S&P 500月例レポート(2019年4月配信)<前編>

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最新投稿日時:2019/04/09 11:56 - 「S&P 500月例レポート(2019年4月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート(2019年4月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年3月
個人的見解:強気筋は打撃を受けても活動を継続

 2018年が終盤を迎える中、弱気筋は攻撃に向けて活発に展開したことから第4四半期のS&P 500指数は13.97%下落し、金利はカーター元大統領の時代(1977~81年)の水準に向かいました(まあ、そこまで上昇はしませんでしたが)。企業利益の大幅な減少が予想され、景気指標が不安定な動きを示したことを背景に、ちまたでは「Rワード(リセッション)」がささやかれるようになりました。

 それから3カ月、弱気筋は冬眠に入り、強気筋が戻ってきました。S&P 500指数は最高値更新まであと3.29%に迫り、第1四半期は13.07%上昇と反発し(2009年第2四半期の14.98%上昇以降で最高、第1四半期としては1998年の13.53%上昇以降で最高)、イールドカーブは逆転したものの米国金利はプラス圏にとどまっており、10年国債の利回りは2.41%で、今や1桁台の増益率が受け入れられています。ただし、4月に発表される決算とガイダンスで、依然として高水準のPERが裏付けられることが必要です。そして景気に関して言えば、ペースは緩やかながらも上昇しています。

 現実は変化しましたが、野獣(ベア)を追いやったのは市場の認識でした。第4四半期に生じた「恐怖心」の実態は不安心理そのもので、第1四半期の不安要因は企業利益、ひいては景気減速の兆候の拡大です。利上げ回数1回とゼロの差、すなわち0.25%の金利差は住宅ローンにとって必ずしも致命的ではなく、しかも住宅ローン金利は低下しています。企業利益とキャッシュフローは、おそらく記録的なペースや水準ではないものの、事業運営を十分に下支えし続け、自社株買いと設備投資は共に過去最高を更新しました。トランプ政権内では幹部の一部交代により(2019年1月)、そのレトリックに変化が見られるものの(いずれ影響が現れるでしょう)、現実の変化は今のところありません。

 そもそもRワードを取り沙汰するには時期尚早だった可能性があり、この言葉はボーイング737MAXに乗って、いまだに刺激策が健在かつ拡大中で離脱と「否決」が主要テーマである、欧州へと旅立ちました。一方、変化がなかったのは米中関税協議です。3月28~29日に北京で開催された閣僚級協議に続き、4月第1週にはワシントンで再開される予定で、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談は、依然として(そして相変わらず)いつ開催されてもおかしくないように思えます。

 楽しい話題であり月末の取引の中心となったのは、新規株式公開(IPO)が冬眠から覚めた、あるいは息を吹き返したと言えることかもしれません。3月29日にIPOを実施した配車サービス大手Lyft(LYFT)は、IPO価格を当初計画の62~68ドルから72ドルに引き上げましたが、上場初日の取引を78.29ドルで終え、潜在的価値(最終利益が赤字のため)は260億ドルと評価されました。こうした話題(取引も)は今後も続くと見られ、4月には同じく配車サービス大手のUber(同じく赤字)のIPOが予定されており、上場時の評価額は1,200億ドルと推測されます。他にも、コワーキング・スペースを提供するWeWorksや画像共有サイトPinterestなど、万人のよく知る企業の上場が目白押しです。

 4月の相場の注目材料は決算発表になると予想されます。今や市場で受け入れられている1桁台後半(9.1%)の2019年の予想増益率は、2019年第1四半期の実績(真実を反映していれば)と、ガイダンスによって試されることになるでしょう。見積ベースでなく実際の利益に基づくPERは、2019年予想で17.1倍と依然として高水準にあり、ウォール街は現在のPERを正当化する必要があると思われます。第1四半期の利益予想は2018年末時点から7.1%引き下げられましたが、同じ場所に2度落雷が起きることはめったにありません。つまり、2018年第4四半期は大幅に予想が下方修正された結果、業績は低調だったものの概ね予想を上回り、市場から受け入れられました。要するに、市場は高値更新に近づいており(あと3.29%)、安心材料を必要としていることから、実際の利益が最良の材料と言えるでしょう。

