*15:01JST CAICAD Research Memo(1):Web3事業への参入を含め、金融サービス事業の構造的な変革に取り組む
■要約
1. 会社概要
CAICA DIGITAL<2315>は、金融業界向けを主としたシステム開発や暗号資産※に関するシステム開発等を行う「ITサービス事業」及び、金融商品取引法に基づく第一種金融商品取引業、暗号資産に関する金融商品の開発・販売、暗号資産交換所運営等を手掛ける「金融サービス事業」の両輪で事業を展開している。システム開発において長年にわたって蓄積してきた高度な技術やノウハウなどに強みがあり、同社グループ全技術者(約400名)がブロックチェーン技術者となる計画を実行中である。2021年3月には暗号資産交換所を擁する(株)カイカエクスチェンジホールディングスを連結子会社とし、暗号資産関連ビジネスの拡大に向けて体制を整えた。足元では暗号資産市場の混乱に伴って収益が大きく落ち込む一方、次世代の分散型インターネットとして注目されているWeb3事業(詳細は後述)への参入、及び「金融サービス事業」の抜本的な見直しによる事業構造の変革を進めている。
※暗号資産とは、中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず、インターネットを通じて不特定多数に対して商品やサービスの購入の対価として利用できる財産的価値のことを指す。2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、今まで「仮想通貨」と呼ばれていた名称が「暗号資産」へと変更された。
2. 2022年10月期決算の概要
2022年10月期の連結業績は、売上高が前期比8.3%増の6,442百万円、営業損失が1,389百万円(前期は915百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が6,244百万円(同799百万円の損失)と、上期までは順調に進捗し黒字化を達成したものの、暗号資産市場の混乱による影響を受け、通期では増収ながら損失を計上する結果となった。売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移した一方、「金融サービス事業」については、世界的なインフレ進行や各国の急速な金融引き締めによる影響、さらにはFTX Trading Ltd.の経営破綻などが追い打ちをかけ、暗号資産市場全体が混乱をきたすなかで、暗号資産交換所「Zaif」を中心に売上高が下振れた。利益面でも、売上高が大きく下振れたことにより費用の増加分を補えず、営業損失を計上した。また、(株)カイカフィナンシャルホールディングス(及びその子会社)において、暗号資産価格の暴落など外部環境の悪化により事業計画の変更を余儀なくされたことから、のれん及び関連する事業資産を回収可能価額まで減額し、減損損失(5,527百万円)を特別損失に計上した。一方、活動面ではWeb3事業への参入や新株予約権の発行による財務体質の改善などに取り組んだ。
3. 2023年10月期の業績見通し
2023年10月期の連結業績について同社は、先行き不透明な外部環境を踏まえ、現時点で非開示としている。特に「金融サービス事業」については、経済情勢や金融市場、暗号資産市場環境の影響を大きく受けることから、合理的な業績予想を行うことが困難であると判断した。徹底したコスト削減(損益分岐点の引き下げ)により収益体質の強化を図るとともに、「金融サービス事業」においては、カイカ証券(株)の業態転換(大幅なコスト削減、新規事業の検討)の推進や(株)カイカエクスチェンジにおけるストック型ビジネスの強化、カイカフィナンシャルホールディングスにおけるWeb3事業の拡大など構造的な変革に取り組む方針である。
4. 今後の方向性
2021年4月に公表した「CAICA中期経営計画(改定版)」(最終年度2023年10月期)については、暗号資産の相場低迷の影響により、「金融サービス事業」における事業計画の変更を余儀なくされたことから、2022年9月14日付けで取り下げた。ただ、「2030年に向けた将来ビジョン」の方向性に見直しはない。新しい金融資産である暗号資産、普及拡大が間近に迫ったブロックチェーン(トークンエコノミーを含む)、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)によりさらに加速してきたデジタル化を背景として、他社に例を見ない事業基盤を生かし、金融とITをシームレスに統合した新たな「金融プラットフォーマー構想」の実現を目指している。特に、NFT市場※1の拡大やWeb3化への加速を見据え、ブロックチェーン技術や「Zaif」との連携などを生かし、成長が見込め、かつユーティリティ性※2の高いGameFi領域※3での事業拡大や独自の経済圏の創出などに取り組む方針であり、顧客とWeb3時代の成長を享受し合うことを戦略の大きな柱としている。
※1 NFTとは「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能な固有の価値を持つデジタルトークンのこと。不動産やアートなどの所有権(唯一性)や、トレーディングカード及びゲーム内のアイテム(希少性)など、多くの分野での活用が進められている。
※2 「実用性」や「有用性」を意味し、資産性以外の機能や便益が持つ価値の裏付けのこと。一例を挙げると、ユーティリティトークンとはゲーム内や特定のサービス・コミュニティに対して利用できるトークンのことで、ゲーム内のアイテムを購入する、コミュニティの利用者に対してインセンティブを付与する、コミュニティ内で投票を行うための権利を付与するなど、様々な場面で利用されることが多い。
※3 GameFiとはGameとFinanceを融合した言葉。ゲームをプレイすることでプレイヤーがトークンなどの経済的インセンティブを獲得できる「Play to Earn」のブロックチェーンゲームを指す。
■Key Points
・2022年10月期は上期までは順調に進捗し黒字化を達成したものの、暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失を計上する結果となった
・成長分野であるWeb3事業への参入を図り、その第1弾として「Zaif INO」(ローンチパッド)の提供を開始
・2023年10月期の業績予想は現時点で非開示。「金融サービス事業」の抜本的な構造改革を進める方針
・ブロックチェーン技術や「Zaif」との連携など他社にはない事業基盤を生かし、アライアンスパートナーとの協業を通じたWeb3事業の拡大を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NS>
