S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<後編>

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最新投稿日時:2019/01/19 11:01 - 「S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<後編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<後編>

○ファンダメンタルズ

 ・業績面では、S&P指数の全構成銘柄が2018年第3四半期の決算発表を終え、497銘柄中382銘柄で営業利益が予想を上回り、75銘柄が予想を下回り、40銘柄が予想通りとなりました。売上高は494銘柄中302銘柄で予想を上回り、過去最高を更新しました。第3四半期の売上高は前期比2.0%増、前年同期比10.7%増となりました。これまでに既に17銘柄が第4四半期の決算発表を終えましたが、利益が予想を上回ったのが13銘柄、予想を下回ったのが2銘柄、予想通りだったが2銘柄となり、売上高では17銘柄中8銘柄が予想を上回っています。現時点で、市場参加者は第4四半期の営業利益は第3四半期から2.3%減(前年同期比19.4%増)になると予想しています。2018年通年では、利益は2017年を26.1%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から9.4%の増益が予想されています。

 配当に関しては、2018年第4四半期の配当総額が1198億ドル、通年では4563億ドルとなり(2017年は4198億ドル)、いずれも過去最高を更新しました。減税で利益が膨らんだ分が配当に回された結果ですが、自社株買いの実施額には及びませんでした。自社株買いは、減税分の一部の使い道として利用された結果、2018年第3四半期の総額が2038億ドルと過去最高を記録しました(過去12ヵ月間では4460億ドル)。

 石油に関しては、OPECがウィーンで開催された総会で暫定的な減産で合意しました(詳細については協議を継続)。具体的には、日量120万バレルの減産で、OPEC加盟国が80万バレル、ロシアなどの非加盟国が40万ドルとなっています。原油価格は1バレル=43ドルを割り込む42.36ドルまで値下がりし、10月3日に付けた4年ぶりの高値となる76.41ドルを40%下回る45.81ドルで今年の取引を終えました。

 M&A関連では、タバコ大手Altria(MO)が、カナダの医療用大麻事業Cronos Group(CRON)の株式45%を18億ドルで取得することを公表しました。Altriaはまた、幾つかの電子タバコのブランドを売却し、電子タバコ大手Juulへの投資を検討していることも明らかにしました。ヘルスケア製品メーカーPfizer(PFE)と英国の製薬大手GlaxoSmithKline(GSK)は、両社の消費者ヘルスケア事業(店頭販売商品)部門を統合することを発表しました。

 IPO関連では、配車大手Uberが2019年の早い時期にIPOを計画しているとの報道がありました(直近の時価総額は760億ドル。市場環境次第では1200億ドルとなる可能性もあり、今がIPO実施時期として最適とはいえません)。競合のLyftに先を越されたくないとの判断があるようです。SNSサービスのPinterestも2019年初めのIPO予定企業リストに名を連ねています。同社の直近の資金調達での企業価値は120億ドルとなっています。

 注目すべきニュースとしては、欧州司法裁判所の法務官は、他のEU加盟国の同意がなくても英国は離脱手続きを一方的に撤回できるとの見解(法的拘束力はありません)を示しました。英国のメイ首相は離脱協定が承認されないことが確実になったため、下院での採決を先送りしました。首相に対する不信任投票が実施されましたが、与党によりメイ首相は信任されました(信任200票、不信任117票)。なお、今後1年間は信任投票が再実施されないことになっています。離脱時期は2019年3月29日となっていますが、合意(ルールブック)なしの離脱となった場合、経済面での運営と手続きが著しい打撃を受ける可能性があります。

○利回り、金利、コモディティ

 ・米国10年国債の利回りは11月末の2.99%から低下して2.69%で月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ・英ポンドは11月末の1ポンド=1.2743ドルから1.2754ドルに上昇し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは11月末の1ユーロ=1.1318ドルから1.1461ドルに上昇しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は11月末の1ドル=113.55円から同109.58円に上昇し(同112.68円、同117.00円)、人民元は11月末の1ドル=6.9590元から同6.8785元に上昇しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 ・原油価格は11月末の1バレル=50.72ドルから下落して45.81ドルで月を終えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は11月末の1ガロン=2.630ドルから2.358ドルに下落して月末を迎えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ・金価格は11月末の1トロイオンス=1227.40ドルから1284.70ドルに上昇して月を終えました(同1305.00ドル、同1152.00ドル)。

