「民泊市場はブルーオーシャン」
―IoT活用でシェア獲得狙う―
●古木大咲氏(インベスターズクラウド 代表取締役社長)
不動産を取り扱っているにも関わらず、土地の在庫を持たない新たなビジネスモデルで飛躍的な成長をみせているのが、昨年12月に東証マザーズ市場に新規上場したインベスC <1435> [東証M]だ。市場での関心が高い「民泊」にも積極的な取り組みをみせる同社の古木大咲社長に今後の経営戦略を聞いた。
――ビジネスモデルおよび強みを教えてください
「アプリではじめるアパート経営『TATERU(タテル)』の運用が主力事業となっています。これはチャットなどを通じて土地情報からデザインアパートの企画、施工、賃貸管理までをワンストップで提供し、これらをアプリ上で完結できることが大きな特徴です。現在、会員数は9万人を超え、管理戸数は1万戸以上と順調に成長しており、入居率は97.0%以上で推移しています」
「強みは大きく分けて2つあり、ひとつはインターネットを使った集客力です。自社開発したDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を活用することで広告配信などの最適化を実現し、これにより月間1200人以上の会員登録があります。また、他の不動産会社と比べて大きく違うのは土地の在庫を持たず、アパートの建築と賃貸管理で収益を上げている点です。従来型モデルだと売上高の半分ぐらい在庫があり、その在庫分借金があることから景気変動の影響を受けやすい面がありますが、当社はデベロッパーを通さずに顧客が土地を直接購入できる仕組みのため在庫を持たなくて済み、無借金経営を実現できるなど財務面での安定性につながっています」
――アパート経営を取り巻く環境は?
「30~50歳代の年収1000万円ぐらいの会社員でアパート経営をしたいという人が増えています。この背景として、年金制度に不安を持ち私的年金対策を行いたいといったニーズがあります。また、15年1月施行の税制改正で相続税の取り扱いが変わったことも追い風です。これによって課税対象者が増加し、アパート建築によって相続税評価額を引き下げたいとの需要が増えており、今後もさらに伸びていくとみています。そして、現在のマイナス金利を受けて、融資を出したいという銀行が増えていることも当社の事業にとってプラスとなっています」
――民泊が大きな注目を集めていますが、この市場をどうみていますか?
「非常に有望なマーケットだとみています。実際、当社の会員でも民泊物件なら買いたいという人が多くいます。民泊はこれから本格的に始まるものなので完全なるブルーオーシャン(未開拓市場)で、ここでいち早くシェアをとってしまえば、その後も業界で優位なポジションを取り続けることになると思います」
――民泊への具体的な取り組みを教えてください
「中古物件や空き家を対象にした民泊向けリノベーションサービスに続き、民泊×IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用したビジネスに注力しています。そのひとつがスマートドアホン『TATERU kit(タテルキット)』で、これはタブレットをセントラルコントロールとしてさまざまなIoT機器(スマート家電など)と連携できる特徴があります。これを自社物件での活用だけでなく、将来的にはOEM販売や民泊代行会社への販売などのかたちで他社に供給していきたいと考えています。実際、不動産会社やホテル、メディアなど多くの企業から問い合わせや提携の話をいただいています」
――新事業「tateru bnb(タテル・ビーアンドビー)」はどのようなサービスですか?
「政府は現在、管理業者が近隣のトラブル処理など一定の責務を担うよう民泊の管理を登録制にしようと議論を進めています。そうなれば今後、事業規模の小さい会社や個人は登録ができなくなる可能性があり、ここに大きなマーケットが生まれると考え、この受け皿となる『tateru bnb』をスタートさせました。これは認可申請や運用代行など民泊経営に必要なすべての業務を代行するもので、今後当社のビジネスで大きなウエートを占めてくると思います」
――今後、インベスターズクラウドが目指している姿とは?
「例えば、アプリではじめる民泊経営というかたちで『TATERU』で土地を紹介してアパートを建ててもらったのち、『TATERU kit』を提供し、その後の管理・運営も『tateru bnb』で請け負うなど、各事業のシナジーを十分に発揮していきたいと考えています。また、それだけでなく今後は人気観光地にちなんだ物件の開発など民泊を組み合わせた、今までなかったようなビジネスを展開していきます」
「今年に入って弁護士COM <6027> [東証M]やマネーフォワード(東京都港区)などと相次いで提携しました。こうした提携先企業とのビジネスに加え、さらなる提携先の拡大も進めていきたいと思っています。そのひとつとして投資物件と親和性の高いFinTech(フィンテック)の分野も検討しています。当社は今後もITを活用してさまざまなビジネスを展開していく予定で、不動産というイメージを捨ててみてもらえればと思います」
(聞き手・三宅和仁)
●古木大咲(ふるき・だいさく)
株式会社インベスターズクラウド代表取締役。1979年鹿児島県生まれ。2006年に株式会社インベスターズを設立。14年8月より社名を「株式会社インベスターズクラウド」に変更。15年12月東証マザーズへ上場。●株式会社インベスターズクラウド
「ネット×リアルで新しいサービスを」という経営理念のもと、アプリではじめるアパート経営「TATERU(タテル)」や、スマートドアホン「TATERU kit(タテルキット)」の開発、定額リノベーションをワンストップで提供する「スマリノ」を展開。「TATERU」事業を軸に、民泊、IoT分野に注力している。
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