*13:48JST rakumo Research Memo(8):2024年4月から一部製品の値上げを実施
■今後の見通し
2. 一部製品での価格改定実施による収益影響
弊社ではrakumo<4060>が2024年4月より実施する価格改定による業績貢献は非常に大きく、かつ、解約率への影響も非常に限定的にとどまることで、2024年12月期第2四半期以降、価格改定効果がフル寄与する2025年12月期第2四半期にかけて同社業績が大きく拡大する可能性が高まっていると考えている。仮に2023年12月末の118万ライセンスのうち半分程度に該当する60万ライセンスが値上げ対象となり、1ライセンス当たり少なくとも月額50円の値上げとした場合、値上げにより同社の月間売上高を30百万円(=50円×60万ライセンス)、年間売上高を360百万円(=30百万円×12カ月)押し上げることになる(試算上、10製品のうち5製品が値上げ対象であることから便宜上、118万ライセンスのうち60万ライセンスが値上げ対象としているが、今回の値上げ対象はGoogle Workspace版rakumoカレンダーなどライセンス数の多い主力製品での値上げが中心とみられ、実際の値上げ対象ライセンス数は60万ライセンスよりも多くなる可能性が高いと弊社では考えている)。これは同社の2023年12月期の売上高1,295百万円の27.8%にも相当し、価格改定に連動して上昇するコストなどは発生しないことから、この金額がほぼ粗利益以下を押し上げる形となる。すなわち、2023年12月期の粗利益831百万円、営業利益303百万円をそれぞれ43.3%、118.8%押し上げる結果となり、値上げ効果がフル寄与する2025年12月期第2四半期にかけて、同社は一段と高収益企業へと変貌する可能性を秘めている。
もちろんこれが実現するためには値上げによる顧客離れや解約の影響を最小限にとどめることが必要となるが、同社では値上げ発表前に事業提携を締結しているアドバンテッジアドバイザーズ社と共同で他SaaS企業の値上げによる過去の解約率の変動スタディ、顧客に対しての料金設定に関するインタビューを実施して値上げによる解約率の上昇懸念が小さいことを総合的に判断し今回の値上げ対象品目や値上げ幅を決定している。このように、今回の値上げは決して場当たり的なものではなく、同社経営陣による綿密な議論、ケーススタディのもとで行われた合理性の高いものであり、同社業績並びに企業価値向上に資するものであると判断できよう。
3. 売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現
同社では56万ユニークユーザーに対して118万ライセンスを付与しているため、単純計算で1ユーザーあたり2製品を超えるプロダクトを利用している計算となる。製品別にみると、rakumoカレンダーとrakumoコンタクトのライセンス数の比率が高くなっているものと予想されるが、今後はカスタマーサポート部門の新設や増員による同社製品利用率(稼働率)の上昇、顧客に対して積極的にインタビューを実施することでニーズを拾い上げ、アップセルやクロスセルを進める方針。現在、ストックベースではrakumo Basicパックやrakumo Suiteパックといったパッケージ商品の販売比率(顧客数ベース)は10%未満と予想されるが、新規顧客に限ってみると50%近くに達しているものと予想され、今後は中長期的にアップセルやパッケージ商品の販売比率上昇による継続的なグロスMRRの上昇が見込まれよう。また、低解約率の実現に関しては、既存施策に加えて、同社グループ製品の活用を促すための能動的なオンボーディング(活用促進)施策の実施を進める計画である。
4. 今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化
同社にとって継続的に新規プロダクトを生み出すことは、さらなる売上成長の加速のために必要不可欠であり、2023年12月期においても期初計画ではHR系の新規プロダクトをローンチする計画であった。しかしながら、同社では当該製品のローンチ時期が2024年12月期にずれ込む見通しを既に示しており、これで直近4年間にわたり既存製品のみで売上拡大を進めていることになる。しかしながら、同社では収益開発を専門とする外部パートナーとのタイアップを既に始めており、新規プロダクト開発、ローンチに向けた体制強化へ着手した。同社では既にベトナムに開発リソースを有するうえ、日本にもプロダクト部隊を抱えており、今後、積極的な新製品開発に向けて開発部隊がチャレンジできる環境や企業文化を作り、毎年1つは新規プロダクトをローンチできるようにスピードアップを図る計画である。
5. 今後の成長に向けた継続的なM&A先の検討・実現
同社ではアドバンテッジアドバイザーズ社との事業提携契約を2023年5月に発表し、当該会社などが出資するファンドに対して第8回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を割り当てた。同社債により調達した資金は主に同年7月3日付で連結子会社化したアイヴィジョンの買収資金に充当された。アイヴィジョン社は、IR動画や会社紹介・サービス紹介動画を中心とした映像制作・配信事業を手掛けており、直近の2022年6月期の売上高は136百万円、営業利益は68百万円となっている。また、アイヴィジョン社の買収により、短期的な業績寄与のみならず、中長期的にも新規クライアント獲得に弾みがつくこと、新規プロダクトのローンチなどが期待され、一定のシナジー効果についても期待されよう。同社では従来から他社サービスの連携強化、M&Aの実行による事業拡大を目指しており、今回の買収もそれに沿った動きと考えられる。今後も年1件程度、徐々に規模の大きなM&Aが想定されるが、同社では割安に買収可能で同社企業価値にプラスとなるようなM&Aを実施することを大前提としており、同社のM&A戦略は今後も中長期での企業価値向上にプラスに作用する可能性が高いと我々は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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2. 一部製品での価格改定実施による収益影響