 過去の実績を見ると、3月は60.4%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.35%、下落した月の平均下落率は3.61%、全体の平均騰落率は0.60%となっています。来る4月は63.7%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.19%、下落した月の平均下落率は3.82%、全体の平均騰落率は1.28%となっています。今後のFOMCのスケジュールは、4月30日-5月1日、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日となっています。

●主なポイント

 ・市場は3月も勢いが持続し、S&P 500指数は12月の9.18%下落から大きく反転した1月の7.87%上昇や2月の2.97%上昇に続いて3月も1.79%上昇しました。

 ・3月のS&P 500指数は2,834.40で取引を終え、2月末の2,784.49から1.79%上昇しました(配当込みのトータル・リターンはプラス1.94%)。2月は2.97%の上昇(同プラス3.21%)でした。3月の上昇により、S&P 500指数は終値ベースの最高値(2018年9月20日の2,930.75)まで3.29%の水準まで戻り、高値更新に近づきました。年初来(第1四半期)では13.07%上昇(同プラス13.65%)、過去1年間では7.33%上昇(同プラス9.50%)、2017年末からは6.01%上昇(同プラス8.67%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)以降では32.48%上昇(同プラス38.98%、年率換算でそれぞれプラス12.52%、14.80%)となっています。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は2万5,928.68ドルで3月の取引を終え、2月末の2万5,916.00から0.05%上昇しました(配当込みのトータル・リターンはプラス0.17%)。2月は3.67%の上昇(同プラス4.03%)、年初来では11.15%上昇(同プラス11.81%)、過去1年間では7.57%上昇(同プラス10.08%)しました。

  ○強気相場は2019年3月9日に10周年を迎え(最高値更新が待たれます)、10年間の上昇率は312%、配当込みのトータル・リターンは408%となりました(年率換算ではそれぞれ15.24%、17.68%)。

 ・米国10年国債の利回りは2月末の2.72%から低下して2.41%で月を終えました(2018年末は2.69%、2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ・英ポンドは2月末の1ポンド=1.3264ドルから1.3081ドルに下落し(同1.2754ドル、同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.1369ドルから1.1220ドルに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=111.38円から110.82円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は2月末の1ドル=6.6937元から6.7121元に下落しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ・原油価格は2月末の1バレル=57.25ドルから上昇して60.20ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は2月末の1ガロン=2.471ドルから2.701ドルに上昇して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ・金価格は2月末の1トロイオンス=1,314.70ドルから1,296.90ドルに下落して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ・VIX恐怖指数は2月末の14.78から低下して13.71で月末を迎えました。月中の最高は18.33、最低は12.37でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ・2018年第4四半期決算発表はほぼ終了しました。S&P 500指数構成企業500社(505銘柄)のうち501銘柄が決算発表を終え、そのうち341銘柄(68.1%)で利益が予想を上回り、125銘柄(25.0%)が予想を下回り、35銘柄(7.0%)は予想通りでした。売上高は、495銘柄中303銘柄が予想を上回りました(61.2%)。2018年の営業利益は前年比21.8%増(発表ベースでは20.5%増)、売上高は9.0%増となりました。

 早くも2019年第1四半期の決算発表が始まり(決算期がずれる企業から始まり、4月末までには70%が発表を終える予定です)、発表を終えた15社中14社で利益が予想を上回り、売上高に関しては15社中6社が予想を上回りました。第1四半期の利益予想はこの3カ月間のうちに7.1%引き下げられ、営業利益は前期比5.2%増、前年同期比では0.8%増、過去最高となった第3四半期と比べると10.9%減となる見込みです。2019年通期の予想は2018年12月時点から3.7%引き下げられ(2018年3月時点からは4.2%下方修正)、前年比9.1%増が予想されています。2020年に関しては、前年比12.7%増の見通し(2018年比で22.9%増)。

 ・ビットコインは2月末の3,825ドルから上昇して4,096ドルで月を終えました。月中の最高は4,123ドル、最低は3,705ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ・1年後の目標値は、S&P 500指数が3,108(現在値から9.7%上昇、2月末時点の目標値は3,065)、ダウ平均は2万8,519ドルとなっています(同9.9%上昇、同2万8,112ドル)。

