―テレワークが新たな需要喚起、ビル空室率上昇を尻目に業績は拡大基調に―
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワーク の普及でオフィス市場には逆風が吹いている。在宅勤務者の増加で空席が目立つようになり、床面積縮小に動く大手企業が次々に現れ始めた。また、スタートアップやベンチャー企業のなかには縮小にとどまらずオフィスそのものをなくすケースも出てきている。
10月中旬時点では新型コロナの新規陽性者数は減少しており、今年4月に発出された緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日をもって全国で解除された。オフィスにも人が戻りつつあるが、テレワークの普及による働き方の変化とそれに伴うオフィスの見直しの動きは当面継続するとみられている。
こうしたなか、苦戦が予想されていたオフィス家具 業界で、意外にも需要は堅調となっている。業績への貢献も期待でき、関連銘柄に注目したい。
●コロナ禍きっかけに広がるテレワーク
コロナ禍により、テレワークの普及が進んでいる。総務省が今年6月に発表した通信利用動向調査(令和2年調査)によると、2020年8月末時点のテレワーク導入企業の割合は47.5%に達し、19年の20.2%から倍以上上昇した。全産業で導入する割合が大きく伸び、特に情報通信業では9割以上が導入。また不動産業や金融・保険業でも7割程度が導入している。
緊急事態宣言は9月30日をもって全国で解除され、オフィスにも人が戻りつつあるが、一方でテレワークを継続する企業は多い。テレワークは働き方改革の一つとして国から要請されていることであり、企業にとっても、従業員の理解を得やすく、目に見えてわかる形で働き方を改革できることなどが背景にある。更に従業員の交通費や出張費、交際費などを削減しやすいというメリットもあり、コロナ禍に関係なく、テレワークを継続する動きは今後も広がるだろう。
●都心のオフィスは空室率が上昇
こうしたテレワークの普及で社員の出社率が下がることにより、オフィスの床面積縮小に動く企業が増え始め、オフィス市場は急速に悪化している。
オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京都中央区)によると、21年9月の東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の9月時点の平均空室率は6.43%となった。前月比では0.12ポイント増え19ヵ月連続で上昇したことになり、14年6月の6.45%以来、7年3ヵ月ぶりの高水準となった。
東京ビジネス地区の空室率は20年に入り1.5%を挟んだ推移となっていたが、同年7月に2.77%と1年9ヵ月ぶりの2%台に乗せ、その後も上昇が続いている。企業がオフィスを解約する場合、通常は半年前の解約予告を経て退去することから、今後も当面、高水準の空室率が続く可能性がある。
●21年3月期に最高益を更新したオカムラ
オフィス空室率の上昇により、厳しい事業環境となることが予想されたオフィス家具業界だが、フタを開けてみると需要は想定を上回って推移した。オフィス家具大手のオカムラ <7994> の21年3月期決算は、営業利益が141億7500万円(前の期比5.9%増)となり、過去最高益を更新した。オフィス家具を含むオフィス環境事業の営業利益は100億5900万円(同3.3%増)で計画を7.0%上回った。
従来型のオフィスは個人のデスク、固定的な会議室及び収納スペースで構成され、作業効率の向上が主眼に置かれていた。ただ、テレワークが主流になると、ウェブ会議のための個室やオープンな空間で出社社員の交流を促し、柔軟な発想を生むためのスペースが重要となる。同社でも「新しい働き方」に対応したワークブースなどの需要が増えたとしている。
第1四半期(4-6月)もオフィス環境事業は好調を持続しており、同事業の営業利益は28億8100万円(前年同期比8.8倍)となった。
●コクヨ、イトーキもリニューアル需要を取り込む
コクヨ <7984> は、上期決算発表時に21年12月期連結業績予想を営業利益で186億円から202億円(前期比36.4%増)に上方修正したが、その要因の一つにオフィスリニューアル需要の影響を挙げている。足もとで、顧客に対してニューノーマルな働き方に向けた新しいオフィスづくりの提案へ注力した結果、リニューアル需要の取り込みを想定以上に進捗させることができたとしており、今年2月にオープンした新たな働き方を促進する空間・最新家具の提案の場である「THE CAMPUS」もリニューアル案件の獲得を後押ししているという。
イトーキ <7972> は、21年12月期からそれまでのオフィス関連事業を設備機器関連事業の内装・建材やその他事業の家庭用家具などを加えたワークプレイス事業として再構築したが、同事業の上期営業利益は21億8500万円(前年同期比13.8%増)と2ケタ増益となった。新しい働き方やワークプレイスの提案、在宅勤務用家具などコンシューマー向け製品の販売促進に注力したことが寄与。また、提供価値の向上による利益率の改善も奏功した。引き続きBtoC向け家具の販売拡大などを図るとしている。
内田洋行 <8057> は、21年7月期第4四半期に入り、20年の大型オフィスビル増加による移転案件や新たな時代の働き方が大企業から活性化し、オフィス関連事業の需要が回復に向かい始めたという。同社は22年7月期営業利益53億円(前期比48.9%減)と減益見通しだが、同事業は4億円(前期6億2600万円の赤字)と黒字転換を見込む。
このほか、ウィズコロナに対応したオフィスデザインの需要が増加していることに加え、大規模案件を4件受注したことで第1四半期(4-6月)受注高が前年同期比67.2%増の29億3900万円となったヴィス <5071> [東証2]や、鋼製物置と並んでオフィス家具を手掛ける稲葉製作所 <3421> も業績動向に注目したい。
株探ニュース
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