三井物産、様々な事業の知見・機能を組み合わせて社会課題の解決策を提供し、より高い価値創造に挑戦

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最新投稿日時:2022/09/22 12:00 - 「三井物産、様々な事業の知見・機能を組み合わせて社会課題の解決策を提供し、より高い価値創造に挑戦」(ログミーファイナンス)

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三井物産、様々な事業の知見・機能を組み合わせて社会課題の解決策を提供し、より高い価値創造に挑戦

投稿:2022/09/22 12:00

個人投資家向け会社説明会

堀健一氏(以下、堀):みなさま、こんにちは。社長の堀でございます。本日は、たくさんの方々にご来場いただき、また配信をご覧いただき誠にありがとうございます。昨年は緊急事態宣言により、オンラインのみでの開催とさせていただきましたが、今年はこうしてみなさまとお会いできることをうれしく思っています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

当社の株式は、3月末時点で約30万人の個人投資家のみなさまに保有いただいており、その保有株式数は当社発行済み株式の約20パーセントを占めます。個人投資家のみなさまは、大変重要な存在です。

足元の事業環境を見ますと、ロシア・ウクライナ情勢やサプライチェーンの混乱、インフレ高進など不確実性の高い事業環境が継続しています。一方、当社は安定供給を支えるトレーディングの機能と、グローバルに広がる事業ポートフォリオを通じて、引き続き力強い業績を示すことができています。

本日の説明会を通じて、当社の強み、戦略、持続的成長へ向けた道筋をみなさまにご理解いただき、今後の投資判断の一助としていただければ幸いです。

数字で見る三井物産

まずは当社の概要からご説明します。当社の前身である第一物産は、第二次世界大戦後間もない1947年に設立されました。その後、1959年に旧三井物産社員による大合同を経て、現在の三井物産は誕生しました。

それ以降、当社は「必要なモノやコトを、必要としている人々に届ける」を使命として、世界中でさまざまな分野で事業を創出し、日本と世界の経済発展とともに成長してきました。

現在、三井物産は約4万4,000人の多様な人材、そして、お客さま、パートナー、取引先、地域社会といったさまざまなステークホルダーとの強固なネットワーク、さらには16の事業本部、国内外129の拠点、509社の関係会社を擁しています。

当社は特に海外事業の比率が高く、関係会社の75パーセントにあたる383社が海外にあり、収益源も海外が8割強を占めています。このように、グローバルに事業を展開していることが当社の特徴の1つです。

事業分野

当社の7つの事業分野についてご説明します。ご覧のとおり、当社の事業分野は多岐にわたっています。さまざまな事業分野でのプレゼンス、知見、機能を掛け合わせ、世界中の複雑な社会課題に対して、三井物産だからこそ可能な価値創造に挑戦しています。

金属資源分野では、当社最大の収益源である鉄鉱石事業の維持・拡大に向け、資源メジャーのBHP社やRio Tinto社、ブラジルのVale社と鉱山開発を行っています。また、循環型社会への対応として、金属リサイクルや電池バリューチェーンの取り組みも強化しています。

エネルギー分野では、グローバルでLNG事業に積極的に取り組んでいます。米国のキャメロンLNGプロジェクトでは、全系列での生産を開始するなど、安定供給に向けた取り組みを進めています。また、後ほどご紹介する次世代エネルギー事業のような、気候変動対応を機会とする取り組みも行っています。

機械・インフラ分野では、業績の伸びが著しい自動車事業に加え、建機、船舶、宇宙関連の事業などに取り組んでいます。例えば、発電事業を26ヶ国で展開するなど、生活に欠かせない社会インフラを長期安定的に提供し、よりよい暮らしや国創りに貢献しています。

化学品分野では、基礎化学品や素材のほか、農薬、肥料などの農業関連、さらには水素・アンモニアといった次世代エネルギー関連など、さまざまな取り組みを進めています。化学品は、素材という切り口からたくさんの産業との接点があります。この接点を活かして、事業を展開しています。

鉄鋼製品分野では、鋼材のトレーディングや、出資している鋼材関連事業会社の企業価値向上に取り組んでいます。また、電炉やインフラのメンテナンス事業など、低・脱炭素社会化に対応した取り組みを行っています。

生活産業分野では、消費者のニーズが多様化する食品、流通、ファッションの分野での事業に加え、後ほどご紹介します、アジア最大の民間病院へ事業参画し、ヘルスケア・ウェルネス分野での事業拡大を進めています。

次世代・機能推進分野では、ICT、金融、不動産、物流など、当社の業態進化につながる案件を推進しています。また、これらの専門機能を他の部門でも活用することで、当社全体の事業基盤の強化にもつなげています。

三井物産のビジネスモデル 創る・育てる・展(ひろ)げる

価値創造の源泉である、当社のビジネスモデルと強みについてご説明します。この図のように、当社は幅広い産業で事業を展開し、さまざまな知見、ネットワーク、機能を蓄積しています。

このようなものを活用して新たな事業の芽を見出し、その事業を強化し、さらに知見を蓄えて、新たなコア事業まで育てていきます。育てたコア事業と周辺事業を組み合わせ、産業を跨いだ事業群、いわば「ビジネスのクラスター」を形成しています。

当社のビジネスモデルは、このように産業横断的な事業群を形成し、その事業群を通じて社会課題に対する解決策を提供するものです。

強み① 事業ポートフォリオ- グローバルかつ幅広い産業に跨る収益基盤

当社の強みの1つは「グローバルかつ幅広い産業に跨る収益基盤」であると思っています。長年にわたり事業の強化を継続し、事業ポートフォリオの変革を続けてきたことで、グローバルに広がる収益基盤を構築しています。また、鉄鉱石、LNG、自動車、化学品、ヘルスケアなど、幅広い産業において競争力の高い事業を展開しています。

