個人投資家向け会社説明会のコツ

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最新投稿日時:2018/12/17 13:30 - 「個人投資家向け会社説明会のコツ」(みんかぶ株式コラム)

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個人投資家向け会社説明会のコツ

著者:鈴木 行生
投稿:2018/12/17 13:30

・9月、10月に大企業の個人投資家向け会社説明会に参加してみた。JFEホールディングス(コード5411、時価総額1.3兆円)、NTT(日本電信電話、コード9432、時価総額9.0兆円)、アステラス製薬(コード4503、時価総額3.3兆円)の3社である。

・IR部門の責任者が説明に立ったが、Q&Aの内容をみると、参加者には満足いかなかったところがあったようだ。筆者が聴いていても、大いに不満が残った。なぜだろうか。それぞれ個性のある会社だが、話したいことと聴きたいことがうまくかみ合っていない。

・会社側からみると、個人投資家は多様で何を話せばよいのか、と迷うかもしれない、しかし、IRのプロである。個人投資家からみると、株式投資を何年もやって、酸いも甘いも一応分かっている。では、どこが課題であるか、について考えてみたい。

・JFEは、グループの強みと成長戦略をテーマにした。まず会社概要について、沿革や事業内容などを話した。鉄という素材、製鉄所の生産体制、製品説明と顧客との長期取引について説明した。次にエンジニアリングと商社事業について解説した。

・その後、中期計画の内容を、1)事業環境、2)社会ニーズ、3)技術開発、4)重点投資、5)海外事業の観点から話した。企業体質の強化については、ダイバーシティや働き方改革の観点も取り入れた。最後に業績の見方と株主還元について説明した。

・一通り流れに沿っているが、何か物足らない。投資家からの質問では、新日鉄との違いはどこにあるのか、という点が出された。つまり、わが社の事業内容は丁寧に説明しているが、グローバルな比較、他社比較が入っていない。

・よって、どこに特色があるのか十分伝わってこない。将来こうなりたいという企業イメージも、中期計画の解説を中心にしているので、はっきりしない。

・NTTは、グローバル事業と新規事業の方向性をテーマにした。まずグループの体制と、これまでの事業構造の変化について説明した。そして、今期の業績と中期の財務目標の数字にふれた後、中期経営戦略の重点項目にフォーカスした。

・グローバルビジネスをどのように行っているかを説明した。競争力の強化という点について、どういう組織で運営するかを解説した。グローバル持株会社の創設が重要なカギを握るからである。

・新規事業では、B to Bの先にある新たなニーズに対して、その価値創造をサポートする取り組みとして、歌舞伎のリアル対バーチャルの例などを紹介した。

・NTTは純粋持株会社で、ドコモ(持株比率66.6%)やNTTデータ(同54.2%)も上場している。11月に次の中期計画を公表する前なので、過去の説明と現状の解説が多かったのかもしれない。それにしても、グローバル展開のイメージは十分でなかった。

・また、ドコモの5G戦略については説明しなかったので、質問が出た。上場子会社の意義や違い、NTTとしての将来の目指す姿が今一つはっきりしていないと感じた。

・アステラスは、持続的な成長に向けた取り組みにフォーカスした。まず会社の概要、製薬業界の概要を説明し、次に自社のビジネスの現況を数字で示した。

・がん領域、泌尿器領域、移植領域の主力製品、新製品について、簡単に解説した。今後の成長戦略では、5月に新中期計画を出したので、3つの重点戦略について話した。製品価値、開発価値、融合価値について、その目指す方向を示した。

・主力製品の独占販売期間の満了で、これから業績が落ち込んでくる。その後、回復を目指すが、そのシナリオついてふれた。新薬についての説明は難しいとして、深くつっこんでいない。

・財務数値については、IFRS(国際会計基準)を採用しているが、それと実態との違いについて質問がでた。ESGについてはほとんど触れていない。できるだけわかりやすくしようという姿勢が、現状の簡単な解説に留まる内容であった。

・3社に共通する課題は何か。第1に、個人投資家は多様であって、十分な知識がない人が多いので、できるだけ分かり易く説明しようとした。これがよくない。投資家は簡単な説明や解説を聞きたいのではない。また、過去と現状を網羅的には長々と話されても退屈なだけである。

・第2は、これからの戦略について、中期計画の内容を説明する。投資家は、中期計画の一般的な解説や財務数値目標を聞きたい訳でなく、その奥にあるものを知りたいのである。

・第3は、IR担当者は投資家のことがよくわかっているはずであるから、もっと投資家の気持ちに踏み込んで話してほしい。ここの距離感にまだかなりの隔たりがある。

・では、どうしたらよいのだろうか。端的に言えば、過去の説明はいらない。現状の解説もいらない。すべてを将来に向けて話すようにして、その将来の姿を分かってもらう時に必要ならば、過去、現在にふれればよい。というように、発想を転換させることである。投資家は将来を知りたいのである。

・次に、IR担当者は、社長の代理人であるから、社長になったつもりで語ってほしい。代役を期待しているわけではない。社長の個人的気持ちを知りたいわけでもない。

・会社を代表する立場で話すと、話し方が説明や解説ではなく、当事者としての発言になってくる。このことが、話す内容の臨場感を高めることになる。投資家は、そのインパクトを求めている。

・そして、話す時には、将来のビジネスモデルに重心をおいてほしい。今のビジネスモデルではない。ビジネスモデルとは価値創造の仕組みであるから、わが社の企業価値創造の仕組みを、こう作り上げて、こんな価値を提供していくと明示する。

・そのために、ビジネスモデルに必要な重要構成要素(マテリアリティ)をこう作っていくと語る。その方策が戦略であり、結果として財務数値が出てくる。

・最後に、スライドなしで語ってほしい。スライドを映して話すと、どうしてもスライドの解説になってしまう。スライドはみせてもいいし、手元の資料としてもよいが、自分の言葉で、スライドなしのつもりで話してほしい。そうすると、いいたいことが伝わってくる。

・もし機関投資家より、個人投資家説明会の方が、難しいと感じているならば、これらの点を検討して、取り入れて頂きたい。筆者は、個人投資家説明会によく参加している。なぜなら、会社の本質を知るには、個人投資家説明会の方が優れていると思うからである。

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配信元: みんかぶ株式コラム

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