GDPRの衝撃(3)GDPRをプラスに転じるために

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最新投稿日時:2018/05/28 11:30 - 「GDPRの衝撃(3)GDPRをプラスに転じるために」(フィスコ)

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GDPRの衝撃(3)GDPRをプラスに転じるために

配信元:フィスコ
投稿:2018/05/28 11:30
「GDPR(一般データ保護規則)」とは、EUが2016年に制定したプライバシー保護の法律であり、2年間の周知期間を経ていよいよ2018年5月25日に施行される。

欧州に拠点のない日本企業などに対しても、制裁金を科すなど厳しい規則が適用される。たとえば、日本企業のウェブサイトをEU域内の利用者が閲覧し、その個人情報——自動収集されるIPアドレスさえも個人情報になる可能性がある——が適切に取り扱われていない場合には、全世界での年間売上高の4%もしくは2000万ユーロ(約25億円)のいずれか高い方が、制裁金として科せられる恐れがあるのだ。

これから企業価値を高めていくには、プライバシー保護対策、サイバーセキュリティ対策が絶対不可欠となってくる。

そこで、最新刊『GDPRガイドブック』(足立照嘉、ヘルマン・グンプ著、実業之日本社刊)の一部から、その概要を紹介したい。今回はシリーズ3回のうちの最終回となる。


■GDPRは日本企業成長の好機

GDPRについて考える時、ビジネスとコストに集中するということは簡単である。しかし、最初になぜこのような規制が導入されたのかという背景を再確認することが重要だ。
個人データの用途を、データ主体がコントロールできるようにし、より一層の責任のもとで個人データが処理されるようになる。
企業に提供するデータや、オンラインでの活動の結果として収集されるデータが、どのようなことに用いられているのかということに関心が高まる中で、非常に重要なことである。

したがって、GDPRは製品とサービスにおける将来の成長を支えていくための、積極的な機会であるとみなされるべきである。
現状の日本では、GDPRの厳しい規則ばかりが注目されており、企業にとっては非常に強い逆風とも映っている。しかし、GDPRの本来の意味を再度確認し遵守していくことによって、優位性を発揮できる追い風にもなる。特に、IoT・ビッグデータ・人工知能・ロボットを用いた領域において競争力を高めていくためには、グローバル標準のレギュレーションに則ったビジネス展開が必須だ。

個人データと言われると、氏名や住所の取り扱いについての話だけだと思われがちだ。しかし、カメラに映り込んだ自動車のナンバープレートも個人データであり、GDPRを遵守した管理がなされなければならない。どこかSFの世界における特殊な監視社会での話のように思われるかもしれない。

しかし既に、ソーシャルロボットの社会実証実験は日本でも多く行われている。「ロボットの目」すなわちカメラに映り込んだ、その人の服装、音声、表情、挙動などの情報から、厳密に考えるならば個人データがそこから抽出される可能性すらある。この時、そもそも個人情報とは何なのか? それがどのような意味合いをもつものか? そして、その利用はどのように規定されるべきか? といった議論が起きるかもしれない。

そして、個人データが情報社会の進展とともに大きな価値を持ち、技術とともに変遷することを見定め、むしろ価値を変えていくための提言を積極的に行っていくべきだろう。
今後はGDPRの浸透によって、個人データの取得および処理に関する指針が定まり、遵守とその証明を行うことができれば、GDPRに対するネガティブな反応も異なってくるかもしれない。

1970年に米国で改正された排ガス規制(通称、マスキー法)では、世界中の自動車メーカーがこの規制内容を達成することはほとんど不可能であると主張した。
この時、本田宗一郎氏は「4輪の最後発メーカーであるホンダにとって、他社と技術的に同一ラインに立つ絶好のチャンスである」と考え、新たなチャレンジをし、クリアしてきたことは有名な逸話である。
GDPR施行も、一見強い逆風のようにも思えるが、そこには決して楽ではないものの、日本企業がさらなる成長を遂げるための大きな好機があるはずである。


■著者
足立照嘉 (Teruyoshi Adachi)
サイバーセキュリティ専門家
欧州および北米を拠点に活躍し、2018年現在で30カ国以上でサイバーセキュリティ事業を展開。
主に航空宇宙産業のサイバーセキュリティに取り組んでおり、日本を代表する企業経営層からの信頼も厚い。

ヘルマン・グンプ(Dr.Hermann Gumpp)
データ保護専門家
ミュンヘン(ドイツ)を拠点に欧州で活躍し、ミュンヘン大学(LMU)や日系企業などのアドバイザーも務める。
東京の国立情報学研究所(NII)での研究開発経験もあり、日独産業協会(DJW)ITワーキンググループの中心人物である。


■協力
浅田 稔
(大阪大学大学院工学研究科 教授)
安藤類央
(国立情報学研究所 サイバーセキュリティ研究開発センター 特任准教授)
Dr.Jamie Saunders
(元・英国国家犯罪対策庁 国家サイバー犯罪局長・機密情報局長)
中川博貴
(株式会社フィスコIR 取締役COO・フィスコファイナンシャルレビュー編集長)
八子知礼
(株式会社ウフル 専務執行役員・IoTイノベーションセンター所長)
松田章良
(岩田合同法律事務所 弁護士)


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配信元: フィスコ

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