スライド右下のグラフは、過去5年間の基礎営業キャッシュ・フローの推移を示しています。新型コロナウイルス感染拡大といった非常に厳しい事業環境においても、当社の強みである収益基盤を通じて、力強いキャッシュの創出力を実現しています。

強み② 事業ポートフォリオ- 組み合わせによる新たな価値創造

2つ目の強みは、組み合わせによる新たな価値創造です。脱炭素社会に向けたエネルギートランジションを事例として、組み合わせによる新たな価値創造をご紹介します。

当社は、エネルギートランジションのメニューとして、LNG、クリーンアンモニアなどの次世代エネルギー、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーなど、複数の産業に跨る知見・技術が必要なプロジェクトに取り組んでいます。

当社には原油・ガスなどの地下資源の開発、インフラ事業、LNGやアンモニアのトレーディング、ロジスティクスの知見が蓄積されています。また、世界中にパートナーや需要家のネットワークを持っています。新たな取り組みへの挑戦において、これらを組み合わせることで効率的な立ち上げや検証が可能となっています。

強み③ 人材とそれを活かす企業文化(「人の三井」と「自由闊達」)

当社は、よく「人の三井」と称されます。「人の三井」とは、人材育成を最重要に考える会社であること、そして自立した「個」の集団であることを意味していると考えています。また、当社には多様な「個」が世代や専門性を超えて自由に発想し、互いに連携し、その力を最大限に発揮するための「自由闊達」な企業文化が根付いています。

当社では、「個」の発想を生かすとともに、世代を超えた継続性と発展性を担保するために、ビジネスノウハウの伝承にも力を入れています。いくつかの例をスライド右下に掲載しています。

映像 再生可能エネルギーの取り組み

ここで、当社の人材が事業の現場で奮闘する様子を映像でご紹介します。今回紹介する社員は、太陽光発電事業にグローバルに取り組んでいます。気候変動対応に向けた再生可能エネルギー事業の現場で奮闘する姿をご覧ください。

いかがでしたでしょうか。彼女のように自立した「個」が、さまざまな現場で日々仕事に取り組んでいるのが、当社の強みの1つだと思っています。

2022年3月期 実績および2023年3月期 事業計画

2023年3月期の事業計画についてご説明します。まず、2022年3月期は、すべてのセグメントで大きく業績が伸び、基礎営業キャッシュ・フローは1兆1,587億円、当期利益は9,147億円といずれも過去最高を大幅に更新し、現中期経営計画の目標を前倒しで達成しています。

2023年3月期も、引き続き力強い収益の実現を目指していきます。基礎営業キャッシュ・フローは9,500億円、当期利益は8,000億円を計画しています。

2023年3月期 第一四半期実績

本年8月に公表した2023年3月期第1四半期の実績についてご説明します。基礎営業キャッシュ・フローは前年同期比305億円増加の3,004億円、四半期利益は前年同期比837億円増益の2,750億円となりました。どちらも前年同期を上回り、本年5月に公表した事業計画に対して、それぞれ30パーセント以上と、高い進捗率を実現しています。

前年同期比で四半期利益を見ても、すべてのセグメントで増益となりました。特に、原料や素材などのトレーディング、北米の自動車事業、ヘルスケア事業は前期に大きな成長を見せ、その堅調な業績を継続しています。

商品市況のアップサイドの取り込み、ならびに為替も業績に貢献しています。一部商品価格の正常化やサプライチェーンの混乱など、引き続き不確実性の高い環境が続きますが、事業計画の達成に向けて取り組んでいきます。

株主還元方針

株主還元方針についてご説明します。当社の株主還元は、基礎営業キャッシュ・フローに対する還元率を指標としています。現中期経営計画の3年間の累計基礎営業キャッシュ・フローの33パーセントを、株主還元に充てることを目指しています。

配当は、2022年3月期に顕在化した収益力向上を踏まえ、1株あたり120円を下限配当とすることを公表しました。もう1つの還元方法である自己株式取得については、本年5月6日から9月22日までに、最大1,000億円を上限として実施中です。

Strategic Focus(戦略的注力領域)

続いて、当社が特に力を入れている事業領域、3つのStrategic Focus(戦略的注力領域)ついてご説明します。当社は、現在の中期経営計画で、エネルギーソリューション、ヘルスケア・ニュートリション、マーケット・アジアの3つをStrategic Focusとし、特に力を入れて取り組んでいます。

本日は、エネルギーソリューションとヘルスケア・ニュートリションについて事例を交えてご紹介します。

Strategic Focus① エネルギーソリューション

まずはエネルギーソリューションです。これは低・脱炭素社会の実現に貢献しながら、日本をはじめ世界中のみなさまにエネルギーを安定供給するための取り組みです。環境負荷が相対的に低いLNG資産をさらに強くするとともに、水素・アンモニア等の次世代エネルギー事業の創出を進めています。

Strategic Focus① LNG資産ポートフォリオ

当社が世界に持つLNG資産のポートフォリオをスライドにお示ししています。当社は「エネルギーの安定供給と低・脱炭素社会化の両立」という社会課題に対し、LNGが重要な役割を果たすと考えています。

当社は1970年代にアブダビのLNGプロジェクトに参画しました。その後も競争力のある資産を積み上げ、現在では世界8ヶ国のプロジェクトに参画しています。LNGの供給源を世界中に分散することで、安定的な供給を実現していきます。

Strategic Focus① クリーンアンモニア事業への取り組み

エネルギーソリューションのもう1つの事例として、クリーンアンモニア事業への取り組みをご紹介します。クリーンアンモニアは、燃焼時に二酸化炭素が発生しない次世代のエネルギー源として期待されています。

