伸びています。
教育事業ハイライト
教育事業についてです。すでに各都道府県においてかなり普及してきています。35の都道府県をカバーしており、1地域だけが必要とするサービスになっているわけではなく、先ほどお伝えしたように、指導要領が10年に一度変わっていく背景の中で、私たちにとって非常に追い風となる環境があります。
創造性や課題設定のような能力を測るニーズが高まっており、当社サービスの導入実績が日本全体に広がっています。
特に足元では、自治体単位で受注できるお客さまも増えてきて、同時に今後、指導要領は10年かけながら徐々に浸透していきます。このような環境下、日本全体で評価と教育というところでしっかりと受注を増やしていければと考えています。
また、教育事業に関してはEdTech導入補助金もあります。このように大きな事業を行うにあたって、かねてより国も経済産業省を中心に、EdTech導入補助金というもので支援体制を強めています。
当社については昨年度も決定額どおり確定し、今年度も交付対象企業になる見通しです。
新規事業ハイライト:STARプロジェクト進捗
新規事業についてです。こちらは慶應義塾大学経済学部のFinTEKセンターとともに行っているブロックチェーン実証STARプロジェクトですが、登録者数も7,000名を超え、登録者の所属大学は250校です。特に注目していただきたいのが、データサイエンティスト育成講座を行っている点です。
これまでの日本では、採用して会社内で人材を育成するという仕組みでしたが、私たちはこれを少し変え、新しい仕組みを提唱しています。私たちが育成し、その間に学生の膨大なデータを取り、そのデータを使った採用をしていただくというもので、採用して育成するのではなく、育成して採用するという、従来の仕組みをひっくり返すかたちです。
私たちも正直驚いたのは、非常に短期間に、学生自身も学びたいという姿勢になってきているということです。つい先日、今年の就職率が発表されましたが、文系が非常に厳しいと出ています。そして理系が有利な状況です。
まさにSociety 5.0時代に入ってくるにあたって、大きな課題になるのは、文系人材がどのように理系的なデータサイエンスの能力をつけるかということです。
ゼミも含めて、私自身が慶應義塾大学で統計学講座を教えており、私たちはこの分野においてしっかりとベースを作ってきていますが、このような講座を学びたいという学生が2,090名もいたというのは非常に驚きでした。
そしてこの膨大なデータは、実証に入っている企業だけが使えるかたちですが、企業もインターンシップなどに活用しています。
データサイエンティスト育成・評価・採用モデルの確立
参画企業の声についてです。「これまでの新卒採用のスキルや能力の考え方を見直す必要があると考えている」とあるように、非常に大きな可能性を感じていただいていると思います。
また、大学はこのような講座を設けていないため、こうした講座を受けたいという学生のニーズが非常に強いという実感があります。
今の日本の仕組みの中で、大学が一部機能していないという可能性が高いのです。この部分を私たちの仕組みでしっかりフォローしながら、日本の分断なき持続的な成長というもののベースとなる仕組みづくりを目指していますし、実際この仕組みができつつあると私たちは考えています。
販売費及び一般管理費と従業員数の推移
販売費及び一般管理費と従業数の推移についてです。全事業で高い成長率を継続するために、引き続き組織体制の強化を目指し、積極的に人材を採用するというフェーズにあります。そのため人員数ならびに人件費や研究開発費、また採用費を含む支払報酬が昨年度は増加しています。
特に営業人員、顧客サポート担当や開発人員を増やして、売上が大きく伸びているところに関して人員数を上げていく体制をとっています。
貸借対照表
こちらはB/Sです。上場時の増資によって純資産、現金および預金が増加しています。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フローですが、2022年3月期はおかげさまで営業キャッシュ・フローが1億円を超えました。その前年は黒字化していたものの営業キャッシュ・フローは赤字でしたが、昨年度は1億1,500万円というかたちで、営業キャッシュ・フローもしっかりと黒字化でき、お金が回る2つのコアビジネスを持っている点が非常に強みとなっています。
また、今回上場したことで、財務キャッシュ・フローも上がっています。
損益計算書
ここまでが2022年3月期の業績決算でしたが、ここからは業績予想についてです。2023年3月期も、引き続き優秀な人材の確保に努めて、既存事業においては顧客基盤と取引のさらなる拡大を図ります。
また、新規事業およびサービス開発に関わる積極的な研究開発活動を継続し、事業規模拡大に取り組んでいく計画です。売上高は全事業で成長を維持し、前期比35.5パーセント増の9億7,600万円を見込んでいます。
営業利益
増収効果によって売上総利益率のさらなる改善を見込み、営業利益率は18.4パーセントへの上昇を見込んでいます。
事業別売上高
HR事業においては、引き続きDX推進、JOB型への移行、そして人的資本の可視化に関する新規案件への取り組みも開始しています。
教育事業ですが、2022年4月から高校でも新学習指導要領が実施されています。まさに、この非認知能力を可視化して教育するといったところのスピードを確実に上げていきたいと考えています。また、EdTech導入補助金についても今年度の交付を見込んでいます。
