とれんど捕物帳 「やはりドルが一番無難、トランプだけど」が答えか？

　今週のドル円は上値が重かったものの、意外に下値は固かった印象。ただ、週末になってＦＲＢ幹部の発言に敏感に反応しドル売りが強まったことからドル円は１１２円台に値を落としている。クラリダＦＲＢ副議長の発言に反応していたようで、「世界経済に減速している証拠がある」と述べていた。今週、パウエル議長はＦＲＢが来年直面する課題の一つに、海外需要の鈍化を指摘していたが、副議長の発言もその線に沿った内容とも言える。

　ただ、米株にらみの展開で、ダウ平均の鏡相場の様相に変わりはない。米株の動向を見通したほうが、ドル円に近いのかもしれない。せっかく米中間選挙を無難に乗り切ったが、株式市場は上値が重い。原油安もあったが、ＩＴ・ハイテク株が相変わらず調整が続いており、株式市場もドル円も圧迫している。これまで成長株としてＩＴ・ハイテク株は株式相場の上昇を牽引してきたが、ここに来て見直しが出ているのであろう。特にｅコマースやＳＮＳはさすがにお腹一杯といったところであろう。修正は致し方ないところではある。ただ、ＩＴ・ハイテク株もＡＩはもちろん、フィンテックなどまだ開拓余地が大きいテーマもあるので、個別に選別されて行く可能性も見たい。

　ｅコマースやＳＮＳについても需要が減ることまでは考えにくい。ただ一方で、これまでのような成長は難しくなって行くであろう。マイクロソフトやインテルのように高成長は期待できないが、大きくて安定感のあるブルーチップに近づいて行くものと見ている。その手の銘柄はもうしばらく調整が続くのかもしれないが、ＩＴ・ハイテク株全体が下押しする動きは緩んで行くものと期待している。

　この手は個人消費の動向が大きく左右するが、このところの株安に米景気の先行き懸念も指摘され始めている。ただ、直近のデータからは、米賃金は伸びが拡大したとは言え、まだ上昇余地はありそうだ。米経済の最大の要素である個人消費に関しては、もうしばらく底堅く推移するものと見ている。よって、米株はあくまでＩＴ・ハイテク株の見直しを始めとした調整の範囲と見ている。米株式市場はもう一度上値を目指すものと期待している。

　話は変わって、先週の見通しでも指摘したが、やはり今週は欧州が相場の話題の中心であっただろう。「やっぱり欧州！、十人二十色！、一筋縄では行かない」といった印象だ。
　英ＥＵ離脱は、メイ英首相とＥＵ側は何とか合意を形成したものの、与党保守党内はもちろん、メイ内閣でも造反が相次いでいる。せっかくの合意も議会を通せず、市場が最も恐れている合意なき離脱のシナリオも台頭している。保守党内からはメイ降ろしの動きが再び出ており、党首の信任投票を求める動きも出ている。メイ首相も闘う姿勢を示しているが、そのうち切れて、また解散するのではといった雰囲気だ。

　イタリアのほも、ＥＵに予算案の見直しを迫られていたが、「アズーリは簡単じゃない！」といったところでろうか、ほぼ見直しせずＥＵに突っ返している。

　この不安定感から欧州通貨は、しばらく積極的な買いは入れづらい印象もある。ＦＲＢは慎重姿勢を示し始めた感もあるが、米利上げはもうしばらく続くことが予想され、１２月を含めて、あと３回は利上げがあると見ている。「なんだかんだ言っても、やはりドルが一番無難、トランプだけど！」というのが現状の答えと思われる。

　さて来週だが、週末には米感謝際もあり、まさに感謝際ウィークになる。米年末商戦のスタートといった週でその動向が注目されそうだ。寒いらしいのでその辺は気掛かりだが、ネット通販もあり、雇用など直近のマクロのデータから、昨年同様に堅調な年末商戦も期待される。いずれにしろ、週後半にかけてやる気がなくなって行くであろう。短期的な波乱が無きにしも非ずだが、基本的にはポジション調整が中心かもしれない。ドル円も上値は重いが下値も底堅い展開が想定され膠着した展開が続くのかもしれない。

　ドル円の想定レンジとしては１１２．５０～１１４．５０円を想定。スタンスは「やや強気」を継続とする。

（）は前週
◆ドル円（USD/JPY）　
中期　中立から上へトレンド変化
短期　↑↑（↑↑↑）

◆ユーロ円（EUR/JPY）
中期　中立から下へトレンド変化
短期　↑↑（↑↑）

◆ポンド円（GBP/JPY）
中期　中立継続
短期　→（↑↑）

◆豪ドル円（AUD/JPY）
中期　中立から上へトレンド変化
短期　↑↑↑（↑↑↑）

◆ユーロドル（EUR/USD）
中期　下げトレンド継続
短期　↓↓（↓↓）

◆ポンドドル（GBP/USD）
中期　下げトレンド継続
短期　→（↑↑↑）

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来週はお休みします。次回の配信は１２月１日（土）の午前を予定しています。ご了承ください。
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minkabu PRESS編集部　野沢卓美