クリーンアンモニア事業には、専用の製造技術や拠点の確保だけではなく、新たなサプライチェーンの構築が必要です。当社には、LNG事業を通じたガス産出国との関係や、天然ガス開発事業から得た、二酸化炭素の回収や貯蔵に必要な地下構造の分析に関する技術者や知見、そして日本企業最大の取扱量を誇るアンモニアのトレーディング事業があります。

このような複数の事業でのノウハウを組み合わせ、製造から最終需要家までのバリューチェーンの構築を目指しています。

気候変動への対応:ネットゼロエミッション

低・脱炭素社会に向けたエネルギーソリューションに関連し、当社の気候変動対応方針についてご紹介します。気候変動を中心に、サステナビリティへの対応は世界が取り組むべき喫緊の重要なテーマとなりました。当社はグローバルにビジネスを展開する、いわばビジネスコミュニティの一員として、持続可能な社会の実現に向け、総力を挙げて取り組んでいきます。

当社は2020年5月に、2050年のネットゼロエミッション、その道筋として、2022年対比での、2030年のグリーンハウスガスインパクトの半減を目標に掲げました。資源・発電資産のポートフォリオの組み換えを含め、経済性を確保しながら自社排出量の削減を進めています。

さらに、総合商社としての機能を活かし、再生可能エネルギー、植林事業、水素・アンモニア事業等の取り組みを通じて、世界の温室効果ガス削減に広く貢献していきます。

Strategic Focus② ヘルスケア・ニュートリション

次に、ヘルスケア・ニュートリションについて、ウェルネス戦略を事例としてご説明します。患者ケアで辿るプロセスは、広く捉えるとライフスタイルに始まり、まだ病気になっていない段階である未病・予防、検査・診断といった治療前、そして治療そのもの、さらに治療後まで続いていきます。当社は、このプロセス全体をターゲットとして捉えています。

当社が筆頭株主であるアジア最大の病院グループIHHは治療に加えて、検査・診断へと、より患者視点に立ったサービスを提供していきます。当社は、さらに健康から退院後のリモートケアや在宅ケアまで、プロセス全体へのサービスやソリューションの開発と提供を拡大し、患者さんの体験をよりよいものにすることをIHHとともに目指していきます。

Strategic Focus② ヘルスケア・ニュートリション事業 基盤アセット:IHH

ヘルスケアの中核となるIHHについてご説明します。IHHは、経営基盤の強化に向けた継続的な施策の結果、2021年の業績は過去最高益を達成しました。2011年の当社出資以降、病院数、病床数、EBITDAともに大きく拡大しています。

当社が筆頭株主となった2019年の追加出資以降、IHHグループの病院ポートフォリオの強化とシナジーの追求、コスト削減を進めてきたことの成果でもあります。この成長戦略をさらに加速させていきたいと思っています。

以上で、私からの説明を終了させていただきます。ご清聴いただき誠にありがとうございました。

質疑応答:サハリンⅡ事業の現状と今後の見通しについて

司会者:ロシアのサハリンⅡ事業に関するご質問を複数いただいています。「サハリンⅡ事業の現状と今後の見通しについて、可能な範囲でコメントをお願いします」とのことです。 

:当社は2022年8月25日、ロシアのサハリンⅡ事業の新運営会社であるSakhalin Energy LLC社の持分引受に関する申請をロシア政府に提出し、8月30日に承認された旨の通知を受けました。これは8月31日に当社のウェブサイト等でお知らせしたとおりです。

今後の展開ですが、この会社の持分引受に関する協議を詳細に進めていく予定です。当社は国際社会がとる制裁措置を遵守するとともに、LNGを中心とする安定供給の観点も踏まえ、日本政府や事業パートナーを含むステークホルダーのみなさまとともに、今後の方針に関する協議を続け、適切に対応していく所存です。

今後は、先ほどお伝えしたロシアでの新会社の株主が確定した後に、株主間協定の締結に向けた協議が進んでいくため、しっかり対応していきたいと思っています。

質疑応答:インフレ、サプライチェーン混乱の影響について

司会者:「インフレ、サプライチェーン混乱の影響について教えてください」とのご質問です。

:ご案内のとおり、世界で進むインフレの影響は大変大きな経営課題でもありますし、我々にとってチャレンジでもあります。

当社の場合、これはポートフォリオ全体で対応するのが重要かと思っています。原材料費や人件費が増えることによるコストアップがまず見えるところですが、一方で、インフレによる市況上昇の恩恵を受けている事業もあります。

当社は、グローバルかつ幅広い産業に広がる当社の事業資産、事業ポートフォリオを活かして、コストアップの部分は効率化でなんとか競争力を維持し、市況上昇によるアップサイド(情報の利益獲得)にも取り組んでいきたいと思っています。

当社全体としては、インフレに対する耐性はある程度あると思っています。各事業がしっかりした対応をとることが大切であるため、そのような経営をしていきたいと思っています。

また、サプライチェーンの混乱は依然続いていると考えています。当社はグローバルで事業を展開しているため、サプライチェーンの中のお客さまやパートナーとよく話し合いながら、当社自身のネットワークを駆使し、代替調達先や代替原料の手配、あるいは予期せぬ事象に対するバックアップ体制などを、当社が考え抜いて提供することを求められています。

これは当社にとってチャンスでもあります。なんとか当社のネットワークを駆使して解決方法を提供していきたいと思います。この仕事は去年の段階から相当増えており、それが奏功して当社の収益基盤の向上につながっているのも事実です。お客さまへの安定供給に貢献できる大事な機会ですので、力を入れていきたいと思っています。特に化学品や穀物トレーディング、エネルギー分野などでそのような例が顕著であると思っています。

自動車産業でも、サプライチェーン起因の課題に直面していますが、特に当社の場合は米州を中心に自動車のサプライチェーンに関するメニュー提示を広げています。新車の販売はもちろん、中古車販売、リースやサービス・メンテナンスなどのメニューも加えた幅広い事業展開でサプライチェーンの課題を克服し、同時に収益の機会を確保する取り組みを進めています。

