S&P500月例レポート(22年12月配信)<前編>

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最新投稿日時:2022/12/27 11:40 - 「S&P500月例レポート(22年12月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(22年12月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET:2022年11月
個人的見解:七面鳥も用意され、感謝祭のお祝いムードが広がる。これはトンネルの出口に見える明るい光?それとも対向列車のライト?

 今年の感謝祭は期待と歓喜に満ち溢れたものでした。期待が示すのは米連邦準備制度理事会(FRB)が経済の”減速”を確認して、利上げペースを緩める可能性があること。歓喜はS&P500指数が11月に5.38%上昇し(消費者物価指数:CPIの下落を受けて11月10日は5.54%上昇、11月30日もパウエル議長の発言を好感して3.09%上昇)、10月12日の直近安値からの上昇率が14.06%に達したことです。

 この上昇は(料理の時に食材を詰め込む)七面鳥のように資金を詰め込み過ぎたからです。11月の米国株式市場(5.08%上昇)は海外市場(11.12%上昇)をアンダーパフォームしたにもかかわらず、資金流入が再び勢いづいてきました(とはいえ、海外に投資先をシフトする前に過去3年間のリターンに注目してください。米国は27.71%上昇しましたが、米国を除いた世界の株式市場は1.53%下落しました)。しかし、我々(投資家)は七面鳥のようにさえない市場の動きを(年初来、すなわち2022年の取引開始日に付けた最高値からの騰落率は14.39%下落)を引き続き恐れています。

 今年のブラックフライデー(例年この日に小売業者の業績が赤字から黒字に転換します)は、恒例のセールが開催され、客足が戻ってきました。消費者の購買意欲がまだ衰えていない(とはいえ、これまで以上に選別志向を強めています)ことから、こうした大規模セールが必要とされたというよりも、小売り業者側に販売サイクルの狂いが生じたために(配送の遅れ、事前発注の混乱……)特定の商品を割引販売する必要性があったといえるでしょう。

 我が家独自の購買指数に関して言えば、妻と娘は18回目となるブラックフライデーのショッピングに果敢に繰り出して行きました(昨年同様、今年も10時にソーホーから買い物をスタートしました。早朝5時に百貨店のメーシーズやミッドタウンに行列ができていた日々はもはや過去のものとなりました)。彼女たち(とレシート)によると、昨年よりも買い物客は多く、購入量も増えましたが、コロナ危機前ほどではありませんでした。(彼女たちの話を聞くと)今年のセール内容は予想よりも良かったようです。

 小売業者(小売業協会やクレジットカード会社)が発表した公式の集計データによると、売上高は前年比2.3%増で過去最高の91億ドルとなりました。しかし、物価の上昇を考慮すると、過去最高となったのは値上がりによるもので、販売数量が増えたわけではありませんでした。また、サイバーマンデーの売り上げは、速報値で116億ドルと、2021年の107億ドル(これは2020年から1.4%減少)から増加しました。

 12月(そして待望の株式市場のクリスマスラリー)に関して言えば、レイムダック化(これ以外にも議会を評する形容詞を数多く思いつくことができます)した議会が仕事に取り掛かる必要があります(下院に関しては開票作業が終了する必要がありますし、上院については有権者は投票を済ませる必要があります[12月6日のジョージア州の決選投票])。一部の政府機関がつなぎ予算の期限を迎える12月16日まで閉鎖されないで済むのであれば(そうなることに一縷の望みを託しています)、年内に採決しなければならない議案は国防予算を含む歳出法案です。現在点では、法案が議会通過するためには超党派での合意(政治家にとっての美徳)が必要となります。