 ・VIX恐怖指数は11月末の21.23から上昇して25.42で月末を迎えました。月中の最高は36.20、最低は 15.94でした(同11.05、同14.04)。

○S&P 500指数

 12月のS&P 500指数は再び大幅な下落に転じ(マイナス9.18%)、12月としては1931年(マイナス14.53%)に次ぐ値下がりとなりました。第4四半期(この期間のリターンはマイナス13.97%)は、世界経済の減速、米中貿易摩擦、原材料費と労働コストの上昇、地政学リスクが重要な問題となりました。複合的な不透明要因と制御不能の状態を背景に市場の警戒感とボラティリティが高まる一方、信頼感は低下しています。S&P 500指数は最高値を付けた9月20日時点で年初来リターンが9.62%となったものの、2018年通年では6.24%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス4.38%)、38.49%下落した2008年以来の悪い結果となりました。

 明るい材料は、2018年最終週の取引を前週末比プラスで終えたことで、弱気相場入りを何とか回避しました(日中ベースでは一時弱気相場入りしましたが)。米国経済は引き続き堅調とみられていることから、市場のムードは引き続き悲観論より楽観論が勝っています。とはいえ、景気は予想以上に減速しており、今後もこうした傾向は続く見通しです。

 現時点で、2019年最初の数日間はボラティリティが高まることが予想されます(年明け取引初日の値動きがその年の相場の方向を言い当てた確率は50%で、コイン投げと変わりません。一方、1月の相場動向がその年の相場の方向性と一致する確率は71.1%です)。例年、年明けの市場と取引の関心を集めるのは企業業績ですが(大手銀行を皮切りに決算発表シーズンが始まります。1月14日にCitigroup、15日にはJP MorganとWells Fargoの発表が予定されています。今年は他にも、政府機関閉鎖(閉鎖に伴い経済指標の発表も少なくなるはず)や2018年に大きな注目を集め取引の材料となったワシントンの動向、民主党が多数派を占める下院の議会運営(両党とも自らの党利党略を優先しそうですが)などを踏まえると、ボラティリティと不透明感が続くとみられ、ボラティリティと不透明感に賭けることが米国市場での最善策でしょう。

 市場は業績に目を向け始めています。1月はS&P 500指数の3分の2の銘柄で決算発表が予定されており、正月休み明け後は一段と決算に対する注目度が増し、業績とガイダンスが市場を左右するでしょう。現時点で、2018年第4四半期の営業利益は前年同期比2.4%減、2018年通年では26.1%増(減税効果が大半)が予想される一方、2019年の業績予想では前年比9.6%増が示唆されています。

 2018年第3四半期は、決算を発表した497銘柄中382銘柄で営業利益が予想を超過、75銘柄で予想を未達、40銘柄で予想通りとなりました。売上高は494銘柄中302銘柄で予想を超過し、前期比2.0%増、前年同期比10.7%増で、過去最高を更新しました。これまでに17銘柄が2018年第4四半期の決算を発表しましたが、利益が予想を上回ったのは13銘柄、予想未達は2銘柄、予想通りは2銘柄で、売上高は17銘柄中8銘柄で予想を上回りました。

 S&P 500指数は11月(1.79%上昇、配当込みのトータルリターンはプラス2.04%)終値の2760.17から9.18%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス9.03%)の2506.85で12月を終え、12月としては1931年12月(14.53%下落)以来、月間としては2009年2月(10.99%下落)以来最大の下落率を記録しました。過去3ヵ月間では13.97%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス13.52%)、2018年通年では6.24%下落(同マイナス4.38%)、過去2年間では11.97%上昇(同プラス16.49%)、2016年11月8日の米大統領選当日の終値(2139.56)以降では17.17%上昇(同プラス22.29%、年率換算でそれぞれ7.67%とプラス9.84%)しています。同指数は調整局面入り後も下落を続け、2018年9月20日の高値2930.75から14.46%安で12月を終えており、20%下落の弱気相場の水準に近づきました。