前期から第1四半期にかけて、ある程度成果が上がっているため、ここも引き続き力を入れていきたいと思っています。

質疑応答:サハリンⅡ事業への出資金について

質問者:サハリンⅡ事業の従来の出資金については今後も引き継がれるのでしょうか? それとも、出資金は没になってしまうのでしょうか? そのあたりについて教えてください。

:今回のサハリンⅡ事業の大きな変化は、ロシア国内の会社に我々の持ち分を振り替えるということで、その場合は、今まで長年交渉してできあがっているサハリンプロジェクトの仕組みが、そのまま担保されたかたちで移ることが前提です。

そのため、その際に変化があるかをよく見ながら、今回ロシアにできた新しい会社への持分移管を申請したのですが、今のところその前提は守られている状態です。

今後、先ほどお伝えした株主間協定の詳細な交渉等はありますが、今の流れとしては、同じ仕組みがそのままロシア国内の会社に移ることを前提として進めています。

質疑応答:新分野の今後の展望について

質問者:生活産業、次世代・機能推進という新しい分野について、13ページの表を見ると少しずつ伸びてはいますが、従来のエネルギー分野等の金額が大きすぎるため、全体のキャッシュ・フローの、まだ1割に届くかどうかだと思います。全体の3割程度を占めるのは何年くらいになりそうでしょうか?

:生活産業部門と次世代・機能推進部門は、事業資産を積み上げてきた歴史自体は比較的浅いものの、特に生活産業ではトレーディング業務において、食料の分野を中心にノウハウが相当溜まってきており、事業資産も徐々に積み上げています。

事業資産が先行して積み上がっている部門に比べると、絶対値の利益の出方が相対的にはまだ小さく見えるかもしれませんが、現在の成長率は非常に高いと思っています。

先ほどご紹介した生活産業部門のヘルスケア・ニュートリションの分野については、これからの伸びが最も期待されている、グローバルな健康管理・維持のマーケットを狙っていきます。

当社は幸いにも、アジア一流病院プラットフォームの最大株主の状況を確保できています。この影響は非常に大きく、毎日のように治療やその周辺データが蓄積されています。このようなことも将来の事業機会につながっていくため、楽しみにしています。

全体のポートフォリオの収益の中でどの分野が何割を占めているかという数字は、まだ集計できる状態で手元にないのですが、当社の資源ビジネスの数年前の状態を彷彿させる、大きなマーケットの機会と勢いを今は見ています。

次期中期経営計画の中で、次世代・機能推進部門と生活産業部門が「どのくらい骨太なインパクトを会社の中で出すか」というイメージを、おそらくもう少しで伝えられると思います。当社の将来のコア事業にしていくことには揺るぎない決意を持っていますので、どうぞご支援をよろしくお願いします。

質疑応答:インフレへの耐性と業績への影響について

質問者:先ほど、「当社の事業はインフレに対して相当の耐性がある」というお話がありました。日本経済にとって、インフレはマクロ的にもプラス・マイナスの両面があり、トータルではどうなのかという明快な分析はあまり聞きません。三井物産にとって、御社の事業のインフレに対する耐性がどのようなものなのか教えてください。また、業績にとってインフレは、プラス・マイナスのどちらの方向に強い影響があるのでしょうか?

:まずはインフレ全般に対する回答です。生活者や各企業のほとんどのみなさまが、インフレには大変苦労して対応している状態だと強く認識しています。

インフレにもいろいろな性格があり、賃金の上昇とインフレが好循環で回っていく分にはよいのですが、それがずれている場合には下方リスク、あるいは混乱を招く可能性があると重々承知していますので、そのあたりをよく考えた上で、企業行動を実施していきたいと思っています。

続いてのご質問の趣旨は、もう少しマクロの部分、当社の業績についてだと捉えました。当社は国内外に事業を展開していますが、海外のグローバルな価格指標で動いていく商品のうち、価格形成力が比較的あるものを扱っていると言えます。そのため、インフレで当社の扱っている商品・サービスを値上げしていく際には、お客さまのことをよく考え、相談させてもらいながら、価格形成に取り組んでいく方針です。つまり、インフレは当社の業績にとって、絶対値の伸びという意味では、全体としてプラスだと言えると思います。

ただし、いくつかの前提条件があります。1つは、引き続き当社の持っている資産に、価格形成力のあるもの、お客さまにとって価値のあるものを揃えるということです。もう1つは、インフレの最中でも取り組める合理化について、どのように継続的に行うかということで、この2つが前提条件となります。今日、当社がいろいろなスライドなどを用いて説明した主力の商品群を見ますと、そのようなことが総じて予定どおりに進んでいる状態だと思います。

今後も脇を締めて対応していきたいと思っていますが、やはりお客さま、パートナー、消費者のみなさまの状況をよく見ながら、正しい企業行動を選択して、インフレの世界状況において企業実績を示していきたいと思っています。

質疑応答:資源価格・エネルギー価格・円安の第2四半期以降の業績への影響について

質問者:昨今のエネルギー価格、資源価格は、少し弱含みの動きがあります。一方で、為替は円安が相当進んでいます。御社の第1四半期は非常によい決算でしたが、その後はエネルギー資源価格の低迷や円安の影響もあり、プラス・マイナスの動きがいろいろとあるのではないかと思います。そのような問題が、直近の業績にどのような影響をおよぼしているのかを、差し支えない範囲で教えてください。

:まずは、円安のほうからお伝えします。当社は国際基軸通貨であるドルを中心とした収入源が多く、海外で上げている利益もドルで成り立っているものが多いため、円安になると円ベースでご報告できる成果は増える構造になっています。