 審議や採決の遅れは経済の停滞につながります。これはFRBにとっては好都合ですが、企業業績や経済には打撃となります。一部(の民主党議員)が債務上限(現時点では31.4兆ドル。S&P 500指数の時価総額は34.3兆ドル)の引き上げを要求することも考えられ、終了が予定されているメディケア関連の助成金の延長を求める動きもありますが、実現の可能性は低いようです。株式市場の観点から言えば、大手企業は2017年に成立したトランプ減税の一部時限措置の期限が迫ることから、その延長を働きかけています(法人税の控除)。対象となる2023年の税額は1000億ドルと見積もられていますが、企業は(研究開発費の償却と金利支払い控除の上限を念頭に置いて)ロビー活動を展開しています。

 EU(欧州連合)は12月5日からロシア産原油の輸入を禁止する予定ですが(2023年2月5日以降は石油製品の輸入も禁止)、ロシアの輸出先はすでに中国、インド、トルコにシフトしています。ロシアのウクライナ侵攻が始まる前までは、ロシアの石油輸出の半分をEUが占めていました。なお、禁輸措置が始まる前日の12月4日にはOPECプラスによる会合が予定されています。

 過去の実績を見ると、11月は60.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.00%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.83%の上昇となっています。2022年11月のS&P500指数は、5.38%の上昇となりました。

 12月は73.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.97%、下落した月の平均下落率は3.08%、全体の平均騰落率は1.36%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2022年12月13日-14日、2023年は1月31日-2月1日、3月21日-22日、5月2日-3日、6月13日-14日、7月25日-26日、9月19日-20日、10月31日-11月1日、12月12日-13日、となっています。

 S&P500指数は11月に5.38%上昇して4080.11で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス5.59%)。10月は3871.98で終え、7.99%の上昇(同プラス8.10%)、9月は3585.62で終え、9.34%の下落(同マイナス9.21%)でした。過去3ヵ月では3.16%上昇(同プラス3.63%)、年初来では14.39%の下落(同マイナス13.10%)、過去1年間では10.66%下落(同マイナス9.21%)、2022年1月3日の最高値からは14.97%の下落(同マイナス13.66%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは20.49%上昇(同プラス26.02%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は11月に5.67%上昇して3万4589.77ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス6.04%)。10月は3万2732.95ドルで終え、13.95%の上昇(同プラス14.07%)、9月は2万8725.51ドルで終え、8.84%の下落(同マイナス8.76%)でした。2022年1月4日の最高値(3万6799.65ドル)からは6.01%下落しました。過去3ヵ月では9.77%上昇(同プラス10.36%)、年初来では4.81%の下落(同マイナス2.89%)、過去1年間では0.31%上昇(同プラス2.48%)しました。

主なポイント

 ○S&P500指数は、経済データに左右される展開となりました。インフレはすでにピークアウトした可能性もあり、低下基調に転じています(とはいえ、単月のデータだけでは判断できません)。予想を上回る小売売上高(かなりの過剰在庫を抱えている点は除外)が堅牢な経済基盤を下支えしており、(多数派ではありませんが)「依然として」経済のソフトランディングを唱える声も僅かながら聞こえてきます。企業収益全般は予想を上回る結果となりました。良好な内容ではありませんが、それでも事前予想を上回りました(ウィスパーナンバー[(アナリストによる非公式の業績予想)]では業績悪化と低調なガイダンスが予想されていました)。総じて期待されていたのが、トンネルの出口に光が見えるかもしれないということです。しかし、このトンネル(FRBによる利上げの中断が出口と定義される)は2023年4-6月期まで続き、今後もFRBによる利上げが続くと予想されています(12月の利上げは0.50%となりそうですが、大半の市場参加者は2023年2月1日の会合では利上げ幅が0.25%に変更されると期待しています)。

 11月に入るとS&P 500指数の取引レンジが縮小して3700から4000の間で推移し(パウエル議長の発言のおかげで11月の取引最終日の終値は4080をつけました)、1ヵ月間の騰落率はプラスとなりました。12月の相場は(12月14日のカンファレンスコールでの)連邦公開市場委員会(FOMC)発表のコメントと家計部門のホリデーシーズンの支出動向に大きく左右されることになると予想されます。また、テレビやラジオが伝えるニュース(と世間の雰囲気)で中心となるのは、12月6日に実施されるジョージア州の連邦議会選挙(上院)の決選投票と与野党間での予算案を巡る駆け引きになるでしょう。株式市場はFOMCが12月の会合で0.50%の利上げを決定するとの見方を強めており、2月には利上げ幅が0.25%になるとの予想が優勢です(僅差で0.50%が続いています)。

