―電力システム改革を推進、地震や厳冬など災害対策でも対応急務―
政府が再生可能エネルギー推進化の計画を進めている。その普及に向けてのネックとされているのが、日本の送電網の弱さだ。北海道や東北で発電した 太陽光や 風力などの電力を都市部に送る送電網の不十分さが指摘されている。また、地震や厳冬による電力不足が発生した際の電力融通が難しいことなども課題として浮かび上がる。そんななか、電力供給体制の強化に向けた法律が来春に施行されるなど、再生可能エネ普及のキーポイントである送電インフラ関連を巡る動きが活発化している。
●太陽光や風力など普及には送電インフラの拡充が必須
送電インフラ整備の強化が市場の注目を集めている。これまでも、日本の送電インフラの脆弱さはたびたび問題視されてきた。2011年の東日本大震災では他地域からの電力融通が受けられずに計画停電が実施されたほか、18年の北海道胆振(いぶり)東部地震では全域停電(ブラックアウト)が発生し、北海道での生活や企業活動に大きな影響が出た。更に、今年1月には寒波の到来で首都圏でも電力需給が逼迫した。これら電力に絡む災害や事故が発生した際にクローズアップされたのが、他地域からの電力融通の困難さだ。
更に、足もとで関心を集めているのが、再生可能エネの普及に向けて送電網の整備が急務となっていることだ。日本政府は50年のカーボンニュートラルを視野に10月に第6次エネルギー基本計画を閣議決定し、30年度の再生可能エネ比率を36~38%に引き上げる目標を掲げた。これに向けグリーンエネルギーを足もとからほぼ倍増させる必要があり、太陽光や風力発電の拡充が求められている。
しかし、問題は送電網が不十分だと再生可能エネの電力を、都市部に送ることが難しくなることだ。例えば、風力発電は東北地方で洋上風力の建設計画が進んでいるが、その発電した電力を首都圏など都市部へ十分に送れない懸念が出ている。このため、送電網の複線化など再生可能エネの大量導入に対応した次世代電力ネットワークの構築が求められている。
●「エネルギー供給強靱化法」が22年春に施行へ
そんななか、強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を目指して昨年6月に成立した「エネルギー供給強靱化法」が22年4月から施行される。同法では災害時に送配電事業者の連携強化を求めるほか、送配電網の強靱化も盛り込まれた。また、経済産業省は地域間を結ぶ送電線(連系線)を増強する方針であることが伝えられているほか、補正予算案では送電線につなぐ蓄電池の設置費用を補助するため130億円が計上されるなど、インフラ整備に向けた動きが活発化している。
●関電工や那須鉄、巴、昭電線HDなどに注目
政府が送電網の充実を進めるなど、電力エネルギーインフラの再構築の動きが強まるとともに、投資家の視線もその関連株に向かいつつある。送電インフラの整備に関わる設備投資関連では、電力工事大手の関電工 <1942> やきんでん <1944> などが注目される。電力会社間を結ぶ連系線と再生可能エネの発電会社から電力連系点までを結ぶ自営線絡みの需要が見込める。東北や九州を地盤とするユアテック <1934> や九電工 <1959> などは太陽光や風力発電絡みの需要が期待できる。ETSホールディングス <1789> [JQ]にも注目したい。
電力鉄塔では、巴コーポレーション <1921> や那須電機鉄工 <5922> [東証2]が実績を持つ。大谷工業 <5939> [JQ]は、鉄塔の設計・加工を手掛けている。イワブチ <5983> [JQ]は電力架線用金具で高実績を持っている。東京電力ホールディングス <9501> 系で送配電機器が主力の東光高岳 <6617> や配電制御機器の戸上電機製作所 <6643> [東証2]なども注目される。
送電線では、古河電気工業 <5801> や住友電気工業 <5802> 、フジクラ <5803> 、東京特殊電線 <5807> などが注目される。首都圏を中心に送電線への更新需要に向けた期待も膨らんでいる。昭和電線ホールディングス <5805> はエクシオグループ <1951> と洋上風力発電に関する電力工事事業で業務提携している。蓄電池に関しては、大規模電力貯蔵システムとなるNAS(ナトリウム硫黄)電池を量産化している日本ガイシ <5333> などが関心を集めそうだ。
加えて、再生可能エネ市場の拡大はレノバ <9519> やウエストホールディングス <1407> [JQ]、テスホールディングス <5074> などにとって追い風となる。
株探ニュース
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