そして新規事業のSTARプロジェクトですが、今年は3ヶ年の実証の最終年となっています。Web3の大きな流れが来るマクロ環境の中で、来年度以降の大きな収益化に向けて、最終年度で着実に実績をかたち作っていきたいと考えています。
成長戦略の全体像
今年度以降の成長戦略のお話をしたいと思います。上場時にお話ししている内容から変更はありませんが、少し情報を足してご説明します。
各事業において、今年はまず、HR事業においても教育事業においても顧客数をしっかりと増やしていくことと、顧客あたりの収益の最大化を目指すことをベースとします。
さらにそのベースの上に、先ほどブロックチェーンのところでご説明したように、個人データの利活用が、私たちの事業全体の次の骨格、つまり、大きな柱になるようなかたちで、実証の最終年度である今年度に臨み、さらに来年度以降の事業につなげていきたいと考えています。
顧客数の最大化 の取り組み
顧客数の最大化においては、HR事業で大型案件となり得る、組織全体でのデータ化を進めます。全社員のデータを取るということや、そのデータに基づいた人材育成の研修を実施することなど、このような案件の獲得に注力していきます。
特に教育関連事業においては、先ほどお伝えしたように国公立の学校だけでなく、自治体の案件も確実に増やしていきます。
私どもは、非認知能力に特化していますので、「単に答えのある問題を解く」ということ、認知能力を鍛えることに特化しているいろいろな塾、EdTech企業などに対して補完的な役割やポジションを取れるとみて、そのようなところにも積極的に協業を拡大していきたいと考えています。
顧客あたり収益の増大の取り組み
顧客あたりの収益の増大についてです。先ほどのライオン株式会社の事例にもあったとおり、全社員への導入案件を着実に増やしていきます。
全社員に導入されれば、簡単にはスイッチングされにくい状態となるため、そのような大企業案件も着実に増やしていきます。一度データを取らせてもらうと、次にさまざまなクロスセルができるのが、データを押さえている強みでもあるため、今後着実に伸ばしていきます。
教育事業においても、評価項目のラインナップ拡大・拡充のほか、評価と教育をより有効的に組み合わせることによって、顧客あたりの収益の増大を目指したいと考えています。
付加価値の増大の取り組み
繰り返しお伝えしているとおり、Web3という大きなうねりが来ている最中です。このうねりを十分に獲得していけるように、ブロックチェーン基盤を作っていきます。そして来年度以降の大きな柱にするべく、本年が最終的な実証の年になるため、慶應義塾大学をはじめ、関係する企業のみなさまと進めていきたいと思っています。
一部、駆け足になってしまいましたが、以上が当社の決算報告、業績見通しおよび成長戦略でした。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:さまざまな組織・学校に評価された経緯について
質問者:非認知能力の定義に関して、御社はそれをどのように定義した結果、いろいろな組織や学校などに評価され、受け入れられるようになったのでしょうか?
福原:当社はOECDのキー・コンピテンシーをベースとして、最初からグローバルを念頭に取り組んできました。最初の投資元として、ベンチャーキャピタルであった東京大学エッジキャピタルパートナーズを選び、東京大学との連携、足元においては世界に2つしかないPeople Analytics研究機関であるケンブリッジ大学と共同し、このコンピテンシーモデルのレベルを上げています。
つまり、産学連携で、日本だけではなく世界的に活躍できる人材のコンピテンシーをセットし、日本の学校においては東京学芸大学のような学校教育に強いところとも連携しながら、学校現場で先生方の言葉にもなるようなモデルを作ってきました。その全体の過程が非常にうまくいっています。
もう1つ、世界的に珍しいのは、企業側と学生側を同じキーで結んでいることです。これは学校にとってのメリットとなります。「大学の学びが社会とどのようにつながっているのかがわからない」と言われますが、例えば、今日出席しているファンドマネージャーのみなさまがどのような特性を持っているのかというデータを私たちが持っていて、将来ファンドマネージャーになりたい方がいる場合、「このような想像力を伸ばしておいたほうがいいよ」「課題設定力が必要だよ」「論理力が必要だよ」と伝えることができます。
当社ではこの360度評価を、スマホベースで展開しています。おそらくみなさまも、子どもの頃に友人同士の評価をつけ合うことはあまりなかったと思います。
「学生同士がつけ合うと、危ないのではないか」と思われるかもしれません。最初にお伝えしましたが、私たちの最大の強みはバイアスを検知する能力です。その評価がいったいどのくらい真剣につけられているのかを、AIが全部検知しています。
また、学校現場においては、子どもたちに直接情報を提供することはしません。子どもたちにはプラスの面しか見せず、よいところだけを伸ばしていけるように、学校の先生方とさまざま議論を交わしながら、非常に細かく作り込んでいます。
学校側からみれば、安全に使うための仕組みや学術的なバックがあり、なおかつ学校の現場の声を徹底的に聞き、さらにはペインも徹底的に聞いた上で作り上げたモデルこそが、学校での利用が増加している、そのベースになっていると思います。
質疑応答:システムの全国への拡大方法について
質問者:このシステムを日本全国の学校にいったいどのような売り方で広げていっているのでしょうか?