円安が1円進むと、年間で46億円くらい税引後の利益が増えるという感応度分析を行っています。もちろん感応度分析ですので、うまくいくモデルケースになっていますが、だいたいの目安にはなると思います。

エネルギーや資源の価格については、ご質問にあったとおり、足元は、物によっては少し弱含みのところがあります。しかし、4月以降は今のところ、今年の事業計画で想定している水準くらいで上下しながら動いているというのが我々の見方です。

長期的には、今日何度かお話ししている液化天然ガス、つまりLNGのお話になりますが、低・脱炭素の目標を実現するためには、基幹エネルギー源として、相対的に空気を汚さないガスはやはり重要だと思っています。

特に、液化天然ガスは長い年月をかけてのブリッジとしての役割、橋渡しの役割が続くと思っていますが、必要量に見合うプロジェクトの数がまだ世の中に揃っていませんし、全体として予定どおりに進んでいないと言えると思います。

天然ガスのような価格の上方向へのプレッシャーは、まだ長期的に続いていくと見ています。地政学的な動きや短期の事情で、エネルギーを中心とした商品価格はその都度上下すると思いますが、大きな基調としては、しばらくは需要の勢いが強い状態で続くと見ています。

ただし、繰り返しになりますが、円安は、日本円にした際のコストの上昇を当然見なくてはなりません。そのため、日本円に換算すると大変な金額になるかもしれませんが、引き続き優秀なよい人材を海外で雇うといったことは、絶対に続けなくてはなりません。そのようなことも考えながら、為替の動きに対応していきたいと思っています。

質疑応答:自社株買い取得の目的と狙い、現中計での位置付けについて

質問者:1,000億円を上限とする自己株式取得の計画があるとのお話でした。こちらはどのような目的や予定があるのか聞かせてください。また、本日は中期経営計画の中身については詳しくお聞きできなかったため、あわせておうかがいできればと思います。

余談ですが、久しぶりにお堀端に来たのですが、昭和の年代に三井物産でカルガモを見ながら買い物をした思い出があり、「あの頃はよかったな」という感想を持ちました。コロナ禍が終息してから「このようなことをするよ」というお考えがあれば嬉しいです。

:自社株買いについては、当社の成長のための投資をしっかりと行った上で、稼いだ現金や資産を入れ替え状況を見ながら行っていきます。

しかるべき投資をした後に現金が、例えば「株主還元にぜひ使いたい」という状態になっていれば、自社株買いをすることによって、株の数が減ります。結果として1株あたりの価値、我々の原資に対する1株あたりの請求権が上がります。そのような意味で、資本の効率化をなるべく進めていこうというのが基本的な考え方です。

この中計でも、再現可能な利益の基盤が増えてきたと我々が判断した場合には、配当そのものを上げます。事業資産がたまたま非常によい値段でリサイクルが完了した時や、やや通常の範囲を超えた商品市況で得た収益は、再現性が少し弱いという判断になります。そのようなお金は、非常に重要な成長投資の案件を行った上で、資本効率化のために自社株買いに使うのが投資家のみなさまにとって一番メリットがあるのではないかという発想で取り組んでいます。

自社株買いに対しても同じように考えています。したがって、基礎営業キャッシュ・フローと呼んでいる稼いだ現金を目安に、中計の3年間累計の現金の約3分の1を自社株買い、あるいは配当というかたちで還元したいというのが、今の中計における考え方です。

もう1つのご質問ですが、ビルの外、みなさまから見て正面右側の皇居側の公園が、12月頃に完成します。カルガモ池に相当する池もできます。カルガモだけは自然と来てもらうしかなく、担当の人たちは、私から「カルガモが来たらいいな」と言われてプレッシャーを感じているようです。天敵がいなければ来るようですので、猛禽類が飛んでいない状況をつくるのがコツのようです。我々も楽しみにしていますが、綺麗になったときに、ぜひもう一度足を運んでもらえたら大変ありがたいです。

質疑応答:地政学的リスクについて

質問者:昨今、ロシア・ウクライナをはじめ、台湾近辺の危機など、さまざまな地政学的リスクについて言われています。現に、サハリンⅡ事業に関しては、御社とも関係があるところとして、ロシア政府から新会社の設立で権益を確保するという方向性が出されています。

このような関係により、新会社になってからの損益がマイナスとなることはあり得るのか、今後どのような状況になったら大きなマイナスが発生する可能性があるのかといった見通しを教えてください。

また、中国・台湾、東アジア関係の危機に関しても、どのようなマネジメントやコントロールを考えているのか教えてください。

:全体論として、地政学リスクに対するアラートの水準を上げていくことは、今の経営上、必須だと思っています。

はじめに、サハリンⅡ事業の各論についてですが、2月にウクライナ侵攻という非常に不幸な事態が発生してから本日まで、サハリンからのLNGの納入は、なんとか安定的にずっと続いているのが事実です。これは関係者のさまざまな尽力と協業の成果であって、もちろん制裁を遵守するかたちで行われています。

ただし、昨今の報道や先ほどのご説明にもあったとおり、ロシアの今の状況では、おそらくサハリンの資産は運営上のリスクが上がっていると判断しています。

その分を、会計上の手当てを行っておく必要があり、すでに第1四半期、昨年度末の2回に渡って、我々の資産評価を見直して、当社の貸借対照表に反映しています。会計上は資本に直入しているため、損益計算書やキャッシュ・フローには影響していませんが、そのような会計上の手当ては行っています。

現段階では、これ以上のマイナス要素は見ていません。冒頭のみなさまの質問に対する回答として、これから取り組むべき作業について少しお伝えしましたが、そのようなものにしっかりと対応していきながら、なんとか日本へのガスの安定供給、あるいはアジアのお客さまへのガスの安定供給を継続し、操業を続けることによってリスクを最小化していくように対応していきたいと思っています。

