*15:34JST 品川リフラ Research Memo(4):2024年3月期より「セクター制」を核としたグループ経営体制へ移行(2)
■品川リフラクトリーズ<5351>の事業概要
(2) 断熱材
断熱材のセラミックファイバーは、軽量で低熱伝導率、高断熱性で省エネルギーには欠かせない素材である。施工性に優れた各種モジュール、成形品、断熱ボード、シート、ガスケットなど、様々な製品でニーズに対応している。2004年に断熱材事業を行うイソライト工業を買収した。持株比率が54.9%であったが、2022年3月末にTOB+株式売渡請求により完全子会社化した。環境課題への対応等を背景に、全世界的な事業環境の大変革期が到来したことを認識し、大胆な意思決定を迅速に行えるグループ経営体制の構築を進めた。
(3) セラミックス
同社は、1978年にファインセラミックス事業を開始した。先端産業の成長を見据え、2002年に品川ファインセラミックスとして分社化した。同セクターは、品川ファインセラミックスと米国で事業譲受したSSCA(Shinagawa Specialty Ceramics Americas LLC)の2社で構成される。ファインセラミックスは、高度に微細組織を制御したセラミック素材である。アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、サイアロンなど、様々な機能や特性を備えた素材で、各種ローラー、ダイス、ポンプパーツから半導体・液晶製造装置用セラミック部材まで、多様なエンジニアリングセラミックスを提供している。
(4) エンジニアリング
エンジニアリング事業は、工業窯炉での耐火物の設計、施工、メンテナンスを行う。各種施工機械や耐火物周辺設備の設計、製作など、超高温の世界を支える総合エンジニアリングを提供している。近年の工業炉は環境に配慮した省エネルギー、省力化、無害化、安全性などが要求されており、窯炉の設計や施工には高度の技術が必要となる。鉄鋼業向けには取鍋、連続鋳造に使用されるスライドゲート溶鋼流量制御装置、浸漬ノズル迅速交換装置など幅広いニーズに最新技術で応えている。また、大型ブロックリング工法による高炉改修工事に参画し、超短期改修に貢献したことで大きな評価を得ている。ごみ焼却炉、溶融炉などの環境関連設備において国内随一の実績を持つ。
(5) その他
その他の不動産事業は、保有不動産の賃貸や土地の有効活用を行う。賃貸契約が終了し遊休資産となった物件を売却し、コアビジネスである耐火物及び関連製品事業の設備投資やM&Aの資金に充当している。
3. 海外事業
(1) 海外売上高比率
(一社)日本鉄鋼連盟は、新興国の経済成長に伴い、世界の鉄鋼需要は2020年の約18億トンから2050年に約27億トンへ増加すると予測している。一方、日本経済の潜在成長力が低く、鉄鋼製品の需要が縮小して国内粗鋼生産は漸減すると見られる。
同社は、海外で積極的な拠点展開を行ってきた。第5次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)において、海外ビジネスの強化・拡大を重点施策の1つとしている。海外売上高は、2021年3月期の16,117百万円から2024年3月期に43,500百万円へ2.7倍となることが計画されている。海外売上高比率は同16.1%から30.0%へ上昇する。海外事業は販売数量が増加するなど業績が好調であるうえ、M&Aにより業容を拡大している。原材料を主に海外に依存していることから、円安は利益へのマイナス要因であったが、海外事業の拡大により中立要因化してきた。
(2) 海外拠点展開
日本の国内粗鋼生産量は、2019年に10年ぶりに1億トンを割り込んだ。米中貿易戦争の長期化による世界景気の減速で輸出が減り、内需も低迷したうえ、自然災害が重なった。2022年の生産量は、半導体不足を起因とする自動車向け鉄鋼需要の低迷もあり8,922万トンにとどまった。世界粗鋼生産における2022年の日本のシェアは4.7%と2000 年の半分以下の水準となった。一方、中国は54.0%と高水準を維持している。近年ではインドの成長が著しく、2018 年に年間生産量で日本を抜いた。2022年のインドの世界シェアは6.6%に高まった。インドは2023年に人口で中国を抜いて世界一となっており、持続的な成長が見込まれる。
同社の海外拠点の展開は、1997年の中国子会社の設立から本格的に始まり、2019年までにオーストラリア、米国、インドネシア、インドへ進出した。中国に耐火物等の製造・販売と連続鋳造用モールドパウダーの製造・販売を手掛ける合弁会社を設立した。オセアニアでは、オーストラリアとニュージーランドに拠点を持つ。2014年に設立したインドネシアの子会社と併せて、オセアニア・東南アジアへの販売展開を図っている。米国のオハイオ州には、モールドパウダーの製造・販売を行う子会社を設立した。現在では、米州大陸における当社の戦略アイテムの販売拠点としても機能している。また、今後のグローバル展開において重要アイテムとなる断熱材の製造・販売拠点を、マレーシア・台湾・中国・ドイツに置いている。