1. 会社概要
CAICA DIGITAL<2315>は、金融業界向けを主としたシステム開発や暗号資産※に関するシステム開発等を行う「ITサービス事業」及び、金融商品取引法に基づく第一種金融商品取引業、暗号資産に関する金融商品の開発・販売、暗号資産交換所運営等を手掛ける「金融サービス事業」の両輪で事業を展開している。システム開発において長年にわたって蓄積してきた高度な技術やノウハウなどに強みがあり、同社グループ全技術者(約400名)がブロックチェーン技術者となる計画を実行中である。2021年3月には暗号資産交換所を擁する(株)カイカエクスチェンジホールディングスを連結子会社とし、暗号資産関連ビジネスの拡大に向けて体制を整えた。足元では暗号資産市場の混乱に伴って収益が大きく落ち込む一方、次世代の分散型インターネットとして注目されているWeb3事業(詳細は後述)への参入、及び「金融サービス事業」の抜本的な見直しによる事業構造の変革を進めている。
※暗号資産とは、中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず、インターネットを通じて不特定多数に対して商品やサービスの購入の対価として利用できる財産的価値のことを指す。2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、今まで「仮想通貨」と呼ばれていた名称が「暗号資産」へと変更された。
2. 2022年10月期決算の概要
2022年10月期の連結業績は、売上高が前期比8.3%増の6,442百万円、営業損失が1,389百万円(前期は915百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が6,244百万円(同799百万円の損失)と、上期までは順調に進捗し黒字化を達成したものの、暗号資産市場の混乱による影響を受け、通期では増収ながら損失を計上する結果となった。売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移した一方、「金融サービス事業」については、世界的なインフレ進行や各国の急速な金融引き締めによる影響、さらにはFTX Trading Ltd.の経営破綻などが追い打ちをかけ、暗号資産市場全体が混乱をきたすなかで、暗号資産交換所「Zaif」を中心に売上高が下振れた。利益面でも、売上高が大きく下振れたことにより費用の増加分を補えず、営業損失を計上した。また、(株)カイカフィナンシャルホールディングス(及びその子会社)において、暗号資産価格の暴落など外部環境の悪化により事業計画の変更を余儀なくされたことから、のれん及び関連する事業資産を回収可能価額まで減額し、減損損失(5,527百万円)を特別損失に計上した。一方、活動面ではWeb3事業への参入や新株予約権の発行による財務体質の改善などに取り組んだ。
3. 2023年10月期の業績見通し
2023年10月期の連結業績について同社は、先行き不透明な外部環境を踏まえ、現時点で非開示としている。特に「金融サービス事業」については、経済情勢や金融市場、暗号資産市場環境の影響を大きく受けることから、合理的な業績予想を行うことが困難であると判断した。徹底したコスト削減(損益分岐点の引き下げ)により収益体質の強化を図るとともに、「金融サービス事業」においては、カイカ証券(株)の業態転換(大幅なコスト削減、新規事業の検討)の推進や(株)カイカエクスチェンジにおけるストック型ビジネスの強化、カイカフィナンシャルホールディングスにおけるWeb3事業の拡大など構造的な変革に取り組む方針である。
4. 今後の方向性
2021年4月に公表した「CAICA中期経営計画(改定版)」(最終年度2023年10月期)については、暗号資産の相場低迷の影響により、「金融サービス事業」における事業計画の変更を余儀なくされたことから、2022年9月14日付けで取り下げた。ただ、「2030年に向けた将来ビジョン」の方向性に見直しはない。新しい金融資産である暗号資産、普及拡大が間近に迫ったブロックチェーン(トークンエコノミーを含む)、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)によりさらに加速してきたデジタル化を背景として、他社に例を見ない事業基盤を生かし、金融とITをシームレスに統合した新たな「金融プラットフォーマー構想」の実現を目指している。特に、NFT市場※1の拡大やWeb3化への加速を見据え、ブロックチェーン技術や「Zaif」との連携などを生かし、成長が見込め、かつユーティリティ性※2の高いGameFi領域※3での事業拡大や独自の経済圏の創出などに取り組む方針であり、顧客とWeb3時代の成長を享受し合うことを戦略の大きな柱としている。
※1 NFTとは「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能な固有の価値を持つデジタルトークンのこと。不動産やアートなどの所有権(唯一性)や、トレーディングカード及びゲーム内のアイテム(希少性)など、多くの分野での活用が進められている。
※2 「実用性」や「有用性」を意味し、資産性以外の機能や便益が持つ価値の裏付けのこと。一例を挙げると、ユーティリティトークンとはゲーム内や特定のサービス・コミュニティに対して利用できるトークンのことで、ゲーム内のアイテムを購入する、コミュニティの利用者に対してインセンティブを付与する、コミュニティ内で投票を行うための権利を付与するなど、様々な場面で利用されることが多い。
※3 GameFiとはGameとFinanceを融合した言葉。ゲームをプレイすることでプレイヤーがトークンなどの経済的インセンティブを獲得できる「Play to Earn」のブロックチェーンゲームを指す。
■Key Points
・2022年10月期は上期までは順調に進捗し黒字化を達成したものの、暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失を計上する結果となった
・成長分野であるWeb3事業への参入を図り、その第1弾として「Zaif INO」(ローンチパッド)の提供を開始
・2023年10月期の業績予想は現時点で非開示。「金融サービス事業」の抜本的な構造改革を進める方針
・ブロックチェーン技術や「Zaif」との連携など他社にはない事業基盤を生かし、アライアンスパートナーとの協業を通じたWeb3事業の拡大を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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