●トランプ大統領と政府高官、そして外交相手国

 ・米国財務省が借入と返済をやり繰りする中、ムニューシン財務長官は議会に対し、連邦政府の債務上限の引き上げを要請しました。米国の債務は既に上限とされている22兆ドルを超えています。ちなみに、S&P 500指数の時価総額は24兆ドルです。

 ・「ボス!ボス!飛行機です!」これはドラマ「ファンタジー・アイランド(夢の島)」のお決まりのセリフですが、トランプ大統領は国防以外の裁量的支出の9%削減、国防費用の増額、国境の壁の建設費用86億ドルなどを盛り込んだ、夢の予算と呼ばれる4兆7,000億ドルの2020年度予算教書を提出しました。均衡予算とは程遠い内容で、今後10年間の経済成長率を平均3%と想定した上で、2兆290億ドルの財政赤字となる見通しです。こうした予算案は政治(政党や選挙地盤)が絡んでくるため、伝統的にどちらの党が議会の多数派を握っていたとしても議会で否決されます(予算教書が夢の予算と呼ばれるのはこのためです)。

 ・中国の報道によれば、貿易問題をめぐるトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談は早くても、6月まで延期される見通しです。トランプ大統領は関税を継続する意向を表明していますが、ライトハイザー米通商代表部代表とムニューシン財務長官が中国を訪問して交渉を継続したことで、米中首脳会談が「最終的に」開かれる可能性は残っています(中国の劉鶴副首相は4月初めに訪米予定)。

 ・米国上院はトランプ大統領が発令した壁建設費用の確保に関する非常事態宣言を無効とする決議を、賛成59/反対41票で可決しましたが、この決議に対し大統領は就任後初めて拒否権を発動しました。

 ・米司法省はオバマケアは違憲であるとして、法的根拠を求める訴えを起こしました(以前は逆の立場でした)。裁判は長期化が予想され、2020年の大統領選挙における争点の一つになるとみられます。

 ・モラー特別検察官による報告書(2016年大統領選におけるロシア介入疑惑に関する調査)がバー司法長官宛てに非公開で提出され、司法長官が概要(4ページ)を公表したことで、世論の風向きは大きく変わりました。トランプ陣営は勝利を宣言し、反対派は議会調査を行う構えを示しました。現時点において、市場への影響はほとんどありません。ただし、大統領選挙に向けた宣伝や出馬宣言が過熱するにつれて、調査結果に対する市場の見方が取引に徐々に反映される可能性があります。

●中央銀行関連の動き

 ・欧州中央銀行(ECB)は景気減速に対処するために銀行貸出を促す3回目の資金供給オペを実施することを発表し、少なくとも2019年末までは政策金利を現行の低水準に維持すると表明しました。

 ・米連邦準備制度理事会(FRB)の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、米国経済は僅かな成長にとどまり、政府機関閉鎖の影響が自動車、外食産業、製造業セクターで見られていることが示されました。これらのセクターでは消費者が支出を抑制しました。

 ・米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では忍耐強い対応が確認され、予想通り政策金利が据え置きになりました。さらに2019年は追加利上げを行わず、2020年に1回のみ利上げを行うことが示唆され、9月にバランスシート縮小を終了することが明らかになりました。市場は低金利が継続される(年内の利上げはない)との想定の下でこれまで動いてきましたが、FRBが金利据え置きを再確認したことで、ディールを手仕舞う動きが見られました(そもそも本当に「ディール」は手仕舞われているのでしょうか?)。FRBが既に金利を低水準に抑える中、米国とドイツのPMIが予想を大きく下回ったことで市場では警戒感が強まり、逆イールドが生じました(ドイツ10年国債利回りはマイナス圏で推移)。一部の投資家が懸念を背景に安全な逃避先を追求したことが要因となりました。

●企業業績

 ・2018年第4四半期決算発表はほぼ終了しました。S&P 500指数構成企業500社(505銘柄)のうち501銘柄が決算発表を終え、そのうち341銘柄(68.1%)で利益が予想を上回り、125銘柄(25.0%)が予想を下回り、35銘柄(7.0%)は予想通りでした。売上高は、495銘柄中303銘柄が予想を上回りました(61.2%)。2018年の営業利益は前年比21.8%増(発表ベースでは20.5%増)、売上高は9.0%増となりました。

