S&P500月例レポート(22年3月配信)<前編>

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最新投稿日時:2022/03/29 11:40 - 「S&P500月例レポート(22年3月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(22年3月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET:2022年2月
個人的見解:インフレとウクライナ侵攻 vs 消費支出の伸びと経済成長

 2月の米国株式市場は1月(5.67%下落)に続いて3.14%下落しましたが、市場では景気の減速(と強まる割高感)に備えた調整(資金の再配分)の動きが続きました。ウクライナ情勢を巡る道義的な報道が大勢を占める中、今後予想される事態に対する瞬間的な反応から株価の急落が見られたものの、市場を方向づけたのは米国経済の状況でした。

 2月に関して言えば、景気指標の中でも特に注目を集めたのは、インフレの高進(消費者物価指数が7.5%上昇、生産者物価指数が9.7%上昇、個人消費支出の価格指数が6.1%上昇)と、原油価格が再び1バレル=100ドルに上昇したことでした(2014年7月以来)。3月(15-16日)に開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、0.25%刻みの利上げが続くとみられていたほか、それ以上の対応が取られるかもしれないとの観測も広がり、利上げ幅を0.50%に拡大する(さらに、量的引き締め:QTがFOMC直後から開始される)との声も一部で聞かれました。

 足元の指標と今後発表される指標から判断すると、S&P500指数が2月に3.14%下落(1月3日の終値での最高値から8.81%下落)したことは、それほど深刻な下落とは言えないでしょう。なにしろ、2020年3月23日に直近の最安値(コロナ危機以前の2020年2月19日の終値での高値から33.93%下落)をつけて以降、市場は114%上昇しており、しかもこの間に一度も調整局面を迎えることがなかったからです。

 現時点では、米国の経済ファンダメンタルズの力強さが相場の上昇を後押しし、市場はインフレ悪化とウクライナへの軍事侵攻に対する懸念を織り込みつつあります(一層軟化する可能性のある世界の他の国と比べると、米国経済はより力強くなります)。これは、資産(住宅価格と株式時価総額)、個人消費、雇用状況(失業率が4.0%)、労働需要と賃金の伸び(5.7%)、そして経済成長と過去最高が見込まれる(ただし伸び率は鈍化)企業利益(2022年は8.7%増、2023年は9.6%増)に示されています。さらに、持続的な資金流入も力強く市場を下支えしています。「押し目を拾え」という相場の経験則が再び引き合いに出され、その正しさが改めて証明されました。
 
 3月の相場を展望すると、現在進行中のウクライナへの軍事侵攻が大きな影響を及ぼす可能性があり、事態が一段と深刻化すれば金融市場には打撃となるでしょう。しかしながら、現時点で市場はこうした状況を織り込んでいるようです(それどころか、さらに入念に資産配分の見直しに取り組んでいます)。そして「ホーム(自国)」銘柄に注力し、インフレコストとその経済成長への影響に関しては、来る3月相場の主要テーマと想定しているようです(物価上昇に対処する能力があることを示せる銘柄が選好されることを意味しています)。

 過去の実績を見ると、2月は53.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.88%、下落した月の平均下落率は3.46%、全体の平均騰落率は0.05%の下落となっています。2022年2月のS&P500指数は調整局面に入りましたが、そこで終わらず3.14%の下落となりました。

 3月は60.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.34%、下落した月の平均下落率は3.85%、全体の平均騰落率は0.51%の下落となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2022年3月15日-16日、5月3日-4日、6月14日-15日、7月26日-27日、9月20日-21日、11月1日-2日、12月13日-14日となっています。

 S&P500指数は2月に3.14%下落して4373.94で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.99%)。1月は4515.55で終え、5.26%の下落(同マイナス5.17%)となり、12月は4766.18で終え、4.36%の上昇でした(同プラス4.48%)。年初来では8.23%の下落(同マイナス8.01%)、過去3ヵ月では4.23%下落(同マイナス3.89%)となりました。過去1年間では14.77%上昇(同プラス16.39%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは29.17%上昇(同プラス33.40%)して月を終えました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は3.53%下落の3万3892.60ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス3.29%)。1月は3万5131.86ドルで終え、3.32%の下落(同マイナス3.24%)となり、12月は3万6338.30ドルで終え、5.38%の上昇でした(同プラス5.53%)。年初来では6.73%の下落(同マイナス6.43%)、過去3ヵ月では1.71%下落(同マイナス1.25%)、過去1年間では9.57%上昇(同プラス11.59%)しました。

