― ホンダ“世界初の認可”で日本メーカーに存在感、車載カメラなど関連企業の商機拡大へ―
ホンダ <7267> は11月11日、一定の条件のもとで運転を自動化する「レベル3」に求められる国土交通省の型式指定を取得した。「レベル3」の実用を国が承認したのは世界初で、同社は今回認可を取得した自動運行装置「トラフィック・ジャム・パイロット」を搭載した高級車「レジェンド」を2020年度内に発売する。これにより、世界的に競争が激化している自動運転技術で日本メーカーの存在感が増し、他のメーカーが追随すれば市場規模が更に拡大することで車載カメラやセンサーなど関連企業のビジネスチャンスも広がりそうだ。
●運転支援から自動運転にレベルアップ
自動運転車は交通事故の削減や、高齢者の移動手段の確保、物流分野での生産性向上など、さまざまな社会課題の解決に大きな役割を果たすことが期待されている。こうしたことから、政府は19年にまとめた「官民ITS構想・ロードマップ2019」で20年に高速道路でのレベル3実現を掲げ、今年3月には世界に先駆けて自動運転車の保安基準を策定するなど、早期導入に向けて制度整備を進めてきた経緯がある。
今回認可を得た「トラフィック・ジャム・パイロット」は、高速道路での渋滞時に運転者の操作負荷を軽減することを目的に、前走車をはじめ周辺の交通状況を監視するとともに、運転者に代わって操作を行い、車線内の走行を維持しながら前走車に追従する装置。自動ブレーキや車線維持などの「レベル1」、自動で追い越しなどを行う「レベル2」ではドライバーによる監視が作動条件であるのに対し、「レベル3」となる同装置ではシステムによる監視となる。国土交通省では「レベル3」を特定条件下における自動運転としており、「レベル1」や「レベル2」の運転支援から自動運転にレベルアップしたことを示す。
●トヨタ、日産自も実用化に向け積極姿勢
自動運転を巡っては日産自動車 <7201> やトヨタ自動車 <7203> も開発を進めており、日産自は高速道路で手放し運転が可能な高級車「スカイライン」を販売しているほか、23年度末までにプロパイロット(高速道路の同一車線での自動運転技術)搭載車の年間販売台数を150万台超とする計画。トヨタの自動運転ソフト子会社のトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントは9月、運用総額8億ドルの投資ファンドを設け、スマートシティや自動運転の開発でパートナーとなるスタートアップを支援することを明らかにしている。
また、「レベル4」(限定領域内の無人走行を想定した自動運転)を見据えた取り組みも広がっており、日野自動車 <7205> と大林組 <1802> は11月から大型ダンプトラックの自動運転実証実験を開始。アイサンテクノロジー <4667> [JQ]やKDDI <9433> などは第5世代移動通信システム「5G」を活用し、11月5日から8日まで西新宿エリアでタクシーの遠隔型自動走行(運転席無人)の実証実験を実施したほか、住友ゴム工業 <5110> は「レベル4」自動運転車を対象に、空気圧データ取得から異常時のタイヤメンテナンスまでのシステムを構築し、11月12日に岐阜市内の公道で実証実験を行った。
経済産業省と国土交通省が共同で設置している自動走行ビジネス検討会が5月にとりまとめた「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」バージョン4.0では、早ければ22年度頃には廃線跡などの限られた空間で「レベル4」が開始され、25年度をメドに高速道路や生活道路など40ヵ所以上にサービスが広がる可能性があるとしている。
●自動運転に欠かせない三種の神器
自動運転に欠かせない技術で、三種の神器といわれるのが「カメラ」「ミリ波レーダー」「LiDAR(ライダー)」だ。システムがドライバーに代わって運転操作をするには、人間の目に相当するものが必要で、カメラが担う役割は自動運転レベルが上がるにつれ広範囲になる。特に注目されるのが周囲の物体や歩行者、信号、標識、道路の白線などカメラからの情報を人工知能(AI)によって画像認識するもので、モルフォ <3653> [東証M]は画像処理ソフトとディープラーニングを融合したイメージングAIを車載カメラに適用。リコー <7752> 傘下のリコーインダストリアルソリューションズは車載用ステレオカメラ技術を持っているほか、東芝 <6502> [東証2]は車載カメラと慣性センサー(加速度センサー、角速度センサー)を用いて自車両の動きを高精度に推定する「自車両の動き推定AI」を開発済み。
電波で距離を測るミリ波レーダーは、日本電産 <6594> グループの日本電産エレシスやデンソー <6902> などが手掛けているほか、ミリ波レーダー用コネクターのイリソ電子工業 <6908> やミリ波レーダーカバーのファルテック <7215> にも注目。レーザー光を照射して周囲の物体を検知するLiDARは、コニカミノルタ <4902> や三菱電機 <6503> 、浜松ホトニクス <6965> 、小糸製作所 <7276> などが関連銘柄として挙げられる。
●ALBERT、ゼンリンなどにも注目
このほか、車載向けデバイスメーカーにUI(ユーザーインターフェース)開発ソリューションを提供しているアートスパークホールディングス <3663> [東証2]、自動運転システム構築支援でトヨタとタッグを組むALBERT <3906> [東証M]、自動車向けソフト開発ソリューションを展開する東海ソフト <4430> 、自動運転技術を雪道に応用する研究を北海道大学と行っているヴィッツ <4440> 、車載用音波センサーを扱う日本セラミック <6929> 、縦横垂直3方向の加速度を測定するセンサーを製造する北陸電気工業 <6989> 、自動運転に不可欠な高精度地図を手掛けるゼンリン <9474> 、車載用制御ソフト開発で実績のある富士ソフト <9749> などのビジネス機会も広がりそうだ。
直近では沖電気工業 <6703> が、自動運転支援サービスの実現を目的に日本総合研究所(東京都品川区)が設立した「RAPOCラボ」に参加すると発表。同社はカメラやLiDARなど路側に設置されるセンサーによる自動運転支援の観点、及びインフラ協調における自動運転車両とインフラの役割分担の観点から、最適な自動運転支援サービスを検討するとしている。
株探ニュース
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