2022年12月に、仏サンゴバン社からブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業を譲受した。同社とサンゴバン社は、これまで30年にわたり良好な協力関係を築いてきた。1991年よりサンゴバンブラジルに鉄鋼用耐火物の製造技術ライセンス提供を行い、近年ではサンゴバンブラジルが販売店として、南米で鉄鋼、セメントなどの市場向けに同社製品を販売していた。また、2019 年にサンゴバン社の子会社である Grindwell Norton Ltd.との共同出資により、SG Shinagawa Refractories India Pvt. Ltd.をインドに設立した。これらを背景として、本事業買収の合意へと至った。
今回買収した事業は、ブラジルにおける鉄鋼、鋳造、非鉄金属、石油化学、セメント等向け耐火物の製造・販売と米国の鉱業・鉱物処理、鉄鋼、アスファルト、エネルギー等向け耐摩耗性セラミックスの製造・販売になる。2021年の売上高規模は、ブラジル事業が約99億円、米国事業が約12億円であった。買収には、約100億円を要した。本事業買収により同社グループは、成長著しいブラジル耐火物市場においてリーディング・ポジションを確立できる。また、耐摩耗性セラミックスに関する米国拠点を入手したことにより、同社グループで技術的親和性が認められるファインセラミックス事業において、米国市場へのアクセスを得られた。今後、ブラジル事業・米国事業は、同社グループのさらなる成長のための強力なプラットフォームとなり、事業の成長やシナジーはもとより収益のさらなる多様性と柔軟性をもたらすものと考える。
同社グループは、グループ子会社の新設やM&Aによりインド・太平洋圏の主要市場すべてに生産拠点を確保した。海外事業の強化・拡大を成長戦略の柱としていることから、今後もM&Aを含めた投資機会を探り、条件次第では躊躇なく投資を実行する考えでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(2) 断熱材
断熱材のセラミックファイバーは、軽量で低熱伝導率、高断熱性で省エネルギーには欠かせない素材である。施工性に優れた各種モジュール、成形品、断熱ボード、シート、ガスケットなど、様々な製品でニーズに対応している。2004年に断熱材事業を行うイソライト工業を買収した。持株比率が54.9%であったが、2022年3月末にTOB+株式売渡請求により完全子会社化した。環境課題への対応等を背景に、全世界的な事業環境の大変革期が到来したことを認識し、大胆な意思決定を迅速に行えるグループ経営体制の構築を進めた。
(3) セラミックス
同社は、1978年にファインセラミックス事業を開始した。先端産業の成長を見据え、2002年に品川ファインセラミックスとして分社化した。同セクターは、品川ファインセラミックスと米国で事業譲受したSSCA(Shinagawa Specialty Ceramics Americas LLC)の2社で構成される。ファインセラミックスは、高度に微細組織を制御したセラミック素材である。アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、サイアロンなど、様々な機能や特性を備えた素材で、各種ローラー、ダイス、ポンプパーツから半導体・液晶製造装置用セラミック部材まで、多様なエンジニアリングセラミックスを提供している。
(4) エンジニアリング
エンジニアリング事業は、工業窯炉での耐火物の設計、施工、メンテナンスを行う。各種施工機械や耐火物周辺設備の設計、製作など、超高温の世界を支える総合エンジニアリングを提供している。近年の工業炉は環境に配慮した省エネルギー、省力化、無害化、安全性などが要求されており、窯炉の設計や施工には高度の技術が必要となる。鉄鋼業向けには取鍋、連続鋳造に使用されるスライドゲート溶鋼流量制御装置、浸漬ノズル迅速交換装置など幅広いニーズに最新技術で応えている。また、大型ブロックリング工法による高炉改修工事に参画し、超短期改修に貢献したことで大きな評価を得ている。ごみ焼却炉、溶融炉などの環境関連設備において国内随一の実績を持つ。
(5) その他
その他の不動産事業は、保有不動産の賃貸や土地の有効活用を行う。賃貸契約が終了し遊休資産となった物件を売却し、コアビジネスである耐火物及び関連製品事業の設備投資やM&Aの資金に充当している。