当社の構えとしては、地政学全体では、世界中の我々が仕事に取り組んでいるところで、想定を超えるようなイベントは、今の時代、どこでも起こり得ると想定したほうがむしろよいと思っています。そのため、まずは地域と仕事、産業分野に効果を分散させて、1つが予期せぬ状況になって大きな痛手を受けている時も、会社全体としては成績を保てるような体制を強化していくこと、もう1つは二重三重のバックアップ体制をなるべく作っておくことが必要になると思います。

これは多少のコスト増大を意味すると思いますが、お客さまもそのような気持ちが強いと思っています。我々はお客さまにそのようなサービスを提供する機会があるため、機会を提供しながら、我々の仕事で2枚越し、3枚越しのバックアップ体制を同時に作っていきます。地政学リスクの更新に対して、必ず効く手法というのはおそらくないため、日頃の体制づくりで取り組んでいくしかないと考えています。

質疑応答:クリーンアンモニア事業の収益と今後の展開について

質問者:スライド19ページに記載の、クリーンアンモニア事業の取り組みについてです。これを見ると「長年にわたり育て、展(ひろ)げてきた」という記載があり、世界中で事業化に向けた検証を開始したということだと捉えています。この事業は、具体的にどのようなかたちで収益に結びつくのでしょうか? 現行の事業収益がどのくらいあるのかも教えてください。

また、スライドの国名を見ると、米国・インドネシアは青色、チリ・ニュージーランドは緑色、豪州・サウジアラビアは青色と緑色が半々で表記されていますが、これには何か意味があるのでしょうか? 加えて、新規需要拡大の中に日本が触れられていませんが、日本におけるクリーンアンモニア事業については、どのように考えていますか? スライドに記載のように、今後世界中に広がっていく場合、国内ではどのようなハードルが高く、拡大できないのかについても教えていただければと思います。

:アンモニアの用途は、現段階では最終的に窒素源の肥料、尿素などに使われている部分が一番多く、ほかには工業用途などがあります。当社は、長年アンモニアのトレーディングを行っており、アジアで製造にも取り組んでいました。

今はトレーディングが中心で、日本への輸入では過半数を超える非常に大きな市場シェアを持っています。アジア域内のトレーディングもトップクラスで、アンモニアは扱い慣れています。

今、アンモニアが注目されているのには2つほど理由があります。1つは水素社会です。水素そのものを輸送するのが大変ですので、水素を運ぶ上では、アンモニアに水素を含めて運べば効率がよいという理由で、注目されています。アンモニアに水素が入っているとイメージしてもらえばよいと思います。

そして、石炭を焚いて発電する場合はアンモニアを混焼するのですが、混焼した部分は二酸化炭素が出ません。我が国の石炭火力発電を低炭素化するための切り札の1つとして、研究が進んでいます。このようにアンモニアの事業がフォーカスされています。

一方で、アンモニア自体を作る際には二酸化炭素が出てきます。この二酸化炭素を地中に埋めると非常にクリーンなアンモニアができるため、これをブルーアンモニアと呼んでいます。太陽光や水力の電源でアンモニアを作っている場合は、非常にわかりやすくきれいです。スライドの青色と緑色は、そのような分類を指しています。

一番新しいポイントとしては、アンモニアの世界最大のメーカーであるCF Industriesというアメリカの会社と当社が「クリーンアンモニアに一緒に取り組もう」ということで、先方は52パーセント、当社は48パーセント出資して、ジョイントベンチャーを組むことに合意しています。

また、アンモニアはガスから作るため、天然ガスで競争力のあるところでアンモニア事業を行っています。地下構造へ二酸化炭素を埋めることでブルーアンモニアを作っていくというプロジェクトを、中東やオーストラリアなどで行っています。

時間はかかると思いますが、このような案件を同時並行で走らせることによって、お客さまとの打ち合わせを増やし、やがて長期的な購買の仕組みを作って、工場新設のところで収益が上がることを目指しています。少しお話が長くなり恐縮ですが、そのような視点と、将来の楽しみとして本事業を推進しています。

質疑応答:海外駐在している女性社員について

質問者:先ほど、御社の女性が太陽光への取り組みで活躍されて、メキシコのような場所に駐在しているという紹介の動画がありました。やはり総合商社というと、海外駐在に出て、そこでいろいろと経験して力をつけていくことが多いのだと思います。このような時代に、さまざまな女性を活用している御社には、非常に優秀な女性がたくさん入ってくるのだと思います。

しかし、駐在に関してもなかなか女性では活躍しにくい地域もあると思います。また、結婚した場合は、駐在しても結局家族と一緒に生活しないと現地で社会に溶け込むことは難しいと思います。そのような意味で、女性が海外で活躍していくために、御社はどのようなこと考え方を持って進めていくつもりでしょうか?

女性が具体的にどのように活躍するようにしていこうと思っているのか、社長のお考えがあれば聞かせてほしいです。

:今、新入社員の4割弱が女性です。もし、1980年代や1990年代にそのような状態であれば、今女性の幹部候補生のプールが、より多くできていたと思います。残念ながら、女性社員の数は徐々に増えていったため、女性の割合が多い若手社員に比べて、シニアになるほどプールが少ないのです。

これは毎年進捗していく話ですが、とにかく女性の視点はますます重要になってくると思います。チームを作っても、女性が入っているほうが出してくるアイデアにいろいろな幅があるため、やはり多様性は本当に意味があると実感しています。

海外についてご安心いただきたいのは、女性はいずれも海外勤務への志向がけっこう強く、かなり厳しい地域にも手を挙げる方がいます。ただし、ご家族の問題は常にあります。例えばライフイベントがあって会社をいったんお休みする場合、戻ってくる方が多いのですが、戻ってこない方もいます。