主なポイント

 ○「1月の相場がその年の相場を占う」という相場格言が今年は外れることを期待していますが、「1月の相場が2月の相場を占う」という状況は現実のものとなりました。2022年は最高値の更新で幕を開けましたが(1月3日の終値は4796.56)、1月(5.26%下落)と2月(3.14%下落)は連続して右肩下がりの相場となりました。(2020年11月以降)15ヵ月間にわたり、少なくとも月に1回は最高値を更新してきたS&P500指数は、2月には一転して2020年2月27日以来となる定義上の調整局面を迎えました(2022年2月23日に直近高値から11.91%の下落となる4225.50をつけました)。なお、前回調整局面入りした2020年2月27日の場合は、それ以降も市場は下げ続け、ついにはコロナ危機前の最高値から33.93%下落する弱気相場となりました。

  ⇒1月の相場下落の主な要因はインフレの高進で、警戒リストに上がっていた新型コロナウイルスに取って代わる格好となりました。そして、2月の大半はインフレに代わってウクライナ情勢が相場を押し下げた(調整局面入りした)ものの、再びインフレ動向(原材料コスト、労働力、製品価格への転嫁など)に注目が集まり、月末にはウクライナ情勢以上に弱材料視されました。なお、新型コロナウイルスは上記2つに比べるとほとんど話題に上りませんでした。3月相場を展望すると、インフレ懸念は薄れているようにみえます。3月15-16日開催のFOMCでは懸念されている0.50%の利上げはなく、大勢が支持する0.25%の利上げを決定すると予想します。

  ⇒2月はS&P500指数が2020年10月以来となる最高値を更新できない月となり、相場のモメンタムに終止符が打たれました。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは29.17%上昇し(同プラス33.40%)、その期間に終値ベースで90回、最高値を更新しました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は29.82%上昇(同プラス32.38%)しました(2021年1月20日のバイデン大統領就任後に69回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では95.49%上昇しています(同プラス101.48%)。

  ⇒同指数は、2022年1月3日に付けた終値での最高値である4796.56から8.81%下落して月を終え、年初来では8.23%下落となりました。

 ○2021年第4四半期の利益と売上高(本レポート執筆時点で、時価総額の95.3%に相当する企業が業績発表を終えています)は予想を上回っただけでなく(2021年第1、第2、第3四半期はいずれも予想を上回りました)、四半期ベースでの過去最高を更新しました。決算発表を終えた479銘柄中の363銘柄(75.8%)で営業利益が予想を上回り、100銘柄で予想を下回り、16銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では478銘柄中の375銘柄(78.5%)で予想を上回りました。

  ⇒2021年第4四半期の1株当たり利益(EPS)は、過去最高を記録した第3四半期から3.6%増益、また2020年第4四半期から41.1%増益になると予想されます。第4四半期のEPS(53.88ドル)は2021年第3四半期(52.02ドル)と過去最高水準となった2021年第2四半期(52.05ドル)を上回り、過去最高を更新することになります。

  ⇒2021年通年については過去最高益を更新する見通しで、前年比で67.8%の増益が見込まれ、2021年予想株価収益率(PER)は21.3倍となっています(2020年のEPSは前年比22.1%減)。

  ⇒2022年の利益は2021年予想からさらに8.7%増と、過去最高益の再度の更新が見込まれ、2022年予想PERは19.6倍となっています。

  ⇒2023年の利益は前年比9.5%増が見込まれており、2023年予想PERは17.9倍となっています。

  ⇒2021年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大幅に押し上げられた発表済みの銘柄の割合は13.8%に上昇しました(第3四半期は7.4%、2020年第4四半期は6.0%、2019年第4四半期は24.2%)。

  ⇒2021年第4四半期の営業利益率は12.81%となり、第3四半期の13.17%からは低下しましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.16%)。

