金融における付加価値~パフォーマンスに対するコストは如何に

最新投稿日時:2020/05/07 15:20 - 「金融における付加価値~パフォーマンスに対するコストは如何に」(みんかぶマガジン)

金融における付加価値~パフォーマンスに対するコストは如何に

著者:鈴木 行生
投稿:2020/05/07 15:20

・株式投資を対象にしてみよう。投資家にとっての最終的な付加価値とは、投資のパフォーマンスと思える。インデックス型のETFに投資して、そこから上がってきたプラスのリターンは確かに付加価値であろう。しかし、付加価値であるからには、もう少し追加的な独自の価値でなければ意味がないと考えるかもしれない。

・通常のビジネスでは、取引における売上高から仕入れコストとして外部に払った費用を除いたものが付加価値であるとみる。わが社になくてはならない経営資源を使って生み出したものである。人材を使い、設備を使い、資金を使い、独自の経営の仕組み(ビジネスモデル)から創り出される価値をいう。

・付加価値=人件費+減価償却+金利+営業利益という算式で計算される所以でもある。これはP/L上から単純にみたもので、これを社員一人当たりに直すと労働生産性となる。では、株式投資の場合、付加価値を生み出す源泉は何であろうか。

・株式取引における付加価値は、投資家からみると、1)いつでも自由に売買できること、2)低く仕入れて高く売れること、3)その間の取引手数料が安いこと、4)投資判断に関わる情報が適切に入手できること、5)独自の判断に至るアドバイスが得られること、6)情報やアドバイスのコストが安いことなどにあろう。

・金融機関サイドからみると、どうであろうか。NRIの小粥(おかい)研究理事は、金融ビジネスの付加価値は、①資金流動性(金利差)、②市場流動性(トレーディング)、③利便性(業務サポート)、④ナレッジ(アドバイス)にあると論じる。(「知的資産創造」2020年3月号)

・この金融ビジネスの付加価値は、DX(デジタルトランスフォーメーション)で、どんどん失われていくようにみえる。実際、証券会社の収益性は低下しており、株式手数料は限りなく下がり続けている。独自のナレッジで特色を出すことは従来に比べて難しくなっており、アドバイスの力量を高めることも容易ではない。

・これを単純に付加価値が低下しているとみるか。付加価値の源泉が大きく変質しているとみるか。あるいは、その変質のスピードに、投資家も金融機関も付いていけず、呻吟しているとみるべきなのか。改めて考えてみる必要があろう。

・投資家にとって、従来型の取引コストや情報コストが安くなるのはありがたいが、自らの投資判断に必要な情報が十分でなく、取引機会を自由に選べないのであれば、コストが安いだけでは意味がない。

・デジタル化が進めば、定型的なサービスは高速で低価格となり、人手を介さず自動化されていく。効率化されれば、低コストも実現される。そうなると利便性は当たり前になって差別化されにくくなる。何処でも誰でもできるとなれば、そのサービスに高い付加価値を認め、それに見合った対価として、高い利用料を支払うということにはならない。

・そこで、投資家が顧客本位の業務サービスを求めるのであれば、自らサービスとその対価を検討して、自分なりの評価軸を持っておく必要があろう。筆者を例にとって、株式投資に関わる付加価値サービスとその対価を列挙してみる。

① 1000万円~1億円の株式投資用資金を安全に預かってくれるならば、預かり料として総額に対して年間0.1%を支払ってよい。
② 株式を売買する時の手数料として、売買金額の0.5%を支払ってよい。
③ 投資環境に関わるレポートを四半期に1回発行し、webで講演会を観られるならば、預かり資産の0.2%を支払ってよい。
④ 個別株式に関するレポートを年1回発行してくれるならば、個別株の時価に対して、1%支払ってよい。
⑤ ポートフォリオの時価を日々評価し、ポートフォリオの特性を分析してくれるならば、ポートフォリオ時価の0.1%を支払ってよい。
⑥ ポートフォリオのパフォーマンス改善について、ロボアドバイザーがサポートしてくれるならば、0.1%支払ってよい。
⑦ 年1回税務申告用の資料を発行してくれるならば、0.1%支払ってよい。
⑧ 預かり資産について、プロのアドバイザーがつく場合は、ポートフォリオのパフォーマンスのうち10%を成功報酬として支払ってよい。
⑨ 投資信託の信託報酬としては、パッシブの場合時価の0.1%、アクティブの場合年間パフォーマンスの10%を支払ってよい。

・こう設定すると、預かり資産に対して、年間0.5回売買するとして、運用サポート手数料が0.55%、情報料が1.20%発生する。ポートフォリオのパフォーマンスが年間で+5%であった場合、成功報酬として+0.5%が加わる。この場合、投資家にとっての運用コストは、固定で1.75%、成功報酬として0.5%となる。配当込みのパフォーマンス5%に対して、2.25%がコストとなり、リターンは2.75%である。

・1000万円を運用すると、パフォーマンスが5%の50万円に対して、コストが2.25%の22.5万円、リターンが27.5万円、ここから税金が20%とられるとして、ネットのリターンが22.0万円となる。

・1000万円の運用に対して、パフォーマンスが年間-5%であったとすると。リターンが-50万円に対して、コストが1.75%の17.5万円はかかるので、トータルのリターンは-67.5万円となる。

・アクティブに運用するということは、筆者の場合、このくらいのコストをみておく必要があると考えている。投資家の方々はいかがであろうか。尤もこのフィーで証券会社や資産運用会社が質の高いサービスを提供できるかどうかは分からないが、一定の規模を前提にするならばやっていけよう。

・このコストが許容できないとすれば、パッシブのみで運用することになろう。その場合のコストは0.55%となる。1000万円に対して、5.5万円のコストとなる。パフォーマンスが1%であってもリターンは0.45%となる。

・筆者の場合、株式運用のパフォーマンスとして年間10%を目途としているので、2.25%のアクティブコストは十分許容できる。企業に対しても10%以上のROEは求めたいと考えている。
 

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶマガジン
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