一方で、男女ともになるべく若いうち、会社に入って間もないうちに海外の主要な現場を経験すると、自信がつき、その数年後にライフイベントがあった場合でも、1回仕事を覚えたという感覚があるため、自信を持って戻ってくるというケースが増えています。したがって、まずこれを行わなければいけないと思っています。

その他はまったくご指摘のとおりで、ご家族で駐在するのは非常に大事です。社内でも夫婦で働いている方がおり、どちらも三井物産の社員です。その場合、一方が駐在するともう一方が1人きりになってしまいます。そこはなるべく同時赴任できるようにいろいろな部門間で調整を行います。そうすることで、夫婦で現地のネットワーク作りに参加できるため、なるべく配慮したいと思いますし、本来は企業間でもそのようなことができれば理想かと思います。

このように、最終的に多様なアイデアが出るように女性の活躍をどんどん広げていくことはマストだと思っています。当社は会社全体としてまだ目標を達成していないところがあるのですが、先ほどビデオで紹介したように、若者が本当にがんばっているため、期待を持ってこのダイバーシティに尽力していきたいと思います。

質疑応答:LNGの長期的な役割および三井物産のシェアについて

質問者:LNGに関して教えてください。私は液化天然ガスが石油に代わると認識しているのですが、石油に取って代わるのか、それとも中継ぎで、50年や60年経ったらまた別のものになるのでしょうか?

また、三井物産のLNGは、世界全体の需要や供給に対してどれくらいの割合を占めているのかお聞きしたいです。

:LNGは、特に発電やその他の産業用途において、今後も長く中心的役割を果たしていくと考えています。その理由としては、発電するにしても石炭発電と比べるとガス発電は二酸化炭素の排出量が相対的に少ないのです。ですので、石炭炊きをガス炊きに置き換えて、そのガス源をLNGに求めるのは非常に理に適っていると思います。

また、太陽光や風力といった再生エネルギーへの移行が求められており、我々もその仕事に相当力を入れています。一方で、そのような自然に影響を受ける電源に対して、産業的なインフラを作れば安定して電源やエネルギーを確保できます。LNGのような方法がベースロードとしてあることが電気の安定供給にとって非常に重要です。そのような意味でも一定量の天然ガス、あるいはLNGが必要だというのが我々の分析です。

ガスのパイプラインでは供給元や客先が一方向に決まってしまいますが、LNGの場合は船で移動します。このオプションの多さや利便性もLNGの特徴かと思います。

当社のシェアについてですが、当社が持っている権益は、今建設中の権益や我々自身が消費者的にトレードしているLNGなどをすべてあわせると、おそらく2,000万トン近い量を扱っています。日本の総輸入量がだいたい7,500万トンくらいだと思いますので、相当大きな量だと思います。

中国も相当伸びていますが、日本は世界最大のLNGの輸入者であることから、世界における当社の仕事の存在意義をお伝えできるのではないかと思います。

質疑応答:社員における外国籍の人の割合および世界の商社の特徴について

質問者:総合商社が地球規模で事業を展開しているのはよく理解しているのですが、社員が4万4,000名ほどいるということで、そのうち外国籍の方の比率、また管理職や役員における外国籍の方の比率がわかれば教えていただきたいです。

加えて、総合商社は三井物産や住友商事のような事業形態があって日本は非常にうまくいっていると思うのですが、世界にも同じような業務を行っている企業があれば教えていただきたいです。

:非常に率直にお伝えすると、4万4,000人という連結人数のうち、日本で雇った方は1万人を切っており、大半が国外で雇った方です。国外で雇った方の中には外国籍の方が多く、当社連結の中で活躍している外国籍の方も多くいると思います。

一方で、当社本体の執行役員には外国籍の方はほぼいません。よって、日本人が中心となっているというのも事実です。このあたりはおそらく今後の事業展開で、本社のいわばヘッドクォーターの機能として、外国で我々と縁ができた方が来るというケースをもっと増やしたいと思っています。

また、当社の取締役会の社外取締役においては外国籍の方が2名います。これはむしろ日本の比較的大きな企業の中では多いほうかと思います。彼らからは非常に貴重な意見をもらっており、経営陣としてもその重要性をあらためて理解したため、このようなかたちが絶えず強化されるようにしていきたいと思っています。

商社に相当する会社が世界にあるかというと、おそらく完全にピアの扱いができる事業はそうないと思います。総合商社同士もけっこうビジネスモデルが違ったり、扱う商品が違ったりして特徴があるのですが、海外で総合商社モデルはおそらくないと思います。

いろいろな分野に投資している企業体は海外にもあり、プライベートエクイティがそうです。ただし、それと商社はやはり違います。足元の商社物流やマーケティング等を駆使している方法とは少し違います。

今後はやはり1社1社が特徴を出していくと思います。我々が「総合商社です」と世界に向けて説明しても、ピンとこない海外のお客さまや投資家もいると思いますので、三井物産自体がどのような特徴と考え方で事業を行っているかというのも具体論で示していくのが、理解を深めるのに一番よいかと思っています。

質疑応答:2023年度の事業計画が控えめである理由について

質問者:12ページの実績および2023年度の事業計画についてです。2022年は大幅に上昇したのに対し、2023年の計画は少し控えめです。もっと強気に出て今年を上回る数字を掲げられない理由があるのでしょうか? もう少し強気でもよい気がするのですが、いかがでしょうか?