 ・早くも2019年第1四半期の決算発表が始まり(決算期がずれる企業から始まり、4月末までには70%が発表を終える予定)、発表を終えた15社中14社で利益が予想を上回り、売上高に関しては15社中6社が予想を上回りました。第1四半期の利益予想はこの3カ月間のうちに7.1%引き下げられており、営業利益は前期比5.2%増、前年同期比では0.8%増、過去最高となった第3四半期からは10.9%減となる見通しです。2019年の予想は2018年12月時点から3.7%引き下げられ(2018年3月時点からは4.2%下方修正)、前年比9.1%増が予想されています。2020年に関しては、前年比12.7%増となる見通しです(2018年比で22.9%増)。

●個別銘柄

 ・食品スーパーWhole Foodsを傘下に保有する小売り大手Amazon(AMZN)は、国内主要都市で新たな食品小売り事業を始めると発表しました。

 ・ディスカウントストアDollar Tree(DLTR)は傘下のディスカウントストアの資産評価を引き下げ、27億ドルを減損処理しました。さらに、390店舗を閉鎖し、残りの店舗のブランドを変更することを明らかにしました。

 ・General Electric(GE)は電力部門の不振を理由に2019年のキャッシュフローがマイナスとなり、前年に続き今年も減益になるとの見通しを発表しました。

 ・エチオピア航空の旅客機ボーイング737Max8が離陸直後に墜落し、乗客乗員158名全員が死亡する事故が起きました。同機は航空機大手Boeing(BA)の新型機で、現在、世界中で運航されており(378機が運航中、4,659機が受注されていますが、納入は見送られています)、2018年10月にもインドネシアの格安航空会社で同様の事故が発生し、189名が犠牲となりました。

  ○インドネシアの国営航空会社はBoeingに対し、737Max8の49億ドル分の追加受注をキャンセルする意向を伝えています。両社は近日中にこの問題について協議を行う予定です。

  ○Boeingは規制当局、技術家、パイロットと協議した結果、納入済みの737Max8に対してソフトウエアのパッチ(修正プログラム)を配布するとしています。

  ○今回のBoeingの問題に何らかの関連があるかもしれませんが、中国は(欧州歴訪中の)習近平国家主席に合わせて、欧州の航空機メーカーAirbus SEから350億ドル相当の航空機を購入する契約を締結しました。

 ・サンフランシスコの連邦地裁の陪審は、ドイツの製薬・化学会社Bayer(BAYRY)が昨年買収した米モンサントの除草剤ラウンドアップが、患者の癌発症の原因になったと認定しました。この問題でのBayerの敗訴は2回目となり、同社の株価は(1回目の敗訴が決定した)2018年7月末から42%下落しました。

 ・製薬会社Biogen(BIIB)はアルツハイマー病治療薬の2件の臨床第3相試験を中止したことを発表しました。

 ・Apple(AAPL)は予想通り(定額制)映像配信事業への参入を発表しました。本サービスの開始に向けて、同社は競合する映像配信サービスとの提携を計画しています。Appleの動きとは別に、同様のビジネスモデルを展開しているAlphabet(GOOGL)傘下のYouTubeは、ハイエンド・コンテンツの制作計画を取りやめると発表しました(従量制サービス・プランの一環として計画されていました)。

 ・S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはS&P 500指数にFox Corp.(FOXAV; FOXBV)を追加し、Twenty-First Century Fox(FOXA; FOX)を除外しました。Twenty-First Century FoxはWalt Disney(DIS)に買収されましたが、この買収の前にFox Corpをスピンオフしていたため、Fox Corpが(指数構成銘柄となる)継続企業とみなされました。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはDowDuPont(DWDP)からスピンオフされたDow(DOW)をS&P 500指数に追加し、代わりにBrighthouse(BHF)を除外すると発表しました。また、ダウ平均でも2019年4月1日の取引終了後にDowDuPont(DWDP)に代わりDowが採用されることになります。

<後編>に続く


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配信元: みんかぶ株式コラム

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