 ○銘柄数で97%、時価総額で98%に相当する企業が2022年第3四半期の決算発表を終え、利益は好調ではありませんが、予想を上回って推移しており、事前のウィスパーナンバーよりは大幅に良好な水準となっています。決算発表を終えた486銘柄中335銘柄(68.9%)で営業利益が予想を上回り、485銘柄中342銘柄(70.5%)で売上高が予想を上回りました。売上高は過去最高を更新する見通しですが、販売数量の増加ではなく、販売価格の上昇によるものとみられます。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益は、前期比8.0%増、前年同期比では2.7%減となる見通しです。

  ⇒売上高は、前期比3.5%増、前年同期比13.0%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2022年第3四半期中に株式数の減少によってEPS(1株当たり利益)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第2四半期の19.8%から21.6%に上昇しました。この割合は2021年第3四半期では7.4%でした。(2019年第3四半期は22.8%)。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益率は、第2四半期の10.86%から上昇して11.34%となる見通しです(1993年以降の平均は8.26%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

 ○S&P500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の11月の平均値は1.61%となり、10月の2.14%から低下しました(9月は1.91%)。年初来では平均1.86%(10月末時点では1.88%)となりました。2021年は0.97%、2020年は1.73%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降で最低)でした。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは、10月末の4.05%から3.62%に低下して月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、10月末の4.20%から3.75%に低下して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは10月末の1ポンド=1.1467ドルから1.2056ドルに上昇し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=0.9882ドルから1.0409ドルに上昇しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は10月末の1ドル=148.74円から138.05円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は10月末の1ドル=7.3029元から7.0925元に上昇しました(同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

  ⇒ドルは高止まりしており、一部の通貨では、海外利益や輸出価格に対する懸念の高まりを受け、ドル高が一段と進みました。

 ○11月末の原油価格は、10月末の1バレル=86.07ドルから同80.45ドルに下落し(今年に入ってから同130.50ドルまで上昇したが、10月は一時同75ドルで取引された)、年初来の上昇率は6.7%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で7.3%上昇しました(11月末は1ガロン=3.649ドル、10月末は1ガロン=3.857ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は66.2%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は56.6%上昇しました(2020年末は同2.330ドル)。

  ⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

 ○金価格は10月末の1トロイオンス=1636.00ドルから上昇して1783.10ドルで月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は10月末の25.88から20.58に下落して月を終えました。月中の最高は26.87、最低は20.31でした(2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12、2017年末は11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

新型コロナウイルスとサル痘

 ○サル痘の感染拡大ペースは鈍化しており、(多くが)感染拡大に歯止めがかかったと判断しています。一部のワクチン接種会場は閉鎖が予定されています。米疾病対策センター(CDC)によると、現時点で米国内では2万9325人の感染が確認されています(10月時点では2万8302人、9月時点では2万5613人)。世界全体の感染者数は8万1225人(同7万6806人、同6万8017人)となっています。

  ⇒世界保健機関(WHO)はサル痘の名称をM痘に変更すると発表しました。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒新型コロナウイルスによる世界全体の累計死者数は、663万人となりました(10月末時点は659万人)。

  ⇒米国は現時点で:

   →新型コロナウイルスの累計感染者数は9870万人となりました(同9750万人)。

   →新型コロナウイルスによる累計死者数は108万人となりました(同107万人)。

   →新規感染者数の7日間平均は11月末時点で4万2451人となり、10月末時点の3万6861人から増加しました。新規感染者数の7日間平均は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点では8万3120人)。また、死者数の7日間平均は285人に減少しました(10月末時点は352人)。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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