:2023年3月期の事業計画はやはり積み上げで、各部門が相当努力しないと達成しない数字を挙げて、集計した結果を経営陣でもう一度精査して出している数字になります。

最高益を実現した2022年3月期との比較では、コロナ禍の回復需要が非常に大きく出ました。また、商品市況について、前期は一部に我々の「通常はこの範囲で動くだろう」という想定を超えた価格が付いていたという事実があります。したがって、現場および経営陣もやはり正常化するという仮説を置かざるを得ないと判断し、そのようなものを織り込んだかたちで、計画を出しています。

一方で、第1四半期の数字の出方はやはり強かったです。これはコロナ禍の強い回復需要、前半にお伝えしたサプライチェーンの混乱に起因する商社機能由来の収益がまだ続いているのが、第1四半期段階での状況です。そのような意味では、少し計画より先に進んでいる状態です。

ただし、足元は景気の動向は決して楽観視できない状態のため、第1四半期が終わったところでは特に年間の見通しを変えることなく、この計画で走っています。今後の四半期ごとの決算で足元の状況を精査して、自分たちの新しい予想を株主さまと対話の中で発表していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

質疑応答:事業計画策定時の為替レートについて

質問者:利益計画について、8,000億円の事業計画を立てた時の為替レートはいくらだったのでしょうか? 先ほど感応度分析で、円安が1円進むあたり、年間46億円くらいの利益が増えるとのお話がありましたので、期首レート次第ではだいぶ強気な上方修正が発表されるのではないかと期待しています。

:期首計画で事業計画は8,000億円、当期利益および基礎営業キャッシュは9,500億円で、為替を120円と置いています。先ほどお伝えした数字は1年間12ヶ月の効果ですので、今の為替ですと、計算としてですが上方修正の期待はできると思います。

第1四半期に数字が強く出ているところは為替要因も当然あります。一部、商品市況で少し弱含みに進んだ商品については、その分がマイナスになり、為替がそれを打ち消しているという状態になっているかと思います。

為替にしろ、商品市況にしろ、この世界の状況ではボラティリティはそれぞれ上がっていると思いますので、全体でバランスを取りながら舵取りをしていきたいと思っています。為替に関しては、多少余裕がある状態で今期走っていると言えます。

質疑応答:成長戦略について

司会者:Webからのご質問です。「成長戦略について教えてください」といただいています。

:本日も少しお話ししましたが、エネルギーの大転換、つまりエネルギーソリューションにはアンモニアも含まれますが、当社の場合は、このエネルギーソリューションをエネルギーそのものの部門としています。また化学品、産業用の需要に対応するアプリーケーションとしてのモビリティ部門、加えてインフラのような各部門が手をたずさえて、引き続き分野を超えたアイデアを出していくことが非常に重要だと思っています。

また、ヘルスケア・ニュートリションでは、健康を軸として病院事業およびその周辺で求められる新しいウェルネス事業モデルを提示していきたいと思います。アジアでも今回の新型コロナウイルス感染症への対応を経て、自宅での診断や治療、自宅に薬を届けること、そして病院ではなるべく高度な医療を行い、通院や入院の必要がない場合はなるべく自宅で療養するという、まさに大転換が起きているのを我々は目の当たりにしています。

このような点においても、ヘルスケアに関わるいろいろな経営資源の効率的な分配や、患者の立場に立った治療提供、ヘルスケアサービスの提供に大きな伸びしろを感じています。そのようなものを「ヘルスケア・ニュートリション」で行っていきたいと思います。

加えて、病気にならないためのデータに基づいた食べ物や、ニュートリション商品やサービスもこれにつながってきますので、そのあたりに大きなマーケットチャンスがあると思い、経営資源を投下しています。先般のご質問にもあったように、これらを将来の柱にしていきたいと思っています。

アジアのマーケットでは、消費者に近いところで各国を見ていると、比較的若く、非常に優秀な経営者が作りだした、大変強い企業群がいくつか出てきています。そこには、いわゆるデジタルな技術も持ち込んでいますし、アジアの強みである人口ボーナスを含め、アジアの国で行っていける新規事業を徹底的に拾っています。

これには我々の機能も付加できますし、日本や欧米のモデルを持っていくこともできます。このあたりでいくつか、例えば、今はインドネシアの新興企業と組んで行っていますが、そのようなところにも大きな成長が期待できると思っています。

これだけではないのですが、この3つの分野は現在ハイライトするのに非常にふさわしい分野だと思っており、当社の企業戦略上この3つの分野に光を当ててご説明しました。このようなことも含めて、会社全体の、なるべく懐の深いところで仕事を伸ばしていきたいと思っています。

質疑応答:世界で起こる戦争や経済戦争による影響および対策について

質問者:丁寧な説明をありがとうございます。私は数十年、三井物産の株主でいますので、株の値上がりと配当で毎度気持ちのよい思いをさせていただいています。このような気持ちで末永く続けられるように、これからもよろしくお願いします。

質問ですが、ロシアがウクライナに対して戦争を起こしたり、中国とアメリカでも経済戦争に近いような状態が起きたりしています。このようなものが長引くとどのような影響があるのでしょうか? あるいは何か回避する方法を考えているのか教えてください。

:非常に難しいご質問です。このような地球規模で、特に地政学的に大きな影響を及ぼすことが起きた場合、その影響は人道的なことを含めて甚だしいものですので、我々も自分たちの役割がどうあるべきかを考え抜かなければいけないと思っています。

いくつか言えることは、このような非常時に、やはり商社が自分の持っている機能で少しでもお客さまに対する安定供給や予見可能な状態を作るため、何ができるのかというところに徹底してこだわっていくべきかと思っています。

そのような不幸な状態はとにかく起こらないでほしいと思っていますが、日頃から鍛練することによって、万が一起きた時に、我々なりに役に立つことを常に考えることがとても大事なのだと思います。

また、このような事態が長期化する場合も、人々の産業的な基盤を保つために続けなければいけないことと、短期的に処方することに分けて、我々ができるソリューションを出していきます。ただし、謙虚にしなければならないので、その辺りを戒めながら行っています。また、当社の株を長年保有いただき、ありがとうございます。

配信元: ログミーファイナンス

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