3. 海外事業
(1) 海外売上高比率
(一社)日本鉄鋼連盟は、新興国の経済成長に伴い、世界の鉄鋼需要は2020年の約18億トンから2050年に約27億トンへ増加すると予測している。一方、日本経済の潜在成長力が低く、鉄鋼製品の需要が縮小して国内粗鋼生産は漸減すると見られる。
同社は、海外で積極的な拠点展開を行ってきた。第5次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)において、海外ビジネスの強化・拡大を重点施策の1つとしている。海外売上高は、2021年3月期の16,117百万円から2024年3月期に43,500百万円へ2.7倍となることが計画されている。海外売上高比率は同16.1%から30.0%へ上昇する。海外事業は販売数量が増加するなど業績が好調であるうえ、M&Aにより業容を拡大している。原材料を主に海外に依存していることから、円安は利益へのマイナス要因であったが、海外事業の拡大により中立要因化してきた。
(2) 海外拠点展開
日本の国内粗鋼生産量は、2019年に10年ぶりに1億トンを割り込んだ。米中貿易戦争の長期化による世界景気の減速で輸出が減り、内需も低迷したうえ、自然災害が重なった。2022年の生産量は、半導体不足を起因とする自動車向け鉄鋼需要の低迷もあり8,922万トンにとどまった。世界粗鋼生産における2022年の日本のシェアは4.7%と2000 年の半分以下の水準となった。一方、中国は54.0%と高水準を維持している。近年ではインドの成長が著しく、2018 年に年間生産量で日本を抜いた。2022年のインドの世界シェアは6.6%に高まった。インドは2023年に人口で中国を抜いて世界一となっており、持続的な成長が見込まれる。
同社の海外拠点の展開は、1997年の中国子会社の設立から本格的に始まり、2019年までにオーストラリア、米国、インドネシア、インドへ進出した。中国に耐火物等の製造・販売と連続鋳造用モールドパウダーの製造・販売を手掛ける合弁会社を設立した。オセアニアでは、オーストラリアとニュージーランドに拠点を持つ。2014年に設立したインドネシアの子会社と併せて、オセアニア・東南アジアへの販売展開を図っている。米国のオハイオ州には、モールドパウダーの製造・販売を行う子会社を設立した。現在では、米州大陸における当社の戦略アイテムの販売拠点としても機能している。また、今後のグローバル展開において重要アイテムとなる断熱材の製造・販売拠点を、マレーシア・台湾・中国・ドイツに置いている。
2022年12月に、仏サンゴバン社からブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業を譲受した。同社とサンゴバン社は、これまで30年にわたり良好な協力関係を築いてきた。1991年よりサンゴバンブラジルに鉄鋼用耐火物の製造技術ライセンス提供を行い、近年ではサンゴバンブラジルが販売店として、南米で鉄鋼、セメントなどの市場向けに同社製品を販売していた。また、2019 年にサンゴバン社の子会社である Grindwell Norton Ltd.との共同出資により、SG Shinagawa Refractories India Pvt. Ltd.をインドに設立した。これらを背景として、本事業買収の合意へと至った。
今回買収した事業は、ブラジルにおける鉄鋼、鋳造、非鉄金属、石油化学、セメント等向け耐火物の製造・販売と米国の鉱業・鉱物処理、鉄鋼、アスファルト、エネルギー等向け耐摩耗性セラミックスの製造・販売になる。2021年の売上高規模は、ブラジル事業が約99億円、米国事業が約12億円であった。買収には、約100億円を要した。本事業買収により同社グループは、成長著しいブラジル耐火物市場においてリーディング・ポジションを確立できる。また、耐摩耗性セラミックスに関する米国拠点を入手したことにより、同社グループで技術的親和性が認められるファインセラミックス事業において、米国市場へのアクセスを得られた。今後、ブラジル事業・米国事業は、同社グループのさらなる成長のための強力なプラットフォームとなり、事業の成長やシナジーはもとより収益のさらなる多様性と柔軟性をもたらすものと考える。
同社グループは、グループ子会社の新設やM&Aによりインド・太平洋圏の主要市場すべてに生産拠点を確保した。海外事業の強化・拡大を成長戦略の柱としていることから、今後もM&Aを含めた投資機会を探り、条件次第では躊躇なく投資を実行する考えでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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