弊社ではrakumo<4060>が2024年4月より実施する価格改定による業績貢献は非常に大きく、かつ、解約率への影響も非常に限定的にとどまることで、2024年12月期第2四半期以降、価格改定効果がフル寄与する2025年12月期第2四半期にかけて同社業績が大きく拡大する可能性が高まっていると考えている。仮に2023年12月末の118万ライセンスのうち半分程度に該当する60万ライセンスが値上げ対象となり、1ライセンス当たり少なくとも月額50円の値上げとした場合、値上げにより同社の月間売上高を30百万円(=50円×60万ライセンス)、年間売上高を360百万円(=30百万円×12カ月)押し上げることになる(試算上、10製品のうち5製品が値上げ対象であることから便宜上、118万ライセンスのうち60万ライセンスが値上げ対象としているが、今回の値上げ対象はGoogle Workspace版rakumoカレンダーなどライセンス数の多い主力製品での値上げが中心とみられ、実際の値上げ対象ライセンス数は60万ライセンスよりも多くなる可能性が高いと弊社では考えている)。これは同社の2023年12月期の売上高1,295百万円の27.8%にも相当し、価格改定に連動して上昇するコストなどは発生しないことから、この金額がほぼ粗利益以下を押し上げる形となる。すなわち、2023年12月期の粗利益831百万円、営業利益303百万円をそれぞれ43.3%、118.8%押し上げる結果となり、値上げ効果がフル寄与する2025年12月期第2四半期にかけて、同社は一段と高収益企業へと変貌する可能性を秘めている。
もちろんこれが実現するためには値上げによる顧客離れや解約の影響を最小限にとどめることが必要となるが、同社では値上げ発表前に事業提携を締結しているアドバンテッジアドバイザーズ社と共同で他SaaS企業の値上げによる過去の解約率の変動スタディ、顧客に対しての料金設定に関するインタビューを実施して値上げによる解約率の上昇懸念が小さいことを総合的に判断し今回の値上げ対象品目や値上げ幅を決定している。このように、今回の値上げは決して場当たり的なものではなく、同社経営陣による綿密な議論、ケーススタディのもとで行われた合理性の高いものであり、同社業績並びに企業価値向上に資するものであると判断できよう。
3. 売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現
同社では56万ユニークユーザーに対して118万ライセンスを付与しているため、単純計算で1ユーザーあたり2製品を超えるプロダクトを利用している計算となる。製品別にみると、rakumoカレンダーとrakumoコンタクトのライセンス数の比率が高くなっているものと予想されるが、今後はカスタマーサポート部門の新設や増員による同社製品利用率(稼働率)の上昇、顧客に対して積極的にインタビューを実施することでニーズを拾い上げ、アップセルやクロスセルを進める方針。現在、ストックベースではrakumo Basicパックやrakumo Suiteパックといったパッケージ商品の販売比率(顧客数ベース)は10%未満と予想されるが、新規顧客に限ってみると50%近くに達しているものと予想され、今後は中長期的にアップセルやパッケージ商品の販売比率上昇による継続的なグロスMRRの上昇が見込まれよう。また、低解約率の実現に関しては、既存施策に加えて、同社グループ製品の活用を促すための能動的なオンボーディング(活用促進)施策の実施を進める計画である。
4. 今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化
同社にとって継続的に新規プロダクトを生み出すことは、さらなる売上成長の加速のために必要不可欠であり、2023年12月期においても期初計画ではHR系の新規プロダクトをローンチする計画であった。しかしながら、同社では当該製品のローンチ時期が2024年12月期にずれ込む見通しを既に示しており、これで直近4年間にわたり既存製品のみで売上拡大を進めていることになる。しかしながら、同社では収益開発を専門とする外部パートナーとのタイアップを既に始めており、新規プロダクト開発、ローンチに向けた体制強化へ着手した。同社では既にベトナムに開発リソースを有するうえ、日本にもプロダクト部隊を抱えており、今後、積極的な新製品開発に向けて開発部隊がチャレンジできる環境や企業文化を作り、毎年1つは新規プロダクトをローンチできるようにスピードアップを図る計画である。
5. 今後の成長に向けた継続的なM&A先の検討・実現
同社ではアドバンテッジアドバイザーズ社との事業提携契約を2023年5月に発表し、当該会社などが出資するファンドに対して第8回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を割り当てた。同社債により調達した資金は主に同年7月3日付で連結子会社化したアイヴィジョンの買収資金に充当された。アイヴィジョン社は、IR動画や会社紹介・サービス紹介動画を中心とした映像制作・配信事業を手掛けており、直近の2022年6月期の売上高は136百万円、営業利益は68百万円となっている。また、アイヴィジョン社の買収により、短期的な業績寄与のみならず、中長期的にも新規クライアント獲得に弾みがつくこと、新規プロダクトのローンチなどが期待され、一定のシナジー効果についても期待されよう。同社では従来から他社サービスの連携強化、M&Aの実行による事業拡大を目指しており、今回の買収もそれに沿った動きと考えられる。今後も年1件程度、徐々に規模の大きなM&Aが想定されるが、同社では割安に買収可能で同社企業価値にプラスとなるようなM&Aを実施することを大前提としており、同社のM&A戦略は今後も中長期での企業価値向上にプラスに作用する可能性が高いと我々は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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