成田忍氏:売り方について、学校に関しては代理店のようなところとの協業も使って、ある程度まとめた売り方を進めているところです。
例えば、旅行商品を売っている会社や、タブレットを売っている会社など、さまざまなところがあります。そのような会社との補完関係は非常に築きやすく、そこから販売網を広げつつある状況です。
質疑応答:Web3に関する取り組みについて
質問者:Web3に関して、システムをどのように機能させていき、その後どのようにマネタイズしていくのかを教えてください。
福原:現時点では実証段階であり、企業側とまだ多くの議論を行っていかなければなりません。そのため、今はまだ確定的なことをお伝えできないのですが、Web3のコアは個人がデータをコントロールし、利活用することになります。
実は、当社ではすでに学生間や企業と連携して、トークンを回し始めています。実際にアメリカでは、Braintrust社というWeb3の会社が、一気にフリーランスのマーケットを獲得し始めています。昨年にInitial Exchange Offering(IEO)を成功させ、ハーバード・ビジネススクールのケースにもなりました。
「Braintrust」のケースは、アメリカでは非常に有名です。オンチェーンもオフチェーンも可能で、企業は人材を採用する際にオフチェーン上でお金を払います。何にお金を払っているかと言うと、情報にアクセスすることに対してです。チェーン上にある情報で個人からデータを取得するためにお金を出し、採用で成功した場合にお金を払うモデルです。
当社がBraintrust社のとおりに構築するわけではありませんが、人材領域においてアメリカで急速に伸びているBraintrust社は、Web3の仕組みをうまく作っています。個人しかデータをコントロールできないため、誰もプラットフォーマーがいないことになります。
今後、Web3の世界が広がる際に、私たちはどこかの業界をディスラプトしていかなければなりません。いったいどのようなところがディスラプトされるべきかと言うと、当然ながら、そのようなデータを保有し、通常以上のファットマージンを得ているプラットフォーマ的なプレイヤーがいる人材領域などになりますが、今はそのようなビジネスモデルを構築しています。
非常に細かい内容で、まだ私たちからお伝えできる段階ではありませんが、アメリカの事例として、Braintrust社の事例を少しご説明しました。回答としては、人材領域においてWeb3が十分に大きなビジネスになっているということをお伝えしたいと思います。
質疑応答:海外のベンチマークとIPOの時期について
質問者:御社の事業モデルについての質問です。ベンチマークにしている海外の会社はありますか? また、昨年の12月にIPOしたのには、いったいどのような背景があったのか教えてください。
福原:まず、海外のベンチマークについてお答えします。先ほどお伝えしたように、2017年にハーバード・ビジネススクールのケースに取り上げられた際に、実は2つの会社のどちらをケースにするか考えられていたという経緯があります。
具体的には、ハーバード・ビジネススクールは人材教育領域でのバイアスやAIの問題点を理解した上で、AIを活用した新しい人材教育の仕組みを作れる会社を選んでいました。その中で、アメリカのPymetricsという急速に伸びている会社と当社を挙げてもらい、最終的に当社が選ばれました。そのため、私は当時からPymetrics社に非常に注目していました。
ですので、海外におけるベンチマークはPymetrics社です。そして、今の仕事においては、先ほどもお伝えしたとおり、Braintrust社に非常に注目しています。
続いて、2点目のご質問に関して、当社は上場をゴールにしているわけでは一切なく、「世界でどのくらい大きく広がるのか?」ということを考えています。
これまでもアジア開発銀行との取引や、英語でも対応していくモデルで取り組んでいます。より大きくなるため、さらなる飛躍のために、昨年12月に上場したという経緯になっています。
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