 ○2021年第4四半期に実施された自社株買いの90%について、内容が発表されました(2500億ドル分の実施を把握済み)。第4四半期の自社株買いの総額はこれまでの最高だった第3四半期の2350億ドルを上回り、過去最高を更新しました。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは、1月末の1.78%から1.85%に上昇して月を終えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、1月末の2.11%から2.19%に上昇して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは1月末の1ポンド=1.3442ドルから1.3420ドルに下落し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは1月末の1ユーロ=1.1225ドルから1.1219ドルに下落しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は1月末の1ドル=115.07円から114.92円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は1月末の1ドル=6.3601元から6.3093元に上昇しました(同6.3599元、同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は1月末の1バレル=88.32ドルから95.66ドルに上昇して月を終えました(同75.40ドル、同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、1月末の1ガロン=3.464ドルから3.624ドルに上昇して月末を迎えました(同3.375ドル、同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は1月末の1トロイオンス=1799.00ドルから上昇して1910.40ドルで月の取引を終えました(同1829.80ドル、同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は1月末の24.83から30.15に上昇して月を終えました。月中の最高は37.79、最低は19.93でした(同17.22、同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

バイデン大統領と政府高官

 ○ロシアが自国およびベラルーシとウクライナとの国境付近で軍備の増強を続けていることで緊張は一段と高まり(配備されたロシア軍は19万人に上ると推定されます)、ロシアがウクライナに侵攻するとの憶測が強まりました。

  ⇒ロシアは、ウクライナのドネツク州とルガンスク州という既にロシア側が支配し、ロシア軍が配備されている地域の独立を承認し、プーチン大統領は「平和維持軍」と称して追加部隊を送ると発言しました。各国による当初の制裁措置は限定的で、ほとんどの国は、ロシア側の行動を「侵攻」と認めませんでした(認めたくありませんでした)。

  ⇒上記に対する反応としてドイツは、バルト海の海底を経由して欧州とロシアを結ぶノルドストリーム2パイプライン(全長1230キロ)の承認手続きを停止しました。米国はロシアの銀行と一部の個人による取引を制限する制裁措置を決定し、英国と欧州もこれに続きました。

  ⇒すると、ロシアは2月23日、ウクライナの「非武装化」を求め、独立を承認した地域の保護を目的とした「特別作戦」を実行すると宣言しました。ロシア軍はウクライナに侵攻し、10以上の都市が空爆されました。

  ⇒これを受け、米国とその同盟国は、ロシアの大手銀行4行に対して制裁措置を発動することを決めました。その後も戦闘が続き、2月末までには、国際決済ネットワークの「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシアの銀行(具体名は明かされず)の排除と、プーチン大統領を対象とした制裁措置も発表されました。

  ⇒戦闘開始から4日後、ロシアとウクライナはベラルーシとの国境で停戦協議を開始しましたが、進展はありませんでした。

新型コロナウイルス関連

 ○ファイザーは、自社製ワクチンの5歳未満への使用承認を米食品医薬品局(FDA)に申請しました。

 ○FDAは、イーライ・リリーが開発した、新型コロナウイルスのオミクロン株に有効な抗体医薬品の使用を許可しました。

 ○米国では、新たな変異株BA.2の感染が50州中30州で確認され、感染者の3.9%を占めています。

 ○香港では感染者の増加が続き、1日の新規感染者数が3万4000人に達しており、都市全体のロックダウンが発動される可能性があります。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒世界全体のワクチン接種回数は107億回となりました(2022年1月末時点では101億回)。

 米国は現時点で:

   →ワクチン接種回数が5億5200万回(同5億3900万回)に達しました(ブースター接種を含みます)。

   →人口の75.6%(同74.5%)が少なくとも1回は接種したことになり、人口の64.2%(同63.1%)が2回の接種を終えました。人口の27.9%(同26.1%)がブースター接種を受けました。

   →新規感染者数の7日間平均は2月末時点で6万6441人となり、1月末時点の51万9421人から減少しました。1日当たり新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点で8万3120人)。また、死者数の7日間平均は1872人(1月末時点は2524人)に減少しました。

各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○イングランド銀行(BOE)は、エネルギー価格や賃金の上昇を背景にインフレ率が数ヵ月以内に7%を超える見通しであることから、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げ、2会合連続の利上げとなりました。金融政策委員9名のうち4人が50bpの利上げを主張した点は注目されます。次回会合は3月17日に開かれる予定です(米国のFOMCは3月15-16日)。

 ○欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は会見でタカ派姿勢を強め、政策を大幅に転換する可能性を示唆しました。

 ○1月25-26日に開催されたFOMCの議事録では、短期間での50bpの利上げを支持する動きはほとんど見られず、市場も3月15-16日の会合で25bpの利上げという見方で概ね一致しています。QTの開始はその後になるとみられ、予想を上回るペースとなる可能性があります。

 ○ロシア中央銀行は、主要政策金利を9.5%から20.0%に引き上げました。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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