 ボラティリティは12月に上昇し、1%以上変動した日数は、11月の21営業日中8日(上昇が5日、下落が3日)、10月の23営業日中10日(上昇が5日、下落が5日)、第3四半期のゼロに対して、19営業日中10日(上昇が2日、下落が8日。2018年は251営業日中、1%以上上昇した日数が32日、1%以上下落した日数が32日)となりました。12月の日中ボラティリティ(高値と安値の差)は11月の1.37%から2.56%に上昇し、2018年通年では1.21%と2017年の0.51%(筆者がデータを入手している1962年以降の最低。平均は1.43%)を上回りました。12月の平均日中値幅(高値と安値の差)は11月の7.00%、10月の12.92%から19.33%に急上昇し、2011年10月の20.27%以来の高水準を記録しました。出来高は11月に取引が活発だった10月(46%増)から12%減少したのち、前月比で4%、前年同月比で28%増加し、過去1年間の月間平均を13%上回りました。

 セクター間のリターンのばらつきは11セクター全てが下落(11月は9セクターが上昇、10月は4セクターが上昇)する中で縮小しました。12月はパフォーマンスが最高のセクター(公益事業、4.31%下落)と最低のセクター(エネルギー、12.82%下落)の騰落率の差は8.51%と11月の9.09%から縮小しました。2018年通年では11セクター全てが下落し、パフォーマンスが最高のセクター(ヘルスケア、4.69%上昇)と最低のセクター(エネルギー、20.50%下落)の騰落率の差は15.81%(11月は21.80%)となりました。

 12月は売りの勢いが買いを大きく上回る中、11セクター全てが下落し、8セクターが上昇した11月、2セクターが上昇した10月を下回りました。公益事業が安全性と配当利回りを下支えに4.31%の下落となり、騰落率で最善となりました。同セクターは2018年通年では0.46%上昇と、上昇した2セクターのうちの一つとなりました。もう一つのセクターはヘルスケアセクターで、同セクターは、12月は8.72%下落しましたが、4.69%上昇で2018年を終えました。

 エネルギーセクターは、原油価格の下落が続く中、12.82%下落で騰落率最下位となりました。同セクターは20.50%の下落で2018年を終えています。金融セクターは12月に11.45%下落し、2018年通年でも14.67%下落しました。過去2年間では2.66%上昇しています。情報技術セクターは8.54%下落し、通年でも1.62%の下落に転じましたが、2016年11月の米大統領選以降では36.11%上昇しています。消費関連セクターも下落しました。一般消費財は8.45%下落し、通年で0.49%の下落に転じ、生活必需品も9.46%下落し、通年で11.15%下落しました。

 12月は圧倒的多数の銘柄が値下がりしました。12月の値上がり銘柄数は11月の358銘柄、10月の103銘柄(これでも悪い方だと思っていました)に対して14銘柄(平均上昇率は2.85%)にとどまりました。10%以上値上がりした銘柄数は11月の50銘柄、10月の4銘柄に対してゼロとなりました。一方、値下がり銘柄数は491銘柄(平均下落率は10.65%)で、11月の145銘柄、10月の400銘柄から増加し、そのうち237銘柄(S&P 500指数の47%、平均下落率は15.47%)が10%以上下落し、11月の35銘柄、10月の170銘柄を上回りました。

 2018年通年では、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は大幅なマイナスに転じました。値上がり銘柄数は11月末時点の252銘柄に対して174銘柄(平均上昇率は15.19%)となり、そのうち94銘柄(平均上昇率は24.81%)が10%以上、33銘柄(平均上昇率は40.37%)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は11月末時点の149銘柄から331銘柄(平均下落率は20.91%)に増加しました。10%以上値下がりした銘柄数は245銘柄(平均下落率は26.54%)で、そのうち25%以上値下がりした銘柄数は112銘柄(平均下落率は36.72%)、50%以上値下がりした銘柄数は9銘柄でした。
 

 

 

 

 

 

 

[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
HTTP://WWW.SPINDICES.COM/RESOURCE-CENTER/THOUGHT-LEADERSHIP/MARKET-COMMENTARY/

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配信元: みんかぶ株式コラム

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